クリッピング

裁判員制度:聴覚障害者に不安の声 手話通訳、伝達難しく--模擬裁判参加

 裁判員制度が5月21日から始まるのを前に、福岡県筑紫野市の手話ボランティア団体のメンバーや聴覚障害者約20人が15日、福岡地裁での模擬裁判に参加した。聴覚障害者も裁判員の対象になるが、法廷などでの支援態勢の遅れも指摘されている。模擬裁判では、なじみの薄い法律用語などの手話通訳の難しさも改めて浮き彫りになり、参加者からは不安の声も上がった。【和田武士】

 男性被告が百貨店で指輪を盗み窃盗罪に問われた、との想定。参加者は、初公判から判決までの一通りの手続きを体験した。

 「通訳者がどこに立ったら分かりやすいか考える機会になった」。終了後、聴覚障害者の男性(65)はそう感想を語った。この日、通訳者は法廷中央で通訳したが、離れた位置の検察官席や弁護人席からの発言も同じ場所で通訳。通訳を担当した女性(50)は「話す人の隣で手話をするのが受け手に一番分かりやすい。本番で同じことをしたら発言者が分からなくなる」と指摘。法律用語については「意味を理解していないと通訳できない。今日もきちんと伝わったか不安」と語った。

 福岡県聴覚障害者協会の瀬戸憲治事務局長は「法廷で聴覚障害者と健聴者が同等の情報を保障されるか心配。中途失聴などで手話が使えない人もおり、筆記通訳なども検討してもらいたい」と話す。福岡地裁は「障害者の方が選任された時点で早めに要望を聞いて、可能な範囲で対応していきたい」としている。

毎日新聞 2009年4月16日 西部朝刊

 
ここからナビゲーションです。