2008年07月14日

◆ 気温の非周期変動モデル

 地球温暖化について詳しく知るためには、気温変動のモデルが必要だ。しかるに、現在のところ、まともなモデルがない。そこで、新たにモデルを提案する。これは気温変動をうまく説明できる。

 ──

 地球温暖化など、気温の変動について科学的に知るためには、何らかのモデルが必要だ。このモデルは「法則」と言い換えてもいい。
 たとえば、万有引力とは何かを科学的に知りたければ、ニュートンの示した法則を示せばいい。これは、法則であるが、モデルでもある。このモデルに従うと、「投げた石は放物線運動をする」ということがわかる。そして、モデルと現実の観測値がほぼ一致するとわかる。(空気抵抗の分を除く。)

 同様に、地球温暖化など、気温の変動についても、何らかのモデルが必要だ。ところが、現時点では、まともなモデルがない。
 なるほど、あちこちでモデルが提出されているが、それは「法則」というよりは「仮説の一つ」というものである。「これこれのパラメーターがこれこれであれば」というふうに、勝手に前提を加えて、その前提のもとで、あれこれとシミュレーションする。ただの「モデルごっこ」というお遊びだ。
 その代表が(人々の信じている)IPCC のモデルだ。ここでは、あれこれとパラメーターを変えて、次のようなモデルを作る。
  ・ 現状のままだと、100年後には ××度の気温上昇。
  ・ 炭酸ガス抑制の方針を取ると、△△度の気温上昇。

 しかし、こういうモデルをいくら作っても、それで科学的に考察したことにはならない。そのモデルの信頼性そのものが、もともとないからだ。

 ──

 では、従来のモデルには、なぜ信頼性がないと言えるか? それは、「過去の事実に当てはまらない」からだ。
 過去においては、地球の気温は大幅に変動してきた。上がったこともあるし、下がったこともある。そのような変動をうまく説明できるようなモデルが必要だ。
 しかしながら、現実に用いられているのは、次のモデルだ。
 「人類が炭酸ガスを排出しなければ、地球の気温は一定である」


 こういうモデルを用いた上で、次のように結論する。
 「地球の温暖化はまさしく観測されている。それは人類が炭酸ガスを排出したからである」


 しかしながら、本当は次のモデルを用いるべきだ。
 「人類が炭酸ガスを排出しなくても、地球の気温は変動する」


 こういうモデルを用いれば、次のように結論できる。
 「地球の温暖化はまさしく観測されているが、それは人類が炭酸ガスを排出したからとは言えない」


 以上のことをまとめれば、こうなる。
 「『人類の炭酸ガスの排出のせいで地球温暖化が起こった』というのが、現状の多くのモデルから得られる結論だ。とすれば、『人類の炭酸ガスの排出がなくても、地球の気温変動がある』ということを、現状のモデルは結論できない。すなわち、現状のモデルは、過去の気温変動を説明できない」


 というわけで、従来のモデルは欠陥モデルなのだ。

 ──

 そこで、新たに気温変動のモデルを提出することにしよう。そのモデルは、過去の気温変動を説明するモデルだ。

 ただし、注意しよう。このモデルは、普通の意味のモデルとはまったく異なる。ここでは、「法則があることを示すモデル」ではなくて、「法則がないことを示すモデル」が採用される。
 つまり、「人類が炭酸ガスを排出しなければ、変動はない」という普通のモデルではなくて、「人類が炭酸ガスを排出してもしなくても、変動がある」というモデルだ。

 このようなモデルは、本質的に、規則的なモデルとはならない。むしろ、不規則的になる。その意味で、このモデルを「非周期モデル」と仮称しよう。

 ──

 非周期モデルは、従来のモデルとは異なった出発点から始まる。

 従来のモデルは、次の図式の原理をもつ。
   原因 → 結果

 つまり、原因が結果をもたらす。( 変数 → 関数 )
 たとえば、万有引力の法則ならば、石の放出が「原因」となり、石の放物線運動が「結果」となる。そのような「原因 → 結果」の関係が、万有引力の法則(というモデル)で説明される。

 地球温暖化の場合も同様で、「原因 → 結果」の関係が想定される。通常、原因は「炭酸ガスの増加」などである。(さらには、炭酸ガスの増加のそのまた原因である化石燃料の消費が「原因」とされることもある。)

 では、気温変動も、このような「原因 → 結果」の関係で説明されるだろうか?
 たいていの学者は「イエス」と答えた。しかし、現実にはそうではないのだ。なぜなら、過去の歴史を見る限り、原因は「炭酸ガスの増加」ではなかったからだ。(昔の人類は炭酸ガスを人為的に発生させなかった。にもかかわらず、現在と同じような[むしろ現在以上の]温暖化が起こった。)

 結局、不規則的な変動を説明するには、「原因 → 結果」の関係(原理)によって説明するのでは、駄目なのだ。

 ──

 では、どうすればいいか? 
 一般に、不規則的な変動を説明するには、「それ自体のうちに確率的な変動を含む」というようなモデルが必要だ。
 たとえば、流れる空気のなかに置かれた球の後方では、空気の渦が不規則的に変動する。この変動を「原因 → 結果」という関係で説明しようとしても、無理である。むしろ、「構造自体のうちに確率的な変動がある」と見なした方がいい。

 ──

 では、気温の変動は、「確率的な変動」で説明できるだろうか? 
 「確率的な変動」で説明するならば、確率的なモデルが必要だ。具体的に言えば、次のようなモデルが考えられる。

  ・ ランダム
  ・ ランダム・ウォーク
  ・ 1/f 揺らぎ


 「ランダム」というのは、気温がまったくランダムに変動するということだ。今年の気温が低くても、来年の気温がどうかは、まったくわからない、というふうに。(現実には、そんなことはない。気温は同じ傾向がしばらく続く。)
 「ランダム・ウォーク」というのは、「マルコフ連鎖」の一種で、「変動の方向だけがランダムで、位置は直前の位置を引き継ぐ」というものだ。これだといくらか正しそうだが、現実にはそうではなくて、「変動の方向性も前年の方向性をしばらく続ける」というふうになる。
 「1/f 揺らぎ」というのは、「ランダム」の一種だ。ただし、ランダムさによって得られる値(強弱)が、1/f の分布でバラつく。

   ※ 以上の用語について、詳しい説明はしない。詳しい説明を
     知りたければ、Wikipedia などで調べてほしい。

 上記では三つのモデルを示した。しかしそのいずれも、気温の変動を示すには適していない。
 なぜなら、気温の変動には、「下がり続ける時期」と「上がり続ける時期」とがあるからだ。上記の三つは、こういう継続性を示すことができない。

 ──

 ここで、気温の変動に似たものはないか、と考えて、他の分野を探してみよう。すると、よく似た現象が見つかる。次の二つだ。(いずれも経済学における現象)
  ・ 景気変動
  ・ 株価変動


 この二つは、気温変動に似ている。つまり、「下がり続ける時期」と「上がり続ける時期」とが、しばらく続く。
 実際、気温変動のグラフは、「景気変動」や「株価変動」のグラフに、非常によく似ている。
( ※ 「景気変動」や「株価変動」のグラフは、右上がりだが、右上がりの分[= 長期的成長の分]を補正して、変動の量だけを見ると、気温変動のグラフに似たグラフになる。)

 さて。グラフの形がそっくりだとすれば、そこには共通する原理があるはずだ、と推定できる。
 では、共通する原理とは? ── 実は、それこそが「モデル」となる。
 では、いったいどういう原理があるか? 

 ──

 気象変動を見る前に、まずは経済を見よう。すると、経済の変動では重要なことが見出される。それは、
 「増幅過程がある」

 ということだ。
 増幅過程とは、小さな変動を拡大する過程である。比喩的に言えば、トランジスタのアンプ。あるいは、雪崩の拡大。(小さな変動が大きな変動に拡大する。)
 
 こういうことは、経済現象でも起こる。その例を示そう。(以下では、上昇の例を示す。下落の場合は、方向が逆になる。)

 (1) 株価変動

 ある巨大な投資家が「あの株は上がるぞ」と思って買い進める。すると、その株が上昇する。その上昇を見て、素人が釣られて「じゃ、自分も」と買う。(提灯買い。)
 このことで、最初の「上昇」が増幅されて、しばらく続く。「買いが買いを呼ぶ」という状況。

 (2) 景気変動

 景気がいったん良くなると、次のスパイラルが起こる。
   消費拡大 → 生産拡大 → 所得拡大 → 消費拡大 → …… 

 こうして、「景気拡大が景気拡大を呼ぶ」という形で、景気拡大がしばらく続く。これは「インフレスパイラル」と呼ばれる。(その逆が「デフレスパイラル」。)
 このようなスパイラルが起こるのは、マクロ経済学の基本である。
( ※ 本項ではその説明をしない。わからない人はマクロ経済学を勉強してほしい。 → 経済学の教科書

 以上の (1)(2) からわかるように、景気変動や株価変動のような経済現象には、「増幅過程」がある。つまり、「小さな変動が大きな変動をもたらす」という過程が。
 このことは重要だ。

 ──

 「増幅過程」があると、同じ傾向がしばらく続くことになる。景気変動でも株価変動でも、「上がれば上がる」というふうになる。そして、そのことは、気温変動についても成立する。
 では、気温変動では、「増幅過程」の理由は何か? 

 ここから先は推測になるが、最も有力な候補は「炭酸ガス」だ。次のように。
   気温上昇 → 炭酸ガスの放出増加 → さらに気温上昇

   ( ※ 気温下落の場合は、その逆の増幅過程。)

 ここで注意。ここではまさしく、炭酸ガスは地球温暖化の理由となっている。ただし、次の二つの点で、従来の説とは異なる。
  ・ 放出される炭酸ガスは、海中の炭酸ガスである。
  ・ 炭酸ガスは、増幅過程に影響するだけだ。


 第1に、
放出される炭酸ガスは、海中の炭酸ガスである。つまり、人為的な炭酸ガスではない。人為的な炭酸ガスよりも圧倒的に多くの量が、海中から放出される。それが気温に影響する。(人為的な炭酸ガスの変動は、ずっと小規模なので、とりあえずは無視してもいい。)

 第2に、
炭酸ガスは、増幅過程に影響するだけだ。つまり、地球温暖化の原因というほどではない。ここでは、
  「原因 → 結果」
 というような一方的な関係があるのではなく、
 「 原因 → 結果 → 原因 → …… 」
 というような無限循環的なスパイラル過程がある。そのスパイラル過程を経ていくうちに、少しずつ上昇が起こる。
( 気温上昇 → 炭酸ガス増加 → 気温上昇 → 炭酸ガス増加 → ……)

 こうして、「気温変動には増幅過程がある」ということで、「一定の傾向がしばらく続く」ということが説明された。
 そのことは、ただのランダムなどでは説明できないことだ。
( ※ ランダムウォークでも、1/f 揺らぎでも、このようなことは説明できない。)

 ──

 ただし、注意。「増幅過程」は大事だが、それは「永遠の拡大」を意味しない。いつかは上昇がストップする。さらには、逆転が起こる。なぜか?
 次の二つの理由が考えられる。

 (A)息切れ

 人間であれ自動車であれ、走りながら速度を上げることは可能だが、「永遠の上昇」は起こらない。いつかは頭打ちになるし、やがては逆に速度低下が起こる。なぜか? 
 人間なら、走っていてスパートしても、いつか「息切れ」が起こる。自動車なら、急加速しても、いつか「ガス欠」が起こる。こういう「息切れ」や「ガス欠」が起こる。それはつまり、「上昇のエネルギーが切れてしまう」ということだ。

 経済現象でも、同じことが言える。
  ・ 株価上昇 …… 株式市場に投入する資金が種切れになる。
  ・ 景気上昇 …… 生産活動に投入する人員や資金が種切れになる。

 これらの理由により、「永遠の上昇」はありえない。「株価が無限に上昇すること」はありえないし、「経済規模が無限に上昇すること」もありえない。いずれにせよ、何らかの制約ゆえに、やがては頭打ちになる。下手をすれば、下落する。

 では、気温変動では? 同様に、次のことがありそうだ。
  ・ 気温上昇 …… 海中から蒸発する炭酸ガスが種切れになる。

 気温が上昇すると、海面の炭酸ガスが放出される。残りの海面では、炭酸ガスがなくなるが、海水の上下循環により、新たな炭酸ガスが補給されるので、しばらくは次々と炭酸ガスが放出される。しかし、数年か数十年かすると、炭酸ガスの補給も種切れ(息切れ・ガス欠)になる。なるほど、深海底には炭酸ガスがたくさん溶けているが、深海底の水が表層にまで達することはあまりない。こうして、表層の炭酸ガスが種切れになり、炭酸ガスの補給がだんだん少なくなっていく。
( ※ ここでは「減殺効果」がある。その一方で、上述の「増幅効果」もある。双方が絡み合って、複雑な変動量になるだろう。)

 (B)1/f 揺らぎ

 すぐ前の (A)では、種切れ(息切れ・ガス欠)による「頭打ち」を説明した。
 しかし、現実には、頭打ち(上昇がストップすること)だけでなく、「下落」も起こる。では、なぜ「下落」が起こるのか? 
 ここで、私の仮説を出そう。次のことだ。
 「外部から 1/f 揺らぎの変動が介入する」

 
 なお、「 1/f 揺らぎ」とは、次のようなものだ。
 「小さな変動は頻繁に起こるが、大きな変動はたまに起こるだけ」

 具体的な例で言うと、水の波や、風の変動がある。たいていは小刻みなバラバラな変動があるだけだが、ときどき大きな低周波が寄せてくる。
 たとえば、海辺に寄せる波を見ると、ときどき高い波が寄せてくる。
 また、たとえば風では、ときどき「ふわっ」というゆるやかな低周波の風が大きな規模で寄せてくる。
 これが 1/f 揺らぎだ。そして、これが、「増幅過程に(頭打ちだけでなく)逆転をもたらすもの」と想定される。つまり、普段は小刻みな小さな変動があるだけだが、ときどき突発的に大きな変動が生じるわけだ。
(あくまで仮説であるが。)

 ──

 このことを経済に当てはめてみよう。

 例1。バブル破裂。

 日本ではかつて、バブル破裂という巨大な変動が突発的に生じた。そのことで、上昇のスパイラルが逆転した。そのときまで、政府は金利上昇その他の引き締め策を続けていたが、何ら効果はなかった。ただし、ある段階を越えた規模の引き締め策を実施すると、そのときちょうど、上昇が頭打ち(ガス切れ)になっていたということもあって、その政策がスパイラルを逆転させることになった。かくて、インフレスパイラルから、デフレスパイラルへという、方向の転換が起こった。

 例2。朝鮮特需。

 戦後間もないころの日本は、ドッジラインなどの緊縮政策で不況が続いていた。ところが突発的に、朝鮮戦争が起こって、朝鮮特需という巨大なプラスの力が生じた。そのことで、デフレスパイラルから、インフレスパイラルへという、方向の転換が起こった。いったん上昇傾向になると、この上昇傾向は、朝鮮特需が終わった後も、しばらく続いた。

 以上は経済における例だ。それと同様のことが気象においても起こった、と推察される。しばらく小刻みな変動が起こったあとで、突然、スパイラルの方向を転換するほどの大きな変動をもたらす力が生じた、というわけだ。

 ──

 気象と経済は似ている。そこには同じ原理があるはずだ。次の二つが。
  ・ 増幅過程
  ・ 1/f 揺らぎ

 これが私の仮説だ。この仮説により、気温の非周期モデルが提出されたことになる。
 
 ────────────


 [ 余談 ]
 本項で提出した「非周期モデル」は、名称としては、独自性がなくて、わかりにくい。そこで、わかりやすい名称として、「酔っ払いモデル」という名前を与えたい。
 なぜか? 経済変動や気温変動は、酔っ払いの歩き方に似ているからだ。次の点で。
  ・ 次の地点は、現在の地点を引き継ぐ。
  ・ 次の進行方向は、現在の進行方向を引き継ぐ。
  ・ ときどき小刻みに方向を転じる。(千鳥足)
  ・ 道からはずれそうになると、突然、気がついて、方向を転じる。

 これは酔っ払いの歩き方だ。「非周期モデル」の変動と、同じではないが、よく似ている。そこで、比喩的な意味合いで、「酔っ払いモデル」という名前を与えたい。
(ま、名前の話だから、どうでもいいとは言えるが。それでも、こういうモデルを導入することは、とても大切だ。従来のような「因果関係」または「関数関係」のモデルを使う限りは、過去の歴史をうまく説明できないからだ。)



 ※ 以下は、発展的な話。理系の細かな話。特に読まなくてもよい。

 [ 付記1 ]
 残る問題は、次のことだ。
 「 1/f 揺らぎを与える外部の力とは、何か?」

 これについては、いくつかの仮説が考えられる。(これらは通常は、気象変動の「原因」としての仮説とされるが。)

 (1) 海流説

 「海流の変動」や「海面温の変動」が「大気の状態」に影響する、という仮説。その例として、「エルニーニョによる気象の変動」という仮説がある。
 ただし、この仮説だと、「海流の変動」や「海面温の変動」がをもたらす原因がわからない。どうどうめぐり。
 しかも、最近の研究だと、因果関係は逆らしい。「海流の変動」や「海面温の変動」が「大気の状態」に影響するのではなく、逆に、「大気の状態」が「海流の変動」や「海面温の変動」に影響するらしい。つまり、(大気における)偏西風の強弱の変動が、海面温の変動に影響しているらしい。
 この仮説には、別の難点もある。この仮説は、局地的な変動の理由にはなるが、地球全体の気温変動の理由にはならないのだ。地球全体の気温の変動をもたらすには、総エネルギーの変動が必要だが、この仮説ではそれを示すことができない。

 (2) 地球説

 地球の内部構造の変動が理由だ、という仮説。具体的には、内部マントルの変動や、地軸の変動だ。
 たとえば、マントルの変動が原因となって、噴火が起こり、炭酸ガスの噴出や火山灰の噴出が生じて、気温に影響する、というふうに。
 ただし、地球の内部構造の変動は、非常に長期的なものだ。数千年か数万年のレベルでは考えられるが、数十年ぐらいの期間では地球の内部構造の変動ではありえない。
 特に、数年ぐらいで高周波が観測される 1/f揺らぎ の原因にもなりえない。

 (3)太陽黒点説

 地球の内部に理由がないとすれば、地球の外部に理由があるはずだ。しかも、地球全体に影響するほどの力をもつものが。
 その視点から見ると、原因となるのはただ一つ、太陽だけである。太陽が地球に降りそそぐ太陽エネルギーは、人類が発生させる全エネルギーを圧倒的に上回る。( cf. → シャープの広告による説明
 かくて、
 「太陽の放出するエネルギーの変動が、地球全体に影響する」

 というふうになる。これは、比喩的に言えば、
 「太陽がくしゃみをすると、地球が風邪を引く」

 というようなものだ。
     ( → 太陽と地球の大きさの比較
     ( → プロミネンスの大きさ

 ただ、ここで注意するべきことがある。「太陽の変動」というのは、なかなか目に見える形では、はっきりとは現れないのだ。というのは、太陽はいつも同じ光球であるからだ。地球や火星のように、外から見たときの姿が周期的に変動するわけでもなく、いつも同様である。だから、何が起こっているのか、わかりにくい。
 ただし、例外的に、「太陽の黒点」だけは明白に観測できる。そこで、「太陽の黒点が変動すると、地球の環境も変動する」という仮説が生じる。
 とはいえ、黒点そのものが地球に影響するわけではない。むしろ、次のような関係がある。

   太陽の変動 → 地球の変動
      ↓
   黒点の変動


 「太陽の変動」が、「地球の変動」と「黒点の変動」の双方をもたらす。ただし、「太陽の変動」そのものは観測されにくく、「黒点の変動」は観測されやすい。そこで、
 「太陽の黒点が変動すると、地球の環境も変動する」
 という仮説が生じるわけだ。これが「太陽黒点説」だ。ここでは、名称上では「黒点が原因だ」というふうに示されているが、本当は何が原因であるかを、間違えずに理解しておこう。
 ともあれ、この説では、地球に変動をもたらす原因は「太陽の変動」である。
 そして、それは、1/f 揺らぎがあって当然なのだ。だから、そこから地球の気温に 1/f 揺らぎがあっても当然だ。この説は非常に有力であり、私としても当面はこれを支持したい。

( ※ なお、太陽黒点説については、「地球温暖化 太陽黒点」 で検索するといいだろう。)

 [ 付記2 ]
 1/f 揺らぎは、なぜ起こるか? 
 これは、問題ではあるが、本項とは直接の関係はない。はっきりしたことはわからないのだが、私のヤマカンで見当をつけると、次のことが理由だろう。
 「ランダムな周期の合成としての結果」

 たとえば、海の波なら、通常はほぼ一定の周期をもつのだが、そこに風の影響などによるランダムさが生じる。そのランダムさが、あちこちで合成されて、「うなり」をもたらす。「うなり」は、粘性とあいまって、大きな低周波となる。
 こういうふうにして、あちこちのランダムさが、1/f 揺らぎという結果に結びつく。
 それは、単純なランダムさ(ホワイトノイズ)に比べると、次の点で異なる。
  ・ ホワイトノイズでは、周波数と強弱の双方がともにランダムである。
  ・ 1/f 揺らぎでは、強弱は基本的に一定なのだが、周波数の揺らぎが、
   強弱の揺らぎに形を変える。(うなりを通じて。)


 ホワイトノイズでは、周波数と強弱という二つの次元にランダムさがある。
 1/f 揺らぎでは、周波数という一つの次元だけにランダムさがあった。ただし、そのランダムさが、強弱という別の次元にランダムさに形を変えて生じる。(うなりを通じて。)
 ここで、うなりの発生の仕方が 1/f の規則で生じる。高周波の揺らぎでは、小さなうなりが高頻度で発生する。低周波の揺らぎでは、大きなうなりが低頻度で発生する。
 こうして 1/f 揺らぎが生じるわけだ。(私の仮説。)
( ※ なお、この仮説では、1/f 揺らぎ をもたらす理由は、「粘性」である。最初に生じた1次元のランダムさが、粘性のある物体を通じるうちに、伝播の過程でうなりを生じる。うなりが現実の波に転じるためには、「粘性」つまり「摩擦」が必要だ。)
( ※ ここで述べた 1/f 揺らぎ の仮説は、ただの思いつきである。はっきりとした科学的根拠を示せるわけではない。あくまで余談である。間違っている可能性もある。)
( → 1/f 揺らぎ についての参考文献 (PDF)

 [ 付記3 ]
 本項では、「カオス」や「フラクタル」には言及しなかった。全然関係ないモデルだし、あまりにも見当違いすぎるからだ。

( ※ カオスは「非周期」という点では似ているが、決定論的である。そこには、見かけ上のランダムさはあるが、真のランダムさはない。したがって過去の気温変動をうまく示せるようなカオス・モデルなどはありえないし、あったとしても「偶然の一致」に過ぎず、無意味である。)
( ※ 私の個人的を言えば、「カオス」という概念は、「真実の理解」のためには何の役にも立たない。単にシミュレーションをするときに、計算の節約のために役立つだけだ。道具にはなるが、本質にはならない。気象の理解のためなら、カタストロフィ理論の方がはるかに役立つだろう。)
 


  【 追記 】
 「増幅過程」に影響するのは、炭酸ガスの増減である。これは、海洋の炭酸ガスが気温につれて増減する、ということを基本にしている。
 これについては、「海洋の炭酸ガスは、人類の排出する炭酸ガスよりも圧倒的に多い」ということが前提となっている。この前提は、前述の箇所では数値で示さなかったが、新たに数値で示しておこう。
 炭酸ガスの排出量には、「ギガトン/年」という単位を用いる。通常は単に「ギガトン」と示す。(年間排出量)
  ・ 人類の排出する炭酸ガス ……   6ギガトン
  ・ 海洋に含まれる炭酸ガス …… 4000ギガトン
  ・ 海洋が吸収する炭酸ガス …… 105ギガトン
  ・ 海洋が放出する炭酸ガス …… 102ギガトン

 最後の二つは、平均値だが、この値が(気温につれて)年ごとに大きく変動するのだろう、というのが本項のモデルの意味することだ。

 なお、光合成によって大気から生物圏に吸収される炭素量は、年間 110ギガトンだという。この値も、人類の排出する量である 6ギガトンよりも、ずっと多い。森林の砂漠化などによる影響は、かなりあるだろう。

  ※ 以上の数値を書くにあたっては、下記サイトを参考にした。
  → http://www.asyura.com/0304/dispute10/msg/675.html
  → http://blogs.yahoo.co.jp/babui5050/34496817.html
  → http://oshiete1.goo.ne.jp/qa3477381.html
  → http://www.zencom-inc.co.jp/sat/2002evnet/pdf/sat_06_ishii.pdf(PDF)

 
posted by 管理人 at 23:06 | Comment(2) | エネルギー・環境1
この記事へのコメント
 最後に 【 追記 】 を加筆しました。
 タイムスタンプは 下記  ↓
Posted by 管理人 at 2008年07月20日 16:10
このブログ初めて開いて、自分ではよくわからないなりに、興味を持っていた事項が、次から次へと、わかりやすい説明で、頭のカスミがどんどん消えていくみたい。これからもよろしく。温暖化の話も全く賛成です。ハドロン加速器の実験結果についての解説も気になるところです。
Posted by 小柳敏郎 at 2008年09月18日 11:32
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