総選挙の中、インドの未来を映画「スラムドッグ$ミリオネア」原作者に直撃しました。
インドでは16日から総選挙が始まりました。経済大国への道を歩む一方で、貧富の差が拡大するインドの未来はどうなるのか。アカデミー賞を受賞した映画「スラムドッグ$ミリオネア」の原作者を直撃しました。
反政府グループによる投票所への相次ぐ襲撃で、少なくとも18人の死者が出るなど、インドの総選挙は混乱の中で始まった。
有権者7億人以上、1カ月にもわたる巨大な選挙では、任期5年の543議席を争う。
人口11億7,000万人を擁し、急成長を続けるインドの未来を左右する重要な選挙となっている。
選挙は、シン首相(76)率いる与党・国民会議派と、最大野党・インド人民党の二大政党の攻防。
シン首相は「アドバニ氏はイスラム教モスクの破壊活動以外に何もやってない」と述べた。
一方、インド人民党のアドバニ元副首相(81)は「誠実な政府、発展、安心を約束します」、「インド人民党は国で一番の党だ」と述べた。
しかし、両党とも単独での過半数獲得は困難な情勢で、第3の勢力との連立が注目される。
そんな中、選挙の鍵を握るのが、有権者のおよそ70%を占める貧困層。
2大政党は、雇用の保障やコメ、小麦の購入優遇措置などのマニフェストで、貧困層を取り込もうとしている。
村人は「電気、水道、病院が必要だ。だが、ここには電気も、水も、道路もない」と話した。
注目が集まるインドの貧困層。
そうした中、インドのスラムの子どもたちが主人公の「スラムドッグ$ミリオネア」が、2009年のアカデミー賞で作品賞をはじめ、8冠を達成した。
インドの外交官として長年活躍し続ける、映画原作者、ヴィカス・スワラップ氏が描いた「本当のインド」に、滝川クリステルキャスターが迫った。
滝川キャスターが「本を作るにあたってかなりリサーチをされたと聞きました。インド貧困地域における暴力、売春、人身売買をどう感じていますか?」と質問すると、スワラップ氏は「家族に売春婦として売られる少女の調査もした。そんな中で、何を考えているのか、わたしの想像の域を超えていた。つらい気持ちだった。書いているわたしにとって、つらいものだった」と語った。
急成長の裏側でかき消されるスラムの子どもたちの声。
スワラップ氏は、彼らに声を与えたかったという。
さらに、「スラムの子どもたちが主役のこの物語を書こうと思ったきっかけは何ですか?」との滝川キャスターの問いに、スワラップ氏は「知識は教育を受けたエリート層だけが持つものではないことを示したかった。スラムは希望のない絶望的な場所ではない。最も厳しい状況でも乗り越え、勝者になれる。トンネルの先には光がある、貧困の先にも希望がある」と話した。
発展を続けるインドが抱える大きな闇。
しかしそこには、未知なる圧倒的なパワーが存在する。
スワラップ氏は「インドは簡単に理解できず、複雑な国で、一般論で語れない。映画と本は、知りたい気持ちを満たしている」と語った。
国際社会におけるインドの存在感は、日に日に高まるばかりだが、大国になれるかの答えは貧困層が知っている。
貧困問題は、原作者自身の想像を超えていたという。
世界経済の中では、ロシアや中国と並んで新興国として注目されているインドだが、国の経済力と国民の豊かさが、必ずしも結びつかない現実は、他山の石とすべきものかもしれない。
(04/18 02:57)