Numeri

ipato@mcn.ne.jp


 2005-1,2,3,4,5,6,7月

7/30 モンゴルから愛3

7/28 モンゴルから愛2

7/24 モンゴルから愛

7/20 オナッセイ大賞

7/14 世界へ

7/7 ファーストブラ

6/23 LADY NAVIGATION 

6/17 楽しい科学実験室2-爽健美茶のフロンティア-

6/7 強く儚い企業戦士

6/1 オナッセイ大賞

5/24 BAD COMMUNICATION

5/18 最狂親父列伝-誘拐編-

5/11 女の子の不思議

5/2 ゴールデンウィーク

4/21 もしもしの向こう側

4/14 先輩後輩

4/7 狂い咲き

4/4 犯人は誰だ!

3/29 体操バカ

3/25 過去ログサルベージ  

3/17 ビックリした

3/11 ボツ日記

3/8 ヌメリナイト

2/28 魔王

2/16 かまいたちの夜

2/10 ヌメリナイト

2/5 不意の電話

2/1 業務連絡

1/28 ぬめぱと変態レィディオ-pato VS 24人の非モテスペシャル-

1/22 アポストロフィー

1/18 ヒッチハイク

1/17    

1/13言いたいことも言えないこんな世の中じゃ

1/7 ヌメリニューアル

1/4 親殺し子殺し


2004

9,10,11,12月の日記はこちら

8月の日記はこちら

7月の日記はこちら

6月の日記はこちら

5月の日記はこちら

4月の日記はこちら

3月の日記はこちら

2月の日記はこちら

1月の日記はこちら

2003

12月の日記はこちら

11月の日記はこちら

10月の日記はこちら

9月の日記はこちら

8月の日記はこちら

7月の日記はこちら

6月の日記はこちら

5月の日記はこちら

4月の日記はこちら

3月の日記はこちら

2月の日記はこちら

1月の日記はこちら

2002

12月の日記はこちら

11月の日記はこちら

10月の日記はこちら

9月の日記はこちら

8月の日記はこちら

7月の日記はこちら

6月の日記はこちら

5月の日記はこちら

4月の日記はこちら

3月の日記はこちら

2月の日記はこちら

1月の日記はこちら

2001

12月の日記はこちら

10-11月の出来事はこちら

過去の出来事

/
7/30 モンゴルから愛3

もう砂は見たくない。ということで今日は水に関する日記をサルベージ。次回の更新は日本から、できるといいなあ。

---------------

ダメ人間待合所(2002/7/5からサルベージ)

えーっとですね、昨日水道を止められたって話をしたじゃないですか。水道代を滞納しすぎて止められたって話をしたではないですか。今日は、さすがにそれは困るので水道局まで水道代を支払いに行ったのですよ。わざわざ午前中の仕事を休んでまでクソ遠い水道局まで支払いに行ったんです。

でもね、僕ってば水道代の請求書とか全然持ってなくて、一体いくら滞納してるかも分からない状態だったのですよ。さすがにそれはどうかな?と思ったのですが、水道局に行けばなんとかなると思い、意気込んで出発しました。

いやね、僕にとって電気やガスを止められるよりも水道を止められるって屈辱的なんですよ。ものすごい辱めを受けた気分になるんですよ。

ほら、何度か言ってるようにウチの実家のオヤジって水道屋なんですよ。なんか上下水道の工事とかをする会社で、水道の蛇口とかを売ってるわけではないんですけど、業界では「水道屋」って言うみたいです。

その水道のプロたる水道屋、水道工事会社の社長のご子息が、料金滞納で水道を止められるなんて・・・。恥ずかしくて親父に会わせる顔が御座いません。例えるなら警察署長の息子が飲酒運転で人を轢き殺して逮捕されるとか、悪徳金融業者が借金苦で自己破産するとか、そういった気まずさだと思っていただきたい。

もうオヤジに申し訳なくて申し訳なくて。なんか車を運転しながら涙が出てきましたよ。親父・・・ごめんよ・・・アンタの息子はあんたの愛する水道を止められたんだよ、ごめんな。涙で運転できないほどでした。

さて、そんな涙のドライビンも終わり、いよいよ水道局に到着です。そういえば何年かに一度、水道を止められるたびに水道局を訪れているような気がします。なんだか少し懐かしいような気にすらなります。

ああ・・・前に来たときはここのツツジの花が咲いてたな・・・

などと少しノスタルジーな気分に。なんか間違ってる。

そして、暖かな日差しを浴びつつ水道局のドアをくぐります。そこには予想だにしない光景が広がっていました。

いやね、なんか冴えない顔したバカどもが20人も30人も待合室にいるんですわ。しかも、みんな黄色い紙を片手に持ち浮かない顔でソファにうなだれてるんです。

結局アレなんですよ。水道局の連中も、いつも料金未納者の家に出向いて水道を止めてるわけではなく、一気にやるみたいなんです。時々思い出したかのように、一気にその辺一帯の料金未納者の水道を止めていくみたい。

当然、止めた次の日は、止められたバカどもで水道局はごった返す。こういった寸法なわけです。どいつもこいつも突然家に帰ったら水道が止まってて驚いたことでしょう、鬱になったことでしょう。驚きのあまり急いで水道局に駆け込んできたんだろうな。

どいつもこいつも水道代を滞納しそうな顔してやがる。そうだ、ココは水道を止められたダメ人間の集うダメ人間待合室だ。まったく、どいつもこいつも覇気のない顔しやがって。ダメ人間どもが!片腹痛いわ!

などと思うんですけど、そお5秒後には僕も彼らと同じ水道を止められたダメ人間ということに気づいて少し鬱になってました。ガックリと、まるで手術室に入った恋人の安否を気遣う男のようにソファにうなだれてた。

でもなんか、ダメ人間達の面々を見てると面白いんですよね。明らかにルーズそうなオッサンとか、金持ってなさそうな学生とか。頭にカーラー巻いたまんまのオバチャンとか。人間色々で面白いなって思ってました。

みんな、普通に社会生活を過ごしてるはずなのに、水道を止められたダメ人間といういわば選ばれた立場にあり、同じ待合室で同じ空気を吸っている。人の世は儚いもの、なんていう無常な考えがありますが、なかなかどうして、人と人の出会いってこういう偶然から起こり得るから面白いんだなって思いました。ここは社会の小さな小さな縮図なんだなって。そうとうダメなヤツを抽出してきた縮図だろうけど。

で、窓口ではダメ人間どもが次々と水道料金を支払っていきます。

要領よく、ひょいひょいと払って帰っていく人、こういう人はダメ人間の中でも比較的上の立場で、一般人に近いと言えます。

真の、最下層のダメ人間は違う。なんか窓口でも怒られてるもんな。

「あんた!お金持ってこないとダメだよ!」

物凄い大声で怒る職員、彼も忙しさのあまり興奮しているに違いない。

「でも、1200円しかなくて、ちょっとでも払おうかと・・・」

貧乏そうな学生は弱々しく1200円を差し出して反論します

「一か月分にも満たないよ!ダメダメ!」

ほんとにダメな人ってのは、こういうダメ人間が集う場所でもぶっちぎりにダメなわけで、なんていうか可哀相になってくるんですけど、仕方ないんですよね。他にも

「あんた!2万円も未払いでどうするつもりよ!」

なんて大声で怒られてるおっさんもいます。二万円も滞納するのもどうかと思いますが、そこまで水道を止めない水道局もどうかと思うんですがね。なんか自分より年下であろう職員に怒鳴られるオッサンが不憫でしょうがなかった。また人のよさそうな顔してるんだわこのオッサンが。

でも、やっぱ世の中って弱肉強食ではないですか。冷たいようですけど、いくら貧乏学生やオッサンが可哀相でもどうしようもない。人を押しのけてでも這い上がっていく社会において、こういう人のよさそうなダメ人間ってのはダメだと思う。僕には彼らを救ってあげることなんてできないし。しようとも思わない。

どんなに社会の底辺ランクにあっても、やっぱ階級ってのはそのランク内で存在してて、ダメ人間の集まる水道料金未払い者待合室の中でもひときわダメな人っている、そういう社会なんですよね。

僕は救ってあげられないけど、応援してるよ。ガンバレ、学生。ガンバレ、オッサン。ダメ人間の中のダメ人間でも、頑張ればなんとかなるよ、希望を持って。

そして、いよいよ、僕が支払う番に。

「すいません、請求書とかなくって・・・いくらかわからないんですけど・・・・」

「あんた!請求書も持たずに来たの!何考えてるの!」

いきなり怒られました。

どうやら僕もダメ人間の中でも最下層に位置する人間のようです。そしてブツクサと職員は請求料金をコンピューターで調べます。

・・・・・

請求金額 36480円

ぎゃーーーーーーす!!!!なんですか、なんですかこれは。こんな水道料金ありえない。あっていいはずがない。何かの間違いだ。と思うんですけど、間違いでない様子。なんか僕、三年分ぐらい滞納してたぐらいです。一年ぐらいだと思ってたのに・・・。あり得ないよな36000円ってPS2買えるって、デリヘル呼べるって。

「アンタ!わたしゃここまで滞納した人はじめてみたよ!!いい加減にしなさいよ!」

ムチャクチャ怒られました。

どうやら僕、ダメ人間集まる水道料金滞納者の中でも、ブッチギリで最下層のダメ人間のようです。

「すいません・・・持ち合わせないので・・・銀行にいって下ろしてきます・・・」

一万ぐらいだろうと思ってた僕、三万いくらも払えません。泣く泣く水道局を出て銀行にいく羽目に・・・。

水道局を出る際に、先ほどの大学生とオッサンとすれ違ったのですが、ニヤリと優越感に浸った笑いを見せてくれました。やっぱぶっちぎりの最下層。やってらんない。ガンバレ!俺。

日本人は水と安全と平和は無料だと思ってる。などとよく言われたりします。けれどもそれは間違いでありまして、安全と平和はどうか知りませんが、水は確実に無料ではありません。PS2が買えるぐらいします。デリヘルが呼べるぐらい高価です。

来月からキチンと払います。

-----------------

さて、日本に帰ったら真面目に更新します。僕は砂漠で悟りを開いた。


7/28 モンゴルから愛2

さばく、飽きた


7/24 モンゴルから愛

モンゴルからこんばんは!皆さんはお元気でしょうか。僕はと言いますとあいも変わらずモンゴルで砂漠を放浪しておりまして、日本から持ってきたiPod miniが砂に飲み込まれて砂塵と化したりして涙したのですが、相変わらず元気です。すげー日焼けした。

こちらの天候ってのは物凄いものがありまして、ゴビ砂漠なんかは言うまでもなく砂漠ですから障害物が何もないんですよね。ですから天候が変わる時は一瞬。雨雲がスーッとやってきて爆撃のように、背骨が折れそうな雨滴を落としていきやがるんですよ。

あと、次の町まで車で3日とか、時間と距離の単位が訳が分からない事になっているので、夜になるとテントで寝てるんですが、正体不明の動物が鳴いていて怖いです。X JAPANの人みたいな鳴き声。下手したらこの動物に亡き者にされるのかもしれません。

そんなこんなで、ぬめり本は売れ残ってるわけですが、これを全部売り切るべく、砂漠で生息している言葉が通じない原住民に売りつけてきます。

そんなこんなで、ぶっちゃけ、キンキンに冷えたコーラが飲みたいのですが、それは叶わぬ夢、ということでこういった旅先での長期不在の場合におなじみの過去ログサルベージでもしたいと思います。

あまりに古すぎて、クソすぎて今や読むことのできない古のNumeriログをモロンとサルベージ、コピペしてくるだけという豪胆にもほどがある技です 。ということで、モンゴルに思いを馳せながらどうぞ!

-----------------------

TRICK(2003/1/10からサルベージ)

作者急病のため、手抜き日記でお楽しみください。

トリック絵というか騙し絵というか、少しばかりトンチが利いた絵があります。有名なところでは下に示すような絵があります。皆さんも何処かで見たことがあるかと思います。

これは、意識を白抜きの部分を中心にして見ますと、

のように杯に見えます。ええ、見えます。しかし、意識を黒い部分に合わせて見ますとこのように、

まるで向かい合う二人の人間のように見えるわけです。そう、今にでも接吻をしそうなラバーズにも見えます。もしくは語り合う人間のように。

これは人間が視覚情報を取得した際に、その絵に向ける意識の中心から無意識の内に脳内補完をしてしまうことに起因するのです。その意識が違えば補完されるイメージも違い、見え方も違ってくるのです。

このように、たった一枚の絵でも二通りの見方ができるわけです。この絵はあまりに有名すぎるため、目の錯覚やらちょっとした小ねた等に使われることがしばしあります。ちょっとした心理テストとかに使われることもありません。

あまりに有名すぎるこの絵を見せられた場合。ほとんどの人が上記のように「杯に見える」「向かい合う人に見える」と答えるかと思います。現に、我が職場で同僚どもに聞いてみたのですが、全員が二つのうちどちらかの回答でした。比率的には「向かい合う人」のほうが若干多かったです。

しかし、そんな絵を漠然と眺めていて気がついたのです。僕は気がついてしまったのです。ああ、なんということだろうか。この絵は「杯」でも「向かい合う人」なんて甘っちょろいものではないのです。もっと単純で、それでいて僕らの深層心理に深く訴えかけるものがこの絵には描かれているのです。訴えかけられる部分が深層心理ゆえ、今まで誰も気がつかなかったのだと思います。

さあ、それでは世紀の新発見を紹介しましょう。

あまりに有名すぎる

この絵。これは「杯」でも「人の顔」でもないのです。この絵で描かれている新のメッセージとは・・・・

 

白濁液を排出する男性器

これだったのです。

我々人間の深層心理に深く訴えかけるもの、それは「死」と「性」というキーワードです。この二つは無意識に我々の心に焼きつくようにできているのです。女性用の化粧品なんかは、男性器を模した形をしているものが多いですしね。知らないうちに男性器のインスピレーションを我々は与えられているのです。この絵かて例外ではないと言うことです。

まあ、それがどうしたって話題なのですが。

今度から、この絵は何の絵に見える?なんてベタな質問をされましたら

「杯」「向かい合う人」「白濁液を排出する男性器」と答えましょう。

明らかに異常な人間だと診断されますから。

------------------------------

モンゴルの空は、こんな白濁液とかいってる日記とは対照的にすげー綺麗ですよ!ではまた!生きてたら!


7/20 オナッセイ大賞

ただオナニーが気楽に語られる、そんな世界にしたいだけだった。服の趣味を話すかのようにオナニーの趣味を語り、家族でレストランに行った報告のように昨晩のオナニーを報告する。一流の雑誌モデルがインタビューで「最近は剣山オナニーにハマっちゃって」と屈託のない笑顔で答えると剣山オナニーが大ブレイクする、そんな世界にしたかった。

オナニーが恥ずかしい秘め事だなんてのは僕らだけの何の根拠もない風習で、一歩間違えれば別に何でもないことだったかもしれない。射精飛ばしが陸上の競技になってたかもしれないし、オナニー早抜きが栄えあるトラック競技だったかもしれない。

しかしながら、残念なことに現状は「オナニーは恥ずかしい事」という曲がった思想の一点張り。オナニーの瞬間を目撃されようものなら自殺をほのめかす事も辞さない構え。誰もがやってる事なのに人の行動の中で最低ランクに位置されるといっても良い始末。

そこで思ったわけですよ。このオナニーに対する認識を変えるため、微力ながら何かをしなくてはならない。何かをするべきだ、と。

ちょっと曖昧なんですが、JT(日本たばこ産業)では確か「タバコのある風景エッセイ募集」というのをやってたように記憶しています。肺がんを誘発し、世間的にも忌み嫌われる対象であるタバコの認識を少しでも良化させよう、そういう狙いがあってのエッセイ募集だったように思えます。タバコにまつわる美しい話とか発表されてドバーって感動しようものならタバコの地位も向上しますからね。

そこでまあ、じゃあこっちもオナニーの地位を向上させようってんで募集したのが6月1日の日記、オナッセイ大賞募集になるのですが、募集したところ来るわ来るわ、ちょっと頭がイカレポンチなサムライどもから狂ったように応募作品が届くんですわ。

応募総数151通!

中には頼んでもないのにオナニー川柳やらオナニー替え歌などを送ってくる不届きな輩もいましたが、どれもこれも長文の素敵なオナニーエッセイが届いたわけなんです。みんな頭が茹ってるとしか思えない。

ということで、これらを厳正なる審査にかけ、栄えあるノミネート作品を決定、ノミネート作品の中から皆さんの投票で大賞を決定したいと思います。ということで、まずはノミネート作品を決めた予備審査の詳細から。

まず、151通の応募作品の中から趣旨にそぐわない作品を断腸の思いで削除、91通に絞り込みました。予備審査の審査員はpato(Numeri)、岩倉さん(いちご帝国)、ユカリさん(ココロノコエ)の三名。これら三名が完全無記名の91作品を読んでノミネート作品を決定しました。

早速ノミネート作品のほうを読んでもらいたいのですが、その前に今回のオナッセイ大賞募集に絡んでとある方から特別寄稿が寄せられております。とりあえず、まずはそちらの方を読んでみましょう。

『オナニーと私』

私とオナニーが出会ったのは、今から16年前…私が小学3年生の時です。

きっかけは父の部屋の本棚にあったHな漫画本…。初めてその本をみた時は、描かれている行為の意味をあまり理解していませんでした。そこには淫乱な奥様が痴漢にあったり、レイプされたり…というような内容が描かれていて、よく分からないのに、でもなんかドキドキして下半身がキュンとなって…。

その本を何度か見ているうちに(このおもらしみたいなのなんだろう…?)(感じるってなんだろう…?)(クリトリスってなんだろう…?)と疑問に感じるようになり、その頃からHな事への好奇心が旺盛だった私は、ついついお風呂の時に手鏡であそこを見ながら(ここがクリトリスかな?)(ここに入れてるのかな?)と、みようみまねでいじってみるようになりました。それが私のオナニーライフの始まりです。

それから間もなくイクということがわかり、そしてはまり…。はじめのうちはペンを使ったり、筆を使ったり…そのうちHな想像だけでイケるようになり…。

ちなみに今はもっぱらローターを使ってます。たまにイッタと同時に寝ちゃって、電源入れっぱなしで朝になったりしてます。ハっと起きると自分の太腿の間でブルブルブルブル震えているローターを発見して、とても寂しくなったりします…。

ところで、オナニーの回数なのですが、私はピーク時(?)は1日5回位してました。最近は2日に1回位ですが、時間さえあれば何度でもしたい感じです。これってやっぱ多いですか?普通の女の子はどれくらいの頻度でオナニーするのでしょうか?ちょっと気になります。

最後にNumeriの読者のみなさんにお願いがあります。私は最近、いつもオカズに使っている妄想痴漢ネタに飽きてきたので、新たなネタを探索中な今日この頃なんです。もし女の子が興奮するようなオナニーのオカズをご存知でしたら、ぜひ教えてください!

あと、お家にパソコンのない私がどうやって教わればいいのかも教えてください…。(とりあえずpatoさんとか荒井さんに送ってもらえると届く…かも…)

ではみなさん、最後まで読んでくださってありがとうございました。またどこかでお会いしましょう!!(探偵ファイルさんで記事を書くかもしれないので、一番可能性があるのはそこかな?)

笠木忍

なんと!あの元AV女優笠木忍さんからの特別寄稿ですよ!奥さん!笠木忍さんといえば「no make1」が鬼のように名作で、ピンクの体操着(襟のところがピンク)に鬼のように興奮し50回くらいぶっこいたわけなんですが、まさかその笠木忍さん本人からオナニー話が聞けるとは!(スペシャルサンクス!荒井さん

もう死ぬほど興奮したし、僕もチューチュー吸うアイスみたいに死ぬほど怒張して泉ピン子以上にピンコ立ち、チンポビンラディンでブツが犬の尻尾みたいな角度になってるわけで、笠木忍さんがオナッセイ大賞でいいんじゃね?と思うのですが、さすがにそういうわけにはいきません。あくまでも「オナニーにまつわる美しいエッセイ」ですから。ということで、笠木忍さんのオナニー話で興奮したところでノミネート作品の発表行きましょう。

オナッセイ大賞ノミネート作品

ノミネートNo.1 「無題

ノミネートNo.2 「兄貴

ノミネートNo.3 「春のできごと

ノミネートNo.4  「オナニーを忘れて

ノミネートNo.5  「闇夜で雪は

ノミネートNo.6  「オナニーの無い世界で

ノミネートNo.7  「無題

ノミネートNo.8  「涙の精子

ノミネートNo.9  「ハメ次朗

ノミネートNo.10「無題

91作品すべてが審査員が悲鳴を上げるほどの力作ぞろい。残念ながらノミネートに至らなかった作品も面白いものが沢山ありました。ですから残念結果になった人も落ち込まず、また次回挑戦してください。そう、落ち込んでは駄目です。落ち込んでは。落ち込んではダメ、ゼッタイ。

ということで、皆さんにノミネート作品から投票していただくわけですが、異常なる組織票や、よくわけの分からない投票など、そういうのはちょっとやめてください。温かいコメントなど添えていただくとありがたいです。それらをふまえて投票は下のURLから。

http://vote3.ziyu.net/html/onani.html

投票は7/27まで!ドシドシ待ってます!

ちなみに、僕も完全なる無記名でオナッセイを書いて応募したわけですが、実はこれには裏がありまして、「オナニーの地位向上の為にオナッセイ大賞をやる!」と言いつつ、実は自分も無記名で参加、なのに予備審査も通過して投票も圧倒的大差で優勝、そこで「実は僕が書いたのが大賞でしたー」とやって悦に入るという、この企画自体が僕の壮大なオナニーだったわけなんですが、なんと、予選落ちしました。


ショーウィンドウ越しにトランペットに憧れる少年とムショ帰りの黒人とのオナニーにまつわる美談を書いたのですが、審査員様の目には留まりませんでした!だからと言って自分で自分の作品を「予選通過!ノミネート!」とするわけにもいかず、涙しました。

というわけで、第2回オナッセイ大賞もゼッタイに開催しますし、今度は僕も予選通過を狙って頑張ります!企画自体が僕のオナニーだったのに残念と言うか残忍に失敗、もう、笠木忍さんでぶっこいて不貞寝します。


7/14 世界へ

幕末、坂本竜馬は世界を見ていた。江戸時代末期、鎖国政策をとる日本において世界を見据えた考え方は異質だった。それどころか、民衆には日本というくくりで物事を考えることができなかった。藩という小さな単位で全体を認識するのが精一杯だった。藩で一番の美人、藩で一番の秀才、といった具合で、日本一という概念はあまりなかったようだ。って「お〜い竜馬」の第一巻あたりに書いてあった気がする。

そんな時代にあって、あえて海の向こうの外国に思いを馳せていた坂本龍馬。藩という枠も、その上の日本という枠も飛び越えて一気に世界へと意識がいってしまった彼、想像を絶するほど大きな志を持っていたことは容易に読み取れます。

それに比べて現代は大変便利な時代になりました。テレビなどのメディアからは豊富に海外の映像が流れ、数万円払えば飛行機で異国にひとっとび。インターネットなどでは容易に海外とコンタクトを取る事ができます。坂本竜馬の時代に比べたらなんて世界が身近になったことでしょうか。

しかしながら、世界が身近っていってもやってることはお粗末。遠い外国の洪水のニュースを見て「大変だねー」って耳かきしてボンヤリと言うだけだったり、海外旅行してブランド品買い漁るだけだったり、インターネットなのに外国人とのコンタクトを「ノーイングリッシュ!」とか言って極度に避けたり。僕だって名前がpato(ホモ)だから外国人男性とのコンタクトは極度に避けます。「君のお尻キュートだね」なんてヒゲのマッチョ外人に英語で言われたら裸足で逃げ出す。

結局、どんなに便利で合理的な世の中になって世界が身近になろうとも、世界に目が向いてる人は一部の最前線の人だけで、それがビジネスの世界では世界を股にかけるエリートだったり、スポーツの世界ではイチローや松井、YAWARA妊婦だったり、一部の人だけなのです。言うなればこの人達は現代の坂本竜馬。

島国である日本。そういった外に目が向かず中だけでゴチャゴチャする習性があるのは仕方ないと言ってしまえばそれまでですが、もっと世界に目を向けてもいいんじゃないか。何もイチローみたいに派手でなくても良い、それおれが出来るレベルで目を向けてみてはどうだろうか、そう思うのです。

じゃあ、Numeriを世界に向けて発信しよう!赤鬼ども相手に変な棒出したり入れたりとか書いてやる!明日から英語で日記を書くぜ!と思い立っても英語で日記を書けるはずもなく、いきなり躓いてしまうわけなのですが、そこで諦めてはいけません。何もいきなり上手にやろうとしなくていい。できることからコツコツやればいいのです。

幸いにして、Numeriは海外在住の日本人さんにも数多く見て頂いており、そんな状況を語ったありがたいメールをいただく事があります。

「遠くイギリスの地からいつも見ています」

「私の旦那はアメリカ人ですがNumeriに興味を持っています。Numeri独特の言葉を訳して伝えるのが大変です」

「日本を離れて随分経ちますが、日本の様子が手に取るように分かって面白いです」

「ヘイ、ジョニー!なんだかお腹が空かないかい。ハンバーグでも焼いて食べたいね!そういう時は、ほらこうやって」

「ワオ!車のボンネットで焼くなんて!」

「ほら、ボンネットでハンバーグを焼いてもご覧の通り!」

「信じられない!焦げ目一つないよ!」

「もう、オーリーがあれば安心だね!」

最後の方は若干違いますが、こうやってクソのような文章を書いていても遠く離れた異国で見てくれる人がいるのです。じゃあまずその海外在住のヌメラーさん達に何か出来ないのか。それこそが世界に向けた活動の第一歩じゃないのか、そう思うのです。ということで

Numeriワールドキャラバン2005第1弾

自費出版本「ぬめり」を持って異国を放浪します。さすがに連発だと生命の危険や金銭的問題、仕事を首になる、などの切実な問題がありますので一カ国ずつ、ジワジワとい攻めていきます。

実は、「ぬめり」の販売時に海外からの送金は色々と面倒、という理由で海外の人には無料で本を送っていたのですが、あまりの送料の高さに眩暈がしまして途中で断念、いまなお何名かの方に送りきっておりませんので、いつかそれを届けきる事を目標として活動します。

ということで、Numeriワールドキャラバン2005、映えある第1弾の開催国は、

モンゴル

中央アジアの東部に位置し、国土の総面積156万5,000km、人口約250万人、首都はウランバートル。ゴビと呼ばれる砂漠地帯を抱える。内陸型の乾燥した気候で、夏は40℃近くになる日もある一方、真冬はマイナス40℃を下回ることも。日本ではモンゴルマン、朝青龍、モンゴリアンチョップなどで有名。

ということで、
Numeriワールドキャラバン2005 vol.1

開催地  モンゴル国 ウランバートル(ナイラムダル公園)
開催日時 7月19日 現地時間午後7時
参加表明などは必要ありません、直接集合場所にお越し下さい。本の代金はその時の相場によって異なります。9ドル=9000Tg(トゥグリク)ほどを目安にしてください。

ということで、100%近い確率で誰も来ないことは目に見えてますが、誰も来なかったら10冊ほどのぬめり本を現地人に全部売りつけてきます。ゴビ砂漠を放浪して売ってきます。売り切るまで帰ってきません。

モンゴル相撲で油塗ってヌルヌルになりながら、第二、第三の朝青龍を探してきます!モンゴルで会いましょう!

7/7 ファーストブラ

初めてブラジャーを装着したあの日のこと、あなたは覚えていますか?

こういう事を言うと変の態、いわゆる変態に思われるかもしれませんが実際にはそうではありません。これは極めて真面目なお話です。「セクハラ!」とお怒りになるお局さんもいるかと思いますが落ち着いて聞いてください。

ブラジャーとはそもそもなんなのか。単なる布で片付けるには付加価値がありすぎるし、かといってどんなに貴重だと崇め奉っても中身のオッパイに勝てるはずもない。極めて不安定でアンバランスな状態にある、それがブラジャーなのです。思いを馳せてみると、大人と子供の間で揺れ動く思春期の若者のようではありませんか。

子供から大人へと移り変わる時、女性はブラジャーを装備するようになります。そう、まるで認められた戦士が聖衣(クロス)をまとい聖闘士(セイント)となるようにブラジャーを着けて少女から女へとステージが変わるのです。そう、ブラジャーは聖衣なんですよ。

男性の方、特に想像力が欠落している方などは理解し難いことかもしれません。ブラジャーなんて所詮は胸当てじゃないか。乳首を覆って胸を支えてる布キレじゃないか。そう考えるのが普通でしょう。けれども、それじゃあいささかロマンが足りないと言うしかありません。

例えば、僕ら日本人にそういった風習はありませんが、もし仮に、「男児は14歳になると成人とみなす。同時にチンコケースを装着すること」という風習があったとします。角のような筒をチンコを覆うように装着する、そんな風習があるのです。

14歳といえばもうチン毛も生えてます。ええ、モジャモジャです。それに見合った威風堂々としたチンコケースを選びたくなりませんか?少し見栄を張ってサイズ大き目のチンコケースを選びたくなりませんか?金持ちだったら象牙とかで作りたくなりませんか?

なりますよね、そう、それがロマンなんですよ、ロマン。結局、女性にとって初めてのブラとはチンコケースと同じロマンがあるわけなんですよ。

どうせNumeriの読者は男色99%、男闘呼組みたいなものでしょうから分かりやすいように引き続きチンコケースに置き換えて考えてみましょう。

チンコケースを装備できる年齢になりました。晴れてあなたもチンコケースを装備し、誇らしげにぶら下げて街を闊歩することができるのですが、その際、きっと照れると思うのですよ。

やはり性的なことです。おまけに思春期です。異性と目が合ったら興奮する、異性のいい臭いがしたら興奮する、そんな年代ですからバリバリ伝説なみに意識すると思うんですよ、チンコケースを。

学校では早々とチンコケースを装着しているクラスメイトを羨望の眼差しで見つめ、つけてる者どもはそれとなく誇らしげに、つけてない者どもは「あんなものつけねえよ」と悪口をいいつ羨ましい。持てるものと持たざる者の強烈な二極化が始まるのです。この構図は貧富の差が激しい諸国を想像すると分かりやすいかもしれません。

で、クラスにはやけにチンコケースに詳しいチンコケース博士みたいなマセガキが配備されていて聞いてもいないのにチンコケースの素晴らしさや「チンコケースつけてると早くずる剥けになるらしい」といった真偽不明のデマを流してきたりします。そうすることでどんどんと意識し出すようになるんです。

俺もそろそろチンコケースをつける年頃。でもまてよ・・・?チンコケースって結構高価なものなんじゃ?そんなの俺の小遣いでは買えないぞ。もしかして親に買ってもらうしかないのか?

いっぱしの大人を気取り生意気言って「親なんて」と思う反抗期、しかしながら親に寄生しながら生きている。親なんかクソ食らえと思いつつも、親がいないと生活できないし学校にも行けない。そんな現在の自分が抱える矛盾に気がつくのです。チンコケースなどの性的なことは自分の中で秘め事にしたい、けれども親の介入なしにはどうしようもない。

チンコケースを買ってくれ

その言葉が親に切り出せず、少年は近くの竹林で竹を切り自作でチンコケースを作成しようとします。けれどもどうにもならない。自立心と羞恥心がせめぎ合う矛盾のラビリンスの中で少年は苦悩するのです。

そこに、息子の成長を影で見守る母親がコッソリと近所のジャスコで手頃なチンコケースを買ってくるのです。「高志、お母さんこれ買っといたからつけときなさい、そろそろ必要でしょ」

この母親の行動を何より心待ちにしていたのは少年自身なのですが、思春期の少年の性的エトセトラに親が介在するなど、油かぶって火の海に飛び込むようなもの、裸で原子炉の中に飛び込むようなもの。少年の起爆スイッチを押してしまうことになるのです。

「るっせえんだよ!誰がこんなもの頼んだんだよ!」

普段は優しい親思いの子ですが、やはり性的なことはタブー。カッとなって母親を怒鳴りつけてしまいます。そして母が買ってきたチンコケースを床に投げつけます。コロコロと転がるチンコケース。これぞ反抗期。けれども、その中身は本気で母親に対して怒ってるわけでなく、ジャスコのレジでチンコケースを買う母の姿を想像して無性にやり切れない気持ちを抱えているに過ぎないのです。結局、自分の不甲斐なさに怒ってるだけなんです。

「こんなダサいデザインのチンコケース誰がつけるかよ!」

床に転がっていたチンコケースをさらに蹴る少年。吹っ飛んだチンコケースは冷蔵庫にあたり、その場でエネルギーを失うまでクルクルと回転しています。

「ごめんね、高志ちゃん。お母さん、どういうのがいいのか全然分からないから・・・」

謝る母親。けれども少年は分かっています、母は何も悪くないと。悪いのは自分だと。母は自分のためを思ってチンコケースを買ってきてくれた。切り出せなかった僕にとってそれはどんなに有難いことか。けれども素直にその気持ちを表現できない。

「ごめんね、ごめんね、お母さん、明日取り替えてもらいにいくから」

まだ回転を続けるチンコケースを拾おうとする母。これ以上母に迷惑をかけられない、そう思った少年は母の動きを制します。

「るっせえ!もういいよ!」

母の手からチンコケースを奪い取り、自分の部屋へと消える少年。こんなんじゃない、なんで素直にありがとうって言えないんだ。チンコケースをギュッと握り締めて布団に潜り、素直じゃない自分を呪うのです。

しばらくして落ち着くと、少年は服を脱いでチンコケースを装着してみます。これで自分も大人の仲間入り、なんだかワクワクする反面、意味不明の緊張感が身を焦がします。

「でかすぎるよ・・・母さん・・・」

鏡の前でポーズを取るものの、どう見てもチンコケースはブカブカ、二周りくらいサイズがでかく、よく見ると「L」とかシールが貼ってあります。母さんはきっと息子のブツを過大評価していたのでしょう、ウチの息子ならこれくらいビッグコックなはず、そう思ったのです。

俺のために母さんが買ってくれたチンコケース。デザインもダサくて、意味不明に虎の彫り物とかしてあってサイズもブカブカ、だけど僕の初めてのチンコケース。少年はきっとこの日のことを忘れないでしょう。そして、思い出すたびに理不尽に母を怒鳴りつけたほろ苦い思い出を、ブカブカのチンコケースと共に思い出すでしょう。すぐには無理でしょうけど、きっと母に対して素直になろう、いたわる心を持とう、そう思うはずです。

そう、チンコケースを装着するようになるということは、ちょっぴりだけ大人になるということ、自分がまだ子供であることを自覚し、少しづつ大人になるために歩き出すということなのです。ただチンコを覆うケースを手に入れるだけじゃないのです。

大切に机の上に置かれたチンコケース。傷がつかないようタオルに包んで置かれたチンコケース。母が買ってきた大き目のダサいチンコケース。少しだけ大人になった少年は明日学校に着けて行くことを夢見て深い眠りにつくのです。

とまあ、大体こんなものです。上の話の「少年」を「少女」に置き換え、「チンコケース」を「ブラジャー」に置き換えると大体同じことになるのです。そりゃあ話の細部は違うでしょう。世の中にはブラジャーの数だけ物語がありますから人によってエピソードはまちまちです。でも、ブラをつけることで内面が大人に向かい始める、それは間違いないことなのです。

世の中には様々な、「大人」の基準があります。それが「成人式」だったり「一人暮らしをはじめること」だったり、あるいは「SEXをすること」だったりするかもしれません。けれども、そんな誰かが用意した儀式やら対面的なこと、性行為が大人の基準だとは断じて思えない。

ブラジャーをして大人の階段を一歩踏み出す、それが大人への第一歩だと思う。何もブラをしている外面的姿を言ってるのではなくて、ブラをすることによって心の中で一歩踏み出す、大人に向かって踏み出す、それが大人の基準なのです。

僕ら男はブラジャーなどしません。中学生くらいの時に母ちゃんのブラを装備して鏡を見てルンルンなんてことを一人風呂場でやっていましたが、そんな時や一部の例外的な人を除いて大部分の男性がブラジャーを常用しません。つまり、初めてブラをする神の瞬間、ファーストブラが存在しないのです。

他にもブラに変わるような、聖衣(クロス)となりうる物が男性には存在しません。それこそチンコケースくらい導入したほうがいいんじゃないか、と思うほど存在しないのです。そう、言うなれば大人の第一歩を実感する瞬間が男には存在しないのです。男は子供っぽくて女は大人で現実的、すっごい極論ですが世間でよくいわれるこの現象はそんなことが関係しているのかもしれません。

ブラをする事ができる、初めてブラをする瞬間が訪れる、それは女性だけの特権で、しかも大人の階段を上り心の中が少しずつ成長する、そんな素晴らしき神聖なものなのです。決して恥ずかしがることなくその体験を誇るべきだ。胸を張るべきだ。今うまいこと言った。

ということで、僕は上記のような真剣な理由で、その人が大人になった瞬間のことが聞きたくて、決してエロスとか乳房とか関係なくてファーストブラ体験を女性に尋ねることがあるのですが、職場の後輩女性(新卒で入ってきた23歳2年目OL)に飲み会の勢いで真剣な顔で質問してしまい、その、なんだ、本気でセクハラ対策室みたいな駆け込み寺に駆け込まれるところでした。本気で謝るので許してください。

ということで、女性はもっとファーストブラ体験を、初恋体験より誇らしく美しい思い出として語るべきだ。今日はそういう主張でした。

ちなみに、男にはファーストブラに匹敵する体験がないって書いたけど、僕が幼い頃、ウチの家の階段のところの壁に、どこで買ってきたのか知りませんけど親父が三本のチンコケースを威風堂々、一世風靡と言わんばかりの勢いでバベルの塔みたいに飾ってましてね、ある日の深夜にその中の一番立派な1本を半裸の親父が装着し、母親とジリジリと対峙、バスケットのゾーンディフェンスの人みたいになってる地獄絵図を目撃しましてね、今思うと「どんなプレイやねん」と突っ込まずにはいられないのですが、幼心に「大人はチンコケースをつけるんだ、だからウチには親父の分、僕の分、弟の分と3本のチンコケースがあるんだ、たぶん爺さんは老人だからいらないんだ」と本気で勘違いしてしまったんです。結構成長するまで本気で信じており、僕の中では「大人になる=チンコケース」がマジだったのです。

ということで、僕は齢28にして未だに子供っぽさが抜けず大人になりきれていないのですが、大人になるべく、今度チンコケースを買ってきて誇らしげに装着してみたいと思います。チンコケースつけて何食わぬ顔でウィークデーを過ごしてやる。


6/23 LADY NAVIGATION  

ちょっと僕のセレブな私生活を自慢するようで恐縮なんですけど、先日、車を買ったんですよ、車。しかもミニカーとか三輪車じゃないですよ、正真正銘、嘘偽りなしにその辺を走ってる自家用車ですよ。

なんで急に車なんか購入したかって言うと、僕が住んでいる地域は未だに戦後の闇市とか存在しててもおかしくない過疎地なわけでして公共交通機関が発達してない。買い物にも車、ウドン食いに行くのにも車、仕事に行くのも車、とまあ車がなくてはならない必須アイテムになってるわけなんですよ。

それでまあ、前に乗っていた車が天に召され、悲しみの中荼毘に付されたわけなんですけど、彼の晩年はそれはもう凄かった。ブレーキが効かないとか当たり前、シフトレバーが勝手に動くとか、冷房入れたら熱風が出てくるとか、あと車内から正体不明の腐乱死体みたいな匂いがプンプンしててたりして、色々な意味で末期的だった。

最終的にはエンジンがかからなくなった時点でお陀仏になったのだけど、そこからがもう凄かった。歩いて近場のカーディーラーに行ってですね、まるで八百屋でトマトを買うかの如き気軽さで豪快に車を買ったんっすよ。

「いらっしゃいませ、今日はどんな車をお探しで」

「これ、ください」

ですからね。普通は見積もり出してもらったり試乗したり、他社の車も考えてることをほのめかして値引きを巡って骨肉の駆け引きがあったりするものなのでしょうけど、限りなく豪放に購入。しかも車種とか決めてなくて、飾ってあった車を「それ」と指名しました。豪放にも程がある。

さすがに、その場で乗って帰るってことはできなくて、なんか納車まで一ヶ月近くかかってヤキモキしたんですけど、先日、ついに納車。カーディーラーまで歩いて車を受け取りに行ったら、ディーラーの人が満面の笑みでね、花束とかくれちゃったりする始末。おまけに「記念撮影しましょう」とかトチ狂ったこと言い出しやがりましてね、新車の前で花束持って引きつった笑みの28歳男が仁王立ちという、とんでもなく面白い絵図の写真が取れてました。ご丁寧にパネルに仕上げてくれたもんだから、速攻でゴミ箱に捨てた。

それでまあ、新しい車を乗り回しているわけなんですが、やっぱり新車はいいですね。何が良いって新車の臭いが良い。間違いなく腐乱死体の臭いよりいい。全てが新しいのが良い。正にユアフレッシュ!と叫ぶほど快適なのですが、それ以上に素晴らしいのが今回初めて導入したカーナビゲーションシステム、略してカーナビですよ。

人類の科学力ってのは進歩したものですね、これさえあれば今、自分がどこにいるのか一目瞭然、おまけに地図も入ってるから道に迷う心配もなし、ついでにテレビやDVDまで観れちゃったりするんですから、まさに盆と正月が一緒に来たような便利さですよ。

そういえば、去年くらいにカーナビどころか地図すら持たずに全国60ヶ所を車で周って自費出版本を売り歩いた危篤で奇特な人がいるらしいんですけど、なんか「道に迷いすぎて死ぬかと思った」とか言ってました。そういう人こそカーナビをつけるべきですよね。

でまあ、カーナビってのは確かに未来から来たネコ型ロボットかと思うほどに便利な代物なんですけど、購入してから気がついてしまったんですよね。うん、気づかないフリしようかと思ったんだけど、さすがにアレなので言わせてもらう。

便利な便利なカーナビ、すごく高価でハイテクなマシンなんだけど・・・。日常生活で使う分には全く必要がない。ビックリするくらい必要ない。

よくよく考えてみてくださいよ。普通、日常生活で車を使う時なんて、毎日の通勤やら買い物、あと近所の潰れそうなパチンコ屋に行く時くらいですよ。そんな場所に行くのにカーナビが必要だなんてボケ老人くらいのもんですよ。

ですから、折角高い金払ってカーナビを搭載したと言うのに、実際には全く機能を活かすことができず悶々とした日々を過ごしていたわけなんですが、つい先日、とうとうというか、いよいよというか、このカーナビゲーションシステムを活用するチャンスが巡ってきたのです。

仕事の出張で、車で5時間くらいかかる遠方の場所まで行ってこいと命令されましてね、普段なら「通風が痛むから」とか嘘8000の理由をつけて断る仕事なんですけど、さすがにカーナビの威力を発揮するチャンスだと思いましてね、二つ返事で引き受けましたよ。

仕事用の書類を真新しいトランクに積み込みカーナビのセットをしていざ出発。一度も行った事ない場所ですので物凄い威力を発揮するものと思います。意気揚々とハンドルを握り仕事場を飛び出しましたよ。

「ポーン、500m先交差点、右折です」

軽快にナビゲートし始めるカーナビ、これですよ、これ。いよいよカーナビの本領発揮といったところ。なんだか無性にワクワクしてくるではないですか。高い金出して買ってよかったと思いつつカーナビの便利さに舌鼓。満面の笑顔で国道をひた走っていたのですが、なんかちょっと、ここから様子がおかしいんです。

「ポーン、2km先交差点、右折です。目印はコンビニです」

おお、曲がる場所の目印までアナウンスしてくれるのか!こいつはすげえなあ!絶対に迷わないよ!と思いつつ車を進めていったのですが、どこの交差点を見てもコンビニらしき物が見当たらないんです。

いやいや、カーナビのデーターってのはリアルタイムに最新なわけじゃありませんから、潰れてしまったコンビニとか反映されていない可能性があるんですけど、それでもコンビに跡地くらい残ってそうなものじゃないですか。でも、どこ見ても太古の昔から畑でしたっていう場所しかないの。コンビニがあった形跡すら見出せない。

このカーナビ、ちょっと頭悪いんじゃ?

そんな一抹の不安が心の中に芽生えた瞬間でした。

で、さらに進んでいくと、どうにもこうにもガソリンの残量が残り少なくなってきやがりまして、ガソリンスタンドに行く必要がでてきたんです。

「周辺検索」から「ガソリンスタンド」を設定、すると周囲にあるガソリンスタンドをナビが適切に案内してくれるんです。死ぬほど便利、心地良いほど快適。

でまあ、ナビが案内するとおり、スタンド目指して走っていたのですが、なんかコイツ、潰れて朽ち果てたスタンドにしか案内しやがらないんです。4つくらいガソリンスタンドを案内してもらったんですけど、全てが雑草が覆い茂るトマソンと化してましてね、どんな奇跡が起こっても給油できそうにないんです。

「おいおい、お前、わざと潰れたスタンド教えてるんじぇねえの?」

「次の交差点、左折です」

といいう心温まる会話を交わしつつ、スタンドを目指すんですけどガソリンが残り少ない。そうこうしていると、営業しているガソリンスタンドを自力で発見しましてね、ナビなんて毛ほども役立たないといった風情で給油したんです。

今や僕の中でのナビに対する信頼度は地に落ちたも同然なんですけど、それでもナビなしで知らない町になどいけません。大丈夫かよーと思いつつも彼の指示に従って進んでいきます。

「ポーン、次の交差点、右折です」

そうこうしているうちに運命の選択がやってきました。山の中の田舎町にある交差点なんですけど、左折すればそのまま国道で、目指すべき町に到着できます。道路標識も左側が目指す町であることを示している。なのに、カーナビは右折しろと指示。

右折の方は見るからにショボそうな道で、本当にこれが正規のルートなのか疑いたくなる代物、途中で舗装がなくなってもなんらおかしくない佇まいでした。

間違いなく左折するべき場所でカーナビが右折を支持した。普通なら「カーナビが地元の人しか知らないような近道を教えてくれたんだな」と迷わず右折するのでしょうが、どうにも僕のカーナビは頭脳がよろしくないらしい。かなり信頼がおけないので迷ってしまいます。

「最後に一度だけ、お前のこと信じるからな・・・」

腐っても鯛、バカでも機械、ということでカーナビを信じて右折することに。で、その見るからにショボい道路を突き進んでいくのですけど、どんどん様子がおかしくなっていくんですよね。

道路がどんどん細くなっていくし、舗装も雑になってくる。それどころか目に見えて人家の数が減ってきましてね。この先に目的の街があるとは考えにくい。なんか魔物が出る洋館を目指しているような風情がするんですよ。

「おいおい、本当に大丈夫かよ」

「ポーン、この先、しばらく道なり直進です」

どう考えてもこのナビはおかしい。おかしすぎる。まさか人里離れた山奥まで俺を連れて行き、そこでレイプする気じゃなかろうか。山奥までドライブし、そこで豹変、やらせるか、ここで降りて歩いて帰るかどっちか選べ!そうやって女性に暴行を加える野蛮な男性がいると聞きます。まさか、このナビもそうやって僕の熟れた肉体を付け狙っているのでは・・・。

「まさか、おまえ、俺の肉体を・・・」

「ポーン、この先、しばらく直進です」

「そうやって俺の体は奪えても、心までは奪えないんだから!勘違いしないで!」

「ポーン、この先、しばらく直進です」

「やるならやってみなさいよ!」

「ポーン、この先、しばらく直進です」

とまあ、機械と本気で会話する少々頭の可哀想な人みたいな素振りを見せつつナビの言うとおり進んでいったのですが、周囲はさらに過疎化の極みみたいな状態に。

雑草の背丈の高さがシャレにならないレベルですし、舗装してあるんだかしてないんだか、分からないレベル。おまけに遠くのほうには小学校の分校が見える始末。おいおい、本気で山奥に拉致されるんじゃないか。カーナビによって拉致されちゃうのか、と不安になりました。

さすがに日も傾いてきて、出張先との約束の時間も迫ってきています。本当にこの道で合ってるのかよ!とイライラしちゃいましてね。

「おい!本当にこの道で良いのか!?」

「ポーン、この先、しばらく直進です」

「そればっかりじゃないか!なんとか別のこと言え!遅れるじゃないか!」

「ポーン、この先、しばらく直進です」

「ムキー!ぶっ壊すぞ!お前っ!何とか言いやがれ!遅れる!遅れる!」

「ポーン、運転時間が長時間です。休憩を取ってください」

「ぶひいいいいいいいいいいいいい!」

もう、ほんとにバカにされてる感じでしてね、本気で画面をベリベリ剥ぎ取ってぶっ壊してやろうかと思ったんですけど、カーナビの言うこともごもっとも。長時間運転しすぎたので車を止めて休憩することにしました。

もっと気の利いたドライブインだとか案内して休憩させればいいものを、山の中の田んぼと草木しか存在しない場所で休憩。車を降りてブツブツと、なんでアイツはこんな道を案内するんだ、何もないじゃないか。左折して国道行ったほうが絶対に早かったはず。なんちゅうバカなんだ。ホント、ぶっ壊してやる、すげ高い金出して買ったけど、あんな機械、家に帰ったら火炎放射器で焼き払ってくるわ、とか愚痴をこぼしてました。

で、長時間座ってて痛んだ腰を伸ばそうと、視線を上げたその瞬間でした。

目の前には見たことないような綺麗な夕日が。山と山の合間から覗く夕日が計算しつくされたかのように美しく、僕に向かって光の筋を照らしてるんですよ。で、それと同時に澄んだ空気の僅かばかりの風が木々の青々しい香りを運んできて至極爽快。なんか、子供の頃に日が落ちるまで外で遊んだ時の夕暮れのような、そんな感覚にさせてくれる雄大な景色がそこにあったのです。

時間に追われ、仕事に追われ、全てが合理的で効率が良いものでないと納得できない昨今、僕らは何かに追い回されてアクセクと動いているように感じます。この景色にはそんな僕らを戒めるような、ゆったりとした何かがあったのです。

「まさか、お前・・・俺にこの景色を見せたくて・・・」

買ったばかりの新車とカーナビは、微笑むように佇んでいました。

「ありがとう。もう大丈夫だ。さあいこう。おっとその前にトイレしなきゃ。なあに時間なんてどうでもいいよ、マイペースで行けば良いのさ、マイペースで」

カーナビの粋な心遣いに己を取り戻した僕、焦ることなくトイレを済ませてから出発しようと思い立ちました。さすがにトイレなんて文明の利器はないほどの何もない田原ですので、そのへんの小川で立ちションベン、俗に言うスタンディング小便をしたわけですが。

「おーすげえ、剥けてるぜ!」

「モジャモジャだー!」

分校に通う小学生でしょうか、数人のガキどもが川の向こう側から僕の立小便を見てました。女の子もいて、顔で目を覆っていたけど間違いなく指の間から見てた。死ぬほど恥ずかしい。どう反応していいか分からず「げへへへ」と笑ってしまったのも変質者的で頂けない。

バカなカーナビのせいで変な道を指示されて莫大な大回り、出張先には大幅に遅刻、おまけに小学生に排泄の決定的瞬間を見られ人間としても最底辺。よくよく考えると到底払えるとは思えない地獄の3年カーローン、別名借金。役に立たないカーナビよりも、誰か僕の人生をナビしてください、と思いながら家路へと向かったのでした。

ちなみに、帰り道は土砂崩れの復旧工事で不通になってる道をナビされました。このカーナビは即刻叩き壊します。アイオエヌ!と叫びたい気分だぜ。


6/17 楽しい科学実験室2-爽健美茶のフロンティア-

コカ・コーラが大好き!死ぬほど大好き!

どれくらい大好きかって言うと、例えば、血肉も沸騰する灼熱のゴビ砂漠で一人放浪、もう手持ちの水もなくなって「いよいよ最後の時来たり」と覚悟した時、目の前に女神が現れたとする。女神は、無限に水が湧き出るオアシスと、一口程度のコーラの入ったコップを差し出し、どちらか一方を選択しないさいと言う。そうなった場合、僕はさんざ迷うだろうけど間違いなく女神のオッパイを揉む。揉みしだく。それくらいコーラが好き。

ホント、それくらいコーラが好きで、そろそろ僕の元にコカ・コーラのCM依頼が来ないかと「アイフィール、コカコーラ」とか満面の爽やか笑みで言う練習とかしてるのだけど、一向に来ない。どうなってるんだ。

それはそうと僕は、糖尿病を宣告され、ドクターストップがかかって「これ以上コーラを飲んだら死ぬよ」と言われてもコーラを飲み続ける熱いコーラバカなわけだけど、やっぱりなんていうかですね、体なんてどうなってもいいと言いつつも、最近富みに不調な我が体が気になるわけなんですよ。

以前は、コーラを飲めば気分爽快、年齢とは不相応にハッスルして夜の街へダイブしたものですが、最近はとんとそういうわけにもいかない。コーラを飲んだ直後に体はだるく倦怠感でいっぱいに、そいでもって肩は痛くなるわ、胃はキリキリ痛むわ。飲んだ直後に目に見えて体調が悪くなるんですよね。

さすがにそうなってくると、僕自身も「老い」というデスキーワードが頭に浮かび、そろそろ加齢臭のお年頃、いつまでも若々しくコーラなんて飲んじゃいられない夢見る少女じゃいられない、と思ったりするわけなんです。

思うに、コーラから卒業するというのは、大人の階段を昇ることなのかもしれません。僕の記憶の中では、ダンディズム溢れる大人がコーラを飲んでいる光景などありません。爺さんがコーラ飲んでるなんて見たことない。みんな大人になるとお茶やコーヒーなど落ち着いた飲み物にシフトするのです。言うなればコーラからの脱却こそがこの支配からの卒業なのです。

僕ももう28歳、今年の夏には29歳になります。最近は尿のキレも悪いですし体はどんどんオッサン化していっています。それなのにいつまでも若者気分でコカ・コーラってのはいかがなものか。ここは一発、体の不調もあることですし、バシッとコーラを卒業して大人の階段を昇ったほうがいいんじゃなかろうか、そう思った次第であります。

それでまあ、再度コーラ絶ちの生活に突入し、もっぱら爽健美茶を飲む生活に突入したわけなんですが、確かに体調は良くなったように感じました。それなりに体調も良いですし体も軽いです。でもね、何か物足りないんですよ。確かに爽健美茶は美味だけど、何かが決定的に物足りないんですよ。

こんな牙を抜かれたぬるま湯のような生活をしていていいのだろうか。いいはずがない。自分はもっと刺激的なことを欲しているのではなかろうか、足りない足りない、刺激が足りない。もっと刺激が欲しい。まるで万引き常習犯のように悶々と考えるばかり。そりゃ布袋の兄貴も出てくるちゅーねん。

コーラは刺激的だった。少なくとも僕にとってコーラは刺激そのものだった。缶を開けた時のシュワッという心地よいサウンド、口に含んだ瞬間に弾けるパッション、そして超絶な喉越し、溢れるゲップ、理屈じゃないんだアイフィールコカコーラ。

よくよく考えるとね、「僕が求める刺激=コカコーラの炭酸」という黄金の方程式が成り立つんですよ。上に挙げたコーラの魅力ってのは全部炭酸によるものなんです。明治時代に始めてコーラを飲んだ日本人が「口の中で何かが爆発した」と感想を述べたようにやはりコカコーラの魅力の8割は炭酸から成っているといっても過言ではない。

そうなると、ちょっと考えれば分かることなんですけど、「体調が悪くなるのでコーラは飲めない」「年相応の大人に見られるためお茶などを嗜む」「爽健美茶がうまい」「でも、炭酸による刺激は欲しい」これらの事象から導き出される答えはズバリ一つしかありません。そう、「爽健美茶を炭酸飲料にする」です。

前回の「楽しい科学実験室」では、その時発売されていた青いコーラ、ペプシブルー(今では笑えるくらい店頭で見かけませんね)に対抗して爽健美茶ブルーという毒々しい、大量殺人に使用できそうな飲料を作成したのですが、今回は極めてナチュラル、飲料に適するものを作成してますのでご安心ください。ということで、「楽しい科学実験室2-炭酸爽健美茶を作ろう-」をどうぞー。


楽しい科学実験室2-炭酸爽健美茶を作ろう-

炭酸飲料というと、これは炭酸水が入っていれば炭酸飲料になるわけなんだけど、炭酸水とは水に大量の二酸化炭素を溶かしただけの代物です。あのシュワーって泡は二酸化炭素というわけですね。つまり、水に二酸化炭素を吹き込めば炭酸水はできる、じゃあ爽健美茶に二酸化炭素を吹き込めば炭酸爽健美茶になるはずだ!

そんな考えのもと、最も身近な二酸化炭素と言えば私たちの呼吸によって吐き出されるものですから、ストローを使って思いっきり息を吹き込んでみました。ブクブクと。これで爽健美茶が炭酸飲料になれば極めて画期的。



ブクブクと頑張って吹き込んだのですが、一向に炭酸飲料になる気配なし。よくよく考えてみると当たり前で、そんな簡単に炭酸飲料ができてしまったら飲料メーカーは商売上がったりです。飲料レベルの炭酸水を作るには、それこそ大量の二酸化炭素を溶けこまさないといけないのです。

実際の飲料メーカーの製造では、二酸化炭素を冷却して高圧下で液体にし、それを甘味のある液体に流し込んで急いで栓をするという方式をとっています。つまり、ちょっと難しい話になるかもしれませんが、二酸化炭素そのものを液体に閉じ込めるわけじゃなくて、液体になった二酸化炭素を混ぜて栓をしているだけなのです。そうすることで炭酸飲料が作られているわけですね。

ここで発想の転換をしましょう。液体の二酸化炭素を準備するのは大変なので、もっと別の視点から考えてみます。要は液体の中、つまり爽健美茶の中で二酸化炭素が発生すればいいのですから、爽健美茶に二酸化炭素を発生させる何かを混ぜてやればいいのです。さすれば簡単に炭酸爽健美茶ができるはず。

二酸化炭素を発生させるものとは何でしょうか?

我々の呼吸でも二酸化炭素は発生します。物を燃やしても発生します。でも、それらを爽健美茶の中に入れるのはちょっと難しそうですね。じゃあ、もっと入れやすいものは何か、そう、化学反応によるものですね。

皆さんは中学くらいの理科の実験で、二酸化炭素を発生させる実験をしたと思います。石灰石に塩酸をかけて発生させ、石灰水が白く濁るとか精液みたいだと騒いだはずです。それと同じことを爽健美茶の中でもやってあげれば良いのです。

混ぜることによって二酸化炭素を発生する物質XXXとXXXXXXを購入します。この二つは毒性はなく、その辺の大きな薬局でも購入できます。ただし、飲むと体に悪いことは確実なので、真似するバカが出てくると困るので伏字。

両者を爽健美茶の中に投入、しっかりと栓をして振って混ぜます。すると、二酸化炭素が発生して物凄い勢いでペットボトルが膨張します。興奮しすぎたチンコみたいにパンパンになるので注意しましょう。


バチン!あまりに膨張しすぎでラベルが引きちぎれます。物凄い音がするので注意。画像を見ると、ちょっと泡立ってますが、これは二酸化炭素の発生による泡で、正確には炭酸のものとは言えません。

ちなみに、事前に行った予備実験では、投入する分量が多すぎたのか二酸化炭素が発生しすぎてペットボトルが破裂しました。「ひでぶ!」みたいに破裂し、あたり一面がお茶が噴出、僕もその様子を見て「スプラーシュ!」と叫ぶしかありませんでした。取り返しのつかない大惨事になるので注意しましょう。危険と感じたら栓を開けて二酸化炭素を逃がしてあげてください。

ここまで膨張したペットボトルでは後の実験に耐えませんので、新しいペットボトルに移し変えて実験を続けます。

面白いことに、ひととおり二酸化炭素の発生が終了し、ペットボトルの膨張が止まると今度はペットボトルが自然と潰れ始めます。何もしてないのに勝手にベキベキと潰れていきます。これは発生した二酸化炭素が爽健美茶に溶けるからです。気体状態よりも液体に溶けたほうが体積は小さくなりますので、栓をした状態ではベキベキとペットボトルが潰れていきます。



かなり痛々しいですが、こうなったら完成です。潰れたペットボトルは栓を開けると元に戻ります。これで炭酸爽健美茶の完成です。簡単でしたね、さあ、早速コップについで飲んでみましょう。




シュワー!

見事に泡だっております。爽健美茶と思いたくないほど泡だっております。色が色なのでジンジャエールやビールのように見えます。この泡によってでしょうか周囲には異常なほどのお茶の匂いが充満し、少し気分が悪くなってきます。見紛う事なき炭酸、明らかに炭酸です。

分かりにくいですが、拡大すると見事に泡が上昇しているのが分かります。

ということで、ついに僕の望みと健康を両立する刺激的な飲料「炭酸爽健美茶」が完成しました。もうコーラなんていらない!早速飲んでみましょう!

 

 



死ぬほど!まずかった!

飲んだ瞬間にお茶が口の中で爆発して、口の中がお茶お茶お茶みたいに口の中がお茶の精でいっぱいになるんですけど、なんだろう、無理矢理の和洋折衷みたいな、和風のお婆さんのセクシーランジェリー姿みたいな、かなり無理のある味がしました。あと薬品の味が物凄い。

ちなみに、二酸化炭素を発生させるために、毒性ではないけど体によろしくないものを大量に投入してますので、飲んだ後に猛烈に体調が悪くなりました。ぶっちゃけ、吐いた。

というわけで、楽しい化学実験室2の結論。

炭酸爽健美茶に比べればコカ・コーラなど健全な健康飲料の部類に入る。かわいいものだ、炭酸爽健美茶の破壊力はコーラをも凌駕する。コーラを飲んでいたほうがマシだ。

ということで、これからもコーラを飲み続けます。

*真似して取り返しのつかない事態になっても一切の責任を負いません。あくまで自己責任で。

おまけ

泡立ちすぎてぬめり本が台無しになる。


6/7 強く儚い企業戦士

「よろしく頼むよ、期待してるから」

僕は言うまでもなく企業戦士なわけで、日々、ドルやユーロの相場、原油価格などにピリピリするほど大車輪の活躍なわけですが、そういった最前線の仕事だけでなく、クソの様な雑用も頼まれてやってりするわけです。

直属の上司には、「娘の誕生日プレゼントを買って来い」とか命令され、泣く泣くファニーな小物屋に行ってシャンプーの匂い漂う女子供の中で仁王立ち、涙目になりながら熊さんの小物をプレゼント用に包んでもらったりし、これって仕事じゃなくてパシリやんと思いつつも、泣く泣く領収書を頂戴するのです。

僕は根っからの「よっしゃー、どんとこいやー」的な気質のある人間ですので、頼まれたら断りにくいという一面があるんです。例えその頼まれ事が自分の力量を大きく超えた無理難題であろうとも、死ぬほど恥ずかしいお願いであろうとも、とりあえず引き受けてしまう、安請け合いと言ってしまえばそれまでですが、そういった厄介な性質があるのです。

人間関係というものは信頼で成り立っている部分が多分にあります。人を頼りにすることは比較的容易で簡単で、「頼むよ」と頭を下げれば済む話なのですが、人に頼りにされるってのはなかなか難しいのです。まさか「俺を頼ってくれ」と言って回るわけにもいきませんから、他者から「頼むよ」とお声がかかるのを待っている状況、言うなれば、それが他者から見た自分の信頼度に繋がるのです。

やはり、信頼のおけない人物に仕事を頼むわけにはいきません。それこそ、いくばくかは信頼できる人間に仕事を頼むわけですから、「頼むよ」の言葉は信頼の言葉だと受け取るべきです。「頼むよ」と頼りにされるのは信頼されている証、それを名誉に感じてドーンとやる、なんでもどうぞ的な間口の広さが必要なのです。

面倒臭いと思うこともあるでしょう。何で俺が、別の奴に言えよ、と思うこともあるでしょう、けれども「頼むよ」は信頼の証だと受け取ってハキハキと引き受ける、その心意気こそが大切なのです。

先日のことでした。

僕の直属の上司ではない別の上司に呼ばれ、「なんだろう?」と戸惑いつつもその上司の部署へと出向きました。行くと、その上司が神妙な顔つきで僕にこう切り出すのです。

「実は、pato君に頼みたい仕事があってね」

これですよ、これ。部署を超えて別の上司が僕を頼って仕事を依頼してくる。言い換えるとこれは僕にしかできない仕事というわけ。この「頼むよ」こそ正に仕事に生きる男冥利に尽きると言えるではないですか。

「はい、僕にできることならなんでもしますが」

僕も上司の期待に応えようと瞬時に承諾。これぞ信頼関係の上で成り立つ男の仕事、僕はこの人の期待に応えなければならない、持てる力の120%を出し切ってその依頼、受けて立ちましょう、と意気込んだ訳なんです。

で、そんな信頼おける僕に一体どんな仕事を頼むんだい?と仕事の内容を説明してもらったのですが、何やら様子がおかしいんです。

ウチの職場では、就職活動に燃えてウチを訪問してくる学生さんに向けまして会社の概要みたいなものをまとめた冊子を配ってるんですよ。やれ、理想の職場環境だとか、夢を叶えることができる職場だ、とか嘘8000の煽り文句が心地良い冊子なんですけど、それに「先輩の声」という先輩から若人にメッセージを送るコーナーがあるんですよね。

白黒のページに顔写真付で遺影みたいになってるんですけど、偉大なる先輩社員がそれはそれは満面の笑みで写ってましてね、「君たちの挑戦を待つ!」とか最近の格闘ゲームでも言わんようなこと言ってるんですわ。

で、上司は昨年バージョンのその冊子を差し出してくるんですわ。その瞬間に思いましたよ。ああ、僕に「先輩の声」コーナーを執筆しろというんだな、と。

そうなったら僕も腕まくりしましてね、「文章なら任せんかい」と鬼のような勢いで執筆、就職に燃える若人を恐怖のズンドコに叩き落す文章を書いてやるぜと意気込むわけなんですよ。でもね、なんか様子がおかしいんです。

「いやー、今年から経費削減でね、外注に出してたこの冊子を独自に作成することになったんだ」

デザインやらレイアウト、イラストに至るまで専門家に任せ、そしてそれをドコッと印刷する手法を採っていたらしいんですけど、これも不景気の煽りなんでしょうね、経費削減で自分らで作ることになったみたいなんです。

「それでね、ちょうどこれが原稿になるんだけど、この部分空白でしょ、ここにさ、勢いのあるイラストを入れたいんだよ」

差し出されたペラペラの紙には見事にA4用紙の半分くらいでしょうか、空白が空けてあるんですよね。で、見ると僕が期待していた「先輩の声」コーナーは執筆済みで、何の面白味もないことが書かれてました。

イラスト分として空けられたスペース。僕が文章を書くと予想していた「先輩の声」コーナーは埋まっている。そして仕事を頼みたいという上司。これらの事象から推察するに、まさかまさかと思うのですが・・・。

「ここのイラストをね、君に描いて欲しいんだよ」

ちょっと奥さん、聞きました。なんかこの人、僕にイラスト描けとか言うてるんですわ。この僕に。何を食って育ったらこういう思想に至るのか知りませんけど、どうも描けと言うんですわ。これにはさすがの僕も
ボボボーボ・ボーボボと言って震えるしかない。

「いや、あの、イラストとかはちょっと・・・」

と、僕も僕で専務の娘(ブス)との縁談を持ちかけられた時みたいにマゴマゴしてたんですけど、どう考えても本気でおかしいんですよね。なんで「イラストを描く」という仕事が持ち上がった時に僕に白羽の矢が当たったのか、色々考えるんですけど全然検討もつかない。

「えっと、何で僕なんですか?」

と思いの丈をぶつけてみましたところ。驚愕の事実が。

「事務の子に聞いたんだけど、イラストとか絵描くの得意なんだって?だからお願いしようと思って」

いや、ちょ、おまっ・・・!なんだよ、僕がイラスト得意だなんてどういった種類のガセネタだよ。こんな情報化社会において、こういったデマが流布される、とても恐ろしいことだと思います。

僕は自慢じゃないですけど、イラストなんてこれっぽっちも得意じゃないですし、「得意だぜー」などと触れ回った事もございません。なにせ、昔、サイトで書いた僕のマンガが、



これですからね。口が裂けてもイラストが得意だなんて言えそうにもない。その辺のサルに描かした方がまだリアリティあるイラストですよ。

このままでは折角の冊子が取り返しのつかない未曾有の展開になってしまいます。それこそここは「イラストは全然ダメなんで」と辞退しましてね、他のイラストが得意な人に任せるってのが筋なんでしょうけど、あいにくそういうわけにはいかないんですよね。

仕事に生きる男にとって、上司の命令は絶対なのです。上司が白といえば黒い物でも白。太平洋戦争に行ったウチのお爺ちゃんが言ってましたけど、上官の命令にはYesと答えるしかなかったそうです。戦時中にYesとか敵国の言葉使うのかよとか思ったのですけど、とにかくそういうことみたいです。

それに「頼むよ」と任された仕事なのです。それは他ならぬ僕への信頼ですので、それを無下に断るわけにもいきません。頼まれたことを誇りに感じて引き受ける。人はこういう場合には「何で俺が、別の奴にやらせろよ」と思うものですが、そう思った時ほど引き受ける物なのです。

「わかりました。とりあえず描いてみます」

凛として答えましたよ。ああ、俺が描いてやる。とんでもなくハイパボリックで異次元の、期待に沿えるようなイラストをソウルフルに描ききってやる。希望に燃えてウチを訪れる若人を恐怖のズンドコに叩き落してやる。そう決意してギュッと唇を噛み締めました。これが他者の期待に応える男の姿ですよ。

「躍動感のある感じの、羽ばたくようなイラストがいい」

「情熱的なイラストが欲しい」

「奮い立つようなのが欲しい」

とまあ、上司の要求は凄まじいものでした。CDショップで「オレンジのついたやつください」と言いながらジャケットの写真だけでCDを探そうとする人並みのアバウトさなんですけど、それらを満足するイラストを描ききってこそ期待に応えるということだと思います。

来る日も来る日も、それこそ苦悩する画家のようにイラストを描く日々が続きました。自分に厳しく、あえて自分にダメ出し、何度も何度も描いた作品をボツにして上司の要求を満たす情熱大陸みたいなイラストが完成しましたよ。


さすがにこれには、色々な方面でギリギリchopと言わざるを得ない。

まず初めに、左側の鳥っぽいヤツは、説明するまでもありませんね、鳳凰です。これで躍動感と言うか羽ばたく感じを表現してみました。で、次がちょっとトンチが効いてるんですけど、右側のセクシーな女性はインリンオブジョイトイです。これがM字開脚で情熱的というポイントをクリア。それと同時に、これを見てると男性なら下半身が疼くと思うんですけど、それによって「奮い立つ」というポイントもクリアさせていただきました。そいでもってトドメとばかりに躍動感あるフォントで「来たれ!若人!」とズババーンと殺し文句。

メッセージ性十分、なんというか、視覚だけでなく心の奥底のチャレンジしたい欲求と言うか、若者が持っているチャレンジしたいんだけど何を頑張ったらいいのか分からないというモヤモヤした感情に訴えかける仕上がりになっています。

でまあ、これを意気揚々と上司に提出、A3の紙に印刷して提出したんですけど、なんかワナワナと震えていました。

「頼むよ」とい信頼を受けて描ききったイラスト。その出来を見て「おいおい、頼むよ・・・」という別の意味の「頼むよ」を言われて信頼を失った僕。見事にイラストはボツになり、クシャクシャにして捨てられました。そう、僕への信頼と共に。

企業戦士って辛いものだよな。


6/1 オナッセイ大賞

オナニーは習慣です。言うなれば食事や睡眠となんら変わらない位置づけなのです。誰だって食事をしなきゃ生きていけないし、睡眠をとらなきゃ生きていけない、そいでもってオナニーしないと生きていけないのです。

生活習慣として他の行為と同等であるはずなのに、オナニーは恥ずかしいものと捉えられがちです。食事をしている場面を見られても恥ずかしくない、人によっては寝姿を見られるのが恥ずかしいという人もいるかもしれませんが、普通はそうでもない。しかしながら、オナニーを見られた時だけは別格に恥ずかしい、下手したら自殺物だ、これが普通の感覚だと思います。

毎年何人かの中高生など、将来有望な若人が「親にオナニーを見られた」という理由で自暴自棄になったりグレたり母親を殴打して家庭内暴力に発展したりしていることと思いますが、僕から言わせるとそんなのちゃんちゃらおかしい。なんでもっと堂々とできないんだと言いたい。

価値観の違いなんて、それこそ些末なもので、何かのきっかけで食事が恥ずかしいものになっていて、他人の前で口を開けて物を食べるだなんて!という思考の元に封殺され、マンネリに悩むコアなカップルが食事風景を見せ合う食事プレイに勤しむようになっていたのかもしれません。で、オナニーはフルオープン。

漫画家藤子不二雄先生の短編にある「気楽に殺ろうよ」は正にその通りのストーリーで、価値観が違った世界では性に関する事柄がオープンで食事に関する行為が秘め事になっている。家族の食事はカーテンを閉め切って後ろめたい思いをしながら行うし、味の素ならぬハジの素を使ったりする。で、乱食パーティーが乱交パーティーのように秘密裏に開催されていたりする。

結局、価値観なんてそんなもので、ターニングポイントでちょっとした何かが起こっていたのならば食事とオナニーの扱いは逆のものになっていたのかもしれない。街にはオナニーカフェが溢れ、情報誌も極上のオナニーネタを扱ったりする、飲食店は風俗営業になっててひっそりと営業しているかもしれない。

ドイツの著名なオナニー心理学者シュナイダー・ヘープナーの有名すぎる言葉に「オナニーは罪悪感があるから極上の快感なのだ」というものがある。これには声を大にして異を唱えたい。

コソコソと隠れるように食事をして楽しいか、美味しいか。罪悪感にさいなまれながら食事をして美味しいか。そんなことはない。誰だって大らかに晴れやかに食事をしたほうが美味しいし気持ちいいに決まってる。だったらそう、オナニーだって堂々とやったほうが絶対に気持ちいいはず。見られたほうが気持ちいいはず、それはちょっと違う。

残念ながら、今の法律では天下の往来でオナニーなんてしようものなら、即座に警官隊に捕縛されてしまうのだけど、法と倫理が許すなら是非ともやってみたい、堂々とやってみたい、絶対に気持ちいいはず、そう思うのです。

ですから、そういった誰もが気兼ねなく堂々とオナニーできる理想のユートピアが実現するよう、中高生が家族の団欒の席で妹をオカズに堂々とオナニーできるよう、5年ほど前からオナニーオープン化運動に明け暮れているのですが、一向に改善する気配がありません。

相変わらず世の中は表立った紳士の顔が主流で、まるでオナニーなんて存在しないかのように日常生活が流れています。絶対にオナニーしてるはずなのに誰もそのことに触れようとしません。

女性の場合はもう本当に顕著て、私見で恐縮ですが8割強の女性が「オナニーなんてしないわよ」というカマトトぶった顔でヒールの音をコツコツさせながら歩いているのです。もう嘆かわしくて仕方がない。

男性の場合は、ほぼ100%してますので、さすがに「俺はしてない」と全面的に否定することが少ないのですが、女性の場合は「女性はあまりオナニーしない」ってのが一般論なんでしょうね、平気でオナニーしてないとか言いやがります。うそつくなよ、やりまくってんだろ。毎夜毎夜すごいことしてんだろ。アンマとか電動歯ブラシとか使ってんだろ、なんでそれを隠すんだよ。

僕がこういうこと書くと決まって女性の方から「patoさんは女性を知らない、オナニーしない人けっこういますよ」とか「私、女だけどしたことありません」とか抗議メールが自殺を考えるくらいの勢いでドコドコと来るのだけど、それ自体が疑わしい。絶対やってるって、あんな気持ち良いものやらない道理がない。ゼッタイシテルヨー。

だから、僕が待ってるのは抗議メールとかそういうのじゃなくて、「私のオナニー体験談」だとか「私のオナニーのやり方」だとか、そういうのなんだよ!それも女性の!わかったかっ!

とまあ、思いっきり話が横道に逸れましたが、今日言いたいのはオナニーのオープン化です。もっとこう、誰もが気さくにオナニーを語れる、昨日のナイターの結果を論じるノリでオナニーを語れる、タウン情報誌に極上のオナニーのやり方の特集記事が載る、そんな理想的な世界が到来しないのかということが言いたいのです。

ということで、今日はオナニーオープン化運動の一環としまして一つの企画を行います。これを通じて微力ではありますがオナニーのイメージを良好にしオープン化を促進、来るべき未来の到来に備えたいと思います。ということでどうぞ。

美しいオナニーエッセイ、略してオナッセイ大賞募集!

オナニーにまつわる美しい話を書いてください。オナニーに関する話題なら何でも結構、実話である必要もありません。基本的には美談で泣ける話、感動する話などがベターです。

投稿規程
文字数制限はありません。お好きな文量でお書きください。「オナニー」という語句を入れることが望ましいですが、文意から読み取れる場合は入れなくても大丈夫です。

掲載方法
送られてきた作品を有志数名で審査し、予選通過者は無記名で掲載、その後一般投票によって大賞を決定します。

賞品
numeri.jpメアド(他人への譲渡が可能なのか規約を確認中)
家にあるゴミのような物品たち
ぬめり本1,2セット
焼き鳥屋で酒を奢る(全国どこでも出向きます!)
などなど無駄な賞品多数

応募方法 執筆した原稿を本文としてpato@numeri.jpまで「美しいオナッセイ大賞係」をタイトルにして送付してください。添付ファイルは開けません。応募作品にはお名前とサイトのURL(あれば)、希望の商品などもお書きください。

応募〆切 6/7必着

ということで、皆様の数多くの応募をお待ちしております。一緒にオナニーがオープンな世界を目指しましょう。

ちなみに、いきなり「美しいオナッセイを書け」といわれてもどうしようもないと思いますので、僕のほうでいくつか例文を書いてみました。こういうノリで大丈夫だと思います。

-------------------------------------------------

美しいオナッセイ作品例 [約束のオナニー]

「やだい!手術なんか受けないんだい!」

ここが病院であることを忘れるほどの元気な金切り声が響いた。8歳になる我が息子は生まれつきの病気を抱えている。医者にも見離され、10歳まで生きられれば御の字と暗に言われている。

「病気なんだから治さないとダメよ、お外で遊べなくなるんだから」

手術をしてもいくばくかの延命にしかならない。儚い命をいくらか繋ぎ止めるだけの手術。それだけのために息子の体にメスを入れることは抵抗だった。大きな痛みに耐えることを強いるのはできないと思った。

けれども、一日でも長く生きていて欲しい、少しでもこの子の笑顔を見ていたい。そう思った私は手術を強く希望した。しかし、息子にとって手術は恐ろしいものらしく、頑としてこれを受け入 れなかった。

「僕ね、病気じゃないよ。元気だよ。お外でも遊べるよ」

屈託のない笑顔でそう言う息子は元気そのもので、本当に病気じゃないかもしれないと思えるほどだった。けれども病魔は確実に息子の体を蝕んでいる。そう思えば思うほど涙を堪えることしかできなかった。

この笑顔をいつまで見ることができるのだろうか。

苦痛に歪み、そのまま消えてしまうであろうこの笑顔、私には守ることのできないこの笑顔、正直言って私は迷っていた。このまま何もせず、ただ息子の笑顔が消えていくのをジッと待つべきか、それとも成功率が低く、成功したとしても気休め程度の延命にしかならない手術を嫌がる息子に受けさせるべきなのか。どちらが親として正しい選択なのか・・・。

「やあやあ、俊夫君、体調はどうかな?」

息子の主治医が看護師を伴い、満面の笑みで病室に入ってきた。息子の余命がいくばくもないこと、手術は困難を極めること、成功しても気休め程度にしかならないこと、それらを私に告げた時の深刻な顔が嘘のような快活な顔だった。

「どうかな?俊夫君。手術を受ける気になったかな?」

「手術なんて受けないよ!だって怖いもん。受けても受けなくても僕、死んじゃうんでしょ、知ってるよ」

なんてことだろう。息子は自分の命が残り少ないことも、成功率が低いことも全て知っていた。もう先が長くないことを知りつつも、私たちを悲しませないよう精一杯の笑顔で振舞っていたのだ。

なんてことはない、辛いのは私たち夫婦だけじゃなかった。息子だってそれ以上に辛かったのだ。こんないい子を死なせてはいけない。こんないい子を失いたくない。けれどもどうしたら・・・。

「今日はね、俊夫君に会わせたい人がいるんだ。俊夫君も良く知ってる人だよ」

医師はそう言うと、看護師にドアを開けるよう促した。

「やあ、俊夫君、元気かな」

「すげー!スペルマズの松井選手だ!」

そこには、息子が大ファンのプロオナニー選手、スペルマズの松井選手が立っていた。ブラウン管越しに見るのとは違い、体も大きく、なにより漂うプロオナニー選手独特のイカ臭い匂いが印象的な人だった。

「実は私、松井選手の後援会を運営してましてね、俊夫君が大ファンだということを伝えたら是非会ってみたいと言われたんですよ」

「すげーすげー、お母さん、サインもらおうよ!」

あまりの息子のはしゃぎっぷりに照れ笑いを浮かべた松井選手。息子が差し出したプロオナニーカードにも快くサインをしてくれた。

「俊夫君、手術受けるのが怖いんだって?」

「うん、怖いよ・・・だって体を切っちゃうんでしょ、それに成功しないし、僕もうすぐ死んじゃうんだもん・・・」

松井選手が核心に迫ると、息子は急に俯いて静かになってしまった。

「僕らプロオナニー選手はね、常に怪我との戦いなんだ。僕も俊夫君くらいの頃に酷使しすぎでペニスの靭帯が裂傷してね、アメリカの有名な先生に手術してもらった。あの時は怖かったなあ」

「だよね、松井選手でも手術は怖いよね・・・」

「今でも怖いよ。ペニスに爆弾を抱えてプレイしているようなものだから、オナニーボックスに立つたびに怖くなる。逃げ出したくなる。またあの痛みが再発するんじゃないかって」

「やっぱり・・痛いのは怖いよ・・・」

「でもね、それは違うんだ。痛いのは確かに怖い、手術だって怖い。でも本当に怖いのは、恐怖のあまり挑戦することを放棄する、そんな逃げ腰な自分になってしまうのが怖いんだ」

「逃げ腰な自分・・・!?」

「ああ、そうだ。挑戦することを忘れ、嫌なことから逃げ出してしまう。それは確かに楽かもしれないけど、そこから一歩も進めなくなってしまう。動けなくなってしまう。痛みや手術なんかよりそっちのほうが怖いな。あの時逃げなかったから今の自分があるわけだしね」

「そんなの良く分からないよ。やっぱり僕、手術するの怖いもん。一人で死んじゃうの怖いもん」

息子に「一人で死ぬのが怖い」とまで言わしめた自分の無力さを呪った。それと同時に、息子の心情思うあまり自然と涙がこぼれてきた。それに気づいたのか気づかなかったのか、松井選手はさらに続ける。

「じゃあこうしよう。今夜のナイターで僕がホームシャセイ打つことができたら俊夫君も手術を受ける。これでどうだい?」

「無理だよ、松井選手は確かに2000年にシャセイ王のタイトルを取ったけど、最近じゃスタメンからも外れて、たまに代打で出てくる程度、今シーズンなんて一本も打ってないじゃない。そんなの無理だよ」

「無理だからこそ挑戦するんだ。僕の挑戦と君の挑戦、賭けるかちはあるんじゃないかな?」

「・・・わかった。僕・・・松井選手が今夜ホームシャセイ打ったら手術受けるよ、絶対受けるよ、約束だよ」

「ああ、約束だ」

「俊夫・・・」

あの子が手術を受ける気になってくれた。立ち止まらず、前に向かって歩く気になってくれた。病室を出た松井選手を見送り、病院の玄関で深々と頭を下げた。すると、松井選手はこう言った。

「お母さん、プロオナニーの世界では常に挑戦です。相手ピッチャーの放るエロネタがとても抜けないようなものでも必死で抜く、それでホームシャセイを狙うんです。俊夫君もそうだけど、お母さんにも挑戦する気概を忘れないで欲しい。大丈夫ですよ、今夜、僕は打ちますから」

私の心を見透かされたかのようだった。成功率の低い手術に怯え、息子の笑顔を失うのを怖がっていた。ずっとずっとその場に立ち止まり、ただ漠然と病魔が進行していくのを見ていた。それじゃあダメなんだ、挑戦しなきゃいけないんだ。

走り去る松井選手のポルシェのテールランプを見つめながら、私は何度何度も深々と頭を下げた。

その夜、特別に病室でテレビを観る事を許された。看護師がやってきていそいそとテレビのセッティングを始める。いよいよ、松井選手の挑戦、息子の挑戦、そして私の挑戦が始まるのだ。

試合は1-0の投手戦だった。松井選手の所属するスペルマズは、今シーズン首位を独走するオナホールズの大型ルーキー投手に完璧に抑え込まれていた。オナホールズの犠牲シャセイで1点が入ったのみ、スペルマズは負けていた。もちろん、松井選手はスタメンから外れ、未だ出番がない。

「いやー、ちょっと今日は両投手状態が良いですね、これはちょっとホームシャセイ打てないんじゃないかな」

解説者が白熱の投手戦にご満悦といった調子で解説する。試合は9回裏、いよいよスペルマズ最後の攻撃となった。

「お母さん、松井選手出てこないね」

「大丈夫、松井選手ならきっとやってくれるわ」

そんな言葉も空しく2アウト、いよいよ最後のバッターがオナニーボックスに立った。もうダメだ、この投手なら抑えてしまうだろう、そして試合は終了、松井選手が出るまでもなくスペルマズは負けてしまう。

「あーっと、ボークですね、ボークです。山田投手、エロネタを投げる前にチラッと見せてしまいました。見た感じフォークのような、40代熟女のセミヌードですね、これは痛い、ボークです。打者は無条件に1塁まで進みます」

奇跡が起こった。好投を続けていた山田投手がボーク、同点のランナーが一塁へと出た。

「あー、ここで監督出ますね、どうやら代打のようです。代打ですね、今ゆっくりと主審にかけより代打を告げました、場内放送にご注目ください」

「6番、ライト田中に代わりまして、代打、松井、背番号69」

一斉に場内がどよめく。それと同時に病室でもどよめきが起こった。いつの間にか医師や看護師だけでなく、他の入院患者までテレビに駆け寄り松井選手と息子の挑戦を見守っていた。

「ここで松井とは驚きですね。左投手山田に対して左曲がりの松井が代打です。松井選手は今シーズンはまだホームシャセイはありません。これは思い切った起用ですね。さあ、一打出れば逆転サヨナラ、注目の打席です。」

松井選手はゆっくりとオナニーボックスに立つと、おもむろにズボンを脱ぎ始めた。そして血管を浮き立たせた逞しすぎる男根を誇らしげに素振りする。全盛期の松井選手独特のオナニースタイルだ。そそり立つ男根が相手投手を威嚇しているかのように思える。

「さあ、山田投手、セットポジションから第一球を投げた!」

松井選手の男根は空しく宙を舞った。

「ストライク!今のはスライダーですかね、女子プロレスラーのヌードコラージュでしたね」

「今のはちょっと抜けないでしょう、厳しい球投げるなー」

ピンと張った糸が部屋中に縦横無尽に張り巡らされているかと思うほど緊迫した空気が病室に流れた。息子はジッとテレビを見つめている。

「さあ、第二球を投げた!空振り!」

松井選手の男根はまたも空しく虚空を切り裂いた。これでツーストライク。

「解説の権藤さん、またスライダーですね。二球続けて女子プロコラ、これには松井、全く手が出ません」

「スライダーが冴え渡ってますね」

「決め球は何できますかね」

「恐らく得意のカーブ、それもYAWARAちゃんのコラージュあたりでしょう」

テレビを観ていた誰もが息を呑む瞬間。いよいよ最後の球が放たれる時が来た。

「ピッチャー山田、振りかぶって第三球を投げた」

ドピュ!

「抜いた抜いた!これは大きい!グングン伸びているーーー!」

松井選手の抜いた白濁液は大きく漆黒の空に飛んでいった。まるで星空と一体化したかのように白い液滴がフワリフワリと宙を舞った。

「ライトバック、必死にバック、それでも追いつかない。入ったー入ったー!ホームシャセーイ!」

「やはりYAWARAコラでしたね、それを見事に抜きました。あれはピッチャーを責めれないですよ」

「渾身のYAWARAコラを抜き返した松井の白濁液!ライトスタンドに飛び込みました!」

「あーあ、客がドロドロになっちゃってるな」

「いま、松井はゆっくりとベースを回ります。たくましいですね、あれだけのホームシャセイの後にまだ勃起してますよ。そして今、ゆっくりとホームイン!サヨナラです、サヨナラ2ランシャセイです!」

ワッと病室でも歓声が上がった。医師も看護師も入院患者も、まるで自分のことのように手を取り合って喜んでいた。

「今日のヒーローインタビューは、見事な逆転サヨナラシャセイを打ちました松井選手です!どうでしたか、最後の1球はカーブだったようですが」

そんな質問はお構いなしに、松井選手はマイクを奪い、カメラに向かって呼びかける。

「俊夫君、見たか!約束は守ったぞ!今度は君が約束を守る番だ!」

それをベッドの上で見ていた息子は、ふっと私のほうを見るとこう言った。

「お母さん、僕、手術受けるよ、手術受けて病気を治して松井選手みたいなプロオナニー選手になるんだ!」

私はもう、涙で何も見えなかった。

「そうだね、頑張ろうね」

そう言うのが精一杯だった。

「よし、俊夫君も松井選手との約束を守ろう。そして完治したらオナニーの練習だな!」

医師がそう言うと息子はニッコリと笑って

「大丈夫、オナニーの練習ならいつもしてるよ!看護師さんでいつも抜いてたんだから!」

ポークビッツのような男根を差し出し、必死でしごいて見せたのだった。その手つきは素人とは思えず、また病人とも思えないほど逞しくて頼もしいものだった。

「こいつは頼もしいや!ははははは!」

いつまでもいつまでも、息子が喘ぐ声と共に医師と看護師、そして私の笑い声が病室に響いていた。

―あれから10年、ブラウン管の向こうに我が息子の逞しい男根が映し出されている。そしてそのテレビの横には、あの日、松井選手にサインしてもらったプロオナニーカードに並んで、我が息子のプロオナニーカードが寄り添うように置かれている。

----------------------------------------

こんなクソみたいな感じでお願いします。もちろん、僕も無記名で参加します。みんなでオナニーにまつわる美談を書きまくりましょう!


5/24 BAD COMMUNICATION

「藤井さんはな、すごい人なんだぞ!」

訳の分からないメールが来ることがあります。全く見覚えのないアドレスから訳の分からない時間に送られてくるメール。開くと「藤井さんはすごい!」という内容。藤井さんって誰だよって思いながら途方に暮れること山の如し困惑すること風の如しです。

僕の携帯電話には日に50通ほどの宣伝メールが届きます。出会い系サイトやら詐欺サイトの宣伝目的で送られてくるメールは数多く、中には間違いメールを装って送信してきて受信者の興味を惹き、それからじっくりとめくりめく詐欺ワールドに引きずり込む手法があるようです。

「幸子です。明日の飲み会どうする?ここなんかどうかな?http://(詐欺出会い系サイト)」

こうやって詐欺てんこ盛りのサイトに誘導する手法は一般的で、現実社会に生きる男性の孤独と下心、心の隙間に突け込んだ電脳的詐欺といえます。

「あゆみです。今日は主人がいないの、どうしたらいいのかしら?」

「いろいろなエッチに興味あるな!教えて!」

「家出してきちゃった!今夜泊めて〜」

なんて肉欲的なメールがドッカンドッカン来たりするのです。最初はこの藤井さんメールもそういった類の間違いメールを装った宣伝メールだと思いました。最初に興味だけ惹いておいて徐々にサイトに誘導する、その類のものだと思っていました。

けれどもね、よくよく考えてみるとおかしいんですよ。何か一点だけどう考えてもおかしい部分がある、そう言わざるを得ない箇所があるんです。

こういった数多くの誘惑メールは、最終的に詐欺を行うサイトに誘導、モロッと引っ掛けて大金を得るのが目標です。当然のことながら、引っかかりやすいように仕組むのが大前提です。つまり、最初のメールの段階で例に出したように性的何かを連想させるキーワードが盛り込まれているのが普通なのです。

上のメールでは「飲み会」「主人がいない」「エッチ」「家出」、どれもこれも性的エトセトラを連想させるダイナマイトキーワードにです。他にも「セックスレス」「彼氏と別れて」「欲求不満」「夜勤明け」「クラスの子はみんな経験済み」などがダイナマイトキーワードの代表例として挙げられますが、この種の語句が盛り込まれているメールはほとんどが詐欺に誘引するメール、そう考えてもらって大丈夫です。

けれども、冒頭に挙げた突如として送られてきたメール、これにはそういったキーワードが皆無なのです。もう一度記述すると、「藤井さんはな、すごい人なんだぞ!」ですから、性的何かを連想するキーワードは皆無、百歩譲って「すごい人」を「性豪」などと解釈もできますが、それじゃあいささか弱い気がする。

だから、これは詐欺サイトへの勧誘でも何でもなくって、実は本気で間違えて送ってしまった素ボケのメールなんじゃないかと判断、普段なら鬼の勢いでスルーするのですが、そのボケっぷりが妙に可愛く感じられて返事を送ってみたんです。それよりなにより、藤井さんがいかにすごいのか気になってしょうがなかった。

「え?藤井さんって誰ですか?それよりアナタは誰なんですか?」

藤井さんって誰だよ、という疑問を投げかけ、さらにアナタは何者なの?という疑問まで投げかける。自分の疑問をぶつけつつ、それでいてジェントルマン。対応としてはモアベターなものだと思います。

しかしながら、このような素敵な返信メールを送ったにも関わらずビックリするくらいに反応ナッシング。待てど暮らせど一向に返事が返ってこないのです。こっちはすげえ困惑しつつ悶々と返事を送ったというのに。

そうなってくると、メールを送ってきた人のことや藤井さんのことが無性に気になってくる。送信者は何を伝えたかったのか、藤井さんの何がすごいのか、もはや気が気でない状態に。

もしかしたら、あれは送信者の最後のSOSかもしれない。暴走するアメリカ、北朝鮮の核兵器、緊迫の中東情勢、世界が混沌とした陰謀に呑み込まれて行く中、騒乱を沈められるのは藤井さんしかいなかった。偶然にもその事実を知ってしまった送信者、世界が騒乱の乱世に堕ちて行くのを食い止めようと奔走する。しかしながら、戦争による特需を当て込む某国の軍事産業シンジケート、特に闇の武器商人はそれを許さなかった。あらゆるスパイ機関を駆使して送信者の抹殺に乗り出す。迫りくる暗殺者との激闘、逃亡、次第に世界の闇の全容が明らかになりつつあった。「なんとかして藤井さんが世界を救えることを伝えねばならない、平和のため、世界のため、この世を戦争だらけにしてはいけない、子供が笑顔で遊べる世界を守らなければならない」送信者は逃亡者となり必死の逃走劇。途中、謎のお色気美女スパイ、キャサリンの協力もあってついに敵の総本山、武器商人の屋敷に辿り着く。しかしそれは罠だった。キャサリンの裏切りに遭い地下室で絶体絶命の逃亡者。息も絶え絶えの中、彼は最後の気力を振り絞って携帯電話のボタンを押し始めた。誰でもいい、この世界を救えるのは藤井さんしかいない。その事実を伝えなければ・・・。デタラメに押した携帯アドレス、最後の力を振り絞って打ち込んだ文章「藤井さんはな、すごい人なんだぞ!」その想いは電波に乗って僕に届いた。悪の武器商人の高笑いと共に。

なんて展開もありうるかもしれません。これだったら難解なメッセージが何の脈略もなく僕の元に届いたのも理解できるし、それに対する返事がないのもうなずける。きっと、送信者はもうこの世には・・・。こんな心配だけが悶々と心の中で育ってしまうのです。

メールとは双方向コミュニケーションだと勘違いされがちです。テレビや書籍、新聞など多くの情報が一方的に垂れ流され我々がそれを受信する、僕らはそうやって一方的な情報の垂れ流しに慣らされてきました。そこに登場したインターネットや携帯メールなどに代表される双方向コミュニケーション、随分と画期的でした。

メールは違う。誰かとメッセージをやり取りするんだから双方向だ。こちらがアクションを起こせば相手も何かしらの反応をしてくれる。人間と繋がっているんだ。と勘違いしがちなのですが、実はメールも一方的なコミュニケーションに過ぎないのです。

送ったメールがいつ読まれるのか分かりません。場合によっては受け取った人もしくは送信した人がどんな人かも知りません。相手がどんな表情でメールを読んだのか分からなければ、どんなシチュエーションで読んだのかも分かりません。それどころか、今回の藤井さんの件のように、一方的に難解な内容のメールが送られてこようもならコミュニケーションもクソもありませんし、返事を出してもそれに返答がなければコミュニケーションでも何でもないのです。

メールなんかで他人と繋がれるはずがありません。そこだけは錯覚しないで欲しい。メールで相手のことなんかわからねえ。

「こんにちわー♪明日の飲み会どうしますかー♪」

見覚えのない女性っぽいアドレスから携帯電話にまたもメールが届きました。これもまた一方的なコミュニケーションです。「飲み会」という性を連想させるダイナマイトキーワードが入ってることから、これもまた詐欺サイトに誘導するウンコメールだろうと判断されます。

きっと、これに返信しても、僕の返信内容とは的外れな返信が来て、それで極めてナチュラルに詐欺系出会い系サイトに誘導されるのは明白なのですが、どうせコミュニケーション不全なメールのやり取りです、思いっきりはじけた内容で返信してやろう、なあに、相手はどうせサイトに雇われたバイトの学生かなんかだろう、内容も見ずに定型文を返信してくるんだろう、と判断。スパイシーに返信しておきました。

「飲み会では酒も飲みまくり!ベロベロに酔っ払って貴方のアナルもペロリですわい!がははははは」

と返信しておきました。

まあ、これでしばらくしたら、僕のキチガイな返信とは無関係の返信が、それも思いっきり定型文な返信が帰ってくるんでしょうけど、こんなものコミュニケーションでもなんでもないよな。こっちが書いた文章に対して相手の心が動かないんだから、1ミリもコミュニケーションじゃねえ、とか考えながら返信を待っていると

「・・・えっと・・・もう酔っ払ってますか?」

という、至極コミュニケーションなメールが返ってきました。コミュニケーションできてるじゃない。

そのメールを見た瞬間、急に恐ろしくなった僕は色々と心の中を検索した結果、「そういえば職場で飲み会があるっぽい」「その連絡用に職場の事務員さん(21歳OL)に携帯メールアドレスを教えたっぽい」「その彼女の下の名前と、送られてきたメールのアドレスが非常に酷似している」という国辱物の事実に気がついてしまい、気が動転してできることなら手首を切りたい、それどころか手首ごと切り落としたい衝動に駆られました。

「って、山本君が言ってました。山本君はな、すごい人なんだぞ!」

とりあえず、こう返信し、同僚の山本君に罪をなすりつけておきました。なんとか保身に走ったのですが、どうにもこうにもフォローしきれてなくて目も当てられないような気がします。もう返事が来ても返信しない。もう会社行きたくない。

相手のことなんて全然分からないメールのやり取り、だから僕は携帯メールが大嫌いです。助けてキャサリン!

予告
現在、久々に対決物の収録中です。今度の相手は、男だったら誰もが気になるあの業者!息詰まる白熱の攻防戦の真っ最中。鬼が出るか蛇が出るか、まさにデッドオアアライブ!近日登場予定!乞うご期待!


5/18 最狂親父列伝-誘拐編-

「娘は預かった。無事に帰してほしくば4千万円用意しろ。警察には連絡するな」

「芳江は、芳江は無事なんですか!?お金は用意します!声だけでも聞かせてください!」

「ふはははは!声が聞きたいのか、ちょっとだけだぞ、ほれ!」

「お父さん!助けて!」

「芳江!芳江!怪我はないのか!?」

「大丈夫よ、怪我はないわ」

「ふはははは、金さえ用意すれば無事に帰してやる」

「お願いします、お金はいくらでも用意します。警察にも言いません。ですから芳江に危害を加えることだけは・・・。」

今時、ベタなテレビドラマでもこのようなやり取りを見ないようになりましたが、誘拐事件の際の電話の定番中の定番と言えばこんな感じになるのではないでしょうか。悪辣に犯行を宣言し、まるで弄ぶかのように楽しむ犯人に、何でもするから娘を返してくれ!と懇願する親のサイド。その対比こそが最も犯罪を憎む所以たる部分なのです。

実際の犯罪の場合、おそらく快楽目的での殺人以外などでは犯人側も必死ではないのかと思います。誘拐にしたって、ほとんどの場合が金に困って、サラ金の返済に追われて、あるいは怨恨などの場合もありますが、犯人も犯人なりに必死な場合がほとんどだと思います。そう、気楽に誘拐なんてほとんどあり得なくて、誰もが必死で誘拐事件を起こすのです。

そんな必死であるところの誘拐で、それも花形たる脅迫電話がお気楽なわけがなく、きっと物凄いレベルの緊張を伴って電話をかけているはずなんです。未だかつてこんなに緊張したことないくらいの思いでかけてるに違いありません。

そりゃあ、誘拐の脅迫電話をかけるだなんて、おそらく人生で一度っきりの経験でしょう。もはや結婚や葬式並みの一大イベント。ここでミスったら芋づる式に色々とバレて捕まってしまうこともあるかもしれません。けれども、それ以上にトチったら恥ずかしいはずです。緊迫感張り詰める脅迫電話でトチったら恥ずかしいに違いない。

ですから、僕がもし犯人だったら、すっごい緊張するでしょうし、電話をかける前に何度も練習すると思います。いざ喋る段になって噛んじゃったりしたら目も当てられないので、下手したら使いそうなセリフは事前に録音するかもしれません。誘拐ってのは犯人も被害者も、それだけ真剣なのです。決してお気楽なんかじゃない。

そりゃあ、真剣だからって誘拐自体が許されるものではありませんし、卑劣なる憎むべき犯行であるのは確かです。しかしながら、冒頭のやり取りのように電話を受けた親だけが深刻、犯人はお気楽にまるで犯罪を楽しむかのように電話をかける、そういうことはあり得ないと思うのです。どっちも真剣、緊張感張り詰める電話の応酬、それが誘拐事件ってものだ。

極稀に、例えば常に犯罪と隣り合わせに生きてきたアウトローな方や、犯罪をまるでゲームのように捉える、ちょっと頭のイッちゃった人なんかは、お気楽に身代金要求電話をかけるかもしれませんが、それでも受けた方は常に深刻なはずです。そりゃあ最愛の子供が犯罪者の手にあるわけなんですから、真剣に受け止めないほうがおかしいです。

怖い思いをしてないだろうか。ちゃんと食べさせてもらってるだろうか。まさか暴行を受けてるんじゃ。様々な思いが渦巻くはずです。もう気が気じゃなくなってしまい、心配で心配で憔悴しきってしまう。間違いなくそんな状態になるはずです。ええ、親であるならば、いいえ、人であるならばそれは当たり前のことなのです。言うなれば大前提。

しかしながら、世の中ってのは広いものですね。子供が誘拐されようが何しようが風林火山の如く動じない親、それどころか意味不明な自説を展開し、キチガイの如く振舞う親が確実に存在するのです。ええ、存在するのです。考えたくもないですが、確かに存在するのです。

それがまあ、本日の日記のタイトルからも分かるとおり、皆さんご察しのとおり、キングオブキチガイこと我が親父だったりするのです。もう、コイツばっかりは信じられないほどにキチガイ全開、パワー全開、異端な行動を思う存分してくれるのです。

僕がまだ幼かった頃。あまりに幼すぎて脳髄が未熟だったのでしょうね、なんの臆面もなく「お父さん大好き!」とか言ってた頭が弱く無邪気な時代があったのですが、その時に質問したんですよね。

「ねえねえ、僕が誘拐されたらどうする?」

今みたいに、ウンコして何度となく尻を拭いても茶色いものがついてくるほど汚れていなかった無邪気な僕でしたから、それはそれはピュアな精神で聞いたんです。最愛の父の愛情を試すような、僕に対する愛情を計り知るような、そんな動機で聞いたんです。

そしたらアンタ、うちのオヤジもまんざらではない様子で、最初は照れ隠しからか「誘拐されたら愉快痛快」とか豪快なギャグを、ウィットに富んだジョークをかましてたのですが、次第に真剣になって言うんです。

「子供ってのはな、親が作ったものだ。それを奪うってのは許し難いことで何としてでも返してもらわないといかん。もしオマエが誘拐されたのなら、ワシはなんとしてでも返してもらうぞ」

至極真っ当、とんでもないほど正論、それでいて親の子への愛がふんだんに伝わってくる回答ではないですか。何をしてでも返してもらう、子を思う親なら当たり前なのです。

「でもな、犯人だって真剣なんだ、だから、それに代わるものを渡してやらないといかん。じゃないと返してもらえないからな」

冒頭で述べた、犯人だって真剣なんだよというお話は、親父のこのセリフから来ているわけなんです。無事に子供を帰してもらえるよう人質に代わるものを渡さないといかん、ウチの親父はそう言ったのです。

僕はそれを聞いたとき、人質に代わるものとは、おそらく身代金のことだと思いました。ウチは客が来たときに出した割り箸を洗って50回ぐらい使うほど貧乏だったのに身代金を出してまで僕を取り戻してくれるなんて・・・。子供心に親父の深い愛に感動したのでした。しかしながら、それは身代金でもなんでもなくて、もっとクレイジーな異端な代物をだったのです。それを犯人に渡すと親父は主張したのです。

「うち、お金ないのに身代金払ってくれるんだねっ!」

無邪気さ全開、親父の愛情を感じられたことに喜びを覚えた僕は、まるでエンジェルのように微笑みながら言いました。しかしながら、

「違う!そんな金はない!」

と親父は一喝。甘ったれたこと言ってるんじゃねえと言わんばかりに怒鳴るのでした。なんで怒鳴るねん。

他愛もない世間話、それこそウンコのような恋人同士が「私が死んだらどうする?」「俺も死んじゃう、芳江なしじゃ生きていけない」とか核兵器を打ち込まれても文句言えないような甘ったるい会話をするレベルのスウィートなお話をしていたのに、「金がない!」と一喝された僕。動揺が隠せません。

「え、お金を渡さないって・・・どうやって返してもらうの・・・?」

もうやめておけば良いのに、動揺しちゃってるもんだから、僕はさらに親父に問いかけます。それに対する親父の返答は圧巻で

「原料を渡す」

という良く分からないもの。そこから親父節全開ですよ。

「言うまでもなく子供はワシらが作ったもの。それを誘拐していくというのは許しがたい。でもな、犯人にも譲歩しなきゃならん。だから、奪った子供の変わりに子供を作った原料を持っていく。ワシが子供を作った原料を引き換えに返してもらう。原料も子供も大差ないだろう」

「原料・・・?」

「ワシの精液だ

地平線を見つめるかのごとく真っ直ぐ前を見て言い切る親父。ズガーンという効果音が聞こえるかと思うほどでした。まだちゃんとした性教育も受けてなくて「めしべ」「おしべ」も分からない僕に向かって精液ですからね。頭の配線がメルトダウンしてるとしか思えない。

それどころか、この人の場合、本当に僕が誘拐されても本気で精液をビンにつめて持って行きかねないですから恐ろしい。そんなことしたら逆上した犯人に僕が殺されるに違いない。もう、キチガイ、人外、ナイスガイ。いや、ナイスガイは違う。

結局、これは親父の照れ隠しのジョークかとも思ったのですが、彼の場合、普通に本気でそう考えてる部分が多々あり、本気でやりかねないので悲しいやら恐ろしいやらで複雑な気分になったのでした。

そして、それから数年後。

酒を飲んで大暴れする親父が、DVヨロシクで母親に暴力を振るい、雪の日の寒空の中を母と手を取り合って親戚の家に逃げたことがあったのですが、さらに酒を飲んでスーパー親父と化した彼が親戚の家まで僕と弟を取り返しに来たことがありました。

「子供を返せ!」

親戚の家の玄関で母親と口論になり、結局、僕だけが恐怖の親父に連れ戻されることになったのですが、親父はグデングデンに酔ってるくせに家まで車を運転、まさにヘブンズドライブとしか言えなかったのですが、その際に彼のポケットから変な小瓶が見え隠れしてました。

もう、あの会話を交わした当時とは違い、性についてのイロハの知識を得ていた僕は、恐ろしくて瓶の中身が何であるのか考えたくなかったですが、彼があの日の言葉を忠実に再現してるであろうことは分かりました。

車のヘッドライトが路面に積もった雪に反射し、幻想的に車内を照らす中、フラフラと車線をはみ出す飲酒運転の親父を見て思いましたよ。ウチの親父は狂ってる、間違いない、と。

誰か本気の誘拐犯が来て僕を連れ去って欲しい、そう思ったのでした。蛇行運転に連れらてポケットから揺らめく小瓶の中の液体を眺めて。


5/11 女の子の不思議

不思議、不思議、女の子って不思議。

いやね、前々から思ってたことなんですけど、女の子ってホント不思議ですよね。理解に苦しむというか不可解というか、「なんでこうしないんだろう?」って思うことや「なんでそうなの?」って思うことが多々あるんですよ。ホント、女の子って不思議、不思議、藤木。

まずですね、僕がそこそこカワイイ女に生まれていたとしたら、毎日セックスしまくりです。もう煙が出るくらい変な棒出したり入れたり、相手をとっかえひっかえ、ちぎっては投げちぎっては投げ、とにかくしまくって、多くの男性に幸せを振りまく、そんなエンジェルのような存在にきっとなってるはずです。

それなのに、世の大半の女性は出し惜しみしていやがる。セックスを男と女のラブゲームの切り札に、真剣勝負の決め球に設定している部分が多々あるんですよ。ひどいのになると、プレステが買えちゃうくらいの金と引き換えにセックスとか、援助交際にまで発展する始末。ホント、いい加減にしろよと言いたい。どんだけ出し惜しみするんだと。

もっとこう、すれ違いざまにセックスだとかさ、挨拶代わりにセックスだとかさ、お近づきのしるしにセックスだとか、「この味がいいね」と君が言ったから七月六日はセックス記念日だとかさ、なんでオープンにできないのか。

僕が女だったらやりまくり、きっとセックスの代名詞みたいな存在になっているはずなのに、現存する女性の大半はそんなことはない。もう、これが不思議でしょうがない。

それにね、そういったセックスに関するエトセトラももちろん不思議でしょうがないんですが、それ以上に不思議な事象があるんですよ。なんていうか、これを聞いたら皆さんもご理解いただけると思うんですけど、本当に決定的に女の子が不思議でしょうがない事象があるんですよ。

それが、女の子の言う「かわいい」という基準。これがいかんとも分かり難い。

世の女性は良く分けのわからない腐ったパンダみたいなキャラクターや、どうみても硬い日のウンコとしか思えないマスコットを「かわいい!」と連呼したりし、頭の中に水死体でも詰まってるんじゃないかと思うほど理解に苦しむことがあるのですが、それ以上に理解できないのが女性が女性を、特に親しい知人を評価する際の「かわいい」という基準、これが全く持って理解できないのです。

ほら、女性って、自分の友人とかのことを話す時に、「かわいい子で」とか言うじゃないですか。そりゃね、世の中には沢山のかわいい子がいますよ、山のようにカワイイランカーの女性がいますよ。けれどもね、どういう比率で考えてみても、女性が「カワイイ」と紹介して本当にそうであることが少ないんですよ。

僕も人の容姿をどうこう言えるほど偉くなんですけど、どう考えても夜は墓場で運動会みたいな女性を「カワイイ子だよ」とか言いやがりますからね。一体彼女の頭の中でどういった変換が行われてるのか、何枚フィルターかけて画像処理してるのか不思議でしょうがない。

かと思ったら、雑誌の表紙なんかで神々しく微笑む大塚愛様を見て「大塚愛ってかわいくないよね」とか神をも恐れぬ大胆な発言をしてくれたりしますからね。目が腐り落ちて変わりに半熟卵でも入ってるんじゃないか。

この間もそうですよ。こんな事件がありましたよ。

「ポップティーン」とか言う、浜崎あゆみに憧れてる女子高生が読むような雑誌があるんですけど、その表紙に我らが大塚愛様が載ってたんですよね。「勝ち組ダイエット!」とかいう意味不明な煽り文句とともに笑顔でピースをする大塚愛様は、相変わらず慈愛に満ちた笑顔で、この笑顔と彼女の歌声さえあれば世の中の犯罪とか戦争とか裏切りとか家賃の督促とか、そういったどす黒い物が浄化されていくんじゃないか、なんていつものごとく思っていたわけなんですよ。

で、その雑誌で大塚愛様の特集インタビューをやってるっぽいので、手にとってペラペラと読んだわけなんです。考えてみてください、「ポップティーン」という正に10代の小娘が読むような雑誌を僕のような野武士が読んでいたわけなんです。そりゃ周りの視線が痛いほど刺さる刺さる。

大塚愛様の特集はやはり素晴らしく、感動のあまり何度も嗚咽を繰り返し、なんで彼女が国民栄誉賞を貰えないのかと怒りに打ち震えていたのですが、そうするとね、横から会話が聞こえてきたんですよ。

「えーカワイイよー」

「そうかな?」

「超カワイイって!」

二人連れの女子高生みたいな娘っ子がいたんですけど、一方の女の子がもう一方の子をしきりに褒め称えているんですよ。モデルをその気にならせてヌードにさせようと画策するカメラマン以上に「かわいい」とか「美人」とか連呼してるんですよ。

「この髪型とかいいと思うんだよね」

「うん、幸子はカワイイから何しても似合うよ!」

「えー、そうかなー」

とか、もう褒めまくり。その会話を横で聞いてると、確かにポップティーンの大塚愛様も気になりますが、そこまで褒められている娘のことが気になるじゃないですか。大絶賛されている幸子のことが気になるじゃないですか。

あいにくとね、僕のポジションからは褒められている幸子の後姿しか見えないの。褒めてる子のほうは顔までバッチリ、まあそこそこにかわいかったりするんです。そんな子が大絶賛するほどカワイイってんですから期待するじゃないですか、後姿的にもカワイイオーラがムンムンしてるじゃないですか。だからね、不自然でないように移動しつつ、幸子の顔を確認しにいったわけなんですよ。

そしたらアンタ、もうお決まりの展開なんですけど、何かの悪い冗談みたいな、笑えないブラックジョークみたいな幸子さんじゃないですか。法律と世間体が許すなら、褒め称えていた子を逆さ吊りにして激しく叱責したい、そんな気分に駆られましたよ。

で、その幸子達は「サッカー部の大竹君は絶対に幸子に気がある」だとか「実は不倫に興味がある」とか訳の分からない、ノストラダムスの四行詩みたいなことのたまってたんですけど、それ以上に許せなかったセリフが

「大塚愛ってかわいくないよね」

ですよ。もうね、時代が時代だったら打ち首ものですよ。どうしてこう、とんでもアニマルな知人をカワイイと賞賛して、大塚愛様を貶めることができるのか。その感覚が不思議でしょうがない。僕としては中国人ばりにデモでも起こしたいくらい怒ったわけですが、そこは大人、グッと堪えましたよ。

それにしても、女性が女性に「カワイイよ」というのは本当にあてにならない。こういう話もあって、大学時代に、よく授業で一緒になってた座敷わらしみたいな顔した同級生の女の子がいたんですけど、その子がお見合いおばさんのごとく僕に女性を紹介しようとしてくるんですよ。

「絶対にいい子だから、会うだけ会ってみて」

「すごいカワイイ子だよ!」

とか連日の如く、それこそ大学に行く度に言われましてね、そこまで言うなら会ってみるかって期待と股間を膨らませて会いにいったわけですよ。その座敷わらしの情報によると、その子はどちらかといえばカワイイ系で、グラマラスな体系、性格も器量も良くてモテモテにモテてるらしい。もうとにかくカワイイと連呼。

「でさ、その子にpato君の好み伝えておくからさ、どんな子が好み?」

とか言うわけですよ。座敷わらしが。もちろん僕も確固たる好みを持ってますので、この申し出は願ったり叶ったり。それとなく好みを伝えます。

「髪は後ろで一つにくくってて、原チャリに乗ってる子が好み。あと、ブーツとか履いてるの好き」

とか、ちょっとはにかみながら伝えましたところ、

「大丈夫、バイクの免許持ってるし髪も長いよ!言えばブーツも履いてきてくれるんじゃないかな」

という有難い座敷わらしのお言葉。当日、もうドキドキしながら会いに行きましたよ。

そしたらアンタ、待ち合わせ場所には金剛力士像みたいな女が立ってるじゃないですか。なんかブーツとか履いてるみたいなんですけど、ちょ、おまっ、それブーツって言うかリングシューズじゃねえか、みたいな感じなんですよ。

「今日は乗ってこれなかったけど、普段は原チャリに乗ってる」

とか、金剛力士像が言ってたんですけど、僕の頭の中では力士像がマッドマックスみたいなアメリカの大きいバイクに乗ってハイウェイを疾走、追い抜く際に他のバイクを裏拳でなぎ倒していく絵図しか浮かびませんでした。

記憶が封印されていて良く覚えてないんですけど、確か飯食って映画見て帰ってきたと思います。

次の日、座敷わらしが「かわいかったでしょ?」とか、得意気な、小悪魔的顔をして近寄ってきたんですけど、その刹那に思いっきり目潰しでもかましたい衝動に駆られましたが、グッと堪えました。

「カワイイ」という言葉は、当て字で「可愛い」と書きます。愛することが可能な相手なら、それはもう「可愛い」ということなのです。つまり、カワイイの基準は人それぞれ、誰かが誰かをカワイイと言ったからといって、それを責める事はできないのです。

けれども、その、なんだ、もうちょっと色々とあるだろ。もうちょっと控え目にというかなんというか、その、なんだ、とにかく、女性が女性を紹介する際に言う「カワイイ」という嘘8000の形容詞、あれだけは絶対にやめて欲しい。

ああいうのは本当にカワイイと思って言ってるのか、それとも俺達無垢なる子羊をはめてやろうとして言ってるのか、その辺のところを是非とも女性に聞いてみたい。

不思議、不思議、女の子って不思議。

ちなみに、全然関係ないですけど、誰が見ても普遍的にカワイイ大塚愛様の待望のニューシングル「SMILY/ビー玉」が本日発売です。これは神からの贈り物です。みんな買いましょう。僕は10枚くらい買います。


5/2 ゴールデンウィーク

世間様はゴールデンウィーク真っ只中、みなさん行楽に観光に恋に仕事に忙しい事と思います。僕は僕でゴールデンウィークだというのに初っ端から葬式に参列するというゴールデンとは思えない日々を過ごしておりました。

職場の上司の親族が亡くなったとかで、何の縁もない人の葬儀に参列したわけなんですが、炎天下の真昼間に喪服を着て出棺を見送るという拷問みたいな扱いを受けておりました。照りつく日差しがチリチリと真っ黒の生地を焦がしており、早い話、こっちが死ぬかと思った。

亡くなった方は88歳だったらしいのですが、参列している人も負けじと高年齢。葬儀前の雑談では老人どもが「いやー、豊蔵さんは何歳じゃったんかいの?」「わしの3つ下だったはずだから88歳くらいかのう」「まだまだ若いのに・・・」なんていう、物凄いハイレベルな攻防が繰り広げられておりました。もはや神々の戦いのレベル。

まあ、そんな地獄の葬儀の話は置いておきまして、さすがに連日参列しているというわけでもなく、何もすることない退屈な休日ってのもあったわけなんですが、これがもう破格に素晴らしい。

気だるく流れるアンニュイな時間。普段、仕事や時間、家賃の督促に終われ心安らぐ暇のない僕にとって休日こそが最高の癒しだったりするのです。そういう時はね、僕はダラーっと気を抜いてテレビを見たりするんですよ

僕は普段はテレビを全く見ない人間で、現に数ヶ月前までは家にテレビすらないと言う、仙人みたいな生活をしていたわけなんです。ドラクエ8をプレイしたいがためにテレビを購入し、いくらかテレビを見るようになったのですが、やはりまだまだ人並み以下です。

そんな僕でも楽しみにしている番組ってやつがあって、それが「休日の午前中にやっているローカル色丸出しの番組」だったりするのですが、これがもう心の琴線をブルンブルンと振るわせてくれる。死ぬほど楽しみに見ていたりするんです。

都市部在住の方にはピンと来ないかもしれませんが、特に土曜日など午前中にやっているローカル番組は物凄いものがあります。

見たことないような自称芸能人が芸能人風吹かせて地方都市で郷土料理に舌鼓を打つ、なんてまだまだ序の口。酷い番組になるとホームビデオで撮ったような記念講堂かなんかの落成式の様子を延々と流してますからね。それだったら開き直ってアンパンマンの再放送でもした方がいいんじゃないかっていう内容ばかり。

まあ、ローカル番組なんて予算も少ないでしょうし、あまり視聴率も見込めない。そうなると自然と出来ることは限られてくるのでしょうけど、僕はそのやる気のなさっぷりが大好きなんですよね。良い意味でやる気のないローカル番組。これがもう極上の好物なんです。

ちょうどその日もですね、ウホウホと喜びながらテレビを見ておったんですわ。休日の午前に布団の中でまどろみながらクソのようなローカル番組を鑑賞する、これほど極上の幸せがあるだろうか。

その日は、超ローカルな少年剣道大会の模様を放送しておりました。「羽ばたけ!少年剣士!」とかいう、観てるこっちが恥ずかしくなるようなサブタイトルがついており、一人で身悶えるような、まるで心をレイプされたかのような感覚に酔いしれておりました。

どうやら、ちょっと規模が大きめの小学生剣道大会が近くの体育館であったようなのですが、その様子をごろっと1時間枠で放送してやがるんですよ。ただただ小学生が「めーん!」とか叫んでるのを放送するのみ。番組編成上、大変問題ありですがローカル番組では普通に行われることです。

ちっちゃい防具をつけた子供がチョコマカ跳ね回りながら「めーん!」だとか「どー!」とか言ってる映像を垂れ流す。実況も解説も何もなし。この脱力っぷりがたまんねーよなー、とか微笑ましく見ていたんです。

さすがに試合の様子を延々と垂れ流してるだけではなく、なんとかして番組としての体裁を整えようと、試合後の控え室の様子だとかインタビューとか、K-1みたいなことしてるんですけど、これがまた別格に面白いのな。

負けたチームの小学生が顧問の先生に怒られちゃったりして、元気いっぱいだった子供達がションボリしてるの。先生も先生で「貴方達、負けて悔しいの?そりゃ悔しいでしょうよ!」とか何が言いたいんだかサッパリな説教をかます。で、そこで負けたてホヤホヤの児童にインタビューですよ。

「どうでした?試合に負けて?」

レポーターも酷いもので、試合に負けた直後の子供にこんなセリフを投げつけることないんですけど、下手したら泣き出してトラウマになるんじゃって思うんですけど、それでも子供は子供なりに神妙な顔して答えるんです。

「ちょっと消極的だったからダメだった思います。もっと積極的に前に出ないと勝てないです。何事でもそうだと思います」

とまあ、あまりに正論過ぎて「黙れ小僧!」と言いたくなる様なセリフを吐きやがるんですよ。休みの日にウダウダしてるところに、年端も行かない子供にこんな人生訓みたいなこと言われたら微妙に凹むぜ。

そんなこんなで、涙あり笑いあり元気いっぱいの少年達の剣道絵巻をグデーっと見ていたわけなんですが、どうも大会は終盤になってきた様子。いよいよ決勝戦が行われる感じでした。

さすが決勝戦ともなるとこれまでの垂れ流しとは打って変わり、製作サイドにも気合が見られます。なんと決勝前に両陣営のインタビューから始まるのです。

「いよいよ決勝ですが、自信はありますか?」

とかなんとか、あまりに無難すぎる質問が投げつけられるのです。しっかし最近の子供はすごいね。ローカル番組とはいえテレビの取材が来て、自分にインタビューしてると言うのにしっかり受け答えしてるんだもの。

「はい、絶対に勝ちます。沢山練習してきた技が出せるように頑張ります」

とか、すっごいシッカリしてる。なんていうかテレビ慣れしてるっぽいんですよね。僕なんて、この子供達くらいの年の頃なんて野原でバッタばっかり捕ってたっていうのに、時代が変われば変わるものです。

順々に団体戦の決勝に出る少年達がインタビューされていく。やはりみんなシッカリと受け答えしてる。そんな中、一人の少年のインタビューが目に留まる。ちょうどちょっと勝気なガキ大将みたいな、言い方を変えるとヤンチャそうな少年にマイクが向けられ、決勝への意気込みが語られる。

「どうですか?決勝に向けて意気込みを」

「はい、準決勝までは結構楽に勝てて来ましたが、決勝の相手は準決勝までと違って随分と強いと思います」

本当に小学生かと思うほどにキッチリとした受け答え。本当に小学生時代の僕があの場でインタビューを受けていたらお寒いことになってるに違いない。何していいか分からず、ウケを取ろうとチンコくらい出すかもしれない。危ない危ない。

そんな風にテレビを見ながらどうでもいいことに思いを馳せる。これが幸せな休日の姿なんだ、やれ観光だとか、やれレジャーだとか、やれオフ会だとか、そういうのは確かに楽しいけどアクセクしすぎ。たまにはこうやってのんびり過ごし物思いに耽る、そういうのも良いもんだ。

そう考えながら件の彼のインタビューの続きを聞いていると、そんな穏やかな休日だとかそういった概念を吹き飛ばす途方もない一言が。ハッキリ言ってブラウン管に向かって突っ込まずにいられない。いてもたってもいられない。そんな状態でした。

「決勝の相手は準決勝までと違って随分と強いと思います。ですから、油断しないよう、体を引き締めて頑張りたいと思います」

物凄い神妙な、力士が横綱になる時みたいな顔して言っておりました。いやいや、体を引き締めてどうする。それを言うなら「気を引き締める」だろうが。体を引き締めちゃダイエットになっちゃうじゃないか。というか、決勝目前、あと数分しかないのに体を引き締められるのか。

と、テレビに向かって突っ込みまくり、シッカリしているといっても所詮は小学生、なかなかカワイイ言い間違いじゃねえか、なんかカッコイイこと言おうとして無理しちゃったんだなー、と微笑ましく思っていたのですが、よくよく考えたら先日参列した葬式で、喪主である上司に挨拶をしようと神妙な顔して「心からお悔やみ申し上げます」と形式ばって言おうとしたのですが、何をトチ狂ったのか「心から暗闇申し上げます」とか言ってました。暗闇を申し上げてどうする。

それを聞いた時の上司の呆け顔は、それはそれで面白かったのですが、またもやマイナスポイント。悪印象を与えたに違いなく、首になる日は近い。間違いなく近い。肩を叩かれる。

首になったらゴールデンウィークどころの騒ぎではなく、毎日がゴールデンウィークになるわけですが、そんなこと気にせずつかの間の休日を楽しみたいと思います。

結局、何が言いたかったかと言うと、ゴールデンウィークは始まったばかりです。皆さんも色々と忙しいとは思いますが、こういった浮かれた風潮の時には事件・事故が起こりやすいものです。せっかくの休日が台無しになってはつまらないですから、みなさん、楽しみつつ、浮かれることなく体を引き締めてゴールデンウィークを満喫しましょう。

久々に日記を書いたら、土曜日の午前中の番組みたいな日記になってしまったぜ。


4/21 もしもしの向こう側

「てめー!ぶっ殺すぞ!」

古今東西、洋の東西を問わず電話での第一声は柔和なものか挨拶と決まっている。日本であれば「もしもし」だし、英語であれば「Hello」だとか、悪い印象を与えないものが使われる。顔が見えない音声だけのコミュニケーション、それだけにファーストインプレッションを柔らかいものにしようという努力が垣間見える。

ちなみに、日本語の「もしもし」はドイツ語では女性器の名称(ムシ=Mushi)を連呼しているように聞こえるらしく大変面白いらしい。電話かけたら相手がいきなり「おまんこおまんこ」言うんだから、そりゃあ、さすがのドイツ人もビックリする。そんなことはどうでもいいとして、今の話題は冒頭の電話の挨拶だ。

たぶん、現在の日本で一日にどれくらいの電話通話がされているのか知らないけれど、それこそ9割以上の通話で初めに「もしもし」という言葉が交わされているように思う。テレホンセックスをする時だって最初に「もしもし」と言うだろうし、郷里の親に金を無心する時だって言う。恋人に捨てられて自暴自棄になってもう徹底的に汚れてやる、どんなオヤジ相手でもいいから抱かれてやる汚れてやるんだから、猛り狂った身悶えるような、内臓まで届くようなセックスをしてやるんだから、と決意してテレクラに電話、それでも彼女は恋人との楽しい思い出が蘇り、そういえばいつも寝る前にこうやって高志に電話してたっけ・・・。わたしなにやってるんだろう・・・。バカだよね・・・。受話器を握る手にぎゅっと力が入り、頬には一筋の涙が・・・。芳江はギュッと下唇を噛み締めた。もう・・・高志のことは忘れなきゃ・・・。受話器の向こう側からはプルルルと電子音が鳴っている。4コールほどしただろうか、突如ガチャっと電子音が途切れ、電話の向こうから30代半ばの男性の声が聞こえてきた。怖い、逃げ出したい。わたし、こんなとこに電話してなにやってるんだろう。もうこのまま電話を切ってしまおうか。ううん、それじゃあダメ、それじゃあ何も変わらない。以前のままのわたしのまま・・・。誰でもいいから抱かれるって決めたんだから。そう、今は何でもいい、人の温もりが欲しい、偽りでもいい刹那的でもいい体だけって分かってる後悔したっていい。表面だけの優しさでもいいから・・・。芳江は声を絞り出すように震える声で言った。「もしもし」と・・・。

どんな通話でも「もしもし」から始まる。これはもう最近話題の「振り込め詐欺」いわゆる「オレオレ詐欺」でも揺るぎないものであって、詐欺の場合でもキッチリ、「もしもし。婆ちゃん、オレオレ、オレだけどさ」ときちんと礼節を持っている。これはもう決まり事とかマナーとかを超越し、飯を食う寝るのごとく人間の身に染み付いた習性じゃないだろうか。

電話の冒頭、かなりの高確率で交わされる「もしもし」。しかしながら、そんな「もしもし」を超越したとんでもない電話が僕の元に舞い込んできた。それが冒頭のセリフである。

「てめー!ぶっ殺すぞ!」

どこの世界を探したら、こんな言葉で始まる電話があるのだろうか。「もしもし」なんてぬるい、ぬするすぎるわと言わんばかりの文言。電話に出た瞬間に「テメー」呼ばわり。おまけに「ぶっ殺す」までついている。まるで生きた心地がしない。

これがまあ、気心知れた友人が相手とかなら、まだ納得できるかもしれないが、これが見ず知らずのオッサン、それも初めての会話で交わされた言葉だから驚きだ。

ある平日の昼下がり、不意に携帯電話が鳴った。いや、正確には音声もバイブ機能も全てカットし、仕事時用のサイレント仕様にしていたので音なんてピクリとも鳴らなかったのだけど、画面を見ると「着信中」の文字。そこには覚えのない携帯番号が表示されていた。

実は、その二日くらい前からこの番号からは頻繁に電話がかかってきていたのだけど、僕の携帯番号はとにかく架空請求やら詐欺的電話、脅迫的家賃の督促などが多いため見ず知らずの番号の電話には極力出ないようにしている。死ぬほど暇な時は出て相手をしたりしてネタにするのだけど、基本は出ない。

しかし、二日前から尋常じゃない回数かかってきているという事実、おまけに何分間もコールし続けていると言う尋常ならざる執念にいたく感服した僕は、その電話を取ることにした。さあて、どんなやつがかけてきてるか知らないけど、また架空請求か何かの類か、何が飛び出すがドキドキだぜ、と通話ボタンを押し、

「はい、もしもし」

と話しかけると、相手は開口一番、

「てめー!ぶっ殺すぞ!」

である。野太いオッサンの声。かなり興奮してるのか、受話器から風が吹き付けてきそうなほどに息遣いが荒い。架空請求かなーとか思っていたらそれ以上にパンチの効いた電話。ハッキリ言って震撼した。全米が震撼した。こんな電話、やまだかつてない。

僕はこれまでに星の数ほどの架空請求やら怪しげな業者、キチガイ女などを電話で相手にしたのだけど、それらのアナザーワールド的な電話であっても全てが「もしもし」と普通のセリフから会話が始まっていた。架空請求なんてもっと顕著で、最初は丁寧な事務的対応、それが金が取れないと分かると突如激昂、気の弱い人なら自殺しちゃうんじゃないのってくらいに猛り狂うのだけど、それでも最初は温和に「もしもし」だ。

それが、それら全ての怪しげな通話をぶっちぎって始まる電話の到来。僕の胸は自然と高鳴った。

「はい?」

とりあえず、いきなり殺されても死んでも死にきれないものがあるので、あなたに殺される覚えがないことをアッピール。相手の出方を待つ。

「テメーはなんで電話に出ねーんだ!俺をバカにしてるのか!」

しかし、電話の相手はブレーキの壊れたダンプカーのごとく止まらない。血が沸騰してるとしか思えない。僕の首を取ってかからんばかりの勢いだ。そんなもの「見ず知らずの番号だから面倒そうだったから出なかった」わけなんだけど、そんなこと言ったら火に油っぽいのであえて言わない。

「はあ、申し訳ありません」

と、なんで怒られてるのかも分からないのに謝っておいた。

「テメーな、ちょっと対応がいい加減過ぎないか?」

「わしが何回電話かけたと思うんだ」

「アンタが対応してくれないと困るんだよ!こっちも死活問題だから!」

「アンタも社会人なんでしょ。だったら責任持ちなさいよ!」

「ホント、ぶっ殺すよ!」

とまあ、僕が意味も分からずに謝ったことに勢いづいたのか、電話口のオッサン、マシンガントークで怒る怒る、とにかく怒る。すっごい怒られてて、こんなに怒られたのは前の職場で自分の裸体のコピーを取ろうとしてコピー機に馬乗り、リースのコピー機をぶっ壊した時以来なのだけど、ぶっちゃけると、何で怒られてるのか全く意味が分からない。

「そもそもな、信頼ってのは大切なんだよ。あんたは悪いことをした。私が被害をこうむった。それを公にしなかったんだから、きちんと同義的に責任を取るべきだ。そもそも、社会っていうのは・・・」

なにやらオッサンも当初の怒りがクールダウンしてきたのか、冒頭ほどエキサイトはしていなくて口調も若干柔らかくなっているのだけど、相変わらずこちらに発言させない勢いで説教を延々と語っている。

何のことか身に覚えがなく、おまけにトークの主導権を取られてしまって発言する機会すら与えられない僕は、「はい」と適当に相槌を打ちながら、「何で男は女のオッパイに憧れるんだろう」的なことを考えてました。

「で、金はいつ払ってくれるんだ」

一通り説教が終わった後、電話口のオッサンはこう言いました。もう意味が分からない。挨拶代わりに「殺すぞ」言われて、意味不明に説教、おまけに金払えだなんて。

「そもそも、何でお怒りになってるのか理解できませんので、お金を払うことには納得できません。もう一度落ち着いて、ここまでの経緯を話してくれませんか」

ここは冷静に対応する必要があります。キッチリと金は払えないという意思を伝え、そもそもなぜ相手方が怒っているのか意見を聞く必要があります。何も分からないのに金なんぞ払えるか。

「はあー?あんたなにとぼけてるの?もしかして知らんふりしてやり過ごすつもり?こっちはね、あんたの職場でも何でも抗議してもいいんだよ、あんたがこんな非人道的行為をしたってね。いくらでもツテはあるんだからさ!知らん振りでやり過ごせるほど世の中甘くないよ!逃がさないからな!」

またもや怒りの起爆スイッチを押してしまったようで、ノンストップオッサンみたいな状態で怒り狂い出しました。本当に身に覚えがないのに、向こうは僕がとぼけてると勘違いしてるみたいです。

とまあ、ここまでの一連の流れは、形態を変えた架空請求などにありがちな、一方的にまくしたてて金を払えと言う。支払いを拒否すると職場に言うぞなどと脅す、典型的な詐欺の流れであったりするのですが、何やら様子がおかしいのです。

まず、詐欺電話なら、最初から一方的に怒鳴るような行為、それこそ「殺すぞ」なんて開口一番に言ったりしません。前述したとおり、そういった電話は最初は営業電話のごとく丁寧なもの。丁寧に会話をしつつ相手の感情やら性格を分析してるのでしょう。で、いけると判断したらある瞬間から豹変するのです。いきなり怒鳴るなんてありえない。

それに、例え詐欺であってもきちんと筋は通します。嘘であっても「アダルト番組を利用したから利用料と延滞金を払え」だとか、「オレオレ、事故起こしちゃって示談金が要る」だとか、とにかく、詐欺というのは相手に金を払わせる理由が、どんな無理な形であろうと存在し、それを説明してくれるはずなのです。けれども、この電話にはそれがない。ただ感情的に突っ走るだけ。

様々な詐欺的請求を相手に戦ってきた僕の嗅覚とでも言いましょうか、なんだか詐欺とかそういった類とは違って、もっと恐ろしい、何か別次元の電話のような気がしたんです。で、恐る恐る聞きましたよ。聞いてはならない禁断のセリフとも取れる質問を投げつけましたよ。

「あの・・・もしかして・・・電話間違えてませんか・・・?」

これだけは言いたくなかった。このデリシャスすぎる電話を間違い電話で片付けたくなかった。けれども、詐欺じゃないなら間違い電話としか考えられないし、このまま放置してると本気で殺されかねないので、泣く泣く指摘しましたよ。

「なに言ってんだ!?あんた、そうやってとぼけるつもりかっ!あんたが起こした事故だろうがっっっ!」

とまあ、さらに怒りマックス、怒りのアフガンみたいな状態になってました。誰かこの人を止めて。

しかしまあ、オッサンの言葉から、交通事故の示談がらみの話であるっぽいことは分かりました。あいにくと最近は人様に迷惑をかけるような事故を起こした記憶はございません。もう完全に間違い電話確定と言うところでしょうか。

「事故とおっしゃいましたが、あいにく僕は事故を起こした記憶がございません。これは惚けてばっくれようとしてるわけでなく、調べてもらえれば簡単に分かることだと思います。もう一度言います。僕は事故を起こしていません。間違い電話じゃないのでしょうか?」

ここでは毅然とした態度で言う必要があります。それを受けてか、オッサンのトーンも微妙に弱まり、粛々と前後関係を説明しだしました。

1ヶ月前の日中、繁華街の脇の交差点でオッサンの所有するバイク、これがパワフルなスクータータイプのものらしいのですが、それと20代の若者が運転する車が事故を起こしたそうです。

しかし、事故といても大したことはなくて、接触などは全くしてない様子。ただ、相手の車が右折しようとしてるところに、対向車線から直進してきたオッサンのバイクが当たりそうになり、オッサンは必死に避けた。そのまま転倒になったようです。

バイクの側面が傷だらけになっており、オッサンの着ていた服も破れた様子。本人に怪我はなかったようです。

とりあえず接触もしてないので警察を呼ぶのは面倒だ。両者間でそういった話になったらしく、お互いに電話番号を交換して別れたそうです。まあ、オッサンは後の予定が詰まっており、時間を取られるのが嫌だったというのもあるようです。

で、バイクの修理費は相談すると言うことになったのですが、いつまで経っても相手の青年から連絡が来ない。こちらもバイクがないと仕事にならないので困る。ちなみにバイクの修理費はかなりの部分のパーツ交換で20万円ほど。業を煮やしたオッサンは青年の携帯に電話したようです。

しかし、電話しても電話しても相手は出ない。日を変えて電話しても、時間を変えて電話しても出ない。それでも20万という修理費は太い金ですから、なんとしてでも相手に払わせないといけない。電話に出ろ、出やがれ!だんだんと怒りの感情に身を任せ、やっと繋がった!と思ったら僕が出た。そういうことのようです。たぶん青年に偽の電話番号でも掴まされて、その番号が僕のだったんじゃないでしょうか。

「とにかく、修理費20万円払ってもらわないと困る!」

いや、知らんがな。

さすがの僕も起こしてもいない事故の修理費など払えませんので、ここは断らないといけません。

「事故が起こった日、平日の日中ですよね・・・。僕その時間帯は絶対に仕事なんですけど・・・。抜け出して繁華街の事故現場に行くこともできません。これは調べてもらえばわかります。それよりなにより、なんでしたら僕の車を見てもらえば事故車両と違うと一目瞭然だと思いますが」

「だいたい、相手の車両ナンバーの確認、身分証明書の確認、携帯番号を交換した後にその場でかけてみるなどの確認をしなかったのですか?」

どうやら、相手方の確認を全くしてなかったみたいで、急いで番号を交換したのみ。誰かの言葉じゃありませんけど「ちょっと対応がいい加減過ぎないか?」と言いたい気分です。

結局、事故の相手は僕じゃないと理解してくれたみたいで、それはそれで良かったのですが、問題は彼の言動です。「テメー、ぶっ殺すぞ!」やらの暴力的挨拶やら、偉そうにまくし立てた説教の数々、これらは例え偽の番号を掴まされて起こった間違いであったとしても、正直僕はいい気はしません。せめて「めんご、めんご」でもいいですから、謝罪の言葉くらいはあるべきです。

しかしながら、オッサンの対応は逆ギレに呼ぶとふさわしいもので、

「だいたい!何度かけても電話に出ないアンタも悪い!」

「こっちだってイライラしたんだ!ああなるのも仕方ない」

「誰だって間違いはある!」

と言い出す始末。おいおい、オッサンよ。そりゃねえだろ。いくらなんでもそりゃねえだろ。どんな薬やってたらそんなこと言えるんだよ。逆ギレにも程がある。いくら事故相手に騙されて、このままでは20万円の修理費を自分で払うことになるのが濃厚で、イライラするのも分かるけど、さすがに間違い電話をかけた相手にそれはやりすぎ。「めんごめんご」くらい言ったっていいのに。

しまいには「こんな電話番号なアンタが悪い」と言い出しかねない勢いでしたので、ここはキッチリと言っておく必要があります。

「刑法222条、2が並んでると思うので覚えやすいと思いますが、ここでは脅迫罪が定義されています。あなたの言った「殺すぞ」はまさにこれに当てはまるわけですが・・・」

と言ったところ

「うるさい!もういい!」

と電話をガチャ切りされてしまいました。めんごすらなし。

やれやれ、世の中には困った人もいるもんだぜ、と思いながら僕も仕事に戻ったわけなのですが、時間が経過してくると次第に立腹してくるんです。頭で理解していても釈然としない。何で僕が罵られ、説教までされなきゃいけないのか。

そういえば、あのオッサンは「イライラしてたから」あんな電話してもいい、「誰にだって間違いはある」ってニュアンスのこと言ってたよな。じゃあ僕だってイライラしたら彼に電話かけてもいいはず・・・。

そんな考えが僕の頭の中によぎり、その後に職場のトイレで物凄いウンコをした時にイライラする出来事があったので、携帯の着信履歴に残ってるオッサンの番号に、ウンチングスタイルのまま電話をかけて

「テメー!今ウンコしたら紙がねーじゃねーかー!どうしてくれるんだ!手で拭けっていうんか!」

と開口一番、物凄い勢いで電話しておきました。全然関係ないのに。オッサンは「はい?」とすごい高い声で言ってましたが、紙がなくてイライラしたんだから仕方がない。

今度イライラしたら、「もしもし」という意味で「おまんこおまんこ」と誰かに電話してみようと思います。なるべく女性に。おまんこおまんこ。ムラムラしてたんだからしょうがないという理由で。


4/14 先輩後輩

血縁関係でもなく、友人関係でも恋人関係でもない、下手したら全くの他人になりかねない関係であるのに、なぜか強い絆で結ばれた上下関係。だからといって主人と下僕、上司と部下のように強烈に主従関係にあるわけでもない、いわば曖昧な関係。それにひどく憧れる。

先輩ってのはほのかに優しくて時に厳しい、後輩ってのは基本的に先輩の言うことを聞き敬ったりしているのだけど、どこかフランクな友達のような感覚を持っている、そういった間柄に憧れて止まない。

もちろん、同性同士の先輩後輩関係ってのは素晴らしいものであるのだけど、異性間での先輩後輩も同じように捨てたものではない。

例えば、僕が部活か何かの先輩で、後輩が少しブスが入った、でも見ようによってはキュートな女の子で、肩より少し長めの髪を後ろで一つにくくってたりして何にでも一生懸命。僕と話をする時は緊張しているのか妙にこわばった感じの女の子。そんな子と先輩後輩という間柄をいいことに放課後の部室で秘め事。「やめてください、先輩!」「いいではないか」部室で後輩に後背位、そんなダジャレは嫌いです。

とにかくまあ、そういったものを含めて先輩後輩という間柄に憧れを抱いているのですが、なかなか理想とするものに出会えないのが実状です。日々理想の先輩後輩像、特に自分が素敵な先輩という位置に収まることを追い求めているのですが、一向に満足するものに巡り合えない。

僕が高校の時でした。

当時から、理想の先輩後輩に憧れていた僕はとある部活に入りました。しかし、どこの世界でもそうですが、いきなり先輩という確固たる位置を手に入れられるわけではありません。まずは後輩というステージから、言うなれば下積みから始まるわけです。

手前味噌で恐縮なのですが、客観的に見ても当時の僕は良き後輩であったと思います。先輩の言うことは素直に聞き、どんな理不尽な事にでも笑顔で耐えました。先輩が「この焼肉は焼きにくい」と言えば、そんなダジャレは嫌いですが、腹を抱えて笑ったりもしました。全ては将来的に自分が先輩という地位を手に入れるため。良き後輩は良き先輩に繋がるのです。

そんな中、一人の嫌われ者の先輩がいました。何事にも厳しい先輩というのは得てして後輩に嫌われたりするものですが、その先輩はそんなものよりワンランク上、先輩の間でも嫌われているという、ある意味超えようのないパーフェクトを達成していました。

なんでその先輩がそこまで嫌われていたかというと、基本的に理不尽な振る舞いが目立ち、甘やかされて育った王子のようにワガママな振る舞いが多かったからですが、それだけでは嫌われたりしません。得てして先輩ってのは後輩に対してワガママにできているものですから、それだけでは嫌われたりはしません。

なんていうか、彼は奇異な発言、それもバレバレのものが大変多かったんですよね。なんか部活に遅刻してきて、ハアハア息を切らしてるかと思ったら、どう見ても自分で引っ掻いたとしか思えない傷をこめかみ辺りにつけてましてね、チョロっと血を流しながら言うんですわ。

「来る途中に暴漢に襲われてるOLを助けてた。それで遅れた」 この田舎町にどこをどうやったら暴漢に襲われているOLがいるのか甚だ疑問ですし、そんなドラマティックでバイオレンスな展開がそうそうあるものとも思えません。というか、その先輩、ムチャクチャ喧嘩弱そうなのに暴漢に勝てると思えない。

でまあ、その先輩は覚醒剤で逮捕されたCURIOのボーカルをさらに邪悪にさせたような顔してたんですけど、その風貌と陰気な性格、そして件の言動、王族並みのワガママさの相乗効果で部活メンバーの誰もからゴキブリ並みに嫌われていたのです。

もちろん、僕は良き後輩、後輩の鑑とも言える存在でしたので、そんな先輩であろうとも笑顔を絶やさず接し、彼の理不尽極まる要求にも素直に応じたりしたものでした。ホント、どっからどう見ても素晴らしい後輩過ぎる。

ある日のことでした。僕ら部活のメンバーは練習後に近くのクソまずいラーメン屋で量の多さだけが取り柄のラーメンを食べるのが恒例になっていたのですけど、いつものようにリーダー格の先輩の号令で「ラーメン食いに行こうぜ!」となったのです。

嫌われている先輩は、いつも練習が終わると無言で帰ってしまい、このラーメン食事会には参加したことなかったのですけど、そこはさすが素晴らしき後輩、僕はその先輩に「先輩もラーメン食いにいきましょうよ!」と純真無垢、熊さんパンツ級の純粋さで話しかけたのです。

けれども、これが大失敗だった。もう目も当てられない大失敗だった。

「ラーメンよりもさ、ちょっと今から俺の家に来ないか?見せたいものがあるんだ」

と伏目がちにのたまう先輩。

野球の三塁手は常にイレギュラーと戦っています。迫り来る打球、痛烈な当たりが多いのが三塁手の特徴。そんな猛烈な打球を相手にしているだけに、最も怖いのはイレギュラーバウンド。自分の目の前で予想だにしない変化をする、これが最高に怖いのです。

でまあ、三塁手だけでなく日常生活においても最も怖いのはイレギュラー。予想だにしない未曾有の事態こそ最も避けるべきで恐ろしいものなのです。でまあ、社交辞令的に先輩をラーメンに誘ったんですけど、本来なら「いや、おれはいいよ」的な返答が、悪くても「いこうか」となって気まずい雰囲気の中ラーメンを食べる程度のものかと思ってたのですけど、「家に来い」という予想だにしないもの。イレギュラーにも程がある。

けれども、良き後輩であった僕、先輩から直々に誘われたら断るわけにもいきません。泣く泣くラーメン軍団とは別れを告げ、「はい!お邪魔させていただきます!」と二人っきりで先輩の家に行くのでした。

先輩の家は、陰鬱でかなりダークな歴史がありそうな家屋でした。ボツナワやジンバブエあたりのダウンタウンを髣髴とさせる、まあ早い話がボロ屋でした。ここで育ちの良い坊ちゃん嬢ちゃんなら、このボロ屋のたたずまいの時点で怯むのでしょうが、あいにく僕の家も同じくらいにボロ屋、こんなものじゃ怯みません。

「上がって俺の部屋で待っててよ。ちょっと散らかってるけど」

先輩はそう言うと台所の方へと消えていきました。普通、こういう場合の「散らかってる」なんてのは嘘8000で、部屋に行ってみると潔癖症かってくらいに綺麗に片付いていたりするのが定番ですが、先輩の部屋は言葉通り散らかってました。もう散らかってるとかの次元を超えて、部屋の隅のほうで新しい生物が誕生してそうなくらいゴミが散乱してた。

「こりゃすげえな」

などと思いつつ、一番マシっぽい部分をチョイスして正座で待ちます。今頃みんなは楽しくラーメンを食べているに違いない。ラーメンを食いつつ楽しい話に花咲かせ、そろそろ替え玉バトルが始まってる頃に違いない。楽しいに違いない。ああ、それなのに僕は何でこんなゴミの中にいるんだろう。

良い後輩を演じるのも辛いぜそう思いながらゴミの山の中からエロ本を探したり、先輩が思いをしたためたのに出せなかったラブレターを発見したり、「ずっと好きでした」という一文にこっちまで恥ずかしくなったり、それなりに有意義な時間を過ごしていると、そこに先輩登場。手には何やら怪しげな水槽みたいなものを持っていました。

「これ、俺の」

言葉少なめにその水槽を差し出す先輩。見ると、そこには6匹ほどでしょうか小さなハムスターがモゾモゾと蠢いておりました。

「最近飼い始めてさ、かわいくて仕方ないんだ」

なるほど、先輩の言った「見せたいもの」ってのはこれだったのか。こんなもの見せられても返答に困るのだけど、なにやら先輩は異常に嬉しそうだ。こんな先輩の表情、部活では見たことない。

「名前、なんていうんですか?」

返答に困りつつも、なんとか脳内をフル回転させてハムスター関連の質問をする。我ながらナイスに立ち回れたと思う。それを受けて先輩は死ぬほど嬉しそうな顔をして、一匹一匹説明しだしました。

「こいつがジョン」

「これがメスだからメリー」

「これはジャッキー」

「こいつは親だからママ」

正直、僕にはどいつがどいつだか見分けがつかないんですけど、先輩は一匹一匹説明していきます。それにしても安易な名前だなージ、ョンはないだろ、ジョンはと思いつつ聞いていると

「こいつは長州力」

いやいや、おかしいじゃない。おかしすぎるじゃない。他のは全部カタカナの名前なのに、こいつだけ日本語の名前。それも長州。なんでそこで長州なのか聞き返せないまま頭の中でパワーホールだけが鳴り響いていました。

「こいつらかわいくてさあ、もう夢中なんだよね。いいよね、ハムスターって」

と慈愛に満ちた眼で言う先輩は、部活で嫌われている先輩の片鱗もなく、そんな優しそうな顔を部活で見せれば皆と仲良くできるのに、と思うほどでした。

「俊明!俊明!ちょっと来なさい!」

別室から金切り声で先輩を呼ぶ母親の声。どうして母親ってのはこうまでヒステリックなのか知りませんけど、どこの家庭でも同じようなものなんですね。先輩は母親の元へといってしまいました。ハムスターと僕を部屋に残して。

さあて、先輩もいなくなったことだしまたもやエロアイテム&恥ずかしいアイテム捜索でも再開するかーと意気込んで家捜し、しかしながら満足いく戦利品が得られずラブレター以上の破壊力があるアイテムは得られませんでした。

で、なんだよーと思いながら、ふとハムスターの箱を覗き込んだのです。すると、そこには驚愕の光景が。

いや、5匹しかいないし。

さっきまで確かに6匹いた。そう、それは間違いない。1匹1匹名前を紹介され、それにまつわるエピソードまで話されたのです。ついさっきまで6匹いたのは曲げようのない事実。じゃあ、なんで今は5匹なのか。

見てみると、5匹は箱の隅に寄り集まってモゾモゾと動いているんです。おいおい、なんだよーと見ていると、戦慄の光景が。

いや、食ってるし。

どうもですね、他の5匹が1匹をよってたかって食ってるんですわ。ええ、俗に言う共食いってやつなんですけど、見るも無残、まさに弱肉強食と言わんばかりにムシャムシャ食ってるんです。すっげえグロい絵図だった。

やつらはラブリーさを前面に押し出そうとも、所詮はネズミです。思ってる以上に獰猛で残忍、えげつない生物なのです。「とっとこハム太郎」だってかわいさをアッピールしてますが、裏ではミニハムズをレイプしまくってるに違いありません。

「ったく、クソババアが!」

悪態をつきながら部屋に戻ってくる先輩。ここは正直に起こったことを先輩に報告せねばなりません。言いにくいですが僕が食ったとか思われたら嫌なので正直に話します。

「先輩、ハムスターが1匹食われましたよ。共食いですよ、共食い。かわいい顔して皆でよってたかって食ってましたわ、グロかったー」

と報告しましたところ、先輩は水槽が割れるんじゃないかって力で抱えると

「長州うううううううううううううううううう!」

と叫んでました。

食われたのは長州か。すっげえ名前負けしてるじゃないか。みんなによってたかって食われてるじゃないか、長州力。弱いにも程がある。

普通なら、僕はハムスターとか毛ほども興味ないですし、早く家に帰りたくて仕方がなかったんですけど、そこは良き後輩ですよ、なんとか悲しみに暮れる先輩を励まそうと、最良の言葉を捜しました。彼を勇気付け、あの悲劇を惨劇を忘れさせることのできるパワフルワードを。

「先輩、そいつら他の仲間、それも血縁関係のやつを食うなんて、ハムスターって言うよりモンスターですよね」

僕としては微妙に韻を踏んでて改心の出来だったのですけど、先輩は気に入らなかったのか痛くご立腹。先輩という立場をフルに活かしてご立腹、鉄建制裁となりました。なんかしらないけど、「これはクリリンの分!」と言わんばかりに「これは長州の分!」って涙流して殴ってきた。いや、俺が食ったわけじゃないやん。

どんな不条理ですか。と思いつつも、じっと耐え忍ぶ僕。やはり後輩の鑑としか思えません。

その後、その部活は辞めてしまったので良き後輩から良き先輩になることはなかったのですが、それでも僕は今でも良き先輩という存在に憧れています。そして、現在の職場でも後輩に対して非常に優しく振舞っているのですが、ある後輩(25歳子持ち)が言った一言

「いやー昨日子供を風呂に入れましてね。かわいいもんっすよ。バブを入れた風呂がお気に入りみたいでバブーって言っちゃって、やっぱかわいいっすよ」

に対しては、そんなダジャレは嫌いですので鉄拳制裁も辞さない覚悟で臨みたいと思いました。共食いも辞さない、それぐらい腹立たしい。

結局、長々と書いてきて、ぶっちゃけると、本当は先輩とかどうでも良くてオッパイの方が好きです。そんなダジャレは嫌いです。


4/7 狂い咲き

桜はエロい。

それがウチの親父の口癖でした。

満開の桜が僕の通勤路を埋め尽くし、桜の花びらのシャワーを浴びながら車を運転しておりますと、すっかり春だなあと感じる反面、冒頭の親父のセリフを思い出すのです。

ウチの親父は砕けた言葉で言うところのキチガイですので、常日頃から少年である僕にとんでもないことを吹き込んでいたのですが、それの最たるものがこれでした。

小さい子供にとって、親の言う言葉は全世界であり聖書の言葉より重いものでした。どんなキチガイな理論でもそれが正論のごとく言われるのなら正論になってしまう。子供の世界ってのは可哀想なくらいに狭いのです。

今になって思うと、ウチの親父はこれらのセリフを単なるキチガイ精神で吐いていたわけでなく、もっと悪質なことに「世間様が浮かれるイベント事を貶める」という邪悪な精神があったように思います。

クリスマスには、サンタに浮かれる僕に「サンタは軍人だ!サンタが来たら恐ろしいことになるぞ」と言い放ったり、正月にはお年玉の噂を聞きつけた僕に「玉ってのはヤクザの世界で命のことを言うんだぞ、それを落とすだなんて、お前は死にたいのか」と言ってみたり、誕生日に心躍らせる僕に「歳を取るなんて何もめでたくない。死へと近づくわけだからな、逆に喪に服すべきだ、喪中!喪中!」と言ってたものでした。

ウチは怖い借金取りの人が連日表敬訪問してきて、親父と熾烈なバトルを繰り広げる、なんて光景が日常茶飯事なほど貧乏な家庭でしたので、こういったイベント事を誤魔化すことでなんとか出費を抑えたかったのだと思います。プレゼントやら何やらとイベント事は金がかかりますからね。

そして、その際たるものが「桜はエロい」でした。「花見に行きたい」と春が来るたびにいきり立つ僕を牽制する親父のセリフでした。

子供にとって、花見ってのは別に花を見たいとか桜を愛でたいとかそういった風流なキモチはカケラも存在せず、完璧に花より団子、花見名所に登場する出店が目当てだったりするのですが、やはりそういった出店の商品は高価すぎる、親父もなんとしても避けたかったようです。

「花見に行きたい」

その年、桜前線の北上がテレビで報じられるのを見た僕は親父に切り出した。子供らしくて純真、かわいすぎて食べちゃいたいくらいのピュアな申し出だったように思う。しかし、それを受けて親父の返答は、冒頭でも述べたとおり

「桜はエロい」

という、到底理解できないものだった。何がどうなったら桜がエロいのか、もはや理解できるレベルじゃない。こいつは狂ってる。

「桜ってのはな、エロいんだぞ、お前はそんなエロい花が見たいのか。スケベなやつだ」

異常な勢い、大使館前でデモとかしてる人並みの勢いでまくしたてる親父。さらに続きます。

「毎年な、春になると変質者が増えるだろ。あれはな、全部桜が原因なんだよ」

普段のオッペケペーでアッパーパーな雰囲気と打って変わり急に真剣な顔をして重い口調で喋りだす親父。僕もこうなってくると親父の説を半分くらい信じています。

「まず、桜はピンク色ってのがエロい。古今東西、どこの世界を見てもピンクってのはエロいものって相場が決まってるもんだ」

「おまけに桜には「花びら」とか「めしべ」とかあるんだぞ、わしゃこんなエロい花を知らないぞ。世の変質者はな、さくらを見てムラッときて変質行為に及ぶんだ」

とか言い出す始末。まるで変質行為をした経験があるような口ぶりでした。それじゃあ桜だけじゃなくてピンク色の植物は全部エロいじゃん、と思うのですが、親父は続けます。

「大体な、ワシが今まで出会った「さくら」って名前の女は例外なくエロい!だから桜はエロいんじゃ!」

と、全国の「さくら」さんが聞いたら怒り出しかねない理論を振りかざす始末。

「花見なんてのはスケベが行くもんだ。そんなものわしゃ恥ずかしくていきたくないわ」

小気味良く攻める親父。落ち着いて考えてみると途方もない理論なのですが、何故か妙に納得してしまったのでした。小学校卒業するくらいまで、花見行くのはエロいことと考え、クラスメイトが「明日家族と花見行く」と言おうものなら、心の中で「えっろ」と呟いていたのでした。

それから数年、高校生くらいの時でしたが、花見に対する誤解もすっかり解けていた僕は、高校時代の友人を誘って地元の花見名所にいったのですが、花見で盛り上がり、大酔っ払い、上半身裸で桜の木に登っているマナーのカケラも存在しないオッサンの集団を目撃しました。

まあ、ウチの親父と仕事仲間だったんですけど。

「面白いオッサンがいるね」

と言う、比較的大人しい仲もあまり良くない高校時代の友人。僕はそれにどう答えていいか分からなかった。しかも僕の姿を見つけた親父が、木の上から

「おー!○○じゃないかー!やってるかー!」

とか、僕の本名を叫んで肉親としか思えないコメントするから最悪。友人を連れて脱兎のごとく逃げ出しましたとさ。

そんな経緯から、「花見をする人間はスケベ」というより「キチガイ」という印象があるのですが、たまにはキチガイになるのもいいかと思い花見を計画しました。

24時間耐久Numeri地獄花見大会in大阪

日時 開始 2005/04/09 正午 
    終了     04/10  正午

場所 大阪城公園のどこか

ルール
・24時間耐久です。
・皆さんは耐久ではありません。好きな時に来て好きな時に帰ってOK
・耐久なのは僕だけです
・僕はトイレ以外で場所を離れません
・差し入れを持ってきていただけるとありがたいです
・僕は差し入れ以外の飲食物を口にしません
・シート四隅をぬめり本で押さえているのが目印です
・烈火のごとく暇なのが予想されるのでボードゲームなど大歓迎
・防寒アイテムなど大歓迎
・納豆だけは食べられません

以上です。大阪近郊な方は是非是非お越しください。キチガイどもが行う花見、是非とも今年は狂い咲きといきましょう。


4/4 犯人は誰だ!

安易な推理小説やら名探偵物のお話などでは必ずといって登場する場面があります。それは、「この中に犯人がいる!」と不必要に疑心暗鬼と不安を駆り立てる場面です。このシーンがなければ推理物なんて成り立ちません。

殺人事件などの推理物ストーリーを組み立てる場合、てっとり早く外部と隔絶されたシチュエーションを作りがちです。大雪で閉ざされた山奥のペンションとか何者かによって吊り橋が落とされたお金持ちの別荘とか。コナン君や金田一少年では毎週のように見られるシチュエーションです。

次々と無残に殺される登場人物たち。一体誰が、何の目的で、ここまで残忍な犯行を・・・。交錯する登場人物たちの想い、人間ドラマ、巧妙なトリック、それらを一層引き立たせるには、やはり上記のような「この中に犯人がいる!」というシーンと、外部と隔絶されたシチュエーションが必須条件なのです。

登場人物の中に犯人がいるかどうかも分からない、必死でアリバイ検証とかしたのに、オチは外部から侵入した暴漢が犯人だった、おまけにこの暴漢が全く登場してこない、なんて興醒めもいいところ推理でも何でもないのです。

「この中に犯人がいる!」

なんて言われようものなら、やはりこの中に犯人がいるんだ!みんな善良な市民っぽいのに殺人犯とはな!一体誰が犯人なんだ!とハラハラドキドキします。最初の殺人事件が起きるまでが平和で和気藹々としているほど緊迫感は増幅します。

そりゃあ、自分がリアルでペンションに泊まってて殺人事件が起きて、宿泊客全員が食堂に集められて訳の分からない小僧が「この中に犯人がいる!」とか言い出そうものなら、あまりに唐突で不自然すぎて、冷静に「いや、お前だろ」と言いたくて仕方なくなるのでしょうが、推理物には絶対に必要な場面なのです。

しかしながら、これは何も推理小説や推理漫画などの世界に限ったことではありません。何かと世知辛い昨今、架空請求やら振り込め詐欺、偽裏ビデオの通販やらが蔓延する社会においては、何事も疑わずにいるとホイホイと騙されてしまうのです。

何も疑うことを知らないお婆ちゃんなどが騙されている現状はやるせないですし、義憤に駆られる部分もあるのですが、やはりある程度は疑いを持って注意深く生きていくことも必要だと思うわけです。それこそ、「この中に犯人がいる!」クラスの疑い深さ、悲しい話ですけどそれくらいは必要なのではないでしょうか。疑い深いくらいがボケ防止にも良さそうですし。

ということで、僕は日常の様々な場面でも「この中に犯人がいる!」という状態を脳内で想定し、ハラハラドキドキのスリリングな疑心暗鬼劇を展開しているわけなんですが、先日、こんなことがありました。

近所の行きつけのパチンコ屋でスロット「吉宗」を打っているときでした。ちなみに「吉宗」とは長いスロットの歴史の中で5本指に入る名機で、勝つときは大勝、負ける時は自殺も考えるくらい負ける悪魔のような機種なのですが、その潔い男っぷりが大好きで僕はこの「吉宗」ばかり打ってるんです。

でまあ、そんな地獄のような機種を好んで打つ輩ですので、パチンコ屋の「吉宗」コーナーはギャンブルジャンキーの鉄火場みたいな雰囲気になっていて、ちょっとした言葉の行き違いから殴りあい刺し合いが始まってもおかしくない、そんな殺伐とした雰囲気が漂っているのです。

いつものように「吉宗」に向き合ってジャブジャブと金を入れ出す僕。相変わらず、出ない時の吉宗は凶悪で、カツアゲにあったかのように所持金がなくなっていきます。間違いなく台が千円札イーターと化していた。台に向かって「これ参考書買うお金だから・・・」とか言い訳しそうになったくらい。

ふと冷静になって辺りを見回してみると、吉宗コーナーは満員御礼の大盛況、全台に客が着席し、狂ったように金をつぎ込んでいたわけですが、なんていうんでしょう、座ってる客が全員ブラウン系なんですよね。わかりやすく言うと、こげ茶系の人しか吉宗を打っていない。

年齢層も高めで、オッサンばかり、たまに女性が座ってると思ったら異常なまでにあらゆるものを捨て去ったオバハンばかり。なんか、吉宗コーナ全体が僕を含めて地味に汚いんですよ。

考えてみればそれもそうで、このヤクザな機種「吉宗」に魅せられるのは言わずと知れたギャンブルジャンキーばかり。ギャンブル以外は比較的どうでもいい輩が集まってるはずで、ファッションとか見た目とか比較的どうでもいいはずなんです。じゃなきゃ、こんな天気の良い休日の昼間っから鉄火場にいるわけがない。

そうだよなあ、そりゃそうだよな、そりゃこうなるわ、と妙に納得しながら、吉宗に向き合ってさらに金を入れ始めたわけなんですが、その瞬間、吉宗コーナーに異変が起こりました。

フワッ

心地良い、フローラルな香りが一陣の風のように吉宗コーナーを駆け抜けたのです。

「お、いい香り」

明らかに香水の香り、それも付けすぎなレベルの臭いで、こんな臭いを発してるのは若い女性で豹柄を好む人しかいないぞ、と思うわけなんですけど、なんにせよタバコ臭いパチンコ屋店内においてこういった香りは新鮮です。心地良く感じながら打っていたのですけど何かがおかしいのです。

おいおい、まてよ、まてよ、まてよ。

このフローラルな香り、確かに心地良いけど、確かにいい臭いだけど、一体全体それをつけてるのは誰なんだ。そんな考えが頭をよぎったのです。

この匂い濃度から考えて吉宗コーナーに匂いの主がいるのは間違いない。確実に間違いない。しかしながら、吉宗を打ってるメンツを見回してみると、どう贔屓目に見ても良い匂いを発しそうな人間がいない。体臭や口臭、酒の臭い、加齢臭ならいくらでも発するだろうけど、どう間違っても良い臭いを発するわけがない。何度見回してみてもそんなやついない。

「この中に犯人がいる!」

吉宗コーナーに巣食うジャンキーどもの中に、分不相応にも香水をつけてやがるやつがいる。そこの競馬帰りみたいなオッサンだろうか、八百屋みたいな帽子かぶったオッサンだろうか、全てを捨て去り性別まで捨て去ったくさいオバハンだろうか。疑心暗鬼な想いがグルグルと頭の中を駆け巡ります。もう吉宗どころの騒ぎじゃない。

ハラハラしながら辺りを見回したり、用もないのにコーナーをうろついてさりげなくクンクンと臭いをかいでみたりしたのですが、一向に分からない。さすがの名探偵もお手上げといった状態でした。

しかし、事件とは急激に展開するものです。名探偵の一瞬の閃きで急転直下の大解決、そういったケースも珍しくないのです。でまあ、僕の隣で打っていたオッサンが、あまりに負けすぎて心が折れてしまったのか、そのまま首でも吊りそうな勢いで帰っていたのですが、その台を「美味しい」と判断したのか、向こうの方から物凄い勢いでオッサンが移動してきたのです。そして、僕の隣に座りました。

その瞬間ですよ。さっきまで心地良く漂っていた良い臭いが急激に濃厚なものに。もう、「くさい」とか「くささい」とか超越していて目に染みるレベル。どんな香水のつけかたしたらこうなるんだって問いたいくらいの臭いでした。ありゃあ、香水をバケツ一杯頭からかぶったくらいのレベルだった。間違いなくコイツが臭いの元凶です。

そのオッサンってのがまた凄くて、中学生が着る学校指定みたいな紫色のジャージ上下を着てましてね、本当に学校指定なのか「樋口」って名前が入ってるんですよ。おいおい、樋口さんよー、それ息子のじゃないのか。

で、なぜかジャージズボンの裾を片足だけ太ももくらいまで上げててですね、ジョイナーみたいになっとるんですわ。頭は寝癖バリバリ伝説ですし、髭なんか伸び放題、口の横に食いカスみたいなのついてましたからね。

僕は自分がアレですから、人のファッションをとやかく言うつもりはないんですけど、この人が香水をつけてはいけないレベルだということだけは分かります。香水つける前に寝癖直すべきです。

世の中には僕の考えを越えた信じられない人がいるんだなーと思いながら、やっとこさ判明した犯人に僕は大変満足したのでした。やはり疑いを持って犯人探しをすることは大切だ。疑心暗鬼ってのはあまり良くないこととして捉われがちだけど、そういうスリリングな緊張感ってのもいいものじゃないだろうか。いつも山奥のペンション連続殺人事件じゃ身が持たないから、こういう場面で。

その後、パチンコ屋って異常に音がうるさいから絶対バレないだろうなーと思いながら思いっきり屁をこいて快感だったのですが、どうも臭いが実物の実、いわゆるウンコに近かったらしく強烈だったためか、オッサンの強烈な香水の臭いと混じって相乗効果、おいおい、誰かウンコ漏らしたんじゃ?という触れてはいけないアンタッチャブル的な雰囲気が吉宗コーナーに蔓延しました。

まあ、そのオナラの犯人は見紛うことなく僕なのですが、みなが「犯人はこの中にいる!」と疑心暗鬼になるのはいいこと、せいぜいハラハラしてくれよーと内心ワクワクしてたのですが、なぜか4秒後には吉宗コーナーの7割の人間が「お前が犯人だろ」みたいな目で僕のこと見てました。なんでやねん。何で分かるんだ、もっと疑心暗鬼になれよ。

ちなみに、その日、そんなこと考えながら打っていたせいか、吉宗で歴史的に負けて自殺したくなったのですが、これは店側が不正に操作して僕の台だけ出ないようにしたんだ!と疑心暗鬼で自分を慰めました。

3/29 体操バカ

体操バカ、池谷幸雄大暴れ。

88年ソウル五輪で団体・個人床で銅メダル、92年バルセロナ五輪では団体銅メダル個人床では銀メダルを獲得した体操界のアイドルでした。芸能界に転進後の目覚しい活躍は皆さんの記憶に新しいところだと思いますが、最近ではめっきりメディアでは姿を見なくなりました。

以前から彼のその潔い体操バカっぷりに注目していた僕は、日々彼のことを気にかけ、池谷は今頃どうしてるんだろう、と夕陽を眺めながら物思いに耽ったりするのです。そう、僕にとって池谷はライフワークといえるほど気にかかる存在だった。

ある日、何気なくテレビを見ていたら筋肉番付だかなんだか、キチガイとしか思えない跳び箱を飛ぶ番組をしていて、そこに池谷の弟である池谷直樹が出ていて、そのあまりにモサッとした髪型に大笑いしたりしたのだけど、それでも僕の心は兄である幸雄にゾッコンだった。

しかし、そんな僕の想いとは裏腹に、池谷幸雄はメディアから姿を消し、まるで煙のように消え失せてしまった。もはやほとんどの人の記憶から消え失せ、この日記で名前が出てくるまで存在自体を忘れていた人が多いんじゃないだろうか。

気になる存在であるのに、それに関する情報が全く入ってこない。これはもう悶え苦しむほどの苦痛なのである。気になって仕方ないのに何も分からない。例えていうならばデブ過ぎるお相撲とりさんみたいなもので、自分のチンコが痒くて仕方ないのに、腹が邪魔でチンコが見えない。もしかしたらブツブツとか凄いことになってるかもしれないのに、全く見えない、そんな状態ではないだろうか。

このように、池谷幸雄に飢えていた僕は、日々彼の情報を求めて彷徨い、彼が最も輝いていた時代、とんねるずの番組とかに出て笑顔を振りまいていた時代を思い出していた。過ぎ去りし時代はもう帰ってこない、だからこそ尊くて儚いものだと実感しながら。

「もう池谷は芸能界から消え去ったんだ・・・」

そんな風に諦めかけた時でした。まるで恋に破れた乙女が、あんな人のことを忘れて歩き出さなきゃ!と髪でも切って心機一転、頑張ろうしている時のように池谷を過去の遺物とし、新しい体操バカを探そうと決意したその時でした。

コンビニで何気なく手に取った不動産情報誌「おウチの情報」、これは毎月発行されて無料で配布される冊子で、周辺の物件情報などをまとめたチンケなものなんですけど、これが無料ってこともあってか毎月のように手にとって見ちゃうんですよね。別に引っ越す気もないんですけど。

で、勿論この冊子は物件情報誌ですから、20ページほどの薄っぺらい冊子の内容の9割は物件情報で、「敷金礼金3か月分!南向きで生活便利!」とか書いてあって僕にとって何の情報価値もないんですけど、たった一ページだけ興味を惹くページがあるのです。

それが、表紙をめくって1ページ目にある連載コラム「引越し物語」なるページで、毎月月代わりでB級とも言える芸能人が登場、自分の引越しにまつわるエピソードを面白おかしくコラムにまとめているのです。まあ、大抵はマネージャーが書いてるんでしょうけど、これがなかなかどうして面白い。

僕も一年前にありえない引越しを経験し、その体験をこのNumeriで書いたわけなんですが、それ以上に芸能人の、たとえB級と言えども有名人の引っ越し体験は面白かったりするのです。

そういった事情もあって、僕はこの「引越し物語」1ページのコラムだけを楽しみに、毎月この「おウチの情報」が発行されてるのを楽しみにしているのですが、先月の「おウチの情報2月号」において、途方もない事態が発生したのです。

毎月月代わりでB級芸能人が登場し、コラムを披露する「おウチの情報」、なんとその二月号のコラムゲストは・・・池谷幸雄だったのです。そう、僕が気がかりでしょうがなく、けれども情報が入らずに半ば諦めかけていたあの男が登場していたのです。

これは衝撃でした。思いも寄らぬ場所で気がかりなアイツに出会えてしまった。もう、土曜日の昼下がりに何気なくテレビを見ていたら弟が出演していた時以来の衝撃でした。ハッキリ言って腰が抜けるかと思った。「池谷・・・っ!貴様・・・っ!こんなところでなにやってるんだ・・・!」と呟いてしまったもの。

あまりの衝撃に我を忘れるところでしたが、とにかく気にかかる彼の人が注目のコラムページに登場したのは喜ばしいことです。きっと池谷様のことですからかなり面白い引越しエピソードがあるはず、期待いっぱいで心の臓をバクバクさせながらコラムを読み進めましたよ。

体操で頭がいっぱいの池谷様、きっと引越しもそんなエピソードがてんこ盛りに違いない。「いやー、ダンボールに荷造りしてたらムラムラしちゃって、気付いたらダンボールの上で鞍馬しちゃって・・・」だとか「荷造りのロープ持ってたら急にリボンに見えちゃって、気付いたらクルクル回して演技始めてましたよ、あ、これは新体操か、てへっ」とか「荷物運ぼうとしたらバク転しちゃって、荷物バラバラ」なんていう微笑ましいエピソードが書かれているに違いありません。

さあ、池谷様の面白引越しエピソードを読もう!そう決意して表紙をめくった瞬間、池谷様のコラムのタイトルが目に飛び込んできたのですが、それ見て腰が抜けるほど驚愕したのでした。

「仮面ライダーになりたくて」

いやいや、おかしいじゃない。おかしすぎるじゃない。驚愕のタイトルと共に4段ぐらいぶち抜きで池谷様のグッドスマイル。他の芸能人は引越しっぽいタイトルをつけてコラムを書いているというのに、池谷様は何のためらいもなく「仮面ライダーになりたくて」、その男っぷりや良し。

まさか、いくら池谷様とはいえ引越し情報誌のコラムに仮面ライダーなんてありえない。きっとこれは読者の興味を惹くための伏線で、ああなるほど!と唸るくらい自然でナチュラルに引越しの話に繋がるに違いない。仮面ライダーから引越しへ、ちょっとどう繋がるか想像もつきませんが池谷様なら上手にやってくれるはずです。恐る恐るコラム本文を読み進めました。

「幼い頃はやんちゃで暴れまくっていた・・・」

から始まる衝撃のコラム。そこから延々と生まれた街の話が始まり、4歳の頃から体操を始めた話にシフトします。

「初めて(体操の)練習を見たとき、これは仮面ライダーの学校なんだって(笑)」

などと書き出す始末。(笑)じゃねーよ。

これはこれで池谷君の半生を語る上では重要なコラムかもしれませんが、あくまでもこのコラムのコーナー名は「ひっこし物語」です。そこに仮面ライダーとか臆面もなく書ける勇気、なにか大切なものを学んだ気がします。

22歳で体操を引退し、芸能界入りするまで池谷君の体操人生トークが続くのですが、コラムの終盤、さすがの彼も「これは引越しのコラムだった」ということに気がついたのか、突然何の脈略もなく引越しに関する話を書きだします。

しかしながらその内容がすごくて、まずこれまでの体操人生トークと全く繋がってない脈略のないものという点もありますが、それ以上にすごいのが

部屋探しのポイントはアクセスがいいこと、ユニットバスは嫌、収納が多いほうがいい、という三点のみ。こんなもの、別に池谷じゃなくともその辺のOL、春から新生活を始める大学生だって部屋探しのポイントに挙げるだろうというものばかり。

で、最後は自分は今「池谷幸雄体操倶楽部」なるものを設立して後進の育成に努めているということを書いて終わり。これもまた部屋探しのポイントの話から脈略なく始まります。

このコラム、80行くらい文章量があるんですけど、実質的に引越し部分に触れたのは4行のみという驚愕の内容。後76行は全部何も関係ない自分の体操の話ばかりです。どう好意的に見ても、一通り池谷の体操列伝を書いた後に無理やり「部屋探しのポイント」をねじ込んだとしか思えません。

さすが池谷幸雄、その名に恥じぬ体操バカっぷりだぜ、と感動に近い感覚を覚えつつ僕は冊子のページを閉じるのでした。僕も彼のように何か夢中になれるものが欲しい、勢いあまって引越しコラムに体操の話ばかり、それも関係のない自伝ばかりを書いてしまうほど熱中できる何かが欲しい。いい意味で体操バカ、そんな池谷幸雄になりたい。

とか思ってたら、職場の機関紙が印刷が上がって配布されてきまして、これは毎月発行される社内報みたいなチンケな冊子なのですが、毎年三月はスペシャルバージョン、抽選によって選ばれた社内の精鋭10人がコラムを書くという企画が行われるのです。

テーマは「仕事で感じたこと」だとか「自らのスキルアップのために」だとか、向上心の塊みたいな内容で皆さんかいてるんですけど、そういや僕も抽選で選ばれたみたいで依頼が来て、何か書いたなー、時間ないから30分で急いで書いたんだよなー、何を書いたんだっけ、と配布された社内報をパラパラとめくってみましたところ

「わたしさくらんぼ」

という衝撃のタイトル。そして、「大塚愛は神だ」というラリってるとしか思えない一文で始まる本文。

同期のAさんが仕事後にスキルアップのために英会話スクールに通って、そこで講師と心温まるありとりがあった感動秘話を書いてたり、新入社員のB君が初任給でご両親を温泉旅行に連れて行った話などを書いていたり、中国の台頭をテーマに世界の中の日本の役割というテーマで書いてるやり手がいるというのに、その中で僕だけ「大塚愛」。これを書いた数週間前の僕を激しく拷問にかけたい気分でした。

体操バカ、池谷幸雄。それに負けず僕も大塚愛バカなのかもしれないと思ったのでした。大塚愛バカ、pato大暴れ。


3/25 過去ログサルベージ  

キーボードに触れると嘔吐を繰り返すという拒絶反応を見せております。ということで、あまりに放置しすぎもあれなので、今日は過去ログサルベージ。今や読むことが出来ない古い過去ログをモサッとコピペして終了するという、僕らサイト管理人の大きな味方です。

4月からは頑張って更新しまくる、ネオpatoをお見せできると思うので乞うご期待!それではどうぞ!

---------------------------------------------

2003/7/29 マシンガンのようにギターを携えて

夜のアーケード通りを歩く。全ての商店は閉店してしまい、人通りもまばらだ。前方から何人かの酔っ払いのサラリーマンが千鳥足で歩いてくるだけ。昼間の喧騒が嘘のように静かだ。

僕は夜のアーケード通りが好きだ。全ての商店がシャッターを閉め、アーケードの照明だけがクリーム色の通路を照らす。まるで昼間より少し温度が下がったかのように感じる。

一昔前ならば、こういった夜のアーケードどおりとは静かなもので、聞こえる音といったら遠い国道の車の音ぐらいのものだった。街中にありながら、驚くほどの静寂をもたらすアーケード。なのにいつまでも煌々と照らされる明り、そのアンバランスさが好きだった。

けれども、最近のアーケードは違う。なんというか、変な若者が隅っこの方に座って歌とか熱唱してる。それが一組だけではなく何組も何組も、50メートル間隔でウンコのように座って音楽を奏でている。なんていうか路上ミュージシャンってやつだね。

なんだか「ゆず」とかのニセモノみたいな2人組が、一生懸命ギターを奏でながら熱唱したりしてんの。グリャングリャンギターを奏でて歌ってるの。もう見てらんない、聴いてらんない。とか言って徹底的に近所迷惑だと叩きたい所なんですが、実はこういった活動には少しは理解があるつもりなんです。だから路上ミュージシャンは叩かない。

いやね、音楽を奏でるってのは素敵なことではないですか。自分のメッセージを、自分のソウルを音楽に込めて多くの人に聞いてもらう。いいではないですか。その辺は路上ミュージシャンも僕らテキストサイト管理人も通じるものがあるのではないかと思います。

やはり、静かなアーケードの風景が無くなってしまったのは残念ですが、是非とも路上ミュージシャンの皆様には近所迷惑にならないように頑張って欲しいものです。音楽って人の心を豊かにする素敵なものだから。

そもそもね、僕はちょっとだけギターが弾けるんですよ。なんていうか、ウクレレに毛が生えた程度ですが、弾けるんです。よくわからんけど。いやね、皆さん僕がギターを弾けるといったら意外だと思うかもしれません。僕だって意外です。何で僕はギターが弾けるんでしょうか。

高校時代、僕は近所の幼馴染の家に遊びに行ったのですよ。幼い頃から一緒に遊んでいた僕の友人。高校受験でお互いに離れ離れになってしまい、僕は市外の高校へ、彼は市内の不良高校に行くようになったのです。

その友人が通っていた高校は凄いものでした。もう、校内のガラスを割ったり、廊下をバイクで走ったり、旗を燃やしたり。まさしくスクールウォーズを地でいく学校でした。全校生徒の9割は鳥の巣みたいな頭をしてましたしね。

で、そうなると、その不良高校の近くだった友人の家は自然と溜まり場みたいになるんですよ。もうね、遊びに行くたびに不良どもが集ってて、タバコ吸ってたりするの。もうもうと部屋中が白い煙で覆われてたりする。そんな状態でした。

でも、僕はその友人がいくら不良になってしまっても、友人の家がいくら不良の溜まり場になってしまっても、やっぱ幼馴染ではないですか。昔と変わることなく遊びに行ってたのです。

そうすると、自然とヤンキーたちとも仲良くなってきます。そりゃね、ヤンキーどもの中に僕のような品のいいお坊ちゃまがいたら最初は浮いてしまいますよ。「なんだよ、アイツ」ってな感じで白い目で見られたりもします。けれどもね、やっぱ彼らはそこまで悪い人ではないんですよ。すごく根は良いやつらで、話していても楽しいんです。そのうち、僕はすっかりとその溜まり場に溜まる不良どもの一員になっていました。

その頃の不良どもの話題の中心といえば、バイクとギター。僕は高校がバイクOKなところでしたので、普通にバイクに乗っており、彼らも羨ましげに見ておりました。けれども、僕は逆に彼らが持っているギターが羨ましかった。

やっぱ楽器が弾けるって素敵ではないですか。ギターを片手に愛のメロディを奏でたりしたらイチコロではないですか。そういった理由もあって僕はギターが弾きたかった。これまでにも中学時代なんかは曲を書いたりとかはしてたんですけど、正式な形ではギターってできなかったのですよ。

それからはね、溜まり場でギターを教えてもらいましたよ。不良どもにギターを教えてもらいましたよ。譜面とかビタイチ読めないのですけど、なんていうかこういう順番で弾くんだって教えてもらいました。曲ごとに弾く順番を丸暗記するってイメージですかね。

で、何ヶ月かやってると何曲か弾けるようになったんですよ。すごく嬉しかった。やっぱり自分で音楽を、自分の指でメロディを生み出せるって素敵なことだと思う。ギターを携えた僕は無敵だった。しかし、運命とは残酷なもの、有頂天の僕に悲劇は襲いました。

ある日、いつものように溜まり場に行くと、誰もいませんでした。いつもは何人か不良どもがいてタバコを吸ってたりするのですが、見事に誰もいないのです。けれども、すでにドップリと溜まり場ライフに浸かっている僕は、何も臆することなく無人の溜まり場に上がりこみます。

見ると、部屋の片隅には不良どもが置き忘れていたギターが。忘れもしません、いつもいつも練習しているY君のギターです。Y君はとてもギターが上手なのですが、気性が荒く喧嘩っ早い性格でした。しかも空手とかやっているので始末に終えないのです。そんな最強の暴れん坊のY君ですが、いつも優しく僕にギターを教えてくれたのです。そのギターを忘れるわけがない。

僕はY君に無断でギターに触るのは悪いな、などと思ったのですが、どうしても弾いてみたかった。少しは覚え始めてきた時期です、ギターが触りたくて仕方なかった。

気づくと、僕はギターを携え、かなりのハイテンションで叫びながら覚えたての曲を弾いてました。もう、弾きながら机の上に乗ったり、本棚を蹴ったりと大暴れ。ギターを携えた僕は無敵だ。ギターはマシンガンだ!イェオェアー!!!!!

などと興奮していました。音楽を奏でるということは人の心の中の獣を解き放つのかもしれない。興奮して益々ヒートアップする僕。もうとまらない。どうにもとまらない。

いよいよ曲が終盤に差し掛かり、最高のクライマックスを迎える。僕はもうトランス状態になり、渾身の力で最後の音を奏でた。力いっぱいギターの弦を弾いたのです。その瞬間でした。

ブチブチブチブチブチブチブチ

いやね、ギターの弦が全部切れやがるの。物凄い勢いで切れるの。なんかね、興奮しすぎて力を込めすぎちゃったみたい。なんかビローンビローンと弦が踊ってるの。もうね、血の気が引いたね、真っ青になるのがわかった。

ギターをこよなく愛し、喧嘩っぱやい空手の達人Y君のギターを勝手に触って、一本ならまだしも全部の弦を千切ったのだからね。殺されても可笑しくない。修羅のように怒り狂ったY君にギターでボッコボコに殴られて、ケツからギターとか差し込まれても可笑しくない。

情けない話、足とかガクガク震えちゃってさ。どうしようかと思ったよ。なんとか見た目だけでも取り繕おうと、戸棚の中にあった糸とかを弦のように張ってみるんだけど、見るからに可笑しいんだよね。赤い糸だったし。ギターに赤い木綿の糸だなんてアホか。

で、なんとか釣り糸を見つけたんで、同じように張ってみたんですよ。そしたらまずまず見た目はギターっぽくなったんだけど、全然音かでないの。ほんと、泣きながら代わりの品を探したんだけどダメだった。

そしたらさ、Y君がやってきたんだよ。ギターを忘れたからって取りに来たんだよ。もうね殺されることも覚悟した。怒りのアフガンとなったY君に殺されてもいいって思った。僕はもうまな板の上の鯉。好きにして!って感じだった。

で、正直にY君に話するんだけど、

「なんだよ、切っちゃったの?まあいいや」

とか笑顔で言うんですよ。全然怒らないんです。弦の変わりに釣り糸が張ってある自分のギターを見ても怒らないんですよ。それどころか

「丁度いい機会だし、弦の張り方とチューニング教えてやるよ」

とか言って、ポケットから新しい弦を出してきて、教えてくれるんですよ。もうビックリだよね。

喧嘩っ早いって言われて修羅のように恐れられてるY君が菩薩のような顔して弦を張り替えてるの。

たぶんね、彼はホントに短気で喧嘩っ早いんだろうけど、音楽に対してはすごく真摯なの。すごく真剣に取り組んでるから、ギターを覚えようとしている僕にとても優しかったのだと思う。

やっぱね、音楽って素敵だと思う。本当本当に聴く人だけでなく、奏でる本人まで心が癒される、そんな素敵なものなんだって思う。あんな暴れん坊なY君まで菩薩になるんだから素敵なもんだよ。やっぱいいよね、音楽って。

だから、路上ミュージシャンの人たちも、人を癒しつつ自分も癒されればいいと思う。癒しのない音楽は意味がないんだから、近所迷惑になるような場所でさえやらなければいいのではないでしょうか、ということです。

ちなみに、僕はもうギターなんて忘れちゃったのでビタイチ弾けません。もっぱら聴く方で癒されたりしてます。


3/17 ビックリした

「驚きと興奮は老化防止に役立ちます!」

僕がよく行くパチンコ屋のトイレに、こんな謳い文句の新聞の切り抜きがバカのように貼ってあります。大便ブースの各コーナーはもちろんのこと、小便のところにもしっかりと目線の位置に貼ってあったりします。

そうなると、小便でも大便でもやってると嫌でも目に入っちゃって、興味ないのにその切り抜きを読む羽目になるんですけど、なんでも老化防止、ボケ防止にパチンコが最適らしんですよね。

パチンコってのは、光とか音がすごいですから、それが適度な刺激になって、驚き効果が得られるらしいです。そして、当たるか当たらないか、激しくエキサイティングな場面では興奮する。そうなると脳内から良い汁が溢れてきて老化防止に役立つらしいです。

そんな記事をトイレ中に貼りまくってる時点で、パチンコ屋必死だな、と言わざるを得ないのですけど、パチンコ屋も老人に打ってもらおうと必死なんでしょう。でもまあ、老化防止にパチンコやって年金を全部吸い取られちゃったら老化もクソもないと思うんですけどね。

驚きや興奮、つまるところドキドキ感ってのが体に良い、ひいては老化防止に役立つってところは同意したい部分です。何歳になっても恋をしているご老人が年齢より若く見えるってのは良くあることです。恋ってのは極上にドキドキする驚きと興奮の連続ですから、そういうのが老化防止に役立ってるのでしょう。

老化防止に役立つから!と家のお爺ちゃんをいきなり驚かしたりなんかしたら、それこそ永眠されてしまい、老化どころの騒ぎじゃなくなる可能性があるので絶対にやめましょう。

ということで、なにがということなのか全然分かりませんが、驚きは老化防止に役立つ!をスローガンに今年、齢29歳を迎える、ちょっと老化が気になるお年頃の僕が最近驚いた出来事を3つほどオムニバスで。まあ、早い話が小ネタ特集です。それではどうぞ。

1.朝っぱらから驚いた

僕はまあ、懸命な読者さんなら知ってると思いますけど、異常に早起きなんですよ。これは、主に職場が遠いということに起因するのですが、それだけ朝早くに出勤するとなると、朝独特の町の風景なんかを見るわけです。

通勤途中、職場の近くに朽ち果てたゲートボール場があります。最近はめっきりご無沙汰だったようですが、ここ最近は若干暖かくなったからでしょうか、ご老人が朝も早くからゲートボールに興じたりしています。

ゲートボールってのはよくできたスポーツでして、力もあまりいらなければ体力もそんなに使わない。まさに老人にはうってつけの球技です。上記した老化防止云々じゃないですけど、やはりこれも老化防止に役立っているのではないでしょうか。

10人程度のブラウン系のファッションに身を包んだご老人が、それはそれは楽しそうにゲートボールに興じる姿を横目で眺めつつ出勤するのが最近の日課になっていたりします。

普通、スポーツをやってるところ見ると言うのは明らかに動なわけで、野球にしてもサッカーにしても、ダイナミックな躍動が感じられるのですが、ゲートボールに興じる老人はまさに静。そこには何か落ち着き払った癒しのようなものすら感じてしまいます。

朝から癒し系のゲートボールを観戦する。僕も頑張って働いて老後は悠々自適に朝からゲートボールと行きたいものだね!なんて思いながら仕事に向かうわけです。

しかしながら、今朝だけは違いました。

いつものように車を運転し、職場近くのゲートボール場にさしかかります。今日もご老人たちがゲートボールやってるのかな?とチラッと視線をやったその先には、信じられないような光景が広がっておりました。

いやね、やけにダイナミックなんですよ。

普段は静なゲートボールなのに、何故か今日は躍動感溢れる動のオーラが漂っている。それもそのはずで、なんか老人どもがゲートボール場にネット張ってバレーボールしてやがるんですよ。バレーボール。

いつものゲートボールメンバーとおぼしき老人どもがバレーボール。普段はヨボヨボでやってるんですけど、今日だけは大ハッスルしてやがるんですわ。ちょうど僕が見たときは、前衛にいた老人がスパイクを決めるところで、敵の老人も飛びついてレシーブしようとしてました。信じられない。彼らに何があったんだ。

投網みたいなネットは低い位置に張ってあったんですけど、それでもやっぱり見事にバレーボール。しかもちゃんとラリーが続いてました。

僕なんかが見ると、お爺ちゃんたちがバレーなんて、バラバラになっちゃうんじゃないか、って思うんですけど、それでも元気に老人達は歓声を上げてバレーボールをしていました。死ぬほど驚いた。

2.昼間に驚いた

ホームセンターで買い物してたら、小さな子供が「アナルファック!」って叫んでました。死ぬほど驚いた。最近の子供はオマセさんですね。

それどころか、「お母さん、アナルファック」とか言ってました。お母さんがアナルファックなのか、それとも子供がお母さんにせがんでるのか、気になって仕方がない。

若妻っぽいお母さんは顔を真っ赤にして「しーっ!あとで!」とか言ってました。何が「あとで」なのか全然分からない。

3.夜中に驚いた

つい最近、といっても一ヶ月くらい前ですけど、ノートパソコンを購入したんですよ。NECのLavieとかいうやつの小さいやつ。手頃な大きさでファッショナブル、おまけに画面とか綺麗だしキーボードも打ちやすいし、ですぐに気に入っちゃったんですよね。

僕は寸暇を惜しむ企業戦士ですから、出先とか家に持ち帰ってとかで仕事ができるよう、このようにモバイル使用に特化した持ち運びしやすいノートパソコンを購入したんですけど、使ってみると予想以上にこれが素晴らしい。

あまりに使い勝手がいいものだから、外出先とかでのサブマシン的使用に留まらず、もうほぼメインマシン的感じで常に使ってたんですよね。

それで、今日も部屋に座りながら、この愛しき愛機を膝に抱えカチャカチャと日記の執筆をしていたんです。かわいくて仕方がない愛機だと日記の執筆もはかどるってもんです。

こういった軽くて小さいモバイルマシンを日常的に使うと、何が良いかって移動性が高まるのがいいですよね。床に座って日記を書いてて、「ちょっと寒いな?」って思ったら暖房の近くまでひょいっとPC持って移動すればいいですし、ウンコしたくなったら便所に持っていって書けばいいんですから。ホント、便利。高い金出して買った甲斐があったってものです。

そんなこんなで、カチャカチャと日記を書いていたわけなんですが、座った姿勢で書くのが面倒になっちゃいましてね、ちょっと布団に入って寝ながら書こうかと移動したんですよ。お気に入りのパソコン持って、ひょいひょい、と移動。その瞬間ですよ。

電源ケーブルが絡まってたみたいで、パソコンだけが移動できなくなっちゃったんです。僕はひょいひょいと動いてるのに、パソコンだけはケーブルに引っ張られて移動できない。フワッっとね、僕の手から中空に浮くようにパソコンが離れていったんですよ。フワッと。

グシャ!

重力に抗えず、無残に床に叩きつけられるマイ愛機。それでもやはり重量が軽いマシンのためか、それほど深刻な感じはしませんでした。なんか、叩きつけられる音も軽やかでしたからね。あーあ、買ったばかりなのに傷がついちゃったかなー程度のものでした。

布団に移動し、さてさて日記の続きでも書きましょうかねーとパソコンに向かい合ったその瞬間、ビックリして尻こ玉が抜けるかと思いました。

 

液晶が割れてる。

これ、こういう画面を表示させてるとかじゃないですからね。なんか黒い液体が漏れ出てきてるんですよ、割れ目から。割れ目から液が漏れ出るだなんてエロいな、とか言ってる場合じゃないですよ。

軽やかに落としただけなのに壮絶に液晶が割れてるんですよ。まるで銃撃受けたみたいになってんの。どっからどう見ても天に召されて荼毘にふされたとしか思えない。やってらんない。

どうも起動はしてるっぽいのですけど、何をどうやってもこの画面から動きませんので途中まで書いてた日記も完膚なきまでに失われました。だから、今日は急ごしらえでこんな小ネタ日記を書いてるんです。

買って一ヶ月、大枚はたいて購入したお気に入りのノートパソコンが見事に破壊され、本当に驚きを隠せませんでした。

ということで、日常の中に驚きが連続して訪れる僕の私生活、さぞかし脳から色々な汁が出てきて老化防止に役立ってるのかと思うのですが、特に最後のサプライズ、買ったばかりのノートパソコン死亡は堪えたらしく、落ち込みが半端じゃないので、なんだかぐっと老け込んだように感じました。老化防止どころの騒ぎじゃない。18万円もしたのに・・・。


3/11 ボツ日記

ヌメリナイトで年甲斐もなくはしゃぎすぎたのか、翌日には喉が潰れて淡谷のり子みたいになってました。なにをどうしたらCDかけるだけのイベントで喉が潰れるのか理解できないのですが、本気で喋るのが億劫になるくらい喉が潰れていた。

東京は歌舞伎町、その中心にあるコンビニで買い物して、まあ、カフェラッテとエロ本を買ったんですけど、合計で895円だったかなんですよ。で、今はもう珍し過ぎてプレミアがついてるんじゃっていう2000円札で支払ったんですけど、店員のヤロウ、なにをトチ狂ったのか105円しかオツリをくれないんですわ。

普段なら千円足りねえじゃねえか、とそれこそ烈火のごとく怒り狂い、店員さんの人間としての尊厳を奪いかねないほど抗議するのですが、喉が痛くて喋れない、億劫だったのでそのまま帰りました。千円損しても仕方ないほど喉が痛かった。どれだけ深刻でシリアスな状態だったか察していただければ幸いです。

喉はなんとか治ったのですが、今度は体にガタがきまして、毎晩足が攣るわ肩より上に手が上がらないわ、血尿が出そうだわ、家賃の督促が来るわ、と大変な騒ぎ。ちょっと、すごく言いにくいんですけど、日記がなかなか更新できません!

ということで、以前に、あまりのつまらなさにモロッとボツにした日記をコピーアンドペーストして今日はお茶を濁したいと思います。本当はね、出したくなかったんだよ。ということで、どうぞ。

-----------------------------

トイレラプソティー

職場のトイレは、明らかに何かいるとしか思えない。

僕はいわゆるトイレが近いっていうやつで、それも大も小も至近距離かってくらいに近くて頻尿、頻糞ですから、一日に30回くらい職場のトイレに行くんですよね。

でまあ、トイレに行くとたまにトイレの中からただならぬ気配なんかを感じるんですよ。怨霊の類というか、物の怪の類というか、とにかく尋常ならざる気配を感じるんです。間違いなく何かいる気配。

僕はそういった霊感って言うんですか、「何か見える」とか言って場の皆を凍りつかせたりする能力は皆無でして、これまでにそういった経験は殆どないんですけど、何故か職場のトイレだけは感じるでですよ。

ちょっと前の話なんですけど、僕がまたいつものようにオシッコしにトイレに行ったんですよね。1日30回行く内の1回、1/30だぜって思いながらモロンとチンポコ出してオシッコしてたんです。今日もダブルヘッドスネーク、しかもV型だぜって思いながら用を足してたんですわ。

で、用を足しながら感じたわけですよ。ただならぬ気配というか、何かが潜んでいる雰囲気というか。とにかく、只事じゃない何かを感じたのです。

そたら、なんていうんだろう、人が気持ち良く小便してるというのに、モルモルとおばちゃんがトイレに突入してくるんですわ。エプロンつけた二人組のおばちゃんがですね、アイドルデュオ並に息を合わせてトイレに突入してくるの。まさに猪突猛進、そんな言葉がシックリくるほどの突入っぷりだった。

いやまあ、別にどうってことない、普通に職場が雇ってる掃除のおばちゃんだったんですけど、実はこれってよくよく考えてみると変ですよね。僕が掃除のオッサンで、女子トイレにオラーって突入しようものなら、25歳OLは間違いなく悲鳴を上げますし、下手したらタンポンとか投げられます。僕も間違いなく留置場へGOGO!となるんですけど、これが何故か逆だと絶対にならない。

まあ、そんなことはどうでもいいとして、僕も大して気にすることなく小便をしてたんですよ。すると、二人組デュオのオバちゃんのうち片一方が、それはそれは見事な失敗パーマというか典型的なオバちゃんパーマをしておりましてね、ちょうど新千円札の人みたいな髪型になってたわけなんですよ。やけにハイパボリックな髪型。

そのオバちゃんがタワシ片手にゴシゴシと小便器を洗っていたんですけど、チロッチロッっと僕のブツを横目で見るんですよね。なんていうか、世界で5本の指に入るくらい気まずい時間ですよ。何度も言うようだけど、ホント、逆だったら逮捕されてる。

そしたらね、オバちゃんが言うわけですよ。

「あら、洗剤使うの忘れてたわ」

誰に向けて言ったセリフか分かりませんけど、オバちゃん、よほど僕のブツに熱中時代だったのか、便器を洗うのに洗剤を忘れる体たらくぶり。いそいそと相棒が待つトイレ入り口に洗剤を取りに戻ります。

ちょうどこの時には僕も小便を排出し終え、最終段階の水切りに入ってたんですけど、入り口付近からオバちゃん掃除婦デュオの会話が聞こえるわけですよ。

「そういえば、今日から新しい洗剤渡されたわ」

「あらーん、でも、前の洗剤も残ってるわ」

「どっち使おうかねえ・・・」

そんな死ぬほどどうでもいい会話を聞きながら、やけに切れの悪い残尿を処理しつつ、フッと入り口のほうに目をやると、そこにはバケツに入った二つの粉洗剤が。なるほど、新旧2種類の粉洗剤で揺れ動いてるわけか、このオバちゃん達は。

そんなものどっちでもいいじゃねーか、とか思うのですけど、オバちゃん達は至って真剣なご様子。見ると、どっちが新しくてどっちが古いのか知りませんけど、どうもエメラルドグリーン色の粉洗剤とピンク色の粉洗剤で迷ってるご様子。っていうか、バケツにもんまりと入った目に痛い色の洗剤ってのもなかなか凄い。

「んー、決めた!ピンクにしちゃお!」

「やっぱピンクよねー、ぎゃははははは」

「だわよねー、ぎゃはははははは」

どこが笑いどころなのか全然分からないんですけど、そう言って爆笑し合うオバちゃんデュオ。なんていうか、そのやり取りを見ながら、ああ、オバちゃんといえどもピンクが好きなんだな、やっぱり女の子なんだな!と生理があがったようなオバちゃんの中に潜む乙女な部分に触れたわけなんです。

バケツいっぱいのピンク粉洗剤を抱えたオバちゃんとすれ違いつつ、僕は手を洗いに、オバちゃんは大便器の方に行きました。

あれれ、さっきオバちゃんは小便器を掃除しようとしていたはず。それで洗剤がないのに気がついて取りに戻ったはずなのに、今は大便器を掃除しようとしている。

まさか、彼女は僕のブツが見たくて小便器を洗い、チロチロと盗み見ていたのでは・・・。もう僕が用を足し終わったから必要なく、それで大便器を洗いに行ったんじゃ・・・。などと自意識過剰で、夜道で僕が後ろを歩いていると急に走り出すブスみたいなことを考えてました。

そんなことを考えつつ、手を洗って鏡に向かって鼻毛のチェックなどをしてたのですけど、そしたら異変が。

「ぎゃあああああああああああああああああ」

トイレにこだまする断末魔の悲鳴。もちろん、オバちゃんの悲鳴なんですけど、トイレって物凄く音が響くんですよね。マジで鼓膜がはちきれんばかりの悲鳴でした。

もう一人のオバちゃんが何事かと駆け寄ります。その、タワシ片手に駆け寄る姿が妙にシュールで笑えるんですが、僕もちょっと気になりますので、何事かと悲鳴を上げたオバちゃんに駆け寄ります。

するとアンタ、どうですか。恐怖に震えるオバちゃんの目の前に威風堂々と鎮座されるウンコ様。しかもアンタ、思いっきり便器からはみ出してるじゃありませんか。そりゃあ、こんな大量の置き土産、しかも暴れん坊な物見せられたら、オバちゃんと言えども生娘みたいな悲鳴を上げます。

普通、イメージとしてウンコってやつは茶色だと思うんですけど、何故かそのウンコは真っ黒。暗闇より漆黒のサンコンみたいなウンコ様が神々のような存在感で鎮座しておられるのですよ。

まあまあ、それだけなら普通じゃないですか。便器にウンコが置き去りにされている。それ自体は別によくあることじゃないですか。そのウンコが真っ黒で、しかもはみ出してるというよりは最初から便器外してやったんじゃねえの?ってレベルで外に出ていたとしても、百歩譲って普通じゃないですか。けれども、ここからが凄かった。

あーあ、はみ出しちゃって、こりゃあ掃除するの大変そうだなー、とか思いながら、その誰かが産み落としたウンコ様を眺めていたところ、さらに異変が。

「ぎゃあああああああああああああああああ」

隣の大便ブースからもう一人のオバちゃんの悲鳴が。見るとそこにも素敵な置き土産が。今度はちゃんと枠に収まっていたんですけど、それはそれは見事な一本糞様が便器の中に鎮座しておられました。

よくよく考えたら、用も足し、手も洗って鼻毛まで抜いた僕は用済みで、これ以上トイレに留まる理由もないのですが、連続でのウンコ大発見に大興奮、もはや一時も目が離せない状況になっていました。

でまあ、やっぱ二連続で大便ブースからウンコ様が見つかったら気になるじゃないですか。果たして三個目はあるのか、もしかしたらあるんじゃないか。もし三個目があったなら、これはもはやウンコテロだ。気になるじゃないですか。

二個のウンコに恐れおののくオバチャンズを尻目に、好奇心からさらに隣の大便ブースを覗きましたよ。もう好奇心から覗かずにはいられない、もう我慢できない!って勢いで覗きこみました。
見なきゃ良かった・・・。

そこにはやっぱりウンコ様が鎮座しておられて、しかもビチグソ、お上品な言い方をするとビチおウンコがありまして、まるで殺人現場みたいになってました。ウンコ三連発。もう堪忍して。

「あの・・。こっちもすごいですよ・・・」

そう告げる僕に、驚きや落胆、失望や絶望を隠せない何ともいえない瞳をしているオバちゃんコンビ。さっきから感じてた只ならぬ気配はこのトリプルウンコのものだったに違いない、と確信せざるを得ないのですけど、そうなってくるとね、気になるじゃないですか。三つのウンコの存在よりも格段に気になるものがあるじゃないですか。どうして置き去りにされたウンコってのは尻を拭いた痕跡がないことが多いのかってのも気になりますが、それ以上に気になることがあるじゃないですか。

そう、果たして4つ目はあるのか。

このトイレは、縁起の悪い数字ですが大便ブースが4つあります。そのうち3つからウンコの置き土産が発見された。そうなると、一番奥のブースにも・・・。そう考えるしかないのです。

もはや、僕とオバちゃんコンビの間に言葉は要らない。微妙にアイコンタクトを交わしつつ、一緒に一番奥の大便ブースに向かいます。もし、この先のブースに大便が放置されているようなことがあれば、それはこのトイレの全てのブースにウンコが存在することになる。バカな、そんなことがあってたまるか。全てのブースにウンコなど・・・。

とかハラハラしながら覗き込むのですけど、一番奥のブースにも普通にウンコ様は存在していて、こちらはまるで死んだ人の顔にかける布みたいにティッシュがファサっと被せてあったのですけど、それでもやっぱりウンコ様。

4連続ウンコ、しかも大便ブースコンプリートに言葉も出ないんですけど、この最終ブースにはそんなものが吹き飛ぶほど物凄いものが存在してました。

置き去りにしたウンコの上にシットリとティッシュを被せる几帳面さとは裏腹に、なぜかブース内には無造作にパチンコ屋の新装開店のチラシが8枚くらい散乱してました。で、何故か知らないけどその上には使用済みの生理用ナプキン。いやいや、ここ男子トイレですやん、なんでナプキンが!と突っ込みたくなるのをグッと堪えて捜索を進めると、買ってきたばかりの新品を出したのでしょうか、透明な包装用の箱と、ピンクローターがコードが引きちぎられた状態で投げ捨てられてました。いやいや、ピンクローターて。

そりゃあ大便ブース全てにウンコ置き去り、おまけに生理用ナプキンにピンクローターですから、僕だって只ならぬ気配を感じるはずです。というか、ウチの職場の連中はどういうトイレの使い方してるんだ。

でまあ、さすがに4つのウンコは人間一人のものではありません。量だって見事に4人前ありますし、形状や性質が違いすぎます。これが意図的に4人の人間が行った犯行であるのならば、犯人は職場の同僚。そうならば僕はリストラされる前に黙って辞表をしたためるのですが、さすがにそれは考えにくい。何か理由があるはずだ。

でまあ、よくよく捜査をしてみると、どうも大便器に水を流すシステムがぶっ壊れていたらしく、どこのブースのレバーを引いてもこれっぽちも水が流れませんでした。そう、水が流れないからみんな仕方なしにウンコを置き去りにしたに違いない。そう思いたい。

ウンコ4連続の謎は解明できたのですが、それでも、物凄い勢いではみ出してるとか、生理用ナプキンの存在やピンクローターの謎などてんこ盛りなのですが、とりあえず、これだけは言えます。ウチの職場のトイレには何かいる、と。

いやいや、正確にはウチの職場に何かいると。少なくとも、男子トイレで生理用ナプキン使う人と、ピンクローター使う人、あと、物凄い勢いでウンコがはみ出る人と、ウンコした後に尻を拭かない人が3人いるはずです。こんな人物が職場にいて同僚として存在しているくらいなら、トイレに花子さんとか怨霊とかいたほうがマシだ、そう思ったのでした。

「もう大変だわー」

そう言いながらホースからジャバジャバと水を流してウンコたちを洗い流すオバちゃん。もちろん、ピンク色の粉洗剤も大量に使っています。もう一方のオバちゃんのほうは、最終ブースのチラシや生理用ナプキン、ピンクローターなどを捨てていました。

けれども、何故か知らないけどピンクローターだけは捨てず、ビニールに包んでエプロンのポッケに入れたオバちゃんを見て、僕は「ああ、オバちゃんといえどもピンク色が好きなんだな」そう思ったのでした。トイレ掃除を眺めるのに夢中で、全然仕事をしてなかったので、たぶんそのうち首になります。首になったら職場全部のトイレにウンコして流さずに帰ります。


3/8 ヌメリナイト

ということで、何がということなのか全然分かりませんが、3月4日に新宿ロフトプラスワンで行われたヌメリナイトが無事終了いたしました。ご来場くださった数多くの方々、ありがとうございました。

朝起きたら意味不明の猛吹雪、外は一面の銀世界、犬は喜び庭駆けずり回りといった状態で、僕の脳裏には「絶望」の二文字、コタツで丸くなっていたかったのですが、蓋を開けてみればそんなことは杞憂に終わったのでした。

外は寒いのに、開場の随分前から入場待ちの列、そいでもって開始してみると開始から約2時間、9時の段階で入場者数220人オーバーで入場制限がかかってしまいました。その辺の部分、アナウンス不足であったのは事実で、入れなかった人々に多大なるご迷惑をおかけしてしまいました。申し訳ありません。

最終的には344名の方にご入場していただき、さらに「深夜のサバト」の名に恥じぬほどの盛り上がり、まさに狂喜乱舞の宴でございました。ありがとうございます。

間違いなく僕的には大成功だったのですが、ここで「大成功だった」と満足してしまうとその先がありませんので、あえてそれは言わず、次へと活かしたいなどと考えてしまいます。

詳細な、それこそ開場時からのレポートや、お会いしてお話した全ての人に関するエピソードなどはおいおい書くとしまして、今日はとりあえず当日のセットリストなどを。

ヌメリナイト アイドル 22:30-23:10
01 魔王/シューベルト
02 LOVEマシーン/モーニング娘。
03 恋のダンスサイト/モーニング娘。
04 恋愛戦隊シツレンジャー/後浦なつみ
05 奇跡の香りダンス/松浦亜弥
06 浪漫〜MY DEAR BOY〜/モーニング娘。
07 This is 運命/メロン記念日。
08 そこにあるかもしれない・・・/尼崎まゆみ
09 The美学/松浦亜弥
10 GOOD DAYS/ZONE
11 恋をしちゃいました/タンポポ。
12 乙女パスタに感動/タンポポ。
13 ねずみ算がわかりません/ねずみっ子クラブ
14 ミニモニ。ひなまつり!/ミニモニ。
15 SayYeah!もっとミラクルナイト/モーニング娘。


ヌメリナイト 大塚愛 05:30-06:00
01 黒毛和牛上塩タン680円/大塚愛
02 さくらんぼ(StudioLiveVer.)/大塚愛
03 pretty voice/大塚愛
04 スーパーマン/大塚愛
05 片想いダイヤル/大塚愛
06 GIRLY(ShortVer.)/大塚愛
07 妄想チョップ(ShortVer.)/大塚愛
08 雨色パラソル/大塚愛
09 HappyDays/大塚愛
10 HappyDays/大塚愛
11 ポンポン/大塚愛
12 さくらんぼ/大塚愛
13 さくらんぼ/大塚愛
14 さくらんぼ/大塚愛
15 さくらんぼ/大塚愛
16 さくらんぼ/大塚愛
17 さくらんぼ/大塚愛
18 さくらんぼ/大塚愛


アイドルの方の1曲目に「魔王」を持ってくるあたり、あらゆるものを舐めてるとしか思えない。どこをどう考えたらこれがアイドルなのか、あの日の僕を必死で詰問したい気分です。

ということで、なにがということでなのか全然分かりませんが、無事終了した「ヌメリナイト〜深夜のサバト〜」ですが、次回、開催されるのかいつあるのかも知りませんが「ヌメリナイト2〜今度は戦争だ!〜」でお会いしましょう!たぶん、今度は竜巻とかが直撃するはず。

2/28 魔王

「魔王」という曲があります。ゲーテ作詞、シューベルト作曲の200年以上も前のクラシックな曲です。僕がこの曲に出会ったのは中学一年の時でした。元々はドイツ語の歌詞が乗ってるらしい「魔王」ですが、それを日本語に翻訳した曲を音楽の時間に聞かされたのです。確か、音楽の教科書の最後の方に載ってた気がする。

この曲は、魔王、子供、お父さんの三人の登場人物からなるハートウォーミングなストーリーで、そのリズミカルな楽曲と衝撃の歌詞に、僕ら中学生は少なからず衝撃を受けたものでした。以下に、その衝撃の歌詞を記載します。
---------------------------------------
[魔王]
風のように馬を駆り 駆けりゆく者あり 
腕に童(わらべ)帯びゆるを しっかとばかり抱きけり 

坊や なぜ顔を隠すか 

お父さんそこに見えないの 
魔王が居る 怖いよ 

坊や それは狭霧じゃ 

可愛い坊やおいでよ おもしろい遊びをしよう 
川岸に花咲き 綺麗なおべべがたんとある 

お父さん お父さん 聞こえないの
魔王が何か言うよ 

なあに あれは 枯れ葉のざわめきじゃ 

坊や一緒においでよ よういはとうに出来てる
娘と踊って遊ぼうよ 歌っておねんねもさしたげる 
いいところじゃよ さあおいで 

お父さん お父さん それそこに 魔王の娘が

坊や 坊や ああそれは 枯れた柳の幹じゃ 

可愛や いいこじゃのう坊や じたばたしてもさらってくぞ 

お父さん お父さん 魔王が今 坊やをつかんで連れてゆく 

父も心 おののきつつ 
あえぐその子をいだきしめ 
辛くも宿に着きしが
子は既に息絶えぬ 

---------------------------------------
やけにキャッチーでダンサブルな、それこそ現代のJ-POPシーンでも十分に通用するご機嫌なナンバーに仕上がっているわけですが、それ以上に注目すべきはその深い歌詞です。

浜崎あゆみなんて目じゃないくらい叙情的な歌詞、それいでいて200年以上前の歌でありながら現代社会が抱える病理を的確に指摘したソウルフルな部分もあるわけです。

歌では、魔王が息子を連れて行こうとあらゆる手段を用いて誘惑しています。面白い遊びをしよう、踊って遊ぼう、いいところだよ、最終的には「さらっていくぞ!」と強硬な手段にも出ています。まあ、小さい男の子を連れていこうだなんて、魔王もショタコンか何かなんでしょう。

その魔王の誘惑に恐れ戦いた息子は、「お父さんお父さん、あそこに魔王がいるよ!」と必死で今まさに危機的状況にあることを父に告げるのですが、魔王の姿が見えない父は取り合おうとしまん。

「あれは枯れた柳の幹じゃ」などと適当に流す始末。もしかしたら、こいつは我が息子ながら頭が狂って幻覚が見えてるのかもしれん、ぐらい思ってるのかもしれません。このへんが現代における親子間のコミュニケーション不足などを揶揄していて面白い。

とまあ、魔王の魅力を語りだすと留まるところを知らないのだけど、当然ながら当時、つまり中学生だった僕らにとっても魔王を聞いた時のインパクトは相当なものだった。

曲のサビ部分だと思われる「お父さん お父さん」は僕らのハートを鷲掴みにし、瞬く間に大ブレイクした。とにかく何かあれば「お父さん お父さん」と叫ぶのが主流となり、一気に我がクラスの流行語のスターダムにのし上がった。これも、そのサビ部分のキャッチーな曲調のおかげだろう。

さらに、この曲が僕らを震撼させた理由はサビ部分だけではなかった。曲のラストの部分、「子は既に息絶えぬ」の部分がとにかく破格に素晴らしかった。この部分の歌い方を実際に文字で表すと「子はすでーにー、いーきー  タエヌ」っていう感じなんだけども、そこまで伸ばして引っ張りくせに「タエヌ」の言い方が妙にアッサリしすぎてて無性に笑えたものだった。

「お父さん お父さん」「タエヌ」の二大ダイナマイトキーワードのおかげで大ブレイクした魔王、我がクラスだけだったら間違いなくオリコン一位を獲得していたのだろうけど、実は僕にとってはそれとは別に深い思い入れのある曲だった。

ある曲に対して深い思い入れを抱く理由の一つに、自己置換が挙げられる。自分もこの歌と同じような経験をした、同じようなことを考えることがある、そういった気持ちがあると歌詞がグッと心に染み込んでくるし曲の世界に陶酔しやすい。ボロボロにKOされる夢を見て君にしがみついた経験がある人はB'zの歌詞に酔いやすい、そういうことだ。

かくいう僕も、初めてこの「魔王」という名チューンを聞いた時、その世界に入り込みやすい部分が少なからずあった。そう、この「魔王」と同じような状況に身を置いたことがあったのだ。必死で呼びかける息子に聞き入れない父親、そんな状況に。

あれは、僕がまだ年端もいかない、小学校に入りたてか入る直前のかわいいキッズだった時のことだと思う。

ちょうどその日、母親と弟が親戚が集う会合に参加するために家を空けていた。まあ、今思うと一族の恥みたいな僕と親父が家に残されていたわけだが、それ以外に半分ボケた爺さんが即身仏みたいになって居間に座っていた。

母さんがいなくて親父がいるってのは実はあまりない経験で、逆なら数え切れないくらいあったのだけど、経験の少ない珍事に僕は戸惑っていた。

「ワシが特性のチャーハンを作ったるわ!」

意味不明に燃え上がっている親父は台所に立つと、ご飯と冷蔵庫にあった食材を片っ端から鍋の中へ。それは料理というよりも何かの作業のようだった。

見る見ると怪しげな物体が出来つつあるのは分かりきっていたが、「美味しい!」とか心にもないことを言いながら全部食べないと殺されるんだろうなあ、と思いながら台所で作業している父親を見つめていると、のっぴきならない異変が。

ガタン!ザッザッザッ!

明らかに怪しい物音が窓の外から聞こえてくるのです。僕は居間で即身仏爺さんと座っていたんですけど、その居間の窓から物音が。それも人間が歩いているような物音が聞こえるのです。

ウチの居間の窓の外は、目の前30センチがブロック塀になっているという訳の分からない構造でして、窓の意味も何もない状態でした。窓を開けてもブロック塀で外なんか見えない状態でしたから。言い換えると、ウチの外壁とブロック塀の隙間は30センチしかなく、そこを人が歩くなんてのは考えられないんですよね。

「お父さん、窓の外を誰かが歩いている」

まさか泥棒では・・・。不審に思った僕は台所にいた父に呼びかけました。しかしながら、親父の返答はそっけないもので、それいつのやつだよ?と言いたくなる様な古めかしい醤油を鍋にぶち込みながら答えました。

「猫でも歩いてるんだろう」

そんなはずはありません。いくら僕がアホであろうと、猫の足音と人間の足音ぐらいは聞き分けることができます。それなのに聞こうとしない親父。

そうこうしていると事態はさらに悪化しました。窓の外を歩く足音が何度も何度も、明らかに窓の外を何往復もしているのです。

「ねえ、誰かウロウロしてる」

「猫が発情してるんだろう」

それでも親父は要領を得ません。そもそも、猫が発情して何で窓の外をウロウロするのか理解不能です。こんな夜中に窓の外を誰かがウロウロしている、それだけでも大パニックなのですが、事態はそんなことでは収まりませんでした。

コンコン!

何者かが!窓を!コンコンと!叩くのです!

これにはもう大パニック。普通、来客といえば玄関からやってきてチャイムを鳴らすものです。それなのに30センチの隙間の居間の窓からやって来て窓を叩くとは、正気の沙汰ではありません。

「お父さん、窓から誰か来た!窓を叩いてる!」

「風だろ、風」

パニックになる僕に、不自然なくらい冷静な親父、そして即身仏みたいな半ボケ爺さん。その横で今まさに居間の窓が叩かれていました。

明らかなる異常事態に、必死になって訴えかける僕に、それを聞き入れない親父、まさに「魔王」な世界なわけですが、さらなる悪夢が。

なんと、窓を叩いていた手が今度は窓を開けにかかるではないですか。カラカラと、物凄く爽やかな物音を立てて窓が開くんです。ウチの窓には障子がかかってて、障子の向こうで何が起こってるのかは分からないんですけど、間違いなく窓を開けられてるんです。

おかしい、ウチの窓はいつだって鍵がかかってるはず。なのにこんなにも簡単に開くなんて。

ちょうどそのちょっと前に、幽霊が怨念か何かで男の人に襲い掛かり、追われた男は必死でドアとか窓に鍵をかけるのですが、そんなの幽霊には無関係、サクッと鍵を開けられてしまう、という話を昼ごろにやってた「あなたの知らない世界」という怪奇番組で見ていたものですから、この現象も人智を超えた何かであると感じた僕は、本当に恐怖に震えたのでした。

「お父さん!幽霊かもしれない!窓開けて入ってきた!」

「あーん、馬鹿なこと言ってるなよ、もうちょっとでスタミナチャーハンできるぞ」

それでも僕の言うことを信じない親父。もう頭の中にチャーハンが詰まってるとしか思えないのですが、幽霊の恐怖に晒されている今、頼れるのはこの人しかいません。すがるような思いで台所へと向かいました。

「お父さん、本当に誰か入ってきてるんだって!」

その瞬間でした。

バチン

何かの物音がして、家中の全ての電気が一瞬にして消えて真っ暗に。もう大パニック。かろうじて月明かりで居間の障子が見えていて、それの陰になって即身仏が座ってるのは見えたのですが、基本的には真っ暗で親父の姿も見えませんでした。

「お父さん、お父さん、どこにいるの」

必死で呼びかけるのですが、親父からの反応はありません。それどころか、居間の障子がガタガタっと揺れたかと思うと、スーッと開くではないですか。先ほどから窓を叩き、窓を開けた何かが家に入って来たに違いありません。

もう恐怖で訳わかんなくなちゃって、台所にあったサランラップを手に持って半狂乱、来るならきやがれ!と覚悟を決めて居間に向かうと、そこには男が立っていました。で、やっとこさ闇に目が慣れてきてその姿を見ると・・・顔がゴリラでした。もう死ぬる。

結局、そこまででゲームセット。恐怖に耐えられなくなった僕が、ギャーという悲鳴と共にオシッコを漏らしたのだろうと思うのですけど、それを見たゴリラの侵入者が見かねて

「ごめんごめん、もう電気つけてあげてよ」

と言った瞬間、パッと電気がつきました。

見ると、そこには親父と、その友人二人がおり、片方の友人がゴリラの面を取りながらはにかんでおりました。

つまりこういうことだと思います。最初から計画的に僕を驚かせようと考えた親父、友人二人と共謀して作戦を練ります。親父は台所で料理をし、友人一人が窓の外をゴリラの面をかぶってウロチョロします。もう一人の友人は玄関脇にあったブレーカーのところでスタンバイ。で、ゴリラが進入してきてタイミングを見てブレーカーを落とす、こういうわけのようです。だから鍵も開いていたし、親父も意図的に僕の訴えを聞かなかった。

「がはははは!驚いたか!ワシの計画通り!ワシの勝ちだ!」

と勝ち名乗りを上げて喜ぶ親父を見て思いましたよ。一体何が勝ちなんだと、何の理由もなく子供を怖がらせてどうするんだと、ここまで手の込んだことしてまで驚かせたかったのかと。

魔王という曲を初めて聞いた時、僕はこの時のゴリラ進入大作戦事件を思い出したものです。いくら呼びかけても聞いてくれない親父、そして人智を超えた何かに襲われる恐怖、それらを思い出して身震いしたものでした。

「これに懲りたらワシに逆らわないことだな!がはははは!」

友人に頼んでまで僕を驚かせた親父。全く持って逆らった覚えなどなかったのですが、とりあえず彼的には大満足だったようです。

魔王がいるよと親父に必死に訴えかけた少年。聞き入れられず魔王に連れて行かれ、息絶えてしまった彼は不憫ですが、その親父が黒幕と言うか魔王だった僕も十分不憫、そう思いました。

オシッコを漏らし、あまりの恐怖にずっと泣きじゃくっていた僕は子供心に思いましたよ。ウチの親父は狂ってる、間違いない、と。そう思いながら泣きじゃくってその場で死んだように眠ったのでした。オシッコを漏らしたまま・・・。

子はすでーにー、いーきー  タエヌ。


2/23 早起きは三文の得

早起きは三文の得、なんていう言葉がございます。

これはまあ、呼んで字の如く、早起きすると三文得するぜ!っていう、それはもう「ウィルス」という件名のメールが送られてくるくらい直球勝負な語句なわけですが、これってば実にどうしようもない言葉だと思うんです。

三文ってのが現在の価値でどれくらいなのか正確には分かりませんが、おそらく30円くらいの微々たるものだと思います。言うなればはした金。チロルチョコくらいしか買えない。そんなもの欲しさに早起きなんかしてられるか。

どうせなら三文やるからもう少し寝かせてくれ、最前線に生きるビジネスマンは朝の五分であれ戦場、少しでも長く寝ていたいものなのです。三文が5億円くらいの価値だったら飛び起きるように早起きするんだけどな。

それでもまあ、僕もいっぱしの社会人です。もう五分寝ていたい!と布団の中でまどろむのは至極幸せで永遠に続いて欲しい時間なわけですが、さすがにそればかりやっていたら遅刻の常習犯、リストラ要員として肩を叩かれる日が近くなってしまうのです。まあ、遅刻しなくても要員だけど。

それでまあ、三文なんて欲しくないんですけど、仕事で仕方なく早起きするわけですわな。僕は仕事場まで物凄い長距離通勤、おまけに朝が早い職場ですから、最近のように冬場なんかはまだ日が昇りきらぬ薄暗いうちに起き出して準備しないといけないわけです。

ホント、三文の得にもなりゃしないんですけど、眠い目を擦って必死なまでのドライビン。たまに仕事ほっぽりだして眠りたい、路肩に車を停車して心底眠りたい、なんて思うこともありますけど、そこはさすが大人、きっちりと仕事にいくんですから僕も偉くなったものです。

そんなこんなで、早起きして仕事に行ってるわけなんですが、先日、こんなことがありました。

まだまだ薄暗い国道をブワーッと運転し、赤信号に引っかかった時でした。ふと信号機の上を見ると、そこには漆黒のカラスが。

「ああ、カラスか、不吉だな」

と思ったのも束の間、落ち着いて周囲を見てみると、なんと一羽だけじゃないのです。もういるわいるわ、その周囲にわんさとカラスがいやがるんです。ヒッチコックの鳥みたいで、ちょっと日が差してきて薄明るいはずなのに、そこだけカラスの大群で真っ暗になってた。

カラスというのは、本能的に人の死を察知する能力があると聞きます。つまり、ここに大挙してカラスがいるということは、近いうちにこの交差点で誰かが死ぬということかもしれない。交通事故でも起こるのだろうか、なんにせよ恐ろしいことだ。そう考えながら青信号になったので車を走らせたのでした。

もしかしたら、これは早起きした故の得なのかもしれない。あそこでカラスの大群を目撃したということは、少なくとも帰り道で「カラスがいた、あそこで事故が起こるのかも。あそこでは事故に気をつけよう」と強烈に印象付けられることになる。そうすれば帰りにここを通る場合でも少しは警戒するようになり、事故に遭うリスクが軽減されることになる。早起きしたからこそカラスの大群が見れ、それでリスクが減る。

「こりゃ三文どころか途方もない得なのかもな」

命か助かるならば、それは極上のプライスレス、三文どころの話ではない。やっぱり早起きはするものなのかもしれないなあ、なんてことを考えながら車を運転していると、いよいよ職場が近くなってきた。

僕は職場に接近してきた時に必ず行う日課みたいなものがありまして、確実に職場近くのコンビニに立ち寄るんですよね。そこでコーヒーやらお茶やらスポーツ新聞などを購入しましてね、朝のオフィスアワーを楽しんだりするわけなんです。で、その日も例外なく、いつもの職場近くのコンビニに立ち寄ったんです。

そしたらまあ、コンビニに入った瞬間に異様な雰囲気というかただならぬ殺気というか、尋常じゃない何かを感じたんですよね。まあ、その原因ってのが一目瞭然ですぐに分かったんですけど、なんか雑誌コーナーのところに今風の若者がたむろしていたんです。

もう、ヒップホップ育ちって感じで悪そうなヤツは大体友達、下手したら「ココロオドル」とか言ってそうな若者数人がですね、ヤンキーオートとか立ち読み、いいや、座り読みしながら鎮座しておられるんですよ。こういうアウトローな若者の群れって、カラスの群れより性質が悪いよね。

「あらあらまあまあ、朝っぱらからアウトローですなあ」

どうせ彼らは早起きなんてのとは無縁で、ドラッグに溺れてオールで遊んでたりしたんでしょうけど、そんな彼らを尻目に僕はエロ本コーナーへと一直線、朝っぱらからエロ本の立ち読みを開始したんです。まあ、時間に余裕がある時の朝の楽しみですから。

座り読みして改造車談義に華が咲くアウトロー集団、その横で立って読んでるものの、別の場所まで立ってるんじゃないかって勢いでエロ本を立ち読みする僕、朝っぱらからやけに濃いメンツでお送りするコンビニ状態になってるわけなんです。僕が店員なら裸足で逃げ出したい気分。

すると、その状況にさらに追い討ちをかけるかのように情熱的なニューカマーがご来店。

「ああああああああああああああああああああ!」

とまあ、人間、死ぬ間際でもこんな大声はあげないんじゃないかっていう奇声を発して老婆が入店してきやがるんですわ。何があったか知りませんが、さすがに奇声を発してコンビニ入店はやりすぎ狂いすぎ。ぶっ壊れたコンピューターお婆ちゃんみたいだった。

その老婆ってのが、魔女の末裔なのか葬式にいくとこなのか知りませんけど、上から下まで黒一色。毛今にも「ねるねるねるねは、ねればねるほど色が変わり・・・イッヒッヒッヒ・・・」とか言い出しそうな雰囲気なんです。っていうかカラスかと思ったわ。

さすがにこの異様な老婆の来店に、僕もアウトロー軍団も動揺が隠せず、にわかに色めき立ったりしたのですが、老婆はそんなことお構いなし。叫びながら真っ直ぐにレジのところまで良くと、気の弱そうなもやしっ子である店員にマシンガントークですよ。

「アンタ!オニギリは体に良いんだよ!」

基本的にどこの部族の言語だか分からない言葉を話していた老婆でしたが、唯一、オニギリに関する下りだけはかろうじて聞き取れました。そんなこと言われなくても重々に承知しているのですが、老婆のこのアバンギャルドなお得情報にさすがのアウトローと僕もポカーンと顔を見合わせるしかない。

もっと困ったのは直接言われていたもやしっ子店員で、もうドギマギしちゃいながら

「は、はあ、そうですか」

と言っちゃってる始末。まあ、そう返答するしかない。トランス状態というか、リミットブレイク状態に近い老婆はそれでも収まらず、やおら体を翻すと一目散にオニギリコーナーへ。なるほど、主張の通りオニギリを購入しようというのだな。

もう、老婆から目が離せない状態になっている僕とアウトロー。もちろん、もやしっ子店員も彼女の一挙手一投足を余すことなく見守ります。老婆は老婆でマイペース、またもや「ああああああああああ」とか肉食獣の出産みたいな雄叫びを上げながらオニギリを選んでおりました。

とてもじゃないが日常の一コマとは思えない異様なコンビニ店内、僕ももうエロ本とかどうでもよくて、老婆に首ったけ。このまま会社に遅刻して首になっても良いから老婆の行く末を見守りたい、そう思えてきました。

「オニギリは体に良いんやで!」

またもやお決まりの文句を叫びながら、何個かオニギリを鷲掴みにしてレジに向かう老婆。やっとこさ購入するのか、と思いきや、老婆はそんなことは別次元のトリッキーな行動に出たのです。

僕らが普通、レジを利用する際は品物を購入する目的で利用すると思います。品物をレジに置き、バーコードを読み取ってもらって精算する。いまさら書くまでもない当たり前の利用法だと思います。

しかしながら、この老婆だけは違っていた。彼女にとってはレジなどただのテーブル、と言わんばかり、ゴロンと置いたオニギリを手にとって片っ端から封を開けると、モグモグと食べ出すじゃないですか。まだお金も払ってないのに食べだすじゃないですか。

世の中には色々な万引きってのがあって、それは隠れてコソコソ盗んだり、逆に窃盗の如く盗んだり、あびる優だったりするんですが、いくらなんでもここまで大胆な万引きはあり得ない。なにせ、店員の50センチ目の前で堂々と食ってるんですからね。

さすがにそこまでされちゃあ、もやしっ子店員と言えども黙っちゃいられません。精一杯の気力を振り絞って

「お客様、お会計が」

とか言ってました。この段階になると、もう僕もアウトローも雑誌なんてどうでも良くて、なるべく近くで観察しようと、適当な商品を手にとってレジ周辺にいたのですが、それでも老婆は怯まない。

もやしっ子の制止も聞かず、ムシャムシャと食べる老婆。今にも「うまい!」とか叫びだして、チャーラッチャラー♪とか音楽が流れてきそうだったのですが、さすがに目の前でオニギリを盗み食いされちゃあ沽券に関わるのか、もう一人店員が奥から出て来て連行されるように店の奥へと連れて行かれてました。

「虐待!虐待!いたたたたた、痛い!」

両脇を抱えられ、引きずられるように連れて行かれる老婆は、狂ったかのように叫んでいましたが、老人とは思えない活発な動きで抵抗していた老婆の腰の部分から、下着らしきものが垣間見えていました。紫とも紺とも取れる微妙な色合いの老婆パンティエ、それだけが妙に印象的だった。

会計を済ませて店を出ると、すっかり夜が明けており、眩いばかりの朝日が目に飛び込んできました。早起きをしたから、あのような異様な光景を見る事ができた。これは三文くらいの得なのか損なのか、あの老婆のパンティエが見れた、これは損なのか得なのか、いやいや、そればっかりは損な気がする、そんな気がする。

なんてことをしきりに考えながら車に向かって歩いていると、100円玉を拾いました。なんだ、やっぱり早起きは得じゃないか。それも100円だから10文くらいの得かもしれない、と上機嫌で職場へと行くと思いっきり遅刻していました。やっぱり損じゃないか。


2/16 かまいたちの夜

職場の個室にて、誰もいないのをいいことに思いっきりオナラをしたら、ブーーーと物凄い勢いで出した本人もビックリするほどの爆音が轟いた。まるでハープのような心地よいサウンドは、それが尻から奏でられたものだとは思えないほど澄んでいて、人生で5本指に入るほど綺麗で音量の大きいオナラだった。

サウンド面では文句のつけようのないオナラでも、それに伴って払った犠牲は相当なもので、なんだろう、あまりに勢いのあるオナラだったものだったから出した直後からアナル周辺がヒリヒリする。まるでハードパンチャーがその破壊力ゆえに自らの拳を破壊してしまうように、僕のアナルもそのオナラの破壊力に耐え切らなかったのかもしれない。自分の破壊力が憎い。

あまりにも痛いもんだから、こりゃ尻が切れたかと思い、パンツを見てみたが出血は確認できなかった。それでもジンジン痛むアナルの痛みは深刻で、もしかしたらアナルの内部が切れてるのではないか、いいや確実に切れてるであろうと思われた。

よくよく考えてみると、いくらオナラが爆音だからってアナルが切れるとかおかしすぎる。もしかしたら僕のオナラは音が素晴らしいだけでなく、その中にカマイタチとかそういった類のものが含まれているのかもしれない。あらゆるものを切り裂くカマイタチ入りオナラ。オナラで殺人も可能、こんや、12じ 誰かが・・・死ぬ!

とまあ、そんなバカ話はどうでもいいとして、冷静にこの極上サウンドのオナラを検証してみると、案外これってば一般生活にも良く見られる現象だと思うのです。いやいや、オナラで尻が切れるのがよくあるんじゃなくて、あるものを良く見せるために他の部分を犠牲にするってのはよくあると思うんです。

例えば、会社でのプレゼンテーションをより良い物にするため、何日も前から寝食を忘れて準備をするってのもそうです。友人や恋人との時間も準備に費やし、大好きな酒も自粛して打ち込む。私生活の部分を犠牲にして打ち込むのです。全てはプレゼンのために。そう、アナルを犠牲にして極上のオナラを出すのもプレゼンも、根底にある部分は同じなのです。僕らの人生は、往々にして大切なものと犠牲にするものに分けられていて、それらを上手く使い分けているんだと思う。

デートに向けて、小遣いを全部使って洋服を買う年頃の高校生。

食費や遊興費を全て犠牲にしてブランド物で身を固める女性。

全てを捨てて部屋に引きこもり、ネットゲームに興じる松山さん。

フィギュア集めに夢中になるばかりに、給料もボーナスも全て注ぎ込んでしまう青山さん。

みんな大切な何かがあって、全てをそれに注ぎ込むあまり多くの犠牲を払っているのです。みなさんも自分の身の回りを見返してみてください。きっと、極端でないにしろ、何か一つのことのために犠牲にしている何かがあるはずです。

僕は、そういった姿勢が大好きです。色々と犠牲にして何か一つに打ち込む、その達成感は何物にも変え難いものですし、祭りは準備までが楽しいっていう雰囲気ですか、そういうのが大好きなんです。自分でそういう姿勢になるのも好きですし、そういう人を見るのも大好き。

僕が中学生だったころ、三鷹君という同級生がいました。彼は、全てを捨てて何かに打ち込む人の代表格みたいな人で、まだ精神的に未熟だった僕は彼に大きく影響され、彼の思想をふんだんにインスパイアされたものでした。

話がオナラの話ばかりで恐縮なんですけど、三鷹君はオナラに命を賭けている人でした。この当時の中学生なんて、勉強に打ち込むかスポーツに打ちこむか、それとも異性に打ち込むかくらいしかないのですが、そんなのお構いなし。三鷹君は全てを捨ててオナラに打ち込んでいました。

しかも、彼は僕のように「いかに素晴らしいサウンドのオナラが出るのか」という低次元な部分に賭けているのではなく、もっとステージの高い場所、つまりは別次元のハイレベルな部分に上り詰めていたのでした。

「俺は音がすごいとか、匂いが有毒ガス並みにすごいとか、そういうのはとうに卒業した」

そう言い切る三鷹君は、何かが大きく間違っているのだろうけどなんかカッコ良かった。で、そんな音とか匂いを卒業した三鷹君がオナラに何を求めていたかというと、

いかに燃えるか。

世の中には「いかに萌えるか」に命を賭けてる大きなお友達が沢山いるのだろうけど、三鷹君はそれとは別で、「いかに燃えるオナラを出せるか」の部分に命を賭けていた。本当に命を賭けていた。

学校が終わった放課後のプールサイド、というよりプール脇の人気のない雑木林。僕と三鷹君はライターを手に物陰に隠れるように潜んでいた。中学生がこんな雑木林にライター片手に潜んでいるということは隠れてタバコでも吸いそうなものなんだけど、そうではなかった。

「いいか、今から出そうだからちょっと見てろよ」

彼は嬉しそうに制服のズボンを脱ぎパンツ姿になった。そして、草木が柔らかそうな場所を見つけるとそこに腰を下ろし、両足をオッペケペーと抱えるような形になります。ここで勘違いしないで欲しいのは、両足を抱えるってのは体育座りみたいな状態でなく、開脚して抱えてる状態です。つまりはまんぐり返し。ヨガの一歩手前みたいな状態。

その状態でライターに火をつけ、尻の穴近くに火をつけたまま保持します。本当に器用に火のついたライターを保持しつつ、両足を抱えた状態を維持しています。尻の前で揺らめく妖艶な炎、なんだかそのまま吸い込まれそうな美しさすら覚えます。

「よし、いくぞ!」

そう言った三鷹君の瞳には炎が映り込んでいたのかどうか知らないけど、確かに燃え上がっていた。こいつ、本気だ。そして、

ブーーー!ボワッ!

その刹那だった。あまりにも聞きなれすぎた、サウンドレベルとしては中級程度のオナラと同時にケツの穴から炎が吹き出してきた。いや、正確にはケツの穴から飛び出したオナラがライターの火に引火したんだけど、とにかくケツの穴が火を噴いたように見えた。赤い甲羅食べたヨッシーよりすごい炎を出してた。その炎のなんと美しきことか。

「俺はこの炎をパワーアップさせたいんだ!」

そういう三鷹君の瞳は少年のように真っ直ぐで、全てを犠牲にしてオナラの炎をパワーアップさせる意気込みが伝わってきたものだった。勉強もどうでもいい、スポーツもどうでもいい、異性なんてもちろんどうでもいい、ただただオナラによって炎龍を作り出したい、それだけのようだった。

「どうやったらより燃えるオナラが出せるのかな」

そう考える三鷹君は真剣そのもので、僕も少なからず協力したい気分になったものだった。でまあ、イモとか食ったらオナラの中の燃える成分が増えるんじゃないか、とか、屋内でやったほうがいいんじゃないか、とか、同時に部屋の中に燃えやすいもの、例えばヘアスプレーなんかを充満させておき、そこでやったほうがすごい炎がでるんじゃないか、とか思いつく限りアドバイスしておいた。

結局、僕らの案は、締め切って密封した室内にスーパーハードなヘアスプレーを充満させ、そこにイモを食いまくった三鷹君が登場してライターでオナラに引火、しかも目標物があったほうが成果が分かりやすいだろうということで、新聞紙を丸めて作ったタイマツみたいなのを30センチほど離れた場所に置き、それめがけてオナラファイヤーを噴射するということで落ち着いた。

「今夜、家で早速やってみるよ、明日成果を教えるから楽しみにしてな!」

元気な三鷹君を見るのはそれが最後だった。

本当に三鷹君が上記のようなチャレンジをしたのか、ファイヤードラゴンの召還に成功したのかは定かではないが、僕が分かってることは、次の日三鷹君の顔に殴られたような傷があって元気がなかったことと、そのやりとりがあった夜、三鷹君の家でボヤ騒ぎがあったという事実だけだった。怖くてそれ以上の真相は聞けなかった。

全てを捨て、オナラの炎だけに打ち込んだ三鷹君。彼は全てを犠牲にしてオナラに没頭するあまり何か重大な間違いを犯してしまったのかもしれない。他の全てを犠牲にして何かに打ち込んだ三鷹君、たぶんヘアスプレーとか新聞紙に引火して大変な騒ぎになり、親に殴られたんだろうけど、その姿勢は本当にカッコ良かった。

あの頃の三鷹君のように、今の僕は色々なものを犠牲にして何かに打ち込めるだろうか。彼ほど純粋に何か一つのことに打ち込めるのだろうか。凄いオナラが出て三鷹君のことを思い出した時、そう思えてなんだか寂しい気分になった。

とりあえず、アナルが死ぬほどヒリヒリしてたので、本当に出血してないか再度パンツの中を覗き込んでみたのだけど、やはり出血はしてなかった。けれども、パンツの尻の部分が思いっきり破れていた。ヒリヒリすると同時にスースーすると思ったぜ。

パンツが古すぎて寿命がきたのか、本当に僕のオナラにはカマイタチが潜んでいるのか知らないけど、とりあえず、色々なものを犠牲にして、僕のオナラカマイタチの殺傷能力を高めよう、カマイタチを育成しよう、そう思った。


2/10 ヌメリナイト

先日、コンビニに行こうと道を歩いていたら、ザンギエフみたいな外国人が途方もなく泥酔しており、本当に典型的なのですが、緑色の酒瓶を一気飲みしながらフラフラと千鳥足で歩いておりました。

「うわっ、犯罪の臭いがする!」

とか敬遠しながら歩いていたのですが、彼はフラフラになりつつも僕をめがけて接近してくるではありませんか。頼むから勘弁してください。

でまあ、何か意味不明の言語で話しかけられたのですが、僕の言語スキルが低いのか、彼がヘベレケすぎて言語を話していないのか、何を言ってるのかサッパリでした。スクリューパイルドライバーかけられるかと思った。吸い込まれるかと思った。

唯一彼の言語で聞き取れた単語が「きつねウドン」だったわけですが、本当にきつねウドンが食いたくて彼がそう言っていたのか、それとも外国語の似た単語を聞き間違えたのか分かりませんが、とりあえず職場近くの朽ち果てそうなウドン&ソバ屋を教えておきました。いいことした。

とりあえず、彼と別れ、コンビニで買い物をし、また来た道を戻っていると、彼は豪快に草むらで寝てました。ワンパク小僧みたいな慈愛に満ちた顔で健やかに眠っておられました。凍死しなきゃいいけど。

そんなこんなで、全然関係ないですが、3月4日に開催される「ヌメリナイト」と呼ばれるクラブイベントのお知らせです。

以前から、「ヌメリナイトってなんですか?」とか「どんなことするんですか?」とか、問い合わせのメールを数多く頂いておりました。やっとこさ、その準備というか告知サイトが完成に至ったので今日は正式にアナウンスさせていただきます。

これは、簡単に説明すると、音楽をかけて踊り狂ったり酒を飲みまくるという至極単純なものです。普通はオシャレの代名詞となりうる「クラブイベント」ですが、Numeriでやるクラブイベントは一風違います。というか、全然オシャレじゃありません。

まあ、詳細は告知サイトのほうを見ていただくとして、ステテコ姿で来場しても浮かないほどオシャレとは無縁のイベントですので、どうぞこぞってお越しください。誰も来なかったら大人しく割腹します。

そういえば、僕はこれまでに有難いことに5回ほどお呼ばれしてイベントでDJをやらしていただいたのですが、そのうち4回がいわゆるインターネッツのイベント。やってる方もお客さんも狂ったようにインターネットにどっぷりで、モデムの接続音のモノマネが大得意だったりするのですが、たった一度だけ、インターネットと無縁のイベントにお呼ばれしたことがありました。いわゆるオシャレ系イベント。

そこはオシャレ溢るる空間で、ヒップホップとかいうんですか?そういうのがスマートに流れてました。来てるお客も喧嘩が強そうで指輪とかゴッツイのがジャラジャラついてました。女の子も挨拶代わりにセックス!みたいな全身クリトリスみたいな子が半裸に近い格好で猛り狂っており、なんていうのでしょうか、血を分けた肉親が強烈なる贔屓目で見ても僕だけ浮いてました。ユニクロの服着ていったからな。寝癖だってバリバリ伝説、靴下の左右の色が違ってたからな。

「ナントカカントカ!(英語っぽい)pato! from Numeri!」

とか紹介された時のポカーンとしたオーディエンスの顔は一生忘れがたいものになりました。

そんな中でDJをやり、大塚愛「さくらんぼ」とか思いっきりかけたのですが、お客様は微動だにしておられませんでした。あれは普通に自殺を考えた。僕は今まで、あれほどつまらなさそうに「さくらんぼ」を聞く群集を見た事がない。

その時も、酒瓶を持ったザンギエフみたいな外国人たちが酔っ払ってましたが、唯一彼らがちょっとノリノリになってくれていたのが心の救いでした。いっそのことスクリューパイルドライバーかけてほしかった。吸い込んで欲しかった。

そんなこんなで、僕の記憶の奥深くの部分に忌まわしき記憶として封印されていた小噺をしましたが、ヌメリナイトはそんなことはありません。ハッキリ言ってお経が流れても不思議ではありませんので、是非ともお誘いあわせの上ご来場ください。詳細は告知サイトで!でも、酒瓶持ったザンギエフみたいな外国人の方のご来場もお待ちしております。

ヌメリナイト
3/4(Fri) open PM7:30 START 8:00 - All Night
ロフトプラスワン@新宿 ¥1000

告知サイト


2/5 不意の電話

「もしもし、○○探偵事務所の者ですけど・・・」

何でもない平日の昼下がり、コンビニで食料を買おうと車を走らせていたら不意に電話が鳴った。不意に鳴る携帯コールなんてロクなもんじゃなくて、大抵が取らなきゃ良かったっていうガッカリな内容に終わることが多い。

なんてことを考えながら、ベロベロと着メロ「さくらんぼ」を奏でるマイ携帯電話を眺めていたのだけど、そこで途方もないことに気がついてしまった。「不意の電話は喜ばしくない内容なこと多い」とか言うけど、よくよく考えると電話ってのは殆どが不意であるものでないだろうか、と。

今まさに電話がかかってくる!と待ち構え、それこそ親指をボタンの上にスタンバイさせて仁王立ち、さあ来い、電話来い!いつでも来い!と不意でない状態の方が極めて稀なのです。間違いなく言える「不意の電話は喜ばしくない内容なこと多い」と言いつつ、実はかかってくる電話の殆どが不意、つまりほとんどの電話が喜ばしくない内容だということ。

そんなことはどうでもいいとして、今まさにけたたましく鳴っている電話をどう対処するか考えます。発番号を見ると、どうにもこうにも見たことないような携帯番号。間違いなく喜ばしい内容であるはずがない。

とりあえず、いつまでも着信音を演奏させておくわけにもいかないので路肩に車を停車し、恐る恐る電話に出てみます。鬼が出るか蛇が出るか、まさに緊張の瞬間です。

「もしもし」

慎重に、慎重に、それでいて精一杯紳士的な声を捻り出して喋ります。すると、

「もしもし、○○探偵事務所の者ですけど・・・」

という、冒頭に記述した予想だにしない返答が帰ってきました。いやいや、探偵社から電話って何ですか、予想の遥か斜め上を行ってるじゃないですか。

普通に考えて、僕のようなどうでもいい一般人が探偵社から電話を受けるということはあり得ません。「なんだなんだ、俺は探偵さんの世話になるようなことを何かしでかしたのか?」頭の中でグルグルといろんな事が駆け巡り、恥ずかしながら、少々パニックに陥ってしまいました。

「た、探偵ですか?あの、浮気調査とかの!?」

パニックになってすげーアホなこと口走ってしまってます。浮気調査とかの探偵ですか?と聞いてることからわかるように、どうやら僕の中にはもう一つ別の探偵像があるらしく、名探偵コナンとかみたいに颯爽と難事件を解決する探偵像が主流のようです。あと「じっちゃんの名にかけて!」とか言ったりする。

そんな僕のどうでもいい考えはスルーし、電話口の探偵は続けます。

「んー、ええ。広島の福山市にある○○探偵事務所なんですけどね、私はそこの調査員なんですわ。んー、で、今日少々お聞きしたい事がありまして」

とやけに具体的な地名まで飛び出す始末。広島と言えば僕が去年まで住んでいた土地ですから、そんな地名が探偵さんの口から飛び出すだけで自ずと胸の鼓動が早まります。おいおい、俺は何をしでかしたんだ。地味に慎ましく暮らしてるというのに、なんで探偵さんに調査されないといけないのだろうか。

「は、はあ・・・で、どんなご用件でしょうか・・・?」

とりあえず、緊張と不安でベロベロになっている我が心を必死で抑え、なんとか探偵さんに尋ねます。

「んー、実はですね、アナタの事を探している人がいましてねー、携帯番号だけ分かったものですから電話したんですわー」

サラリと物凄い事を言う探偵さん。おいおい、僕を探してる人がいる、それも探偵さんを使ってまで探してる人がいる、これは一体どういうことだろうか。

これはもう、単純に考えて小学生時代のクラスメイトの女の子が僕の事を探してるとしか思えません。絶対そうに違いない。それ以外、何が考えられるだろうか。

小学生時代、内気で地味だった彼女は次第に僕という人物に心惹かれていくようになります。そう、初恋というやつです。僕に恋心を抱きつつ内気な性格ゆえに思いを告げる事ができない彼女。甘く酸っぱくほろ苦い初恋の思い出。

小学校を卒業し、中学、高校と進んだ彼女はそれなりに恋をしたりセックスを経験したりします。初体験は神社の境内、クラブの先輩だった。それから短大へ進み、悲しき恋を経験したりします。この頃には彼女も女として経験値が高まった状態であり、小学校時代の地味な姿が嘘のように華麗に変身しています。女というのは化けますからね、たぶん凄く綺麗になっていると予想されます。

上京し、OLとして一般的な会社に就職。蝶のように綺麗になった彼女が恋を手に入れるのは簡単でした。合コンなど活発に活動し、一流企業のフレッシュマンと付き合ったりします。しかし、どうしても心ときめくことができない、恋にドキドキすることができない。彼女はもう、恋に慣れてしまっていたのです。もう、人を好きってだけでドキドキしなくなっていた。

何かドキドキしたかった。

寂しいわけじゃなかった。人肌恋しいわけじゃなかった。その気になれば見てくれのいい男はいくらでも言い寄ってきた。高収入な男だって、自分のためになってくれる男だっていくらでも。けれども・・・何か違う・・・。

ドキドキや胸のときめきが欲しくて不倫もしてみた。相手は会社の上司。なんでこんなオヤジ相手にって思ったけど、優しかったしお金も持ってた。不倫という響きが素敵で、何か悪い事してるって背徳感が一定以上のドキドキを与えてくれた。

けれども何か違った。

私がしたかったのはこんな恋愛じゃない。都合の良い時だけマンションにやって来て、体だけを求めてくる課長。週末も、イベントごとの時も、課長は横にいなかった。彼が自分の家族と楽しそうに団欒を過ごしている事を考えると、正気じゃいられなった。私・・・何か勘違いしてた・・・。私が欲しかったのはこんなドキドキなんかじゃない。もっと純粋で、何も打算がなく、苦しいけれど楽しかった狂おしいほどの恋愛のドキドキ、それが欲しかっただけなんだ。

初恋のあの人はいまごろどうしてるだろう・・・。

芳江は不意に小学生の頃の初恋のあの人を思い出した。あの頃は本当に良かった。思いを伝える勇気がなくて、影からこっそり見てるだけだったけど、あの時の私は確かにドキドキしていた。純粋に恋をしていた。

初恋のあの人に・・・思いを伝えよう・・・!

芳江はタウンページを手に取ると探偵社に電話をかけた。目的は初恋のあの人を探すため。本当の恋を、ドキドキを取り戻すため。思えば、恋愛ごとに関して自分から積極的に動き出すのはこれが初めてだった。乙女のような高揚感に身を任せる芳江28歳。探偵社の担当に目的を告げる彼女は、確かにドキドキとしていた。

「私の大切な人を探して欲しいんです」

とまあ、こんな展開が容易に予想できます。というか、こんな展開でもない限り僕が探偵さんに調査されるなんてありえない事だと思います。そうか、初恋の人が俺の事を探してるのか、なんだよ、そんな気持ち、全く気付かなかったぜ。早く言ってくれれば良かったのに。

「僕のこと探してる人ですか?それは一体どんな目的で?」

とりあえず、僕も胸が高鳴ってきてどうしようもないのですが、気を落ち着かせて探偵さんに尋ねます。

「いやー依頼主さんのことは喋れないんですわ、申し訳ないですけど」

とまあ、そっけない答え。僕の身元とかをこれから思いっきり調査しようとしてるくせに、調査協力をしてもらおうとしてるくせに、そっちの情報は出せない。いくら初恋の人とはいえ、これじゃあちょっと警戒してしまいます。

「それでですね、依頼主さんもあなたのこと探してますし、とりあえず氏名と現住所を教えて欲しいんですよ」

そして、自称探偵さんの衝撃のセリフ。おいおい、現住所を教えろはともかく、氏名を教えてくれってなんなんだ。初恋の人が俺のこと必死になって探してるんだろ?だったら名前ぐらいは知ってるはずじゃないのか。なんというか、ここからどんどんと雲行きが怪しくなってくるのです。

「ですからー、こちらはアナタに対して調査依頼を受けてますから、協力してもらえないなら徹底的に調べる必要があるんですよ?嫌でしょ、徹底的に調べられたら。だから協力して欲しいんですよ」

「いや、調べられても全然構わないですけど、」

こういった言動から、どうやら依頼主ってのは僕に恋心を抱いていた初恋の人ではなさそう。なんていうか、そういったホンワカした雰囲気ではなく、「我々スタッフが調査したところ、初恋の人、見つかりましたよ」というような島田紳助的雰囲気が全くないのです。雰囲気的に脅しに近い感じだった。

「そもそもですね、氏名も住所もわからない、携帯番号だけ分かってる状態でどんな依頼が来てるのかさっぱり分からない。依頼主といわれる人の目的が分からないと協力は出来ないですね」

どこをどう考えても、携帯番号だけが分かってて、その他の個人情報が知りたい状況なんて一つしかありえないのです。そう、一時期一世を風靡したあの社会現象、出会い系サイトの架空請求しかないのです。

つまりはこういうことです。まず、適当な番号に電話をかけまくる。まあ、ここまでは架空請求と全く同じです。相手が出た場合、そこで分かってるのは電話番号だけです。そして、そこで探偵社だと調査会社を名乗ります。ちなみに、携帯番号の090-XXくらいまでの番号が分かれば、キャリア種別が分かります。つまり、番号からその携帯が「DoCoMo中国」とか「J-PHONE関東」のものだとか簡単に分かるのです。

相手が中国地方のドコモを使ってると分かったならば、最も確率高く攻めるために一番人口が多いであろう「広島」の探偵社を名乗ります。これで、電話を受けてる側は自分の近くまで調査の手が及んでいるとブルってしまいます。

後は簡単です。アナタを探している人がいるから協力して欲しい、名前と住所を教えてくれ。これで教えてもらったら個人情報ゲットですから、あとはいくらで請求書だとか嫌がらせ的手紙をガシガシ送る事ができるのです。「家や職場まで集金に伺う」とか脅すことも可能になるのです。探偵社を名乗って個人情報をゲットする架空請求業者、彼らの手口はここまで進化しているのです。

そしてもう一段階、調査に協力してもらえなかった場合、金を脅し取る手段が用意されているようです。

「でもですね、やっぱり協力できませんよ。依頼主の正体が不明で怪しすぎます」

と主張したところ、電話口の自称探偵は、

「依頼主は、とある暴力団関係者です。裏で経営している出会い系サイトの利用料が滞納されているという依頼を受けて、請求するためにあなたの電話番号から個人情報の調査依頼を受けました」

と、今度はあれだけ「守秘義務が」とか言ってたくせにぺロッと依頼主の情報を教えてくるのです。しかも、予想通り出会い系サイトの利用料請求だとか申しているのです。で、

「私どもが本気で徹底調査すれば、あなたの氏名も住所も簡単にわかることです。勤務先や親戚の構成なんかも全て分かります。それを依頼主様、暴力団関係者ですが、に教えた場合、あなたにとって大変不利益になると思うんですよね」

「はあ、それは確かに不利益ですね、職場や家に暴力団が来たら布団かぶって震えるしかないですもんね」

「そこでですね、今なら、私どもの方で示談にする事ができるんですよ。10万円私どもにお支払いいただけたら、調査不可能だった、身元は不明でした、と言うことで依頼主様に報告することが出来るのです。お支払いいただけませんか?私どももあなたが不幸になるのは本意ではないですし」

とまあ、今度は示談にしてやる、金を払え、と取引を持ちかけているのです。

ここで少しだけ整理しましょう。暴力団から依頼を受けて僕の調査を開始した探偵社。本気を出せば僕の調査など容易いが、それではさすがに忍びない。10万払えば調査できなかったことにしてやるから払わないか?という状況になっているのです。

いや、普通に考えて、そんな探偵いるのか?

探偵さんの世界ってのがどんな世界なのか知りませんが、調査依頼を受けて直接その本人に接触し、「おれ、探偵なんだけど個人情報教えてくんない?」と申し出るのが探偵さんの調査なのでしょうか。さらには「10万出せば調査できなかったことにしてやれるけど」と取引を申し出るのが普通なのでしょうか。

よく分からないですが、こんな探偵はいないだろうと判断。多分きっと、この探偵を名乗ってる人が架空請求業者そのもので、探偵社を名乗った方が個人情報が引き出しやすい、引き出せなくても示談交渉というカードをだすことができる、と言う理由から探偵を騙ってるのだろうと判断しました。

あとはまあ、いつもどおり。

「別に調査してもらってもいいですし、暴力団の人に調査結果を渡してもらってもいいですよ」

「あと、指定暴力団員以外の人が指定暴力団の威力を示して行う不当な要求行為を「準暴力的要求行為」といって、改正暴力団対策法にひっかかることをご存知ですか?」

「あなたが名乗る探偵社が怪しいので、別の探偵さんに調査依頼を出してみようかと思います」

「ちなみに、僕の氏名は吉井ロビンソンです」

「母親はインリン・オブ・ジョイトイです」

などと、マイペースで対応しておきました。それがいたく癇に障ったのか、電話口の自称探偵さんは怒り狂い。

「どうでもいいから10万払え!じゃねえと大変なことになるぞ!」

「俺たち探偵を舐めると大変なことになるぞ!」

「テメー、腕の2,3本は覚悟しろよ!」

と激昂しておられました。腕を3本折れるものなら是非とも折っていただきたいのですが、これはもう明らかに脅迫です。暴力的過ぎて、別の意味で島田紳助みたいだ。

「じゃあ、腕を3本用意してお待ちしております」

だとか

「初恋の人が僕を探してるって言えばすぐにでも教えたのに」

だとか

「あんなこと言われちゃ、アナタが探偵だなんて信じられないですね」

「You, Liar!Liar!もう信じられないや!」

とか、適当にやってたら、相手が怒って電話をきってしまいました。

久々に請求詐欺と思われる電話の対応をし、やっぱ不意にかかってくる電話はロクもんじゃねえな、とハンドルを握り、車を走らせようとしたのですが、するとまたもや着信音「さくらんぼ」が鳴り響きました。恐る恐る出てみると大家さんからで

「先月分と今月分の家賃が振り込まれてないんだが、続くようなら出て行ってもらいますよ」

と、背筋も凍りつくようなこと言われました。やはり不意の電話は、いや、そもそも僕のところにかかってくる電話はロクなもんじゃない。

2/1 業務連絡

今日は頑張って日記を書いたのですが、その日記が「ウンコ」という単語が60回くらい出てくる酷いもので、微塵も面白くなかったので泣く泣くボツにしました。なんていうか、「ウンコ」って言っておけばウケると思ってる小学生みたいな内容だった。ありゃ酷い。

ということで、今日はもう一本書き直す気力もありませんので、適切に業務連絡っぽいものをしてお茶を濁してみたいと思います。業務連絡する時は、日記がボツった時です。覚えておいてください。

まず初めに、先日行われた「ぬめぱと変態レィディオ-pato VS 24人の非モテスペシャル-」の再放送ですが、こちらは2/4くらいにゲスト様の承諾が取れた部分だけを公開しようと思っております。今しばらくお待ちください。

あと、比較的どうでも良い話ですが、「YahooInternetGuide3月号」に我がNumeriが紹介されてました。こうやってちゃんとした扱いで雑誌に紹介されるのは初めてかもしれません。

掲載されているという報を受け、僕も急いで本屋に走って購入したのですが、見てみてびっくり、普通にトップページの写真入りで紹介されてました。

しかも、どうも1/22の「アポストロフィー」の日記がトップにある時にキャプチャーされたらしく、あの天下の「YahooInternetGuide」に掲載されたというのに、燦然と「おしっこが二本になるんです」という文字が輝いてました。死ぬほど恥ずかしかった。

ちなみに、その「YahooInternetGuide」を何かの記念にと790円出して購入したのですが、その時のレジの店員さんが、以前に僕が併設されているCD売り場で、大塚愛の販促用ポスターをくれ!と切腹も辞さない覚悟で直談判し、見事に散った時の店員さんで、そっちの方がわりかし恥ずかしかったです。

あと、原稿さえ落とさなかったら、「裏モノJAPAN4月号」の特集記事に僕の文章が載ると思いますので、お暇でしたら見てやってください。載ってなかったら、原稿を落としたんだなあと笑ってやってください。

でまあ、業務連絡は以上なのですが、さすがにいくらなんでもこれではアレなんで、日記がダメだった時の最強の伝家の宝刀、過去ログサルベージでもやっておこうと思います。過去ログから適当に日記をコピー&ペースト。約1年前に常用していた最強の手抜きです。

それでは、2002年7月の日記にタイムスリップ!

-----------------------------------------------------------

2002/7/27 最狂親父列伝-火炎編-

いやー、最近はとにかく暑いですね。なんていうか、昼間の太陽の直射日光を浴びてると皮膚が焼かれるかのような錯覚に陥ります。もう暑すぎる。大体ね、日本の夏は湿気が多すぎなんですよ、海外のようにカラッとした暑さではなく、ムシっとした暑さなんですよ。もうそれが我慢ならない。日本も海外みたいな夏にならないかなぁ。まあ、海外なんてビタイチ行った事ないんでわかんないんですがね。

それはそうと、この間実家に帰ったではないですか。玄関を開けたらイキナリ早苗のブラとか干してあってすごくボッキリしたんですが、やはり実家は落ち着いていいですね。

でね、朝方に実家に帰って、少し寝てから親父と話をしに親父の会社の事務所に出向いたんですよ。そしたらね、親父は平日の昼間だというのに仕事もせずに、必死でバッタを捕まえてました。事務所の空きスペースに草木が茂ってるのですが、そこで童心に帰ったかのようにバッタを捕まえてました。

なんでバッタなんか捕まえてるんだよ?ついに狂ったか?とか思うんですけど、どうやら彼はいたく真剣な様子。よくよく理由を聞いてみるとイグアナの餌を捕獲しているらしいのです。

何をトチ狂ったのか、親父は一年ぐらい前から事務所でイグアナを飼いはじめたんですよ。で、そのイグアナが生きたバッタが大好物らしく、喜ばせようと必死でバッタを取ってるらしいのです。あの鬼のような、修羅のような親父がイグアナのためにバッタ取りですからね。人間って変われば変わるものです。

で、親父がイグアナにバッタをあげながら言うんですよ

「ワシな、つい最近まで入院してたんだわ・・・・・」

弱々しく、まるでそのまま消え入ってしまうかのように言うのです。なんか、それを聞いた瞬間に胸が締め付けられるような苦しい気分になりました。

そういえば、なんか実家に帰るたびに親父が小さくなったように感じます。白髪も増えたように感じます。なんていうか、あれだけ威厳があり強かった父が弱っていってるような印象を心のどこかで感じていたのです。その想いが彼の入院発言で爆発しました。

親孝行したい時に親はなし、とよく言います。本当に親孝行したいときとは、親がいなくなったときであり、多くの人が後悔して悲しみを抱えたまま生きていくのです。もっと親孝行しておけばよかったと。

いつもは憎まれ口ばかり叩き合う僕と親父ですが、なんだか彼の弱々しい発言を聞くうちに、漠然と「もっと大切にしなきゃな」と思うようになりました。照れくさくってなかなか親孝行ってできないんですけどね。

「何で入院してたんだよ?どっか悪いのか?」

親父の体を気遣いながらも、照れ隠しからかぶっきらぼうに尋ねる僕。言い方こそは無機質で、事務的に聞いているかのようですが、本当はとても心配しているのです。もしかしたら性質の悪い病気かもしれません。手の施しようのなくなった親父の体。せめて最後は家で死にたいと熱望する父。その熱意に打たれた医師も首を縦に振らざるをえなかった。

こんな展開を真剣に想像していました。質問してからの沈黙が余りにも長いので「もう先が長くないと言われた」などとカミングアウトされたらどうしようかと思っていました。そして、重く閉ざされた親父の口が開かれます。もしや・・・ガン?それとも白血病?それとももっと聞いたことないような奇病なのか?そんなの聞きたくない。でも知らずにいるのも嫌だ。聞きたい。聞きたくない。様々な想いが交錯します。そして・・・・

「ヤケドで入院してた」

はぁ?不治の病じゃないの?ガンじゃないの?ヤケド?なにそれ?

いやね、なんか親父が事務所の空き地でゴミを燃やしてたらしんですわ。ダイオキシンなどの問題から小規模焼却炉の危険性が叫ばれる中、親父は平然と自家用の小さな焼却炉でゴミを燃やす地球に優しくない男です。

それでね、なんか燃やしてたゴミの火が消えて、いつのまにか火がくすぶった状態になってたらしんですわ。そうなると不完全燃焼ですので、モウモウと体に悪そうな煙が立ち込めるんです。さすがにそんな煙が出てきたら近所迷惑だなと思った親父。なんとかゴミを完全燃焼させようと考えます。

なんか手元にあった軽油をドッコンドッコン焼却炉に流し込んだらしいです。かなりデンジャラスな状態。

しかし、火は一度くすぶってしまうと、なかなか再燃するのは難しいのです。軽油如きではビクともしない。やはり何か発火点がいる。そう思った親父は溶接用のバーナーを持ち出して、焼却炉に向って炎を放射したらしいのです。軽油がイッパイ詰まった焼却炉に。その瞬間でした

ドカン!

なんか焼却炉が物凄い爆発をしたらしいです。当たり前だ。アレか、ウチの親父はアホか。ちょっと考えればわかりそうなものなのに。

で、爆発の衝撃で親父は1mぐらい吹っ飛んだそうです。なんか頭がドリフみたいにチリチリになってたらしいです。でも、それよりなにより顔に負ったヤケドが酷かったようです。

まるでリアルタイムで燃えてるかのように熱い。まさしく焼けるように熱い。顔を掻き毟られるような熱さに悶えながら事務所内に這って行く親父。ちょうどその時は事務所には誰もおらず、親父は1人で何とかしようと思ったらしいです。

見ると、デスクの上に水に戻し途中の油揚げが。ドンブリの中に満たされた水に浮かぶ二枚の油揚げ。コレで冷やすしかない!彼はそう決断したようです。もうアホ確定。

必死で油揚げを顔に押さえつけ、ヤケドを冷やす親父。50も過ぎたオッサンが顔に油揚げつけて身悶えてる姿など想像もできません。しかし、油揚げの冷却力など知れたもの。一向にヤケドの痛みは治まりません。遂に我慢しきれなくなった親父は救急車を呼び病院へと搬送されたそうです。

結局、彼は顔に軽度のヤケドを負っていたようです。で、入院するほど酷いヤケドではなかったのですが、保険をもらうために入院しなさいと医師が勧めてきたらしく、めでたく5日間の入院となったそうなのです。

入院理由が余りにもアホ過ぎて僕は笑う気にもなれませんでした。冒頭でガンか?不治の病?などと本気で心配した自分がアホのようです。とりあえず、親父のハチャメチャな行動ぶりに唖然です。彼は頭の病気かもしれない。

とりあえず、ウチの親父は狂ってる。これだけは間違いない。
------------------------------------------------

物凄い手抜きに罪悪感を覚えつつ、原稿を落とさないように徹夜で頑張ろうと思います。


1/28 ぬめぱと変態レィディオ-pato VS 24人の非モテスペシャル-

ということで、またもや懲りずにラジオ放送を致します。しかも今回はゲストを交えての放送です。前回は「24人の美女スペシャル」と題して女性ゲストが24人入れ替わり立ち代りの放送だったわけですが、今回は物凄い男色です。もう、男臭くてワクワクします。

ということで、今回の放送の詳細は以下の通り。

番組名 ぬめぱと変態レィディオ-pato VS 24人の非モテスペシャル-
放送日時 終了
放送URL 終了

実況掲示板 終了
聞けない人スレ 終了

タイムテーブル

21:00-21:30 フリートーク
21:30-22:00 鎖骨/ファンタ
22:00-22:30 吉田/吉田が巨大な物を作ってますよ
22:30-23:00 dandan/歩く下半身
23:00-23:30 みやもと春九堂/じーらぼ!
23:30-00:00 じゃまおくん/BLACK徒然草
00:00-00:30 古館
00:30-01:00 リスナー 
01:00-01:30 遊星/LOGIC&MATRIX
01:30-02:00 かずっち/DragonFang
02:00-03:00  岩倉/いちご帝国
03:00-03:30 おやつ/ペパーミント
03:30-04:00 若林/穴の中
04:30-05:00 ゴトウ/一流ホームページ
05:00-05:30 松嶋/やきざかな
05:30-06:00 だんでぃ/WEB拍手
06:00-06:30 ジーン/人生それなり
06:30-07:00 ぶたまん/butamania.com
07:00-07:30 だいふく/ぬめらじ
07:30-08:00 管理人さん/ぬめらじ
08:00-08:30 164/母さん
08:30-     フリートーク

各ゲスト様に質問したいこと、こんなトークをして欲しい、などガスガスと下のメールフォームからお送りください。それでは楽しい放送になるように頑張ります!


1/22 アポストロフィー

「 ’」

この摩訶不思議な記号に出会った時、僕は少なからず戸惑いを覚えた。

もはやこの記号は知らない人はいないと思うし、誰もが英語の時間か何かに習ったものだと思う。知らないほうがおかしい。

この記号は「アポストロフィー」と呼ばれ、単語中に用いられて省略を表す記号だ。「I am →I'm 」や「can not →can't」など、文字を省略した時に主に用いられる。おいおい、amのaくらい省略しないで書けよ、と思うのだが、なんでも合理化したがる欧米人らしいといえばらしいのかもしれない。そういえば、「'05」とかのも「2005」の省略形なのか。

この摩訶不思議な記号、アポストロフィーに出会ったのは中学生の時だった。クソのような英語の授業、今思うとアホとしか思えないレベルの英文を習っている時、突如としてこの記号が現れた。

記憶が薄れすぎててよく覚えていないのだけど、確かナンシーとかいう欧米の金髪ギャルが日本に来たとかで、森健夫さんの家にホームステイする。で、突如ナンシーが「それは健夫の本です」とか言い出すワンシーンで「Takeo's book」という形で出てきたと思う。

まあ、日本に来たばかりの金髪ナンシーが「それは健夫の本です」とか、何の脈略も伏線もなしにその青い目で言い出したらそれはそれで怖いものがあるのだけど、とにかくココで初めて所有を表すアポストロフィーが登場した。

「この記号はアポストロフィーって言います、みんなも覚えておいてね」

英語教師が英文を説明しつつ、アポストロフィーに関する説明を始める。で、この読み方が異常に面白くて、「この記号はアポストロフィーって言います」ではなくて、無理やり文字で表すと「この記号はアポストロフィーって言います」っていう、何でそこだけ早口やねん!と突っ込まずにはいられないものだった。

さすがにその言い方が面白かったのか、クラス中は爆笑の渦、ゲラゲラと笑いながら「アポストロフィー!アポストロフィー!」と早口を真似て言っていた。クラスの大半のバカ男子がゲラゲラ笑いながら連呼する、冷静に一歩下がってみてみると、なんとも狂気の沙汰としか思えない光景だった。

さすがに自分が言った「アポストロフィー」が揶揄されたと感じたのだろうか、英語教師は少しだけムッとするとカッと居直り、突如として黒板を叩いてこう言った。

「何がおかしい!」

ちょっと瞳孔が開いていたと思う。で、この恫喝と共にあれほど騒がしかった教室はしんと静まり返った。

「いいか、このアポストロフィーはな、英語ではとても大切なんだ!これを使って所有を表したりするし、省略形を表したりするんだ!それをお前ら!」

何で怒られるのか分からないのだけど、英語教師の説教タイムの始まり。このお説教の中にも「アポストロフィー」っていう、何でそこだけ早口やねんって突っ込まずにはいられないセリフが入っていて、何人かの男子が「グフッ!」と拳銃で撃たれた人みたいに笑いを堪えるシーンが見られたのだけど、それでも英語教師の説教節は止まらない。

「大体、お前ら笑ってるけどな、ちゃんとこれが発音できるのか!おい、吉田、ちょっとお前、読んでみろ」

もうぶち切れちゃってて見境のなくなってる英語教師、次々に生徒を指差しては「アポストロフィー」を発音させていった。

「アポストロフィー」

「ちがう!アポストロフィーだ!もう一回!」

「アポストロフィー」

「ちがう!アポストロフィーだ!」

「アポストロフィー」

「チガウ!」

この年代の中学生ってのはちょっと照れ臭くて英語っぽい発音ができない習性があるのだけど、それ以上にアポストロフィーだけは恥ずかしくて先生風に言えない、そんな暗黙の了解がクラス中を覆いつくしていた。

しかしまあ、色々な生徒にあてるのだけど、ほとんど、特に男子生徒は照れが強いらしく、先生が満足する発音がなかなかできない。基本的に真面目な女子と、一部の真面目なガリ勉男子だけが難なく「アポストロフィー」と発音するだけだった。

残された僕ら不真面目男子も、そりゃあ普通に発音して仁王と化しかけている先生の怒りを鎮めたいのだけど、どうにもこうにもうまくいかない。だって、先生が「アポストロフィー」って発音しているだけで笑えるのに、それがクラスの女子やガリ勉が発音してるっていうんだから、笑いのレベルはもはや致命傷。発音云々以前に、笑いを堪えることができなかった。

「もういい!発音できなかった連中は放課後に補習!今日の授業はこれまで!」

ついに愛想が尽きたというか、諦めにかかったというか、これ以上相手にしてたら生徒相手にちぎっては投げちぎっては投げど大立ち回りを演じてしまうと感じたのか、先生は急に切り上げるとさっさと職員室に戻ってしまった。

かくして僕ら不真面目な男子は、ただ闇雲に「アポストロフィー」の発音を練習するという、良く意味の分からない、別名アポストロフィー補習に参加させられるのだった。

放課後。クラスの中でもより抜きで不真面目っぽい男子生徒数人が教室に居残りさせられている。もちろん、最後まで「アポストロフィー」の発音ができなかった連中だ。

もしかしたら、あの補習通告は怒りに狂った先生の狂言だったのではないか。じゃなきゃ、バカバカしすぎる。だって「'」だよ、ただの点だよ。こんなものの発音のためだけに放課後に残るなんてバカバカしすぎる。もしかしたら、先生は来なくて補習はないんじゃないか。

そんな期待虚しく、普通に先生は教室にやって来て、「さて、はじめるか!」なんて青春大好きラグビー部顧問みたいなノリで言ってやがりまして、あえなくアポストロフィー補習の始まり。傾いた陽の光が教室に差し込む中、僕らは「’」の発音を徹底的にやらされるのでした。なにやってんだ、ホント。

でもまあ、補習では本当に数人しかいなくて、授業中とは違ってオーディエンスの数が桁違いに少ない。だから、ネックであった「照れ」がない。あとは、無性に笑えるというポイントだけを耐え忍べばいいわけだから比較的楽だった。まあ、その笑い自体にも飽きがきていて、耐えるのは楽だった。

そんなこんなで、僕らはなんとか「アポストロフィー」の発音をクリアしていき、家に帰る権利を手に入れたのだけど、ただ一人だけ、この発音が素でできないヤツがいた。

彼は僕らグループの友人だったのだけど、どういう仕組みになってるのか本気で「アポストロフィー」が言えない。早口状態で英語っぽいキザ喋りの「アポストロフィー」が言えないのではなく、普通に発声ができない。

「アポトロフィ」

「違う、アポストロフィーだ」

「アポストフィリー」

「ゆっくり言ってみろ、ア、ポ、ス、ト、ロ、フィー」

「アポッ!ストロッ!・・・」

「何で言えないんだ・・・馬鹿にしてるのか?」

いよいよ英語教師のイライラが頂点まで高まり、一対一で対峙する彼と先生、それを見守るという一触即発の尋常ならざる緊張感が夕暮れの教室を包んだ。まさに空気が張り詰めてるような緊張感。けれども、やってることは「’」の発音。ただの点の発音。

「先生、もういいよ。おれ、これから省略せずに英語書いていくから・・・読めなくていい・・・」

あまりに発音できず、苦し紛れにそう言った彼の発言は名言だと思った。省略なんてしなくて良い。だからアポストロフィーなんて使わない。だから発音なんてできなくていい。なんでも省略すれば良いってものじゃないんだ。

しかしまあ、よくよく考えてみると、「’」なんて英文を読んでて声に出して発音する機会なんてなくて、発音できなくてもバリバリに使えば良いじゃん、と思うのだけど、雰囲気に酔いしれている僕らは誰もそのことに気がつかなかった。そして、その彼の名言を受けての先生の発言はさらに名言だった。

「高崎よ、お前は省略をせずに英語を書いていくっていってるけどな、確かに省略をするってのは言い方を変えれば手抜きだ。やらない方がいいのかもしれない。でもな、今まさに、お前は努力するという過程を省略しようとしているんじゃないか?発音できないからと投げ出して、努力の過程を省略しているんじゃないか?」

もうこれには、彼も僕らも目から鱗がバリバリ剥がれる勢いで感動。まあ、よくよく考えると意味わかんねーし、もちろん発音できなくてもそう大して困らないんでしょうけど、それでもやっぱ感動した。

そっからはもう、涙涙の補習劇ですよ。「先生、俺やるよ」「がんばろうな」とかなんとか言っちゃって、二人して「アポストロフィー」だとか言い合っちゃってんの。

でまあ、最終的には彼も言えるようになっちゃって、涙の補習は感動のうちに幕。なんか触発されちゃった僕らも「やったな!」「これで省略できるな!」とか言っちゃって、彼を囲んで胴上げしそうな勢い。なんだろう、友情ってそういうことだよね。うん、本気で感動した。彼の「アポストロフィー」に本気で感動した。

結局、この涙の補習劇も、別に発音できなくたっていいや、とかで省略してしまう、つまりアポストロフィーの中に入れてしまうのは簡単なのです。しかしながら、それで括ってしまっては味わえない感動だとか成果がそこにはあるわけなのです。

日常生活において、言葉だけでなく行動においても色々と省略しがちな昨今。それは合理的といってしまえばそれまでなのですが、そうやってアポストロフィーに括ってしまった中には、括ってしまっては味わえない醍醐味のようなものがあるのかもしれません。何事も省略してしまってはいけないのかもしれません。

ちなみに、家に帰ってから、常日頃から英語ペラペラだと自負して止まないウチの親父に「’」を見せ、

「これの読み方知ってる?」

と、得意気に尋ねましたところ

「なんだ、平安時代の麻呂の眉毛みたいだな」

と言った挙句、

「違うよ、アポストロフィーって言うんだぜ。発音できるー?」

と、何でそこだけ早口やねんっていう言い方で言いましたところ、物凄い親父の癇に障ったらしく

「アポロ!」

と言いながら、ボクシング映画の「ロッキー」に出てくる主人公ロッキーの敵役であり、良き親友である元チャンピオン、アポロを連想したらしく、ボクシングシャドーから右フックでノックアウトされました。なんでやねん。

薄れ行く意識の中で、僕の人生、親父に関連する部分だけは「’」で省略したい、そう思ったのでした。


1/18 ヒッチハイク

一年位前からなのですが、おしっこが二本になるんです。

いや、のっけからそんなこと言っても意味不明なこと山の如しだと思いますが、やっぱりおしっこが二本なんですよ。もうこれは揺るがしようのない真実。

どうにもこうにも理由がわからないのですが、おしっこをすると、普通はジャーっと一本の絹のような筋が形成されますよね。これは男女共通だと思いますけど、生殖器から一本の線で尿が放出されるはずです。

しかしながら、どうにもこうにもここ一年ほどの僕はそうはいかない。なんか、思いっきり尿ラインが二本になって排出されるんですよね。何が原因なのか知りませんけど、僕はコレを「双頭の蛇」だとか「ダブルヘッドスネーク」だとか勝手に呼んでるわけなんですが、これがもういちいち凄い。

今や、尿ラインが二本なんてのには慣れっこになってしまってて驚きもしないのですが、最近ではその二本具合で体調の良し悪しとか分かるんですよね。排出された瞬間から尿が二本に分かれるV字型の時は体調良好。最初は一本だけどそのうちジワッと二本に分かれる尿の時はY字型、これはやや元気がない時です。極上に体調が悪い時は、どういう仕組みか知らないけど二本のラインが交差するX字型なんてのも見られます。

このように、尿が二本になるってのはそれだけで他の人にはないスキルな訳です。普通の人が1本の尿なのに僕は二本、言うなれば二刀流ですから、もうその時点でカッコイイ。

おまけに立ちションで電柱に向かって放尿したって、スパーっと尿が二本に分かれて電柱を避けるようにして大地に降り立ちますからね。すごく電柱に優しい。なにも電柱だって好きで尿を受け止めてるわけじゃないですからね。

これが発展していくと、そのうち二本どころか尿がシャワーみたいになるんじゃないかとか、それだったらスプリンクラーみたいに出てもらってトイレを地獄にしたいとか、いっそのこと尿だけじゃなくてチンコも二本になってねじったりしたいとか、そういうことばかり考えてるわけです。

家から職場まで片道1時間、往復で2時間かかる通勤地獄。もうあまりにも暇で暇でしょうがなくて、いっつもそんなことを考えながら車を運転してるわけなんです。もう、おしっこのこととか考えないと暇でしょうがないんですよ。

でまあ、基本は上記のような妄想、通勤時の暇つぶしはこれに限るんですが、まれにもっと刺激的な暇つぶしに遭遇することがあるんですよね。そういつもいつも遭遇するわけじゃないですけど、極稀に。

それがいわゆるヒッチハイクってやつなんですけど、僕の通勤ルートってのが都市から都市を繋ぐ国道で、山岳地帯を抜けるルート、おまけに道中に観光施設みたいなのが山盛りであるんです。で、夏場なんかは沿道にアホの子のように親指立てたり、行き先を表示した紙みたいなのを持ってる若者が立ってたりするんです。

こういったヒッチハイクの人を乗せて通勤するってのが極上の暇つぶしで、話し相手になってもらったり、大塚愛の素晴らしさをみっちり説いたりするわけなんですが、中にはやっぱり変わった人というか、ちょっと狂った人というか、早い話がキチガイみたいな人がいるんです。

ある時乗せたヒッチハイクの青年は、ホント今にも死にそうなヒョロヒョロの青年で、物凄い負のオーラを背中に背負ってました。親戚の家に行くためにヒッチハイクしてるって言ってたけど、僕には死に場所を求めてさ迷ってるとしか思えなかった。

また、あるときに乗せた青年は、玄武岩みたいな顔してたんですけど、車に乗せるや否や一言も喋らず、何をトチ狂ったのかガシャガシャと空き缶を握り潰し始めたんですよ。どういった意図のマッスルアピールなのか全然分からんのですけど、なんかバラエティ番組に出てきたプロレスラーのごとく己のパワーをアピールすることしかできない人だった。

とまあ、他にも挙げるときりがなくて、腕に注射跡がいっぱいついたヘビメタギャルを、ロードウォリアーズみたいなトゲトゲのプロテクターつけたギャルを乗せたこととかあるのですけど、これは別の機会に。今日は最も思い出深いヒッチハイクの話をしたいと思います。

あれは昨年3月のことでした。ちょうどNumeriキャラバン2004と題して日本全国北海道から沖縄までを自費出版の本片手に車で走り回っていた僕は、今のように通勤時ではありませんが運転中の暇さに苦しんでいました。

青森でのキャラバン開催が終わり、夜のうちにフェリーで函館に渡って朝までには札幌に行き、翌日の開催に備えようとしていた僕の前に一人の青年が現れました。

「函館に住んでるんですけど、函館開催がないんでフェリーで青森に来ちゃいました」

と、トチ狂ってるとしか思えないことを言っていたキャラバン青森の参加者の青年二人と、じゃあ一緒に函館まで行きましょ、ってことでフェリーに乗り込んだのですが、どうも降りる段になると、二人だった青年が三人に増えてるんですよ。

「あれ、なんか人数増えてない?」

って僕が話しかけると、その中の一人が

「patoさん、こいつさっき船の中で知り合ったんですけど、札幌まで行きたいらしいんですよ、できれば乗せていってくれませんか?ダメだったらウチに泊めますけど」

とか言うんですよ。船の中という限られた時間の中で知らない人とそこまで仲良くなれる社交性、その親切心に対人スキルの低い僕は恐れおののくしかないんですけど、別に断る理由もないので普通に承諾しました。

こうして、キャラバン中なのに全く見ず知らずの青年を乗せて札幌を目指すことになった僕、当時は見ず知らずのヒッチハイカーを乗せた経験などなかったですから、それはそれは物凄く緊張しました。

乗せた彼は山形在住の大学生。見た感じは真面目でガンダムとかに異常に詳しそうでした。ザクとガンキャノンを間違えたら死ぬほど怒るに違いない。なんでも、札幌に住む高校時代の友人のところに青春18切符で遊びに行く予定だったのですが、青森で青函トンネルを渡れず足止め。仕方なくフェリーに乗って函館に渡り、後はどうするか、電車もないしなー、などと考えていたようです。見た目の真面目さに似合わず結構無計画な人みたいです。

「いやー、ホント助かりましたよ。函館から札幌までどうやって行こうかと考えてましたから。最悪歩いていこうかと思いましたよ」

「いやーこの時期に歩いては無謀だよー。札幌まで300キロくらいあるんだよ。絶対に途中で熊に襲われるか凍死するって」

とか無難なのか危険なのか分からない会話をこなしつつ札幌を目指す僕と見知らぬ青年ヒッチハイカー。そして、急に青年の会話が核心に迫ります。

「どうしてpatoさんは札幌を目指してるんですか?」

ちょっと言葉に詰まった僕は、正直に旅の目的を話します。

「いやー、実はインターネットでサイトをやっててね、そこで文章を書いてるんだよ。で、それをまとめて自費出版した本を全国中売り歩いてるわけ。守銭奴みたいに。で、今から札幌に売りに行くってわけね」

普通の人にとって「サイトやってる」ってだけで奇異の目で見られ、3歩くらい後ずさりされても仕方ないのですが、おまけに自費出版までしてそれを全国で手売りするという暴挙、クスリやってると思われても反論できません。完全に引かれるかなーと思ったのですが、ヒッチハイク青年の反応は意外や意外。

「すごい!素晴らしい!そんな浪漫があることできるなんて!僕も憧れる!やってみたい!」

と、物凄い賞賛を浴びせる始末。まあ、車に乗せてもらってる手前、青年的にも「ふーん、バカですね」とか冷ややかな対応を取るわけにも行かず、仕方無しに賞賛してるんでしょうけど、いくらなんでもオーバーリアクションすぎ。

最初はお互いに勢い良くトークをかましていたのですが、やはり数時間前まで見ず知らずの中だった二人、おまけに二人に共通する話題源みたいなのが見当もつきませんので、次第と車内は沈痛なムードに。最初の饒舌トーク合戦が嘘のように静かになりました。

「えっとさ、中学の時、部活何してたの」

「帰宅部っす」

「へえー」

という、宇宙の大きさよりもどうでもいい会話を交わしつつ、極寒の大地、漆黒の闇を走り抜けていく無口な二人を乗せた車。夜の北海道の国道っのは恐ろしいものがありまして、ビックリするくらい街灯とかないんですよ。もう、ホント真っ暗。おまけに雪は降ってくるわ、道路は凍ってくるわの大騒
ぎ。

やべーなーこわいなー、というか、このヒッチハイク青年が殺人鬼とかだったらもっと怖いなー、こんな何もない国道で殺されたら見つからないもんなー、とか比較的どうでもいいことをまたも考えていました。すると、

「あれ?ガソリンやばくないですか?」

と、ヒッチハイク青年のお言葉。もう、助手席の人に言われないと気がつかないってのもどうかと思うんですけど、見てみるとマジでガソリンがエンプティ間近。

「ありゃりゃ、ホントだねー、でもまあ、国道沿いだし次にガソリンスタンド見つければ大丈夫でしょ」

とか、僕も能天気な事言ってました。そう、ここまでは能天気だったのです。この第一次ガソリン危機が訪れたのが苫小牧という場所。たぶん、北海道のくびれみたいな所です。まあ、さすがにここから室蘭に向かって国道を走らせていけば、ガソリンスタンドなんてモリモリとあるだろう。そんな考えから室蘭に向かって走り出しました。

「あー、結構寂れた国道だね、ガソリンスタンド少ないかも」

「ですねえ」

と最初は余裕をぶっこいてた発言をしていたご両人ですが、次第に雲行きが怪しくなってきます。いや、マジで深夜の北海道を舐めてた。本気で舐めてた。いやね、ガソリンスタンドが少ないどころか、ほとんどないんですよ。

「そろそろやばいよね、早くスタンド見つけないと」

「まさかこんなにないとは」

極稀にガソリンスタンドがあったりするものの、当然のことながら深夜営業する気概なんて微塵もなくて、完全にクローズド。1ミリもガソリン入れられない。

「ねえ、そろそろやばいよね・・・こんな所でガス欠なんてなったら・・・」

「ガソリン・・・節約しましょう・・・」

何を思ったのか、暖房の風力を下げて必死なまでの抵抗。見ると、窓ガラスにはベチベチとみぞれとも雪ともとれる物体が吹き付けておりました。ここで止まったら間違いなく死ぬ。

しかし、そんな想いとは裏腹に、プスンプスンガクンガクンと見たこともないような悲鳴を上げて揺れ動く我が愛車。「がんばれーがんばれー」という二人で声をそろえ、ぎこちなかった二人が初めて協力する場面などが垣間見れたのですが、そのかけ声むなしく、我が愛車はそのまま動かぬ人となり天に召されていきました。ガス欠です。

室蘭市手前の国道、しかしながら微妙に山の中で辺りに街灯もなく、ちょっと離れた場所にある黄色い信号だけが点滅する、そんな場所でした。

「おいおい、やばいよ。こんな漆黒の闇の中でガス欠になってどうする」

「もうどうしようもないですね」

恐ろしいことに、ガス欠になった瞬間に当たり前ですが暖房まで止まりまして、雪がチラホラ見える3月の北海道の大地に放り出された形となりまして、急激に寒くなったんですよね。

もう車内なのに二人で寄り添ってないと凍えるくらい極寒ナイト。さっき出会ったばかりの二人なのに、ホモカップル並みの寄り添いっぷり。これがヒッチハイクの醍醐味だよね。

でまあ、本当に打ち解けあった二人は「寝たら死ぬぞー」とかベチベチやりあったり、急に何かを思い出したかのように青年が「あ、そういや僕チョコ持ってますよ」とアーモンドチョコを差し出してきて、「まるで遭難したみたいだな」とか言いながらそれを二人でつつましく食べたり。なんていうか古くからの友人のように打ち解けあったんですよ。

「patoさんのサイト、帰ったら絶対に見ますね。メールもします!」

そういった彼の言葉がなんともうれしかった。おまけに本まで買ってくれるとか言っちゃって、「いいよいいよ、お金要らない」とか言ってるのに、無理やり千円札を掴まされちゃって、まあ、その、ポッケにしまいこみました。こういう出会いがあるからこそヒッチハイクなんだよね。

しばらくして、青年が「JAFとかの救援を呼んだらどうですか」とか、至極真っ当なことを言い出しやがりまして、携帯からピポパポ、ピポパポ。30分くらい「寝たら死ぬぞ」ゴッコしてたら救援が来ました。

で、経済政策に失敗した国のハイパーインフレとしか思えない救援料を納めまして、5リットルだけガソリンを入れてもらって動き出しました。

「命拾いしたな!」

とか言ってたら、その5リットルを使い果たす間でもガソリンスタンドが見つからず、本気でもう一回JAFを呼ぶことも考えたのですが、なんとか深夜営業しているガソリンスタンドを発見。本当に命拾いしました。

万全に給油して、いざ札幌に向けて出発。もう最初が嘘だと思えるくらい打ち解けあった二人は、何か知らないけど初恋の話とかしてました。すげえ打ち解けすぎてる。

しかもなんと、すごいことに、これはマジで感動したんだけど、どっかのドライブインみたいな場所でジュース買った時に、もう親友みたいになってる二人は「男なら一緒に」を合言葉に一緒に立ちションしたんですけど、なんかね、彼のおしっこもダブルヘッドスネークなんですよ。しかもY型、やや疲れてます。

まさか、こんなところにもダブルヘッドスネークを持った男がいたとは!と感動しちゃいましてね、もうそれからはダブルヘッドスネークの話で持ちきりですよ。札幌までの数十分、ずっと、便器を外しやすいとかそんな話。さっきも打ち解け合えたと感じたけど、それの数十倍打ち解けられたと感じた。

いよいよ札幌に到着。二人のチグハグな旅の終着点です。ダブルヘッドスネークという同じ業を背負った二人の別れの時です。

「じゃあ、絶対に家に帰ったらサイト見てメールしますんで!」

「じゃあ」

ぬめり本を抱えて札幌駅へと消えて行く彼、ネカフェで寝ようと町並みに消えて行く僕。どんなに打ち解け合おうとも、一緒に旅をしようとも、お互い目的が違うのがヒッチハイク。かならず別れる時が来るのです。それが趣でもあり寂しさでもあるのです。そう、まるで二本のおしっこのように別方向に歩き出す二人、一期一会こそヒッチハイクの醍醐味なのです。

あの日あの時あの場所で、彼を乗せなければ出会えなかった。そんなダブルヘッドスネークに導かれた出会いを求めて、僕は出勤時でもヒッチハイカーを乗せるのです。暇つぶしと言う理由もありますが、素敵な出会いを求めて。

ちなみに、唯一気になることと言えば、兄弟の契りを交わさん勢いで打ち解けた件の彼ですが、もう少しで1年経過しようと言うのに、未だにメールが来ないということです。

今日はややY型ですので、こんな日記しか書けなくてすいません。

(追記)苫小牧じゃなくて長万部でした!


1/17

詳細知らない人とか興味のない人はごめんなさいね。

横浜某所にて行われた非常に心洗われる素晴らしい披露宴に出席し、最初の乾杯のワインが脳髄にガランと響き渡ったらしく、千鳥足になりながら羽田空港を徘徊して帰ってきたのですが、帰ってきたら大変な事になってました。

一連の騒動をご存知の方には今更説明するまでもないでしょうし、新たに説明する気もないのですが、まあ、その、なんだ、ウチの嫁と称される人がやらかしたみたいです。

ホント、裏モノJAPAN事件を嬉々として書いてたらアレですからね。パクリ糾弾テキスト書いてる横で、身内がパクリ騒動やらかしてどーする。俺の寝首をかく気か。

正確に言うと、別にウチのサイトは「パクってもいい」って書いてあるので、裏モノの盗作自体を糾弾したことはなく、いきなり向こうから謝罪があって「謝罪はいらない」って言ったのに向こうが何をトチ狂ったのか暴力団を大登場とかさせて「騒ぎ立てると被害が及ぶかも・・・」とかジョイフルな展開になってたのですが、こんなことになったらアップできるはずもない。

いくらなんでも、裏モノより嫁と称される人のほうが先だろーってことで、泣く泣く書いたテキストを削除しました。それでもアップできるほど僕が豪気だったら良かったんだけどね。さすがにそれは。

でまあ、そんなことはどうでもいいとして、一連の騒動ですけど、騒動自体は最初から知っておりました。所々で助言しつつ、話し合いの場も持ち、押したり引いたり、まあ、その、なんだ、僕の立場も分かって欲しいって感じなのですが、ぶっちゃけると、どうしようもありませんでした。

ネットのことでお互いに干渉しないという不文律があったとはいえ、その辺の止められなかったことが事件を悪化させた責であり、力不足も否めない。大変申し訳ない気持ちでいっぱいです。このチキンさはいかんともしがたい。

でまあ、いくらなんでもアレはね、ないよね。そろそろシャレにならない事態だと判断した僕は、チキンだとか不文律だとか言ってられないわけで、引導を渡すべく、新春からDVも辞さない覚悟で帰ったわけです。ホント、心洗われる結婚式に行った帰りに何やってるんだ、俺は。

でまあ、今、激闘を経て嫁と称される人は納戸に放り込んであるわけですが、反省するまで出しません。出たら何らかの対応をすると思います。一連の行動を本心から反省させます。

まあ、間違いなくどーしよーもねーんですけど、支えてあげないとどうしようもないのもまた事実なわけで、これから頑張って再教育していこうと思います。

今回の件で、迷惑をかけた方々、おそらく甚大な数に上ると思いますが、本当に申し訳ありませんでした。

あ、あと、興味ない人には全くどうでもいい話を書いてしまってすいませんでした。


1/13言いたいことも言えないこんな世の中じゃ

世の中には言いにくいことってのが山ほどあって、それをあえて言ってのける勇気だとか男気だとか正義感に憧れる部分もあるのですが、それは一歩間違えると空気を読めないバカになりかねず、その微妙な力加減というかさじ加減を分かりかねているのです。

例えば、職場に物凄い口臭が激しい人がいたとしましょう。口臭が激しいくらいでは別に責められることも迫害されることもないわけなんですが、それが人智を超えた臭さだったらどうでしょう。もう、半径10メートルに入るだけで意識が遠のき、幼い頃に肥溜めに落ちた記憶とかトラウマな部分が呼び起こされ、酷い時は嘔吐、下手したら失神などを呼び起こすほどの口臭だったらどうでしょう。

そういった口臭は、もちろん指摘して正してもらい、皆で口臭のない円満な職場を作っていく必要があるのですが、やっぱその、指摘しにくいじゃないですか。「あんた、口臭いよ」と地雷原を一人で突き進むが如く言えたらどんなに楽か。

やはり、そこには人間関係だとかそういった壮大なものが存在していて、気楽には「口臭いよ」とは言えないんですよ。いくら口臭くても犯罪って訳じゃないですしね、その人を傷つけるようなことは迂闊には言えんのですよ。

僕の上司は、常日頃から「人に信頼される爽やかな外見を心がけないとダメだ」をモットーに掲げておりまして、僕に会うたびに「ちゃんとシャツを入れろ」だとか「髪が伸びすぎだ、切ってこい」だとか、僕も28歳にもなってガッツンガッツン指摘されるんですよね。

でも、そんなモットーを掲げて僕の外見とかを「爽やかじゃない」って指摘している上司こそが実は全然爽やかじゃなくて、なんていうか、見た感じ思いっきりヤクザなんですよね。全然爽やかじゃない。

頭はパンチパーマっぽいわ、薄茶色の銀縁色眼鏡かけてるわ、どこで売ってるんすかって色のスーツ着てるわ、ネクタイに昇竜が誇らしげに鎮座しておられるわ、もうどっから見てもモロヤクザなんですわ、ウチの上司。

そんなヤクザみたいな人に「爽やかな外見を心がけろ」なんて言われても説得力が皆無で、僕も「あんたヤクザやん」とか注意されるたびに言いたくなるのですけど、やはり相手は上司、そんなこと言いたくても言えないじゃないですか。

このようにして、世の中には言いたくても言えない事ってのが山のようにあるのです。みんなその辺のところを適度に折り合いをつけて言うべき時は言うし、我慢する時は我慢する、そうやってみんな苦しみながら生きてるんだと思います。

先日もこんな事がありました。件のヤクザ上司に呼び出された僕、また怒られるのかもしれないと頭を垂れながら大人しく馳せ参じたところ、意外や意外、息子がやってる展覧会にいってくれないかという、良く意味のわからない依頼を受けたのでした。

なんでも、上司の息子は建築だかのデザインをする学校に通ってるらしく、その学校での展覧会があるとのこと、なんでも大変出来の良い息子様の作品が多数展示されているとのことでした。

「チケット沢山渡されちゃってね、これ買って見てきてよ、いい経験になると思うよ」

とチケットをヒラヒラさせながら言う姿はまさにヤクザ。見紛う事なきヤクザ。ダフ屋か何かにしか見えないのです。正直、建築とかデザインとかに微塵の興味もない僕なのですが、さすがに上司相手に

「いや、興味ないので行きません」

とは言えず、大人しく2000円とか出してチケットを購入しましたよ。それで上機嫌になった上司は

「がはははは、貴重なチケットだぞ。なんでも好評で毎回売切れになるほどの展覧会だから、君はラッキーだ!」

とかとんでもアニマルなこと言い出しやがるんです。おいおい、そんな親父にまでチケット渡して、職場の無関係なやつに無理やり買わせるようなチケットが貴重なわけないだろ、余りまくってるんと違うか、とも思うのですが、やっぱり言えませんでした。言いたいことも言えないこんな世の中。

でまあ、案の定、貴重な休みを利用してその展覧会に行ってみたのですが、良く意味の分からない模型がモサッと並んでるだけで客は皆無。比喩とか誇張ではなくて、客が僕だけという散々な状態。客である僕が不安になってしまう入りでした。あまりのショックに上司の息子の作品を見るのも忘れてたから。

で、翌日、またもや上司に、いやヤクザに呼び出された僕。もちろん、前日の展覧会の成果を聞きたいという姿勢丸出しで、むしろ息子の作品に対する賞賛とかを聞きたかったのでしょうが、あいにく僕はちゃんと見てないので何も言えない。でも、さすがに良く見てないので分からないとは言えず、

「ああ、よかったですよ。前衛的で」

「他の作品に比べて輝いていた」

とか言っておきました。

「客も多くて混雑してただろ?何せ評判の学校の展覧会だからなー、アレは貴重なチケットなんだぞ、げははははは!」

という上司に対して、まさか、どこのネタか忘れましたけど、キーボードについてるカナを「Uのキー」から左に読んだ状態だとはいえず、「ええ、凄く混んでて疲れましたー」とか言ってました。

言いたいことも言えない世の中、全てを何のしがらみもなく言えてしまえば楽なのでしょうけど、それをすると色々な弊害がある。みんなその辺が心のストッパーになってしまい、言いたいことを言ってしまうより、自分が我慢して円満に済むならいいんじゃないかしら、と思うのではないでしょうか。

何にせよ、言いたいことも言えないこんな世の中、みんな何か言いたい言葉を言いにくいという理由でグッと飲み込んで、それでも生きているのではないでしょうか。人生って我慢の連続だぜ。

「あ、そうそう。そろそろ人員整理をしなきゃいかんのだよなー、誰か辞めてくれたら楽なんだけどなー」

色眼鏡越しに明らかに僕を見ながら言うヤクザ上司。なんていうか、言いにくいことを随分とスッパリと言ってくれるじゃねえか。

どうも僕は、近々首になるかもしれません。


1/7 ヌメリニューアル

ヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌメリニューアルーーーー!

つーことで、おそよ2年半ぶりにNumeriがリニューアル、ということで冒頭のセリフも2年半ぶりに叫んだりしたわけなんですが、やはりいつもリニューアル直後はとんでもない違和感が付きまとうものですね。まるで自分のサイトじゃないみたいだ。

何で急に思い立って憑依されたかのようにリニューアルしたかといいますと、別に1千万ヒットを超えて新たな旅立ち!とか2005年になって心機一転とかそういうのは全然なくて、特段取り立てることもないような他愛もない理由だったりします。

僕は普段からほとんど自分の書いた文章を読み直すこともせず、誤字脱字がてんこ盛りのカーニバル状態で、自分のサイトもほとんど見ないのですが、この間珍しく自分のサイトを閲覧してたら途方もないことに気がついたのです。

まず、以前あったプロフィールのページ。とにかくここが酷い。

思いっきり画像リンクが切れてましたし、僕の年齢が「26歳」と表記されていました。2年前にプロフページを書いたっきりというのが存分に伺えます。どうりで、読者さんから頂くメールの中に「patoさんって26歳なんですね、なんだか若々しい感じ、むふん」とか理解に苦しむことが書かれてるはずだ。言うまでもなく僕は28歳、今年で29歳、あっというまに30歳になって加齢臭を振りまくことが確実視されているわけですが、いつまでもサイトで26歳と表記しているのはいかがなものか。まるで、いつまでも若く見られたいマダムのようじゃないか。

あと、「Numeriはトップページに文章しかないくせに異常に重い、あと、読みにくい、死ね」といった意見を多数頂いてましたので、なんとか軽くなるように工夫させていただきました。

他にも、リンクサイトのうちが半分くらいリンク切れだった、とか、ファイル名の英単語の綴りが物凄い勢いで間違ってるとか、ページタイトルが狂ったように間違ってるとか、これが自分のサイトだと思うと恥ずかしくて直視できない箇所が特盛で出てきたのです。

とまあ、それっぽいリニューアルの理由を適当に列挙してみたのですが、実は本当のところは全くそんな理由ではなくて、本日1月7日が愛すべき我が親父の誕生日だったりするからです。そんな親父へのお祝いをこめてリニューアルしました。よく分からんけどリニューアルしました。ハッピーバースディ、親父。

ということで、リニューアルで精も根も尽き何も面白いこと書けそうにないので今日の日記はこれまでです。あ、あと、このデザインが不評のようだったら元に戻しますので、ドシドシと意見とかください。


1/4 親殺し子殺し

親が子供を殺した。子供が親を殺した。なんて痛ましいニュースを耳にする事があります。

親が自分が生んだ子を殺す。子供が自分を生んでくれた親を殺す。そこに至るまでには様々な理由やら運命のいたずらがあるのかもしれませんが、一体どんな気持ちで殺してしまうのでしょうか。

また、愛でるように育ててきた子供に殺される親の気持ちとはどんなものなのでしょうか。腹を痛めて生んだ自分の子供を殺す気持ちとはどんなものなのでしょうか。

自分から見た子供や孫を「卑属」と呼びます。また、自分から見た親や祖父母を「尊属」と呼びます。一昔前までは殺人罪(刑法199条)の規定とは別に尊属殺重罰規定(刑法200条)というものがありました。つまり、尊属関係の人間を殺すと普通の殺人罪より重罪で量刑も重い、というもでした。それだけ自分の親殺しなどは悪いことだという認識だったようです。子殺しはどうだったのか知りませんが。

この尊属殺重罰規定は、昭和48年に「法の下の平等」という観点から違憲とする判決が出てしまい、以後、同条は検察の方針により適用されず、平成7年の刑法改正に伴い削除されており、法律上では「親殺しは罪が重い」ということはなくなってるようですが、それでもやっぱり感覚的に親殺しは良くないことのような気がします。ヤクザの世界でも自分の親(親分)殺しだけはご法度みたいですしね。

じゃあ、逆に子殺しはどうなのよって話になると思いますが、実はこれ、特段に特別視された事がないのです。虐待死とか色々とクローズアップされることはあるのですが、法律的には何ら定められた事がありません。

言葉からも分かるように、親殺しは尊属だから重罪、子殺しは卑属だから重罪では無いってことなのです。まあ、日本人的に「子供は自分の所有物」みたいな忌々しい思想が多くありますから、何をやってもいい的に考えてるのかもしれませんね。

「親殺しは特別けしからん、でも、子殺しはまあ仕方ないよね」的な風潮が、法的に見てもあるわけで、非常に気に食わないのですが、残念ながら世間ってそういうものなのかもしれません。

小学校低学年の頃でした。その頃学校ではジャージ下ろしなる珍妙なる遊びが大ブレイクしていました。

この遊びは読んで字の如く、ジャージのズボンをずり下ろすという何の生産性も意義もない遊びだったわけですが、完全無防備なる人物の背後に忍び寄り、そのジャージをバサッとずり下ろす。その狼狽ぶりや滑稽な姿を笑うことを極上の喜びとしている悪趣味なものでした。

田舎の小学校、それも低学年で貧乏なガキが集まってましたから、男子も女子も小奇麗なオシャレファッションなどしておらず、ほとんどのガキがジャージ姿、それもプーナとかアデダスとか微妙な偽物ジャージばかり着ていました。ですから、男子も女子も関係なく、ほとんど全てのガキが被害者でした。

例えば、誰かが輪になって話をしていたとします。その中の誰かに狙いを定め、背後からそっと忍び寄ります。気配を殺し、物音を立てぬよう、忍びの如き慎重さで獲物に近づきます。ターゲットの背後に到着したら勝負は一瞬です。ポケットの部分の布に指を引っ掛け、一気にずり下ろすだけ。後は情熱的な驚きと混沌の世界が待ち受けてるというわけです。普通に立って話をしてるだけなのに、何故か下半身はブリーフ。すげえ間抜けでシュールな光景が面白いのです。

僕はこのジャージずり下ろしのプロで、そこら辺のアマチュアがブルってしまって膝くらいまでしか下ろせないところを何のためらいもなく足首までずり下ろすスキルを持っていました。もう、何が僕をここまでジャージ下ろしに駆り立てるのかと不思議になるくらいジャージ下ろしに命を賭けてた。

本来は隠さねばならないブリーフやパンティエやらが一瞬にして公衆の面前に露出される非日常性、相手をねじ伏せてやったという優越感、そして、普段味わうことのできない極上のスリル。布袋のアニキがスーリールと唸る以上にスリリングな時間がそこにあった。

どうも、このジャージ下ろしはやられると耐え切れないほどの屈辱があるらしく、被害者は復讐を固く誓う傾向にあった。被害者が加害者となり、また別の誰かのジャージを下ろす。悲劇の連鎖は食い止める事ができず、瞬く間にジャージ下ろしは一大ムーブメントとして大ブレイクした。

この年代のガキってのは限度を知らないもんだから、とにかくブームになると止まらない。休憩時間になるとそこかしこで「おりゃー!」というずり下ろす掛け声と「きゃー!」とかいう悲鳴が聞こえたもんだった。

このムーブメントは、ジャージをずり下ろされちゃってパンティエがあらわになって泣いちゃったA子ちゃんだとか、間違えてお母さんのパンティエをはいてきてたのが発覚したB君とか、調子に乗りすぎて担任の先生のジャージまでずり下ろしちゃって鉄拳制裁を食らったバカとか、数々の悲劇を生み出した。

それらの事件をキッカケに「ジャージずり下ろし」は担任のおふれにより固く禁止され、それと同時に「ジャージの紐を固く縛る」という根本的な解決策に皆が気づいてしまい、この遊びは衰退の一途を辿ってしまった。

例えば、ファミコン名人で有名だった高橋名人だったが、彼の絶頂期にファミコンの存在自体がなくなってしまったらどうだろう。YAWARAちゃんこと谷亮子から柔道を奪ってしまったらどうなるだろう。前者はただのハゲのオッサンに成り下がるし、後者は言うまでもない。

プロフェッショナル、第一人者として君臨していた僕がジャージ下ろしを禁じられるとはそういうことで、行き場のない情熱やら何やらが僕の中で抑え切れないほど蠢いていた。ジャージ下ろしがしたい、とにかくテクニカルに下ろしきりたい、僕の捻じ曲がった思いはそういうところまで来ていて、もはや誰にも止められない状態だった。そして、悲劇は起こった。

この当時の僕の楽しみと言えば、そのジャージ下ろしともう一つ、母と一緒に行く買い物だった。学校が終わった夕方頃に母と近所のスーパーに買い物に行き、お菓子を買う買わないで激しい攻防戦を繰り広げるのが至福の楽しみだった。

二つの楽しみのうちの一つを奪われた僕、当然ながらこの母との買い物を心の拠り所にしていた節があるのだけど、母もまた同じように買い物を心の拠り所にしている風潮があった。

やはり主婦ってのは家に閉じこもりがちで、自分から積極的に動かない限り極度に社交性が低くなってしまうもので、下手したら家庭という鳥篭の中に自ら閉じ込められてしまうことになりかねない。母が外界と繋がりを持つことができる唯一の手段、それが買い物だった。

近所のスーパーに行って、そこで同じように外界との繋がりを求めている主婦仲間に会い、井戸端会議に華を咲かせる。どこそこの旦那さんが浮気してるだとか、あそこの御主人はインポだとか、ゴシップ話で大興奮。

僕はお菓子を買う買わないの攻防戦が楽しみだったし、母は井戸端会議が楽しみだった。目的は違えど、僕ら親子は買い物が楽しみだったし、それが心の拠り所だった。ジャージずり下ろしを失った後の僕はいっそうその傾向が強かった。

もう、ここまで書いたらオチまで書かなくても分かると思うんだけど、それでもあえて書かせてもらうと、事件はとある日、そのスーパーで起こった。

その日、ジャージずり下げを失った失意の僕は、母と一緒に連れ添って問題のスーパーに行った。今日こそは母との攻防戦を制し、絶対にお菓子を買ってみせる、意気込みながら僕は楽しみだった。

近所のスーパーに行くと、母は一直線に奥様仲間が井戸端会議を展開する精肉コーナーの前へ。そこでは、奥様と精肉コーナーのマネージャー男性が輪になって談笑しており、「○○のところの奥さん、夫の暴力に悩んでるらしい」とかゴシップ話に大車輪。まさにゴシップ井戸端会議。

そんな奥様たちを横目に、僕はお菓子コーナーへ一直線。そこで真剣に頭を悩ませながら、必死になって買ってもらえそうなお菓子をチョイスする。あまり量が多いお菓子は買ってもらえない。あまり高価なお菓子は買ってもらえない、あまりに体に悪そうなお菓子は買ってもらえない。「ねるねるねる」なんて死んでも買ってもらえなかったからな、魔女みたいに食べたかったのに。

結局、弟と一緒に食えそうな安価なお菓子ってのがポイントが高くて、さんざんっぱら頭を悩ませた挙句、買ってもらえそうな無難なお菓子をチョイス。それを手に持って母が井戸端会議を展開する精肉コーナーに向かう。

ここからが勝負だ。自然かつナチュラルに母さんの買い物カゴにお菓子を放り込まなければならない。ここで母親のレーダーに引っかかってしまうと、ガシッと腕をつかまれ「返してきなさい」と言われる。ここだけはなんとか気づかれぬように通過しなければならない。

逆を言うと、ここさえ通過してしまえば、あとはなし崩し的に買わせることが可能。例えば、井戸端会議を終えた後にレジあたりお菓子の存在に気づけば、いくら鬼母でもレジで返して来いとは言わない。

忍びのように気配を殺し、完全に空気と同化して神々の如き素早さで買い物カゴにお菓子を放り込む。このタイミングがカギだ。母はお喋りに夢中で気づく様子がない。よし、成功だろう。

と、思ったのだが、母はまるで貴婦人の如き優雅さでお菓子をカゴから掴み出すと、話に夢中になりながら僕にお菓子をノールックパス。つまり、これは購入できないということらしい。

投げ返されたお菓子を元の場所に戻しに行きつつ、何が悪くて購入に至らなかったのだろう、と必死に考えるのだけど、何をどう考えても納得がいかない。明らかに完璧なチョイスだったはず。非の打ち所のないチョイスだったはず。なのになんで買ってくれないのか。

考えても考えても納得がいかず、次第に沸々とした怒りの感情が芽生えてきた僕。なんでこんなクソみたいなお菓子の一つも買うことができないのか。自分は好き勝手に買ってやがるくせに、なんでこんな物も買えないのか。

怒りの鬼と化した僕は決心します。母をギャフンと言わせよう。少しばかり痛い目にあってもらおう。そうすればもう少し僕の気持ちってものを考えるようになり、お菓子の一つでも買ってやろうという気になるんじゃないだろうか。

こうして、僕は学校で「地獄のジャージずり下ろし魔」として名を馳せたスキルを活かし、母のジャージを下ろしてやろうと決心したのでした。近所のスーパーってことで母は恐ろしいほど気を抜いて紫色の悪趣味なジャージ姿でしたから、ずり下ろすには最適だったんですよね。

輪になって立ち話している母の背後から音もなく忍び寄り、気配を押し殺してそっとジャージズボンに手をかける。この主婦仲間と精肉売り場のマネージャーの前で母をパンティエ姿にしてやる。徹底的に辱めてやる。

何度もやったジャージずり下ろし、もうお手の物でした。僕はプロフェッショナルですから、例え相手が肉親であろうとも容赦はしません。もう、なんんのためらいもなく足首までジャージをずり下ろしてやりましたわ。もう、ズルッと、もうモロンと。

してやったり!これで母のパンティエ姿は白日の下に晒され大変恥をかくだろう。しかしそれは自らが撒いた種。じっくり反省し、今度からは僕にお菓子を買い与えるようになるだろう。意気揚々と、得意気に視線を母のジャージから上方に向けた僕に、途方もない光景が飛び込んできました。

いやな、母さんの汚い生尻が目の前にあるんだわ。

「女尻」っていうエロビデオシリーズは誰もが知ってることと思いますけど、あれでは女性の尻は気高く美しいものと位置付けられています。しかし、その時目の前にあったのは汚くたるみきった実の母の尻。ビロビロと地層のように展開する尻肉のみ。もう、何が起こったのか一瞬理解できませんでした。何で母の生尻が。

結局、あれなんですよね。僕が学校でガキ相手にやってたジャージ下ろしってのは、相手のジャージがガキ故に大きめのサイズでブカブカで、ズリ下ろした時に綺麗にジャージだけ下ろせたんですけど、母は古いくたびれたジャージを着ててサイズも合ってなくてピチピチでしたから、その、なんていうか、ジャージをずり下ろした時にパンティエまで一緒にずり落ちちゃったんですよね。

肉親の、それも母の生尻を目の前数センチで鑑賞するってのはそれだけで十二分にトラウマになりかねないのですけど、それは僕サイドから見てると尻だけなのでまだマシなお話しで、逆サイドから向き合うようにして井戸端会議していた奥様方や精肉コーナーのマネージャーはもう大変。

そのなんていうんですか、僕を構成する原料を親父が汗だくになって注入した穴とか、僕が元気良く飛び出してきた穴とか、まあ、簡単に言うとマンコ丸出しなわけでして、実の母がスーパーで下半身丸出し状態。

それには僕も「母さん、いくらなんでもスーパーでマンコ丸出しは良くないと思うんだ」と言うしかないんですけど、よくよく考えたら丸出しにさせたのは僕で、なんていうか、井戸端会議のメンツどころか、その周囲50メートルぐらいまで凍りついたように時が止まってた。

「あらあら、この子ったらイタズラで、おほほほ」

と母も必死に取り繕って笑いながらジャージとパンティエを上げてたんですけど、後姿だけで怒り狂ってるのが分かるような禍々しきオーラを身に纏っていて、少しばかりシャレになってない雰囲気みたいなのを子供心に感じ取りました。

もうお菓子買ってもらうとか別次元のお話で、買い物を終えて家に帰った瞬間に母は仁王のように怒り狂い徹底的に怒りのアフガン。もうなんていうんだろ、比喩とかジョークとか、オーバーに言ってとか言葉のあやとか、そういうのじゃなくて本気で殺されかけた。竹刀とか包丁振り回して大立ち回りしてたからな。

結局、僕は自分が原因とはいえ、本気で自分の親に殺されかけた経験があるわけで、しかもそれは「炎天下の車に放置してパチンコしてたら死んじゃった」とかじゃなくて明確な殺意を持った経験。

それがどんなに恐ろしいものかは良く知ってるし、自分を生み出した人間に殺されかけるという矛盾というか無情というか、そういうものもよく分かるのです。本当にあれはどうしようもないし、すごい悲しい気持ちになる。

だから、虐待死とか親が子供を殺したってニュースを聞くと、あの日の包丁持って本気で襲い来る母親を思い出して怖くなるし、虐待死なんて言葉で誤魔化さずに明確に殺人と呼ぶべきだと憤ったりするのです。

親殺しは尊属殺人重罰規定として法律的に普通の殺人より重罪と見られていた時期がありました。しかしながら、本当に憎むべきは力なく、親を信じきっている子供を殺すことだと思います。だから、卑属殺人こそ重罰規定してもいいじゃないかと思うのです。法の下に平等の精神に反しますが。

とか考えてたのですけど、一通り怒った後に落ち着きを取り戻し、ワーッと泣き出した後に「お母さんはあんな生き恥をかかされて死んだも同然だ。もうあのスーパーにいけない。死んだも同然だ!」という彼女の言葉を聞き、母さんのマンコを丸出しにして彼女を事実上殺したのは僕なんだ、と深く反省したのでした。やっぱ親殺しも良くないよ。

結局、親殺しも子殺しも殺人には変わりなく、良くないことだ、と今まで何を長々と書いてきたんだと言いたくなるほど根本的な部分に気がついてしまったのでした。僕は子供いないから、せめて親を殺すことないよう、気をつけていこうと、そんな感じ。

そうそう、この間、ウチのクサレ親父から、何をトチ狂ったのかそういう嫌がらせなのか知りませんけど、腐ったカニが3ケース届きました。北海の味覚どころの騒ぎじゃない。マジ殺そうと思った。

NUMERIはかなりフリーリンクです。無断転載、無断改変、無断紹介なんでもどうぞ。

IE6.0で動作確認しています。その他のブラウザではキ○ガイみたいなレイアウトになってるかもしれません。

  [Back to TOP]