Numeri

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 2004-5月

5/31 違反者講習に行ってきた-後編-

5/28 違反者講習に行ってきた-前編-

5/26 友達の次元

5/25 ひとりDE興奮剤

5/22 Numeriキャラバン2004 Round16-2

5/21 最狂親父列伝-電報編-

5/20 ある日・・・

5/17 告白

5/16 サプライズおじいちゃん

5/15 恋のチャンス

5/14 優しさのバランス

5/12 Numeriキャラバン2004 Round16-1

5/10 アパートパート

5/6 大阪クライシス

5/5 変わらないもの変わるもの


2004

4月の日記はこちら

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2003

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2002

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2001

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過去の出来事

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5/31 違反者講習に行ってきた-後編-

前回までのあらすじ
ついに違反点数6点に達したpatoは免許停止処分の対象となった。しかしながら、彼は「違反者講習」という救済措置があることを知ることになる。これを受ければ免停にならない。一縷の望みを託して免許センターに行くpato。そこは違反を重ねたクズどもの吹き溜まりだった。明日への希望は見出せない。どうする、pato!?

ということで、なんとか必要書類を提出し、いよいよ違反者講習が開始されます。午前中は運転手シミュレーターや適性検査、実車訓練などの比較的体を使うオーダー、午後は教室で安全運転講習、座学で頭を使うというスケジュールになっていました。

「よし、今日は頑張るぞ、頑張って安全運転の意識を取り戻してやる。もう絶対に違反なんてしない」

これから始まる講習に思いを馳せ、決意も新たにギュッと唇を噛み締める僕。しかしながら、そんな思いを打ち砕くかのように

「まだ運転シミュレーターの準備ができてませんので、準備ができるまで休憩してください」

一斉に教室を出て、喫煙所でタバコを吸うクズども。もう、なんというか、しょっぱなからグダグダの展開。講習をやる側、つまり免許センターサイドにやる気が感じられない。

「いやはや、スピードオーバーで」

「わたしはシートベルトで何回も捕まっちゃって」

モアーっと煙を吐きながらクズどもが自分の違反経歴を自慢げに話す。

「準備ができました、シミュレータールームに移動してください」

やる気のない教官に促され、クズどもはシミュレータールームに移動する。そこはさすが「シミュレータールーム」と名乗るだけあって、妙にハイテクな運転シミュレーターマシンが20台ほど並べられた空間だった。ちょうどゲームセンターにある車の運転ゲームみたいなのが並んでる姿は圧巻だった。

運転席と全く同じに作ってあるシミュレーターに座り、画面に出てくる指示に従って運転していく。画面はすっげえショボいポリゴンでできてて、通行人なんてマッチ棒に手足が生えたみたいなのが右手と右足を同時に出して歩いてた。なんていうか、昔の超ショボイテニスゲームみたいな画面だった。ハッキリ言ってリッジレーサーの方が面白い。

でまあ、この運転シミュレーターってヤツは、右直事故やら巻き込み事故、路地での飛び出しとか事故になりがちなシチュエーションを実際に画面上で体験し、どういった場面が危ないかを身をもって学習するって狙いがあるのだけど、これが全然意味ナッシング。

いやいや、普通に真面目にやれば幾分か意味があるのだろうけど、もう全く持って真面目にやらないもんだから皆目意味が無い。教官が後ろの方で仁王立ちして監視してれば幾分かは真面目にやるのだろうけど、その教官にやる気が無いんだからさあ大変。

最初こそは機械を起動したり色々な指示を出していた教官。しかしながら、途中から同僚の教官がシミュレーションルームに入って雑談を始めちゃったもんだから、一気に教官さんもやる気低下。

「昨日の飲み会さ」

「うんうん」

と、僕らクズどもが頑張ってシミュレーションしてるのに教官は雑談。そのうち盛り上がってきちゃったらしく、部屋の外に出て帰ってこなくなっちゃったからな。どうなってんだ、この講習。

でまあ、教官がいなくなった安全運転講習なんて、先生のいなくなった小学校低学年の自習時間みたいなもので、クズどもは一気にスパークして遊びまくり。あちらこちららで

ドカン!ズドン!

と人を轢き殺すサウンドが聴こえてくるからな。20台はあろうかというシミュレーションマシンのあちらこちらから殺人サウンド。画面上で人を轢き殺すってのがクズどもにとっては極上のレジャーらしく、それはそれは信じられないくらいマッチ箱みたいな人間が轢き殺されてた。普通は、良く事故が起こりそうなシチュエーションでフルブレーキを伴って轢くんだけど、もうノーブレーキ、全然関係ない通行人まで轢いてた。

しかも、一連のシミュレーションが終った後も教官は帰ってこなくて、僕らは「おつかれさまでした」っていうコメントが青い画面に裏ビデオのタイトルみたいに浮かび上がった状態で放置。徹底的に放置されてた。

その後も適性検査なる、訳の分からない、少年院の少年更生プログラムみたいなのやらされたんだけど、それも教官はやる気ナッシング。適性検査の結果とか受けて何のアドバイスもなかったからな。「反応速度と認識速度が著しく低い、運転には不向きです」という僕の結果を見ても微動だにしてなかったらな。

そんなこんなで、何のためにやってるのか理解できない思いを抱えつつ運転シミュレーターや適性検査をくぐり抜けてきたわけなんですが、いよいよ午前中の大トリ、実車訓練の時間がやってまいりました。実際に車に乗り、教官を横に乗せて運転免許センター内のコースを走る。それでもって教官に安全意識や運転テクについてアドヴァイスしてもらうという時間。これは随分と期待が持てます。なにせ実際に車に乗るのですから、これまでのシミュレーターとか目じゃありません。言うなれば今までのなんて前座です、前座。

乗降場に移動し、クズどもが輪になって教官の登場を待ちます。しかしながら、極度にやる気のない教官陣、もちろんなかなか乗降場にやってきません。そのうちクズどもの中でも

「なんかすげえやる気ないよね、ここの教官」(ボンボン)

とか

「なんか腹立ってきた。さっきから待ち時間ばっかやん」(ヤクザの妾)

とか

「チェケラ」(ヒップホップ)

とか不満が噴出し始めていました。暴動とか起こってもおかしくなかったんじゃないかな、アレは。そんなこんなでクズのくせにイッチョ前に不満を口々に語っていたのですが、そんな中で僕は驚愕の真実を発見。一人で驚愕し、ガクガクと膝から下が震えているのでした。

いやな、ヤクザの妾、かなりの巨乳。

見た感じヤクザの妾としか思えない大人な女性で、駅前ロータリーをロリータと読み間違えて一人でドキドキしてるほどロリコンな僕は興味なかったんだけど、よくよく見るとかなりの巨乳。下手したらFカップくらいあったんじゃないかな。それ発見した瞬間にやる気のない教官への怒りとかどうでもよくなったし、免停とか正直どうでも良くなった。

あのですね、男なんてどんなにカッコイイこと言ってても頭の中ではオッパイのことしか考えてない、そんな悲しい生き物なんですよ。そんな男にとってFカップってのは途方もないポテンシャルで、なんちゅーか英検2級くらいの価値があるわけなんですよ。

クズばっかりだと思ってたけど、なかなかやるじゃねえか、まさかFカップがいるとはな。一片の希望も見出せない違反者講習の中にあって宝石のような最後の希望を手に入れた僕、俄然やる気が出てきました。

そこうしていると、死んだ魚のような目をして教官が登場。いよいよ実車訓練と相成りました。まず誰かが運転席に座る、そいでもって隣に座っている教官の指示に従ってコース内を走行する。で、残った2人が後部座席に座って待機するという形式になってました。

初めに名前を呼ばれたハッスル爺さんが運転席に座ります。助手席には教官。後部座席には僕とヒップホップが座ることになりました。

「いいですか。これは試験でも何でもありません。普段どおりの運転を見てアドバイスするだけですから、お落ち着いて運転してください」

明らかに緊張し、鼻息も荒くそのまま死ぬんじゃないかと言うくらい興奮しているハッスル爺さんをなだめるように教官が言います。

「はぃ!」

と明らかに緊張しているとしか思えない返事をするハッスル爺さん。その瞬間、「こりゃイカンかもしれんね」と後部座席にいる僕とヒップホップの脳裏に不安がよぎりました。

「では、発進して下さい」

「はぃ!」ズギューーーーーン

教官が発進を促した刹那ですよ、ありえない勢いで発進するハッスル爺さん。アクセルベタ踏みとしか思えない勢いで加速する僕らの車。「おやおや、車だと思っていたのに間違ってロケットにでも乗り込みましたかな」と言いたくなるほどの加速で、僕とヒップホップは必死になって加速のGに耐えてた。爺さんだけにすごいGだ、と思いながら耐えてた。

加速が凄いだけならまだしも、発着場のすぐ目の前にある一時停止標識も完全に無視。信号とかあってないようなもの。他の車なんて見えてないみたいで、とにかく地獄としか思えないほど荒々しい運転。北海の漁師でももうちょいおしとやかに運転するぜ、と思うほどのヘブンズドライブ。まさにドライバーズハイ。まさか安全運転講習に来て死の危険を感じるとは思わなかった。

多分ね、爺さんは勘違いしたんだと思う。緊張して勘違いしたんだと思う。安全運転講習のための実車訓練なのにタイムトライアルか何かと勘違いしたんだと思う。後部座席からルームミラー越しにチロッと爺さんの目が見えたんだけど、完全に逝っちゃってて、アイルトンセナが乗り移ってるとしか思えなかった。

爺さんのドライビングが終わり、僕とヒップホップはハァハァと息切れをしながら「死ぬかと思った」とか目を丸くしているのに、助手席の教官は

「はい、おつかれさまー、村山さんはもうちょっと標識を確認した方がいいですねー、おつかれさまー、次はpatoさんに変わってください」

とか言うてました。いやいや、標識確認以前の問題やん。明らかにもっと指導する場所あるやん。それどころかこのまま爺さんに免許持たせててもいいのかよ、と思うのですが、やはり教官は淡々とスケジュールを消化していくだけなんですよね。

もちろん、その後も僕やヒップホップ、Fカップヤクザの妾が同じように運転したのですけど、最後のコメントは「もうちょっと標識を確認した方がいいですねー、おつかれさまー」のみ。やる気がないにも程がある。

午前中の予定はこの時点で終っちゃったのですけど、時間はまだ10時半、お昼まで相当の時間が余ってるらしく、教室に行って交通事故は怖いんだぞーって言うビデオを見せられました。ここでも教官はいなくて、勝手にループする同じ30分番組を3回くらい見せられました。どうなってんだこれ。

午後からは午後からで、やる気のなさそうーな別の教官が出てきて、何の意味が有るのか分からない交通安全の授業。自分が運転してて、前の車がウインカー出さずに右折したから頭にきた、みたいな至極プライベイトな小噺を延々と3時間くらいしてました。

おまけに、「早く終りたいですから、休憩時間はなしで。その分授業を前倒ししてやりますから」と勝手に決められて3時間休憩なしでぶっ通し。おまけに教官が活舌悪くて小声でボソボソ言ってるもんだから、何にも話が聞き取れない。

しかも偉そうに黒板を使って授業をするのですけど、

「最近はペーパードライバーの人が増えてきまして」

と言いながら、黒板に「ペーパ」と凄く力ないフォントで書く始末。そこでそう黒板に書く意味が分からない。それ以前にこの講義の必要性が見えてこない。と心の中で突っ込みながら気付いたら居眠りしてました。ボンボンは必死で携帯電話でメール、ヒップホップは机に落書き、ハッスル爺さんだけ真面目に聞いてた。

そんなこんなで、なんとか地獄のような3時間の拷問をくぐり抜け、もう帰ってもいいよってことなので晴れて開放となったわけなんですが、思うわけなんですよ。

建前上は、違反が多い運転者に安全運転意識を植え付けて違反を減らす、結果的には事故数の削減などにつなげようという狙いの違反者講習なのですが、蓋を開けてみればただの集金システム。クソみたいなシミュレーターと検査と実車、それとチンカスみたいな講義で14000円ですからね、物凄い利益が出てると思うのですよ。

結局、誰だって「免停をチャラにしてやるから14000円払いなさい」って言われれば払うわけです。向こうサイドとしても安全運転意識を植え付けるつもりなんて毛頭なくて、免許制度を傘にいかに金を集金するか、それしか頭にないわけなんですよ。

本当に違反を減らしたいなら、違反者集めて電気椅子にでもかければいいのです。「もう違反しないか!もう違反しないか!」と電圧を上げまくればいいのです。軍曹みたいな教官がそうやれば確実に減るし、免停をチャラにしてもいいと思う。

それをやらず、ただクソのようなことをやらせて免停チャラ。これなら14000円という金で免停免除を買ったも同然です。

世に噂される免許制度にまつわる黒い噂。様々な利権。免許センター前に必ずある「学科試験対策教室」も然り。なんか途方もなく黒い世界が展開されているなーと思う次第なのでした。

免許センターから開放され、列になって岐路に着くクズ人間ども。Fカップ妾は乳を揺さぶりながら歩きます。ボンボンは早速誰かに電話をかけています。そして、いち早く駐車場に到着し、マイカーである軽トラで帰ろうとしていたハッスル爺さんは、

チュドーン

と、またもやロケットのようなダッシュで発進していました。

それこそが、僕らが14000円で免停免除を買った確たる証拠で、何も安全運転に対して意識変化がないことを示していたのでした。免許界、思っている以上に黒い世界だぜ。

っていうか、あの調子なら爺さんは、またすぐに違反か事故を起こすに違いない。また免許証停止になるどころか、爺さんなら生命すら停止しかねない。そう感じ入る5月の夕暮れでした。

とりあえず、講習などで意識変化はなったけど、爺さんの運転を見て、安全運転しなきゃなって思った。


5/28 違反者講習に行ってきた-前編-

ぐおー、免停になったああああ

と先月の日記でのたまったことは皆さんの記憶に新しいと思います。

運転免許を取得しており、車などを運転する方は分かるかと思いますが、我々が違反で検挙されると反則点数というものをいただきます。シートベルト装着義務違反だと1点、一時停止違反だと2点と、違反の悪質さに応じた点数を頂戴するのです。

その点数が6点貯まりますと晴れて免許証停止となります。30日間の免停を賜り、その間は運転できません。しようものなら無免許運転と同じ扱いになるのです。

累積点数が重なるにつれて30日、60日、90日、120日、180日と免停の日数も長くなります。で、その処分の最上級に君臨するのが違反点数15点以上、免許証取り消しです。免許証取り上げられて最初から取り直し、しかも最低一年間は再取得できないという、行政処分の役満みたいなヤツです。

そんなこんなで、違反点数に応じて手厳しい処分が用意されているわけなんですが、つい先日のNumeriキャラバン2004道中で一時停止違反を犯し、見事警察にキャプチュード、晴れて違反点数6点を突破した僕は免許証停止処分となったのです。うん、30日免停。

しかも、免停が確定しても、免停処分の発動までは何日間かあるのですが、そのエアポケットのような期間にまたもやシートベルト違反で捕まるという体たらくぶり。どうなってんですか。なんかコレやるとですね、自動的に免停がランクアップして60日になるらしいんですわ。ホント、60日も免停になった日にゃ、運転の仕方なんて忘れるよね。

そんなこんなで、お見事に免停と相成ったわけなんですが、行政側も「おまえ、免停!」なんていう手厳しい事はいきなり言ったりはしません。ちゃんと最後のデッドライン的温情でですね、挽回するチャンスを残してくれているんですよ。それが「違反者講習」なる制度です。

この制度の素晴らしいところはですね、違反を重ねて6点に達したとしても、即免停にならないところなんですよ。以前は違反点数が6点に達したら即30日免停、「免停講習」なるものを1日かけて受講して29日短縮したとしても確実に1日は免停になっていたのです。しかも、違反点数は6点のまま、前歴1回という烙印を押され、次にちょっと違反すれば60日免停が待ち構えていたのです。なかなか厳しい処置です。

そこで導入されたのが「違反者講習」ですよ。これは軽微な違反(3点以下)の繰り返しで6点になった人は、最初の一回に限ってチャラにしてあげましょう、ってヤツなのですよ。「違反者講習」を受ければ免停にならない、しかも受講後は6点の違反点数を消去、前歴だってつかない、という素晴らしいものなのです。まさに免停界の敗者復活戦。これを受講しない手はありません。

受講しなければランクアップした60日免停、受講すれば全てがチャラ。当然ながら僕だって受講したい所だったのですが、「違反者講習のお知らせ」が我が家に届いたのは今まさに引越しで広島を離れようとしている時でした。

そんな時に1日かけて講習を受けることなど出来ません。おまけに遠く離れた広島の免許センターに行くことなど出来ませんし、何より、新しい職場に慣れるのが精一杯でそんな暇はありませんでした。

でまあ、この通知が来てから1ヶ月の間に違反者講習を受けなければ自動的に一ヶ月目の日から免停と相成るわけなのですが、なす術なく無情に一ヶ月経過、4月後半の日記に記した「免停になった!」という記述に繋がったのです。

しかしながら、神は我を見捨てていなかった。広島の免許センターに事情を説明しましたところ、「引越しという事情があるなら仕方ありません、特別に受講できるようにしましょう。それも新しい土地の免許センターで受けられるようにします」という、神のお導きとしか思えない慈愛に満ちたお言葉が。ホント、この免許センターおばさんにクンニぐらいならしていい、そう思うくらい有難かった。

そんなこんなで、新天地の新住所に再度「違反者講習のお知らせ」が届き、晴れて敗者復活戦に望める権利を手に入れた訳なのです。せっかく手に入れた権利を逃してなるものかと、平日しか講習をしてないですから有給休暇を駆使してですね、入りたての新人に2日間しか与えられていない貴重な有給休暇を駆使してですね、違反者講習に行ってきたんです。

違反者講習の拘束時間は鬼のように長いです。そりゃあ6点の違反と30日免停を帳消しにしてあげようっていうのですから、自ずと拘束時間が長くなります。それくらいはやって当然。

まず、朝は8時半に集合、それから午前中は運転シミュレーターだとか実際に車に乗ったりとかして安全運転講習があります。で、午後は座学でみっちりむっちりと安全講義、夕方までこってりしぼられます。

朝8時。遅刻しては全てが台無しだと、早起きした僕は車に乗って免許センターに行きました。従来の免停講習では最低でも1日は免停になるので車に乗って受講にいけませんが、この敗者復活戦なら免停になりません。ですから、ブリバリと車に乗って行けるのです。

で、位置関係が良く分からない免許センター内を徘徊し、やっとこさ違反者講習会が開催される教室を探し当てたのです。なんか、僕が一番乗りでした。

教室内には「酒を飲んだら乗らない!」だとか、「目指そう!一年間無事故無違反!」だとかの標語がデカデカと相撲取りみたいなフォントで貼られていました。

「なんだかなー」

と思いながらそれらの標語を眺めていましたところ、次々と他の受講者どもがやってまいりました。大体この日の受講者数は17人ほどでした。

なるほど、どいつもこいつも違反点数が6点になっただけあって、なかなか曲者な顔つきをしてるじゃないか。集まった受講者の面々を見てそう思いました。

やはり、違反をしまくって6点に達するなど尋常な状態ではありません。普通はそんな検挙されませんし、ましてや免停の危機になど直面しません。そう、ここに集まった面々は言うなれば交通社会のクズの集まりです。クズを救ってやろうという敗者復活戦にヨダレを垂らして集まったクズ中のクズなのです。

若い生娘など一人もいません。清純でおしとやか、それでいて可憐な生娘は交通違反などしません。恐る恐る車を運転し、速度も常に制限速度の半分以下。ちょっとしたクラクションの音などでビクッとする。もちろん、普段は裸眼だけど車の運転をするときだけは黒ブチのメガネです。で、初心者期間を過ぎているのに「怖いから」という理由で初心者マークを外しません。やばい、萌え死ぬほどに萌えすぎる。

いやいや、萌えの話なんかはどうでもよくて、とにかくこの違反者講習にはそんな萌えるような女性は一人もいません。今回の講習に参加していた面々で目立っていた人物を適当にニックネームをつけてピックアップすると、

[幽霊女]−見た目が幽霊のような女性。目が合うだけで取り殺されそうな気配を漂わせていました。ややヤンキー女風。30代後半と推測され、明らかに車の運転とか荒そうでした。たぶん、ワゴンRとか乗ってるに違いない。

[ハッスル爺さん]−60は軽く越えているであろう爺さん。そんな歳にもなって免停になるほど違反を重ねているのですから頭が下がります。もう歳なんだから落ち着こうぜ、爺さん。そう言わずにはいられない人でした。

[ヒップホップ]−ヒップホップを嗜んでるとしか思えない風貌の若者でした。ジャラジャラとアクセサリーをつけ、室内なのに「スキーにでもいくの?」と言いたくなるような帽子をかぶってました。ちなみに彼は教官の人に注意されても頑として帽子を脱がなかった。子供か。

[ボンボン]−見るからにボンボン、匂いもボンボン。金の匂いがプンプンした。高いスーツ着て颯爽と講習会場に現れました。たぶん、人を殺しても会社社長をやってる親父の部下かが身代わりとして出頭しそうな、そんな感じのボンボンでした。すげー高価そうな時計してた。

[ヤクザの妾]-見るからにヤクザの妾っぽい風貌でした。なんか、顔とか雰囲気はそんな感じでしたが、着ている物はやけに貧相。ヨレヨレの黒のTシャツで、背中の部分に「びっくりぃー」という文字が、やけにポップなフォントでプリントされてました。こっちがびっくりぃーだわ。

[チャトラン]-チャトランに似てた

こんな面々と机を並べて座りつつ、「やっぱり免停一歩手前まで行くヤツはクズだ」そう確信していました。明らかに顔ぶれが異様、間違いなく社会の平均値から大きく逸脱した面々です。もしかしたらパチンコ屋の開店待ちをする面々より酷いかもしれない。何で僕のような高貴な人間が、末は皇族かと噂されるほどの僕がこのような輩と机を並べなければならないのか、そう憤慨していると、本日の講習を担当する教官の方が颯爽と来られました。

「えー、皆さんは違反を繰り返し、その点数が6点に達したためこの講習会に集められたわけです」

教壇みたいな場所に立ち、颯爽と説明する教官。それを受けてサッとヒップホップの手が挙がりました。

「あのー、おれ、6点も違反してないんっすけど」

いいから黙ってろ、小僧。そんなことありえないんだから、アンタ6点分キッチリ違反したんだから、だからココにいるんだろ?変な自己主張すんな。黙って座ってろコンコンチキが。そう心の中でツッコミを入れていました。

そしたら、そのヒップホップの意見に触発されちゃったハッスル爺さんがですね、「ワシもワシも、6点も違反してない」と鼻息も荒く手を挙げる始末。もう。収拾がつかない。誰かなんとかして。

結局、ヒップホップのバカが「6点分の違反」と「6回の違反」を決定的に取り違えていたのが原因だったらしく、ヒップホップも爺さんも軽く諌められ、何事も無かったかのように説明が進行しました。

「まず、受講代金を収入印紙で購入してください。それから書類を書いてくださいね」

そう言われ、ワラワラと受講代金を払い込むクズども。14000円くらいの受講代金を払いつつ思いましたよ、こんなクズどもに囲まれて今日一日を乗り切れるのだろうか、本当に大丈夫なんだろうか。もしかしたら、感化されて僕までクズになってしまうんじゃなかろうか。そんな不安がよぎりました。クズに囲まれるとか、正直言って嫌過ぎる。苦悩に満ちながら書類を記入しました。

「はい、では書類が書けた人は、違反者講習通知と一緒に提出してください」

え・・・!?違反者講習通知って持ってこなきゃダメなの?

アパートに届いた違反者講習開催を告げる通知。なんか、それが事務処理で必要だったらしく、提出しろと言われました。

やっべえなあ、いらないと思って忘れてきちゃったよ。いや、正直に言いうと、読んですぐ捨てちゃったよ。やっべえなあ・・・と思いながら周囲を見回すと。

僕以外全員持ってきてる!

ヒップホップもハッスル爺さんも、ヤクザの妾もチャトランも、みんなガッチリと違反者講習通知を持ってきていました。忘れたのは僕だけ。

コイツらは全員クズだ!クズだ!クズだ!クズだ!と連呼してきましたが、そのクズに囲まれ、一人だけ忘れ物をするという失態を演じた僕はクズ中のクズ、クズの最右翼だと言うことを悟ったのでした。もう死にたい。

後編に続く

ありえない運転シミュレーター、殺戮の実車指導、阿鼻叫喚の生き地獄。クズどもはそこに明日への希望を見出した。僕らクズだって・・・運転していいんですか・・・?謎の呪文「ペーパ」が響き渡る。そして僕らは利権構造の汚さに触れた。そして心が1つになった。

乞うご期待!


5/26 友達の次元

小学校に入学する時、あなたは不安だったと思います。

ちゃんと友達できるかな?ちゃんとみんなに溶け込めるかな?僕だけ仲間外れになったりしないかな?6歳頃の話ですから忘れている方も多いと思いますが、きっとみんな不安だったと思います。「友達100人できるかな」なんていう歌があったりしましたが、まさにそんな不安を如実に表した歌なのではないでしょうか。かくいう僕も、小学校に上がる前は大層不安だったように思います。

こういった不安は何も小学校に上がる時だけではありません。どんな場面においても「集団と仲良くしていけるか」は重要な問題になります。僕らは集団で社会生活を営む生物ですから、その他の人々と良好に付き合っていく事は大切なことです。

中学校に上がる時、高校に上がる時、大学に上がる時、新しい職場に勤めることになった時、転校などによって学校を変わる時だって不安です。ましてや、新しい土地に引っ越してきた時などその不安は顕著で、自分は新しい土地に馴染めるのだろうか、この土地で友達ができるのだろうか、と心底不安になったりするものなのです。

そんなこんなで、この四月、職場も変わり、全く縁もゆかりもない土地に引っ越してきた僕。当然のことながら友達できるのだろうか?などと不安に思ったものでした。

僕は元々引っ込み思案な性格ですし、率先して誰かに話しかけるということも出来ません。早い話が人見知りしてしまうため、なかなか友達ができないのです。友達が出来たとしても「程よく付き合おう」と無意識下で思ってしまうのか、なかなか本当の意味での友達って出来ないんですよね。それが僕という人間の大きな問題なんですよ。

そもそも、この歳になってしまうと、なかなか友達を作る機会がありません。学生さんならクラスメイトと友達になれたりするかもしれませんが、個室で仕事をし、仕事が終れば家に直行して通販作業に勤しんでいる僕など友達ができるわけありません。キッカケがないのですから。

そんなこんなで、「新しい土地で友達できるかなあ」と思っていた不安は見事に的中し、友達もいないまま仕事に通販作業に大車輪、たまの暇にパチンコをやるぐらい、仕事以外で発する会話は「お弁当温めますか?」「はい」ぐらいの日々が続いていたのでした。

しかしながら、どんな状況でも友達ってヤツはできるものです。小学校で友達できるか不安に思っていてもいつの間にか友達ができているように、僕にもいつのまにか友達ができてしまったのです。

それは、ある日曜日のことでした。

いつものようにすることがなく、ネグセバリバリ伝説の頭を抱えて近所のパチンコ屋に行った時のことでした。せっかくの休みに起きてすぐパチンコ屋かよ、人間のクズだな、などと思いつつCRイエローキャブを打っていたのでした。

このイエローキャブという台はイエローキャブの巨乳タレント総出演のパチンコ台で、オッパイ揺れるわ水着だわサトエリがカワイイわで、とにかく煩悩の限りを尽くした台になっているのです。その台を半分口を開け、ボーっと見ていた時のことでした。

ある程度大当たりがきて、何箱かドル箱を積み上げていると

「お、それ熱いリーチじゃん」

と、後ろから話しかけられたのでした。まるで10年来の友達のような気さくさで、イキナリ話しかけられました。

見ると、そこには僕と同じ年頃の青年が満面の笑みで立っていました。背格好は普通くらい、顔は東南アジア風でやけに濃く、不様に伸びた長髪が落ち武者のようでした。なんていうか、ちょっとオタク臭いヤツだった。

「あ、でもこのリーチ、演出が長いだけで全然当たらないよ」

久々にプライベイトで一般人と会話したからでしょうか、僕も嬉しくなって彼の問いかけに答えたのでした。

それから彼は空いていた僕の隣の台に座り、二人でCRイエローキャブに座りながら様々な情報交換をしたのでした。で、たまの休憩とか食事休憩とか一緒に行き、僕らは益々親交を深めるのでした。

彼の名前は関口。どうもこのパチンコ屋の常連らしく、定職にも付かずプラプラとパチンコやったりマンガ喫茶に行ったりしているみたいでした。「最近どの店もあんまり出ないよな」ウドンを喰いながらそう言う関口君の顔は心底輝いていました。

でまあ、食事休憩も終わり、2人で並んで夕方までCRイエローキャブを打ち、2人とも数万円ほど勝ちを収めました。そうなってくると勢いで「飲みに行くかー」ってことになるわけで、2人してパチンコ屋近くの居酒屋に入ったのです。パチンコ屋から居酒屋、ダメ人間のゴールデンコースです。

今日パチンコ屋で出会ったばかりの2人、最初こそは共通の話題がパチンコくらいしかなく、話題も「あのリーチが熱い」だとかだったのですが、酒も良い気分で周り、ほろ酔い気分になってくると自然とプライベイトな方向へ話題がシフトしていったのでした。特に女性関係のほうに話題がシフトしていったのです。

初めて会った男同士なんて腹の探り合いです。果たしてコイツは俺よりモテるのか。女性関係はどうなのか。おセックスはしてるのか。する相手がいるのか。そういった女性関係のエトセトラを水面下で探り合っているのです。

でね、酔っ払った関口が口の周りにビールの泡つけながらのたまうわけですよ。

「実は俺、彼女が3人いるんだけどな、体が持たなくて大変だよ」

「女って金がかかるよな、パチンコでもやって稼がないと持たないわ」

「まあ、女を口説くのもいかせるのも結構簡単じゃん?」

「飢えた人妻が最高に美味」

と自信満々、風林火山と言わんばかりに威風堂々と言うわけなんですよ。オタクが!ハクいスケをこましまくり!俺がチンポ出して歩いていたら勝手に女の方がはまってくる!と言わんばかりに自信満々なんですよ。

震撼しましたね。間違いなく全米が震撼した。見た目オタクなのにモテるだなんて、ハッキリ言ってそんなにモテそうにない外見なのにモテるだなんて、よほどのラブテクニシャンに違いない、そう思いましたね。

間違いない、コイツは僕とは次元が違う。次元が違いすぎる。友達も喋る相手もいなくて足も臭くて、日夜パソコンに向かって薄ら笑いを浮かべている僕とは次元が違う。エロい画像をプリントアウトして大切に保管し、オナニーに使っている僕とは次元が違う。ハッキリ言って彼はカリスマオタクだ、こんな凄いお方と友達になっていいんだろうか、なんて考えて萎縮しちゃったもの。

ハッキリ言って、友達同士のレベルというのは大切だと思います。これを友人関係の次元と呼ぶのならば、次元の違いすぎる友情関係は必ずしも幸福なものだとは言えません。

片方がヤリチンで片方が非モテな友人関係も結構ですが、それが最良とは必ずしも言えないのです。片方が超大金持ちで片方が激烈に貧乏、片方が大天才で片方が激烈バカ、そういう次元が違う関係と言うのはあんまりだと思うのです。私見ですが、やっぱ友情関係って似たような次元の相手と築くのが一番じゃないかなって思うのです。

そんなこんなで、明らかに僕とはレベルが、次元が違う関口に萎縮し、コイツと上手く友達関係を築けるのか心配になってました。やっぱ僕に友達を作るってのは難しすぎるのかもしれない。

「すげえ酔っちゃったな、今日はウチに泊まっていけよ」

関口はヘベレケになりながらざっくばらんに言います。僕は元々、どんな心を許した人間でもその人の家で泊まるというのは嫌いなのですが、ヤリチンを自称する彼の家です。もしかしたら我慢しきれなくなった女性が裸になってベッドに待ち構えているかもしれません。

「しょうがねえなあ」

下半身をパンパンに怒張させ、ヘベレケな彼を支えるようにして彼の指示通り、彼の家へと向かいます。

彼は実家住まいだったらしく、その家は居酒屋からそう遠くない場所にある住宅街にありました。親などの家人は寝静まっているらしく電灯は真っ暗、そこに彼を支えながら

「おじゃましまーす」

と小声で言って上がりこみ、二階にあるらしい彼の部屋に向かいました。で、そこで僕は見てはいけないものを見てしまったのです。裸の女性がウエルカムとか、セクシャルなマダムがウッフーンとかではなく、次元の違う途方のないものでした。

いやな、美少女アニメのでっかいポスターが壁一面に飾ってあった。

おまけに、床にはエロゲーっていうの?そういうのが散乱し、同人誌みたいなものが乱雑に散らばってた。僕は美少女物とかエロゲーとか全然分からないのだけど、一目でソレと分かるものが大量に溢れかえってた。で、初めて個人で所有しているのを見たんだけど、アニメ物のエロビデオが何本かラックに納まってた。なんていうかな、間違いなくオタクの部屋だった。メディアが作り出した危ないオタクの典型みたいな部屋だった。実物の女の匂いのカケラもしなかった。

でね、思うわけですよ。居酒屋で彼がのたまっていた風林火山的セリフを思い返すわけですよ。

「実は俺、彼女が3人いるんだけどな、体が持たなくて大変だよ」
→美少女系恋愛ゲームを3本掛け持ち?

「女って金がかかるよな、パチンコでもやって稼がないと持たないわ」
→エロゲーや同人誌、DVDの購入費?

「まあ、女を口説くのもいかせるのも結構簡単じゃん?」
→ゲームのやりすぎ?

「飢えた人妻が最高に美味」
→そういうエロゲーがあるの?

酔っ払い、美少女物のDVDに埋もれて眠る彼を見て思いましたよ。コイツ、正真正銘のオタクじゃないか。画面の中の美少女に興味ない僕とは方向は違うけど対して変わらないじゃないかと。

コイツ、確かに僕と次元が違うのだけど、それは二次元か三次元の違いじゃないか。次元の意味が違う。

ということで、スーパーオタク関口君という友達を手に入れ、最初は友達が出来るのか不安だったのですけど、今では彼のことが不安で仕方ありません。パチンコ狂いで美少女オタク、しかも消費者金融のカードが部屋にいっぱいあったからな。

今後もスーパーオタク関口君と程よく付き合っていこうと思います。


5/25 ひとりDE興奮剤

セックスはスポーツです。

古来の日本人は貞操観念が強く、性的障壁が高いものと思われがちですが、実はそれは大きな間違いです。小さな山村で当たり前のように行われていた夜這い習慣やらを考えてみますと、日本人は比較的フリーセックスを楽しみ、子作り以外の目的でセックスを楽しんだとかんがえるっことができます。貞操観念や処女尊重といった概念は西洋から入ってきたものなんですね。

でまあ、昔から脈々とセックスをエンジョイするといった思想が日本人にはあったわけなんですが、最近、富にそれが酷くなってると感じませんか。

街を歩けばセックスに当たります。街中を男女で歩いているカップルは間違いなくセックスをしています。あの老人も、あの若者も、あの熟年も、あの小学生も、とにかくセックスをやってやってやりまくっています。今夜一晩で一体どれだけのセックスが消費されるか。アナタがいまこのページを読んでる間にも、どれだけのカップルがセックスに勤しんでいるか、計り知れません。

いくら昔から気軽にセックスを楽しむ習慣があったとはいえ、現代のセックスはそれ以上に気軽に成り果てました。大好きな人と最高のシチュエーションでセックス!私の大切にしてるものあげるの。なんてのは最早幻想で、おとぎ話にすらなりません。

今や、出会ったら即セックス!
フィーリングが合えば即セックス!
シェイクハンド感覚で即セックス!
とりあえず、食後のセックス!
スポーツ感覚でセックスの競技会!
合コンで出会って30分後にはセックス!

とまあ、節操も無くセックスに行き着く次第なわけです。

街にはカップルが溢れ、小奇麗なラブホテルは常に満室。繁華街の男女はセックスが服を着て歩いているようなものです。

まるで日常のようにセックスを嗜んでいるカップルにとって、最大の敵はマンネリです。

「ああ!」

「・・・・でるっ!」

「はぁはぁ」

「はぁはぁ」

「なんか疲れちゃったね」

「気持ちよかった・・・?」

「・・・うん、まあね」

毎度判を押したように同じセックス。マンネリと社交辞令と気遣いの狭間で蠢く男女のエトセトラ。そこでのセックスはもはや通過儀礼に過ぎません。そこで、世のカップルどもはマンネリセックスを打破すべく

「な、今度は後ろの穴でしてみっか?」

とか

「セーラー服着てやってみようぜ!」

「バイブ使ってみようぜ!」

「外でやってみようぜ!」

などと、少しばかり趣向の違ったセックスに走るわけです。

ハッキリ言いますと、マンネリセックスを打破すべくこうやって様々なセックスにチャレンジする人間は勝ち組です。セックスに溺れ、セックスに飽き、セックスを探求する。人生の成功度が、どれだけ充実したセックスをしたかで決められるのならば間違いなく勝ち組です。

セックスをスポーツと捕らえ、充実したセックスライフを楽しむごく一部の勝ち組に、圧倒的多数の負け組。

充実したセックスをしていない者は人にあらず。

そんな言葉が違和感なく浸透するほど、我々の人生はセックスによって天秤にかけられるようになりました。セックスに飽きず、セックスを探求せず、一風変わったセックスにチャレンジしない者は負け犬、そう言われても何も言い返せないのです。

冗談じゃありません。

日夜オナニーに明け暮れ、擦りすぎてチンコの皮がずる剥けている僕らだって生きているんです。呼吸すれば恋だってするし、悲しければ泣いたりするんです。そう、何もセックスに明け暮れるカップルだけが人間なわけじゃない。

ということで、今回僕は、セックスがマンネリになってきたカップルが手を出すかもしれない「興奮剤」に焦点を当て、あえてそれをオナニーに用いることで新境地のオナニーにチャレンジしました。興奮剤を使って一風変わったセックスにチャレンジするカップルを尻目に、あえて一風変わったオナニーにチャレンジします。

これは一人の男による、独りぼっちの闘争記録である。

○はじめに(興奮剤とは)

今回、僕が用いた興奮剤は、「ローヤルエクスタシー」と呼ばれるものです。これは医薬品ではありませんので、普通にネット通販などで買えます。

ローヤルエクスタシー

HPの宣伝文句には「ガラナ・オットセイエキスにコラエキス を新たに加えました!皆様の声に応えし スポイドタイプで新登場!」と書かれています。コラエキスってのが良く分かりませんけど、とにかく凄い代物みたいです。

で、さらに書かれている使用者の反響の声を読んでみると

○ 半信半疑で試してみたら・・・・・お堅いはずの彼女が・・・・こんな姿みたことない!!

○ 飲み物に数滴混ぜてみたらモジモジ、ソワソワ??もう我慢できない!!

○ ビール、コーヒー等に3〜5滴入れるだけ ・・・

〜 ぜひ、一度 お試しください 〜二人の関係がかわる??

と書かれております。微妙に80年代風のコメントが秀逸で、肉感的な文字が躍ります。「モジモジ、ソワソワ??」辺りは天才コピーライターが書いたとしか思えません。「二人の関係がかわる??」なんて神の領域です。

でまあ、これを読む限り、どうもマンネリセックスに飽きたカップルが、性行為の30-40分前にビールなどの飲み物の混ぜて飲むとですね、モジモジソワソワするらしいのですよ。で、いつもは事務的なセックスしかしない彼女が、狂い咲きと言わんばかりに淫靡に乱れ、オルガ夫人の如く腰を振りまくるみたいです。充実したセックスに、2人の関係も変わる、そういうことみたいです。

なるほど、ということは僕がコレを飲んでオナニーすれば、いつもはおざなりな事務的オナニーだけど、モジモジソワソワ、雄叫びを発するくらい、チンコが取れるくらいのオナニーをするに違いありません。まさに、一人の関係が変わる??です。

ということで、早速「ローヤルエクスタシー」を購入しました。

○購入

15 mlで5000円なんていう、どっかの宗教団体の教祖の聖水以上に高価なローヤルエクスタシーを購入し、今や遅しと我が家に届くのを待ちます。

届きました。

宅配伝票には「品名:精力剤」の誇らしいほどに勇ましい文字。勇ましすぎて泣けてくる。(要望に応じて「PCパーツ」などと書いてくれるみたいですが、あえて精力剤でいきました)

小包の中には小瓶が一本と、説明書のような紙、さらに他の興奮剤や精力剤を紹介したパンフレットが入っていました。っていうか、ビンのラベルが明らかにチープすぎる。

○飲む

とりあえず、ビンの中身の液体は無色で無臭。何か飲み物に3-4滴ほど入れて飲むと書いてありますので、近くにあったグレープフルーツのお酒に4滴垂らし、飲んでみました。

40分後。

何も変化がありません。

僕的には、飲んだ40分後には満月を見た悟空のように豹変し、街に繰り出して女どもを恐怖のズンドコに叩き落す性獣に豹変するかと思っていたのですが、別に何も変化ありませんでした。性獣にならないまでも、モジモジ、ソワソワくらい始まってもいいのですが、全然変化ありませんでした。

おかしいな?

そう思い、もう一度、酒にローヤルエクスタシーを、今度は倍の8滴垂らして飲み干しましたが、別段変化はありませんでした。

試しにエロ本を読んでみたのですがピクリともせず、おまけに一発オナニーをしてみましたが、普段と変わること無い、一年に1000回はするであろうオナニーの1回に過ぎませんでした。全然効かない。モジモジソワソワしなければ、一人の関係も変わらない。どうなってんだ、ローヤルエクスタシー。

ということで、まずは全く効き目がありませんでした。

○ムード作り

おいおい、騙されたじゃないかー、と同封されてきた説明書を読んでみましたところ、そこには衝撃的な一文が書かれていました。

「雰囲気作りが最も大切です。雰囲気を作らなければ効果は得られません!」

なるほど、何で効果が出ないのかなーと思っていたら雰囲気が足りなかったのか。

そりゃ、カップル同士のおセックスにしても雰囲気は、いやムードは大切。ムードのないセックスなんて盛り上がらない。それは一人のオナニーかて同じこと。ムードのないオナニーなんて盛り上がらない。

よっしゃー、ムーディーな雰囲気作ったるぞ。オナニーするのに最高なムーディーな雰囲気作ったるぞー、と僕は近所のホームセンターに走るのでした。

部屋の照明をピンク色にしました。

携帯カメラじゃ微妙に色合いが出ないのですけど、ホームセンターでピンクのセロファンを買ってきまして、蛍光灯にグルグル巻き、部屋中をピンク色にしてエロスな雰囲気を演出してみました。これはもう、ムード満点と言う他ない。

ムード満点、ピンク色の部屋の中でローヤルエクスタシー入りのアルコールを数滴飲み、エロ本片手にオナニーしてみましたが、何も変わりませんでした。いつものオナニー、1/1000のオナニーだ。っていうか目がチカチカしてきた。場末の風俗店か、ここは。

そんなこんなで、ムードを作ってみたものの、やっぱりダメでした。

○もっと飲む

全然効かず、全く持って性獣にならないことに腹を立てた僕。これでは新しいオナニーどころではありません。もう、頭に来ちゃったので1ビン全部一気飲みしました。お酒なんかに混入させず、ビンからじかに飲み干したりました。

3-4滴飲むことと書かれているのに、15ml全部、滴にしたら多分500滴くらいあると思います。それを全部飲み干しました。ちなみに、さっきまでは酒に混ぜて飲んでいたので分かりませんでしたが、微妙に苦い味がしました。

さらに万全を期すため、今僕の中で考えうる最高のシチュエーションを演出してムード作り。ウチの近所にある看護学校の校門まで走っていきました。これ以上最高のムードなんか存在しない。ムード作りもばっちり。

もう夜ということもあり、もちろん看護学校の門は強固に閉ざされており、校舎も真っ暗でした。人っ子一人いない。

しかし、昼間はココで、ナースの卵たちが清い汗を流して勉強してるかと思うと、ちょっとドジだけど頑なにナースを目指す上戸彩みたいな子(しかも黒ぶちメガネ)がいるかもしれないと思うとモジモジ、ソワソワ。ローヤルエクスタシーの効果か看護学校の効果か知りませんが、とにかくモジモジ、ソワソワしました。

で、なんていうんですかね、体の中から熱くこみ上げてくるものと言うか、なんというか、とにかく熱い情熱みたいなのが体の芯から湧き上がって来たのですよ。

ま、まさか。これがローヤルエクスタシーの効果!?もしかして僕はここで性獣に変わってしまうのか!?キタキタキタキターーーー!

おえエエエエエゥエええゥゥええ

ゲロ、吐きました。

ローヤルエクスタシーを一瓶飲んだのがマズかったのか、飲み慣れぬ酒を飲んだのがマズかったのか、走ってきたのが良くなかったのか、あるいは吐けば優しいナースが介護してくれると思ったのか知りませんけど、とにかく吐きました。

5000円も出して購入したローヤルエクスタシーは、僕を性獣に変えることもなく、新しいオナニースタイルを見出すこともなく、一人の関係が変わるわけでもなく、ただ看護学校脇の草むらの土に還ることになりました。うん、5000円返せ。

ということで、カップルがマンネリなセックスのスパイスとして飲む興奮剤でしたが、それを一人で飲んでも僕には効果があまりありませんでした。それどころか、5000円もするわ、蛍光灯のセロファンを剥ぐの面倒だわ、看護学校脇でゲロなんていうキッツイ思い出をプレゼントされるわ、と散々でした。うん、こりゃあカップルで飲むもんだわ。

×僕−(嘔吐)−ローヤルエクスタシー○


5/22 Numeriキャラバン2004 Round16-2

前回の続きです。2月3月に行われた全国60ヶ所連続オフ会、別名、詐欺師が全国行脚して本を売る旅の旅日記の続きです。静岡、茅ヶ崎開催とすり抜け、茅ヶ崎でキャラバン初の参加者ゼロを打ちたて、失意のまま車を走らせるところからです。どうぞ。

3月12日静岡神奈川編-2

とりあえず、嘆いてばかりいても始まらないので次の開催地である逗子市を目指す。自分を励ましながらハンドルを握るものの、逗子にはサザンがないため茅ヶ崎以上にマイナーな都市と考えられる。そのため、参加者ゼロどころかマイナスすら予想される。参加者マイナスってのもいまいち分からないけけど疑心暗鬼だった。

そんなこんなで、国道をひた走り、江ノ島やらなんやらを横目に眺めつつ逗子市を目指す。途中、「サザンの歌に登場するホテル!」とか看板を掲げたラブホテルを発見、微妙にセールスポイントが分かりづらいなあ、と思いつつ運転をした。

異様にゴチャゴチャした下町みたいな町並みを走りぬけ、なんだこのチンケな町は、などと思いつつ逗子市に到着。今度はどんな仕打ちが待っているかと震えながら集合場所に到着した。

16-3逗子市 逗子市役所前
参加人数:10人くらい
売上冊数:1冊

備考:
到着時、市役所前にそれらしい人影はなく、またもや参加者ゼロの予感が頭をかすめた。しかしながら、辺りを見回すと制服を着た挙動不審な女の子が。なんかすげー今風の娘さんで、おまけにアイドル並のかわいさだった。そんなカワイイ美少女がブレザーの!制服姿!ありえない、ありえない、こんなカワイイ娘さんがヌメリとかありえない。きっと彼女は何かの諸手続きで市役所に来たんだ、断じてヌメリなんかじゃないはず、そう言い聞かせて待つのですが、やっぱり彼女は僕のことをジロジロと見ているのですよね。やばいな、もしかしたら本当にヌメリなのかもしれない、けれどもすげえ警戒されてる、やっぱ違うのかな。うん、さっきからチラチラとぬめり本見せてるけど反応ないし違うな、そう考えながら微妙な距離感を保ちつつ待っていると

「patoさんですか?」

と、別の角度から今風の小僧、いやいや男性が話し掛けてくれました。で、その男性と「あのカワイイ制服の子、ヌメリかなあ」「いやー、そりゃないでしょ、彼女はヌメリを見る雰囲気じゃない」とか、ヌメリを見る雰囲気の女の子ってのがどういうのか分からないですけど、初めてのソープで童貞を捨てる前の男2人みたいにヒソヒソと話してました。そうこうしていると男性の方やら現役女子高生集団などが輪に加わり、一気に10人ほどの集団に。

その様子を見て、件の制服美少女も輪に加わりました。なんと、彼女もやっぱりヌメリだったのか。茅ヶ崎では参加者ゼロ、青い海を見ながら浜辺で仁王立ちしたものですが、ここ逗子では10人ほどの人、しかも現役女子高生軍団(キューティクル)おまけに制服美少女(後に女子中学生と判明)が来る始末。良い街だよな、逗子って。人情味があって好きだわ。おれ、永住したい。

で、美少女制服中学生に発奮した僕が、「いいよーいいよー、もっと笑って」などと鬼のように画像を撮りまくっているとタイムオーバー。本当はもっと生娘と語り合ったりとかしたかったのですが次の開催地横浜に行かねばならない時間となりました。

「patoさん、次の横浜まで乗せていってください」

勇気一杯、命知らずな男性が申し出てくれました。その勇気に敬意を表したいところですが、あいにくと僕は真っ直ぐと横浜に行くわけではなく横浜に行く前に東京に寄る手筈になっていました。大阪開催からぬめり本の在庫がなくなり、ここまで予約分のみを販売する旅を続けてきたのですが、そろそろそれも限界。旅の資金が無くなってきました。でまあ、増刷分を急遽印刷会社に刷ってもらい、発送されるのも待ちきれないので直接印刷会社に取りに行く手筈になっていたのです。で、その印刷会社が東京にあると。

「いいけど、東京に寄るんだよねぇ」

と、遠回りになることを告げると潔く諦めてくれる若者。そんなこんなで、またもや1人で今度は東京の印刷会社を目指します。で、さあいくぞ!と車を駐車場から出した時点で僕の携帯に電話が。

「すいません、patoさん。わたし、横浜までついていっていいですか?」

とまあ、先ほどの女子高生軍団の中にいたひなちゃんという娘っ子が電話してくるじゃないですか。彼女は昨年の夏の東京ビッグサイトオフから知り合いになった娘さんでして、たまにメールのやり取りやら強制的に制服画像を送らせたりしてたんですけど、そのひなちゃんが一緒に行きたいと電話してきたんですよね。

「いいけど、遠回りするよ?それに、友達と来たんじゃ?」

と僕がニヒルに、それでいてクールに切り出すと

「はい、大丈夫です!」

とか、何が大丈夫なのか全然わからない返答を戴き、さきほど解散して別れたばかりなのに逗子市役所前でひなちゃんを拾い一緒に東京を目指すことになったのでした。男性の申し出は断り、女子高生を乗せる僕。僕らしすぎるほどに僕らしい、こういうところが憎めないよね、僕って。

東京までの高速道路の車中、女子高生ひなちゃんは助手席にちょこんと座り、学校でのことやら友達のこと狂った姉の話など僕を退屈させてはいけないと思ったのか必死で話してくれました。明らかに萌える。うんうん、滑るようにハイウェイを走る車、その助手席に女子高生、僕が求めていたものはコレだ。このシチュエーションだ。そういった店だったらこのシチュエーションだけで14000円は取られるぜ、と思いながら運転してました。逗子最高。

横浜を通過し、羽田空港を横目に見ながら走っていると東京都に入りました。すっかり日も落ち、暗くなった東京の夜景は物凄く美しく、間違いなく大都会であることを物語っていました。キャラバン最終地東京、まだ今は本を取りに行くだけだけど1週間後にはここでゴールを迎える。待ってろよ、東京。絶対ゴールしてやるからな。とか考えながら走っていると首都高大渋滞。どう理解していいのか分からないほど大渋滞。もう、細長い駐車場なんじゃねえの?ってくらいに車が列をなして大渋滞していました。

ダメだ、僕、東京の首都高を舐めてた。東京の渋滞を舐めてた。こんなんじゃ絶対に印刷所まで辿り着けない。辿り着けたとしても横浜に舞い戻れない。ダメだ、今日本を取りに行くのは諦めよう、横浜開催のほうが先決だ。

ということで、増刷分の本を横浜で投入するのは諦め、また横浜方面へと舞い戻るのでした。舞い戻る途中、車内での会話もあらかた出尽くし、沈黙が続いた僕とひなちゃんでしたが、

「patoさん、しりとりしましょうよー」

とか、ひなちゃんが言うじゃないですか。おいおい、前から薄々思っていたけど、この子はちょっとアレなんじゃないか?と思いつつ、「じゃあ負けたほうが服を脱ぐんだぜ、それも全部だ」と言いたくなるのを必死で堪え、「いいよ、やろうか」と答えました。

「じゃあ、プロポーズしりとりですから、プロポーズの言葉で続けていくんですよ」

いや、ちょっと待って。何?プロポーズしりとりって?とか思うのですけど、ひなちゃんは間髪入れず

「私からいきますね。「毎朝俺の味噌汁を作ってくれ」、れですよ、れ」

とまあ、頭のサイドギャザーが壊れてるとしか思えないことを言い出しました。明らかに錯乱状態に陥っている僕は繋げることができず

「パス」

と答えると

「もー、パスは3回までですよ。じゃあ私が、「れ」ですよね。うーん、うーん、じゃあ「レイコ、愛してるよ」で、「よ」ですよ」

おいおい、名前を頭につけるとか、それじゃあ何でもありじゃないか。そもそもシリトリが文章だって時点で何かが大幅に間違ってる気が。

「パス」

「もー、二回目ですよ。じゃあ「ヨシエ、結婚してくれ」で、「れ」ですよ」

とまあ、明らかに彼女は頭の中に山本リンダを飼ってるとしか思えないことを言ってるんです。そんな末期的なシリトリを続けているうちに横浜に到着。やっとこさ横浜開催にこぎつけたのでした。

16-4横浜市 山下公園
参加人数:80人くらい
売上冊数:6冊

備考:
合流に微妙に失敗し、公園内をさ迷い歩きました。なんでも、もう参加者の皆さんは集合しているらしく、指定された場所に赴くとそこには逃げ出したくなるほど黒山の人だかりができてました。こんなに沢山の人が来ているのに売る本がなくて申し訳ない。でまあ、みんなこんなの貰ってどうするんだ、冷静になったら捨てるに違いないと思いながらサインに応じたり記念撮影をしたりしてました。なんか変な被り物とかさせられたな。その後の飲み会では大量の参加人数を一気に捌ける店がなく、何個かの座席を占拠する形で居酒屋に入りました。その後、車の運転があった僕(増刷分の本を取りに行かなければならない)はピッチャーでコーラを飲むという暴挙に出ました。なんか、カップルで来てるけど明らかに男のほうが二股かけてたりとか、痔になったことがあるとカミングアウトした女子高生やら、彼氏に二股かけられて凹んでる女性やら、ネゲットカップルやら、変態ネットアイドルやら色々いました。うん、なんだ、あの集まりは。男が5人以上集まれば風俗談義が始まる、という定説どおり、隅っこのほうでは熱烈に風俗トークが交わされていました。

ちなみに、皆さんと合流前にひなちゃんと山下公園の中をさ迷っていたのですが、そのひなちゃんが

「あ、お母さんに帰り遅くなるって電話しなきゃ!」

とか携帯電話を取り出して電話してました。うんうん、女子高生だもんな、電話しないと親が心配するわな、と微笑ましくその様子を見守っていると。

「あ、お母さん、うんうん。今日遅くなるから。え?そうそう、ヌメリの集まり。だから遅くなるから」

Numeriのことをよく存じているお母様にそう告げるひなちゃんを見て、本気でこの子の将来が心配になりました。

そんなこんなで、皆さんは二次会に行くなどとハッスルしていましたが、増刷分を取りに行かねばならない僕はここでお別れ。車を走らせ、明日の朝一番で本を取りに印刷所にいけるよう、板橋区近辺で就寝となりました。

3/12のまとめ
売上冊数:11冊
収入:11000円
支出:2万円(食事代、コーラ、高速代、駐車場代、ホテル代)
所持金:10万円 図書券1000円分

次回、市川、千葉、柏、つくば、水戸編に続く。一日5都市開催のキャラバン最大の強行軍。達成不能と思われた地獄のスケジュール、しかし、これをクリアするために最強のプロジェクトチームが結成された。そして、ついに所持金がゼロに。一体何が起こったのか、ご期待あれ。


5/21 最狂親父列伝-電報編-

いやはや、通販処理が遅れてしまって申し訳ありません。まさかこんな大変な作業とは思っていませんでしたので、てんてこ舞いになりながら作業に追われています。

連日連夜こんな状態ですから、もうなんというか、パートのオバチャンとか雇いたくなってしまいます。

そんなこんなで、発送が遅れておりますが、順次届いていくと思いますので、もうしばらくお待ちください。で、今日は発送作業が大変なのでライトな日記を書こうかと思います。ま、早い話が手抜き。それではどうぞ。

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ウチのキチガイ親父から電報が届きました。

彼は何かと電報を使うことが大好きで、電話で済むようなことも電報で送ってくることがあります。様々な情報が溢れるこのIT社会、その辺を歩いている青っぱな垂らしたようなクソガキですら携帯電話でカチャカチャとメールを送る時代なのに、それでも電報を送ってくるのです。

今時、電報なんて誰も使いません。せいぜい結婚式や葬式の時に使うくらいで、一般生活レベルではほとんど使わなくなっています。せいぜい、闇金融業者が嫌がらせでお悔やみ電報を債務者に送るくらいです。それなのにウチの親父は電報。誰が結婚したでも、誰が死んだでも、誰が債務者でもないのに電報を送ってくるのです。もう、嫌がらせとしか思えない。

ある時は、こんな電報が僕のアパートに届きました。

ゲンキカ 

チチ

いや、電報で問いかけられても困りますがな。

何かこだわりがあるのか、それともそれしか打てないのか知りませんけど、全部カタカナで打たれても困ります。最初これ見た時何かの暗号かと思ったからな。どっかの国際的犯罪シンジケートに狙われる父が盗聴やら監視の目をかいくぐり、死ぬ思いで僕にだけ分かる暗号を送ってきたのかと思ったからな。

まあ、不景気で仕事がなく、死ぬほど暇で仕方ない親父のイタズラなんですけど、イタズラならこっそりやればいいのに、ご丁寧に差出人のところに「チチ」なんて書いてくる彼の自己顕示欲が何とも腹立たしかったりするのです。

他にも、

レンラクセヨ

チチ

いや、電話してくればいいじゃない。

クロ ニゲタ

チチ

ウチで飼ってた猫(クロ)が家出したみたいです。それを電報で伝える心理が分かりません。

ゼイムショ キタ

チチ

また査察が入って泣いてるんですか。

とまあ、月一くらいのペースで内容のない電報が届くんですよね。青い紙に包まれた電報が。これはもう、親父のヤツが僕に構って欲しいのか、それとも壮大な嫌がらせなのか分かりませんけど、とにかく精神構造が腐ってるとしか思えない、ウチの親父は。

そんなこんなで、新天地に引っ越してきて初めての電報が親父から届いたわけなんですが、

チチキトク スグカエレ

チチ

になってました。なんで危篤なはずのチチから電報が来てるんだよ、もしかしてこれは自分は奇特だっていう自己アッピールか?と思い、ポストの前でガックリとうなだれるしかありませんでした。

誰か、ナチュラルに親子の縁を切る方法とか知りませんか。


5/20 ある日・・・

僕らが大切にしている日常なんて、いとも簡単に壊れてしまうのです。

今日は芳江ちゃんと喧嘩しちゃった、明日仲直りしなきゃ。
今日はお母さんに酷いこと言っちゃったな。
憧れの渋谷先輩と目があっちゃった、きゃー。
うわー、こんなに沢山の宿題なんかできるわけないよ。
がー、なんで!エロ本が!机の上に!置いてあるんだ!
やべ、山田に借りてたエロビデオ、テープが切れちゃたぜ。

なんてことはない日常のワンシーン、学校や職場、家庭でのこと、そこでの恋愛感情や愛情や友情関係、それらは全て容易く壊れるのです。

例えば、今大地震が来たらどうでしょう。未曾有の大震災はアナタの学校や職場を跡形もなくしてしまうかもしれません。生きていくのに精一杯で、そもそも学校や職場なんて関係なくなるかもしれません。友人とは散り散りになるでしょう。大好きな人の安否さえ分からないかもしれません。今と同じ日常は過ごせなくなる「ある日」は明日にでも、今にでもやってくるかもしれないのです。

大地震だけでなく、それが驚異的危険レベルの伝染病だったり、他国の侵略による戦争だったり、隕石の脅威だったり、宇宙人の襲来だったり、核戦争だったり、要因は様々です。日常を全ておじゃんにする脅威は様々、それだけに僕らは今という日常を大切に生きなければならないのかしれません。

何も、地震だとか戦争だとか核だとか、そんな大きなスケールの脅威だけでなく、僕らの日常の中にも脅威はあります。それは本当に些末な脅威かもしれませんが、それでも個人レベルで日常を破壊する、なかなか侮れないものなのです。決してグルーバルに日常を破壊するものではありませんが、個人レベルで破壊する、そんな深刻なものなのです。

僕が中学生の頃でした。僕の中学では体育祭の時にクラス全体でお揃いのハチマキを手作りで用意するという微妙に意味の分からない風土がありました。体育祭の一週間前くらいからクラスの女子が家庭科室にこまり、買って来た布を切って縫ってハチマキにする、そんなものでした。

体育祭終了後に好きな男子のハチマキを貰う、とか脳みそが腐ってるとしか思えないムーブメントが女子の間で起こったため、非常に重要な役割を担っていたものでしたが、当然ことながら僕のハチマキは貰い手などなく、いつも母ちゃんが洗濯物を吊り下げるのに使っていました。

貰い手がないものですから、僕はハチマキに毛ほどの興味がなかったのですが、ある年の体育祭、ハチマキ係なるものに任命されてしまい、興味を持たざるを得なくなったのでした。

まあ、ハチマキ係といっても与えられた仕事と言えば一緒に任命された女子と2人でハチマキに使う布を買いに行くというものでした。うん、与えられる仕事はそれだけ。しかも色とか模様だって事前に学級会で決めますから、係の者は決められたものを買ってくるパシリみたいな位置づけでした。しかし、このハチマキの布を巡って事件は起きたのです。

ぶっちゃけて言うと、一緒にハチマキ係に任命された女子は、僕が密かに心の中で好いている女の子でした。その女の子と2人っきりで布を買いに行くことが出来る、それが想像を絶するほどの喜びで、今すぐにでも街を練り歩きたい気分でした。

「電車に乗っていかなきゃいけないね。今度の日曜日行こうか?」

彼女が言います。僕の住んでる街は最強に田舎な場所でしたから、何か買うにも都市部へと電車で出て行かねばなりませんでした。電車に乗って都市部へと行き、一緒に布を買う、これはもうデートと言っても過言ではありません。恥ずかしがらずにハッキリ言うと、この事実だけでその日五回くらい抜きました。

そして当日、地元の駅で彼女と待ち合わせをした僕でしたが、微妙に寝坊。興奮しすぎて前の日寝つけなかったのも原因かもしれません。「なんで起こさなかったんだよ!クソババア!」と何も悪くない母親に悪態をつきつつ、遅刻してはならんと大車輪の勢いで身支度を整えました。そこに異変が。

「・・・ウンコしたい」

今すぐにでも家を出なければ間に合わない状況、そこに神の悪戯の如き便意。やばい、どうしよう、ウンコをしてたら間に合わないかもしれない。かといってウンコをせずに家を飛び出したら待ち合わせ場所に辿り着けないかもしれない。よしんば辿り着いたとしても、ズボンの裾から変なものをボロボロとこぼしながらかもしれない。やばいやばい。

迷いに迷った挙句、瞬殺でウンコを出すことを決意。ドアを蹴破る勢いでトイレへと駆け込み、ズボンを下ろすか、ブツを出すか、どちらが早いかといった勢いでウンコをしました。非常にウエットなブツがぶっ壊れた蛇口みたいに排出されました。たぶん、20秒もかからなかったと思う。

よっしゃ、なんとか瞬殺でウンコできたぜ、これで待ち合わせに間に合うな。そう思ってトイレ前方を見る僕、我が目を疑いました。

紙がない・・・・。

いつもは誇らしげにトイレットペーパーが咲き誇ってるであろう場所にトイレットペーパーのカケラすら見当たりませんでした。ただ茶色いトイレットペーパーの芯だけが哀愁を漂わせて佇んでいました。

やばい、このままでは間に合わない。ただでさえ1分1秒を争っている場面なのに、ここでドアを半分だけ開けて手だけ出して「母ちゃん紙ー」なんて要求している時間はない。耳が遠くてトロい母さんのことだ、紙を用意するのに時間がかかるに違いない。

えーい、もういい、どうなってもしらんわ!

迷いに迷った僕は尻を拭かずに出かけることを決意。何事もなかったかのようにパンツをはいてズボンをはき、家を飛び出したのでした。ウエットなクソで汚れまくったアナルをぶら下げて。コレが悲劇の始まりでした。

鬼の形相で自転車を走らせ、彼女の待つ地元の駅へ。なんとか遅刻することなく、秒単位のギリギリさで彼女と落ち合い、予定通りの電車に乗る意ことが出来ました。よかった、あそこで尻を拭いてたら間違いなく間に合わないところだった。

「大丈夫?すごい汗かいてるよ?」

もう秋口になろうかという涼やかな季節であるのに、車内ではハァハァ言って僕を気遣う彼女。優しい子や、素敵な子や、こんな素敵な娘さんとこれからデート。考えただけで胸が高鳴り、またもや汗がどっと噴出すのでした。

車内では取り留めのない会話をしつつ、なんとか僕の好印象ポイントをアッピール。それと同時に彼女が普段学校では見せない一面が見れちゃったりして嬉しいものでした。一時間ほど和気藹々と会話していたら目的の駅に到着。すっかり打ち解けた僕らは仲睦まじく布屋を目指して歩くのでした。

今でも覚えてます。商店街の一角にあったその布屋は、当時大ブレイク中だった不良ファッションの店(ボンタンや短ラン、特攻服、極悪な制服ボタンなどを販売)の隣にありました。ファンシーな布ショップと、不良ショップの店先に展示してあった平安時代の貴族がはくような極悪なボンタンのコントラストがなんとも素晴らしかった。

でまあ、ファンシーな布屋を目指して彼女と歩くんですけど、そこで異常事態発生。もはや日常とかデートとかどうでもよくなるような、そんなのっぴきならぬ事態が大発生。ハッキリ言って未曾有の展開だった。

いやな、尻の穴が痒くなった。

もう、普通に痒いとかのレベルではなく、下手したら狂うんじゃないか、なんか小さい小人みたいなのが槍もってケツの穴を暴れまわってるんじゃないかって痒さだった。

どうもね、出掛けにウェットなウンコをしたのに尻を拭かずに出てきたじゃないですか。その時にアナルに、いやアヌスについていた残骸がですね、時を経て硬化、掻き毟りたくなるほどの痒みをプロデュースしやがりやがったのですよ。気が狂うかと思った。

ケツが痒い。ケツが痒い。ケツが痒い。ケツが痒い。ケツが痒い。
アナルが痒い。アナルが痒い。アナルが痒い。アナルが痒い。

さっきまで楽しいデートをしていたのに、考える事はアナルのことばかり。もう気が気じゃない状態でした。

でまあ、さっきまでは好きな子とのショッピングを楽しみ、間違いなく僕の中での日常というフィールドを楽しんでいたのですが、尻が痒くなった瞬間から全てがどうでもよくなった。恐ろしいよな、あんなに大切な日常だったのに、尻を拭かなかっただけでどうでもよくなるなんて。

とにかく尻を掻き毟りたい、許されるのならばズボンを脱いで今ココで掻き毟りたい。釘抜きみたいな道具でガリガリとやったりたい。尻こ玉が抜ける勢いで掻きたい。ウザい、横で楽しそうに話しているこの小娘がウザい。いいよな、お前はアナルが痒くなくて。

この世界には二通りの人間しかいません。アナルが痒くない人間か痒くて死にそうな人間か、それだけなのです。当然後者な僕は

「でさー、この間先生が言うんだけどー」

という彼女の会話にも

「うるさい、ちょっとお前、尻の穴を掻いてくれんか」

って言いそうな勢いでした。それぐらいどうでもいい存在に成り果ててた。まあ、言ったら狂ったと思われるので必死に我慢したけど。

布屋に到着後も、展示してある布全てで尻を拭きたい。そんな衝動が抑えられませんでした。彼女?まだいたの?って感じ。

「オレンジ色なんだけど、サテンと普通のどっちにしよっか?」

なんて二種類の布を手のとって彼女が言うんですけど、普通のヤツの方が良く拭き取れそうだとしか思えず、心ここにあらずといった状態でした。

もう我慢の限界、このままココにいたのでは店の中で尻出して掻いてしまいそうだ。いかにかん、ここにいてはいかん。そう思った僕は隣の不良ショップのトイレに駆け込むのでした。(なんか布ショップのトイレはファンシーすぎて抵抗があった)

不良ショップ内のトイレは、明らかに悪を極めた人々のポスターがイッパイ貼ってあって、すげえガンとか飛ばされてるので尻を出すのを憚ったのですが、とにかくズボンとパンツを脱いでボリボリボリボリ、トイレットペーパーを指先にグルグル巻きにしてボリボリボリボリ。このウンコさえ無くなれば痒みは消える、そんな思いで、火が出そうな勢いで掻き毟りましたよ。

でもな、世の中ってのはそう上手くいかないわ。横着すれば手痛いしっぺ返しが来るようにちゃんとできてる。固まった残骸ってな、ティッシュで拭いたぐらいじゃ取れやしない、むしろ痒みが増す結果になっちゃったんだわ。うん、拭いた紙は微妙に茶色くなるんだけど、もう全然取れねえの。

失意のままトイレを出て、もう布を購入した彼女と合流するんですけど、もう歩けないほどの痒みマックス。歩きながらアナルに指を押し当て、ズボンの上からボリボリと掻いてましたもの。

でな、ここで1つすげえ発見をしたんだけど、皆もチャンスがあったら試してみて欲しいんだけど、ウエットなウンコするじゃん、で、拭かずにパンツとズボンをはく、しばらくすると地獄のような痒みが襲ってくるんだけど、そこでズボンの上から痒い部分を掻いてごらんなさい。で、その指を臭ってごらんなさい。驚くほど臭いから。

いやな、普通に考えてズボンとパンツの二枚重ねやん。大丈夫そうかなーって思うんだけど、ウンコの匂いって偉大なのな。パンツとズボンなんか容易くスルーして指に匂いがついちゃう。ありゃもう貫通弾だよ、貫通弾。匂うだけで死ねる、立ったまま仁王になりかねない悪臭が指に付くから。

そんなこんなで、本当は布を買った後口実をつけて彼女と遊ぼうと企んでたのですが、もう一刻も早く家に帰ってアナルを洗いたかったので、「さ、帰ろうか」とそそくさと電車に乗って帰りました。もちろん、彼女にばれないように指先でアナルを掻きながら。

帰りの車中、彼女が「買った布、大きさ大丈夫かな?ちょっと広げてみよ。pato君、はじっこ持ってて」とか、スロット屋にいるガキ以上にウザいこといいだしやがりまして、ウンコ臭が大量にこびりついた指で布を持っていたのですが、明らかに異臭が漂ってました。

最初は笑顔で布の大きさを測っていた彼女でしたが、次第にその異臭に気がつき、終いにゃ道端で犬のウンコ踏んだ時みたいな顔してました。その表情を見た瞬間思いましたね、ああ、この恋終わったな、と。まあ、もう恋とかどうでもよくて、ただただ家に帰ってアナルを洗いたかったんですけど。

このように、日常の中では最高級に大切であろう色恋沙汰も、そのクライマックスであるデートすらも、アナルの痒みごときで簡単に崩壊します。大きな災害や戦争、テロの脅威で僕らの日常は失われます、そして個人の日常はたかだかアナルの痒みで失われ、急速にどうでもいいものになります。「ある日」「ある時」はそこまで来ているのです。ですから僕らは何事もなく日常を送れることを感謝し、ウンコの後は常に尻を拭くことを心がけ・・・

と、まとめっぽいことを長々と書いてオチをつけ、日記を終わりにしようと思ったのですが、さっきオナラをしたら勢い余ってブツが少量出てしまったらしく、のっぴきならない緊急事態が起こりました。もはや僕の日常である日記執筆すらどうでもいいものになりましたので、ココで日記はお終い。急速にまとめ部分を省いて、最後のオチの一文だけ書いておきます。

とりあえず、その年の体育祭、誰にも貰われず余った僕のオレンジ色のハチマキはウンコの後にアナルを拭くのに使おうと思った。

(はーい、それじゃあ今から風呂行って尻を洗ってきます)


5/17 告白

「好きな人が、できました」

これは僕の大好きな映画である「耳をすませば」のキャッチコピーです。映画の宣伝に使われた名文句で、恋と夢と日常の狭間で葛藤する中三の女の子の心情を的確に表した名コピーだと思います。

何も捻るわけでもなく、何も難しいことを言うわけでもなく、ただストレートに事実を述べる。それも簡潔に分かりやすく。それが多くの人々の心にクサビのように突き刺さるのです。見習わなければなりません。

そんなこんなで、普段なら長々と色々と書いて結論を述べるのですが、今日は簡潔に、結論だけを述べさせて頂きます。決して手抜きとか眠いとか発送作業が死亡遊戯だとかではありません。簡潔にグサリと言いたいだけなのです。

 

 

「糖尿病に、なりました」

三度の飯より好きなコーラを断ちます。


5/16 サプライズおじいちゃん

人生とは、驚きと飽きの連続です。

何でもそうなのですが、人はある始めての事象に遭遇した場合、驚きに近い感情を見せます。ある種の感動だったり納得だったり失望だったりと様々ですが、初めてのものに触れた場合は「驚き」に類推される感情を抱くのです。

で、何度となくその事象に触れた場合、次は「飽き」がきます。これは慣れと言い換えることが出来ますが、最初に抱いた驚きが薄れ、無感動、無関心などを引き起こす様を指します。

どんな事柄でも最初に驚きがあり、その後飽きが来る。一見すると同じウェイトで驚きと飽きが繰り返されるように思われますが、じつはそうではありません。驚きは最初の1回、多くても数回ほどですが、飽きはその後もずっと続きます。比率で言うならば、飽きの方が圧倒的に高いのです。

最初だけ驚いてあとは飽きの連続、こんなんじゃ人生の大半が飽きのように感じますし、人生がつまらないだとか日常が退屈すぎて死にたいって思う若者が増えるのも分かるような気がします。ずっとずっと飽きが続く人生なんて味気ないものですからね。

僕は25歳という、下手したらオッサンとも呼ばれかねない年齢になるまで飛行機に乗ったことがありませんでした。25歳の秋、広島から札幌に行く時に乗った飛行機が人生で最初の飛行機。それはそれは驚きと感動の連続でした。

折りしも、9.11アメリカ同時多発テロの5日後ぐらいに初めて飛行機に乗ったのですが、「おいおい、この飛行機がハイジャックされたらどうするんだ」と、それはそれは恐怖に震えておりました。

で、離陸を待ってると、何か知らないけど僕の周りの座席を多国籍軍とも思える外国人集団が座っていくんですよね。もう、様々な国の言葉が入り乱れ、小さな異国を感じながら離陸を待ってたわけ。今でも思い出すと泣けるくらいの孤独感だった。

僕の前の席には韓国人の集団が、後ろには良く分からないアジア系の人が、横には白人の人が座ってました。で、何をトチ狂ったのか、韓国人が離陸前なのに弁当箱開けて弁当食ってるんですよね。大声でハングル叫んでグチャグチャ弁当食ってるの。

で、いざ離陸となると物凄い加速で、とんでもないGを感じちゃってさ、恥ずかしながら「わお!」とか外国人風に叫んでた。で、機首が上がっていよいよ離陸するその瞬間ですよ。機首が上がるもんだから機体には角度が付くんだけど、その傾斜に従って前の席から鮭の切り身がゴロンゴロンと転がってきてさ、前の韓国人が落とした鮭が転がってきてさ、死ぬほどビックリしちゃったんですよ。

でまあ、飛行中も外国人に紛れて落ち着かない僕。あいつは今にもハイジャックを始めるんじゃないか。それよりなにより、この飛行機はエンジンが壊れてるんじゃないか。うわ、島があんなに小さく見える、落ちたらゼッタイに助からないわ。とまあ、落ち着きのない子みたいにソワソワキョリョキョロしてたんですよ。

もうね、初めての飛行機ってのは驚きと感動と恐怖の連続で、札幌に着いたときには三日間ぶっ通しでオナニーした時みたいに疲れ果ててた。25歳にもなって少年みたいに感動し、飛行機ってこんなに凄いんだ!て目を輝かせてた。

それがね、今はどうですか。あれから2年と半、仕事にオフに大車輪の僕、飛行機に乗りに乗り倒した僕。酷い時は一月に8回くらい飛行機に乗っちゃってますから、すっかり慣れちゃったんですよね。

もう、加速しても微動だにしないし、離陸なんて怖くない。ちょっとやそっと揺れたってへっちゃらだし、アレほど感動しながら見てた外の景色も全く見ないですからね。初めて飛行機に乗った日の感動なんてとうに薄れ、もう無感動、無関心、完全に飽きの世界に入っちゃったのですよ。

やっぱ飽きちゃうと何でも苦痛なものでして、最初は飛行機に乗れるってだけで前日に興奮して眠れなくなったりし、今や苦痛も苦痛、単なる手持ち無沙汰な移動時間でしかないんですよね。ハッキリ言って苦痛でしかないんですよね。

つい先日、飛行機に乗った時なのですが、こんな事件がありました。

もうすっかり飛行機に飽きてしまっている僕は、また長い時間シートベルトに繋がれていないといけないぜ、なんて憂鬱になりながら座席に座りました。しかも最も退屈な通路側の席に。

飛行中、ボンヤリと雑誌を読みながら、人生にはサプライズが足りない、退屈な人生が死ぬまでの手持ち無沙汰な待ち時間とするならば、飛行機の搭乗時間もまた同じ。所詮は着陸を待つ退屈な時間でしかないんだ。などと考えておりました。

そして、そのフライトが終わる数分前、これからいよいよ着陸するぞって時になって隣の老人のことが気になりました。

僕のとなりに座していた爺さんは、そのまま即身仏になるんじゃないかって勢いでシートベルトに繋がれ、首が折れるんじゃ?と心配になるほどの角度で居眠りをしておりました。

こいつは面白い。そう思いました。あと数分もすればこの飛行機は着陸する。着陸の振動ってのは相当なもんだ。きっと爺さんは目覚めるに違いない。振動に驚いてコミカルに目覚めるに違いない。サプライズとまでは行かないけど、こいつはちょっと面白い見世物になりそうだ。読んでいた雑誌をしまいこみ、未だ壊れたマリオネットみたいに眠る爺さんに注目しました。

スーッと滑走路に進入していく飛行機。いよいよ着陸の時です。いまか!まだか!とハラハラしながら爺さんを注視しました。

ドスン!

ちょっとしたジェットコースターのような振動を伴って着陸する飛行機。その瞬間でした。

カポッ!

確かに爺さんは驚いて目が覚めたんだけど、確かに爺さんはコミカルに目覚めてくれたんだけど、それが予想以上にコミカルでな。ハッキリ言って震撼した。間違いなく全米が震撼した。

いやな、なんか着陸の振動でな、爺さんの入れ歯がカポッと外れたんだよ。

もう、カポッて10列先まで聞こえそうな良い音がしてな、口だけが別の生き物になったみたいに入れ歯が飛び出したんだよ。

その瞬間を真横で見ていた僕は、もう目玉が飛び出そうなくらい驚いてな。爺さんは入れ歯を飛び出させて、僕が目玉を飛び出させる、みたいな状態になってた。ホント、ビックリしすぎて心臓止まるかと思った。

慣れてしまい飽きてしまい、手持ち無沙汰でしかなかった飛行機の搭乗時間。このご老人はそんな退屈な時間に極上のサプライズを与えてくれました。

ありがとよ爺さん。俺、あんたのおかげで悟ったよ。退屈だ退屈だと思ってた飛行機の時間、けれども、アンタみたいなサプライズエンターテイナーが確かに存在した。きっと、退屈なこれからの人生だってもっとサプライズがあるはずさ。俺、もうちょっと頑張って人生ってヤツを生きてみるよ。アンタみたいなサムライに出会えるかもしれないからな。

照れくさそうに入れ歯を装着しなおす爺さんに向けて、「グッジョブだったぜ、爺さん」と、心の中でそっと親指を立てるのでした。

到着ゲートをくぐり抜け、空港を出て電車に乗ってから気が付いたのですが、入れ歯が飛んだ際に一緒に飛散したのか、ネットリとした粘土の高い液体が僕のズボンに付着してました。うん、たぶん爺さんの唾液。本日二度目のサプライズでした。


5/15 恋のチャンスは

「この間のNumeri全国キャラバンで知り合った人と付き合うことになっちゃいました、ウフフ。Numeriのおかげでいい出会いがありました。patoさんありがとうございます」

こういった新手の嫌がらせみたいなメールをこれまでに10通ほど戴いております。下手なウィルスメールより精神ダメージ大。ありがとうございます。

どうやら、先日の全国キャラバンで10組ほどのカップルが成立したらしく、僕がこうやって文章を書いている時でも、彼らは熱心に布団の中で変な棒出したり入れたり、たまに舐めたりしているみたいです。うん、みんな死ねばいいのに。

結局アレだろ、Numeriオフで出会ったカップルなんて

「今日のNumeriの日記さー」

「最近手抜き感が否めないよねー」

なんてデートの度にNumeriを話題にしてるんだけど、そのうち

「なんかさ、もうNumeriとかpatoとか言うのやめねえ?」

「どうして?なんか怒ってる?」

「最近の芳江さー、pato、patoばっかいってんじゃん」

「あー、もしかして妬いてる?かわいいー」

「ばっか、そんなんじゃねえよ!」(顔を赤くしながら)

「あー、照れてるー。かわいいー」

「照れてねえよ!もういいよ!」

「ばかね、私は高志のことが好き。patoなんてただの変態キモオタじゃない。高志のほうがずーっとずーっと素敵なんだから」

「芳江・・・ほんと?」

「あったりまえじゃない」

「芳江!」(ガバッ)

「ああ!」

「でるっ・・・!」

とまあ、こんな会話が展開されているに違いありません。うん、誰か散弾銃持って来い。

それにしてもアレですね、こういった色恋沙汰というか、そのキッカケというか、恋愛に関するエトセトラというか、そういったものに思いを馳せてみると中々面白いなあと思うのです。Numeriのようなウンコサイトのオフ会に来て恋に出会ったりするのですから分からないものです。思うに恋のチャンスとかキッカケってその辺にゴロゴロと転がってるのかもしれませんね。

路上の石の如く転がっている恋のチャンス。それを拾い上げて光り輝く宝石まで磨き上げる、それが恋なのかもしれませんね。拾うも拾わないも本人次第、磨くも磨かないも当人次第。そういうことなのかも知れません。

僕自身は恋多き男で、これまで27年間生きてきて数多くの惚れたり好いたりっていう恋があったわけで、それこそ人生は恋のチャンスに溢れてるって分かってるわけですよ。で、今日はそんな数多くの恋のチャンスの中から、僕の中で一番印象に残ってるのをひとつ。

僕は小学校の頃、後ろの席に座っていた麻美子ちゃんという子のことを好いてました。麻美子ちゃんはそこそこに可愛く、ちょっと内気な子でした。それ故にクラスのアイドル的女の子には適いませんでしたが、それでもコアな人気を誇る女の子でした。

でまあ、人間は実らない恋をしてる時が一番辛く、それでいてハツラツとしている時だって言いますけど、まさにその通り、小学生なりに苦しんでハツラツと恋をしたわけなんですよ。色々とすったもんだがあったりしてな。

でまあ、結局その恋は実ることなんて微塵もなくて、小学生ながらに失恋ブロークンハート。なんてことはない、ありふれた悲しいエピソードの1つになっていたわけなんです。

それから数年、20歳になった時でした。ひょんなことから麻美子ちゃんと再会することになった僕。当然ながら血湧き肉踊り、心踊りました。やっぱさ、幼い頃に好きだった子に再会するなんてさ、極上の恋のチャンスじゃん。

それでまあ、降って湧いた恋のチャンスに張り切ってな、麻美子ちゃんに会いに行ったわけよ。あわよくば一発決めてやる、小学生の頃は無理だったけど、今なら決めたる。それどころかもっとすごいプレイとかしてやるってな。拳握りながら会いに行ったわ。

そしたらな、麻美子ちゃん、ちょーブスになってた。

見るも無残、語るも惨いほどにブスになってた。なんていうか、あの日の面影のカケラもないほど、とにかくブサイクを極めてた。整形手術に失敗したのかと思ったもの。

僕かて人の容姿をとやかく言えるほどの容姿ではないのですけど、とにかく凄かった。で、もう、自分のこと良い人に見せたいっていう思想とか捨ててぶっちゃけて言ちゃうと、ブスになった麻美子ちゃん見て興味がなくなった。微塵も興味なくなった。

もう恋とか愛とか数年ぶりの再会とか恋のチャンスとか、なにそれ?って勢いで、物凄い勢いでテンション下がってた。しかも悪いことに何を間違ったのか麻美子ちゃん、どうも僕のようなカスに興味を持ったらしくて、電話番号教えてくるわ手を繫いで来るわ、家まで送って?って上目遣いでモーションかけてくるわ、酷い有様になってた。小学生時代はそっけなかったのにな、女って変われば変わるもんだよな。

「小学生の頃からさー、pato君のこと好きだったんだー」

とかブスが言うわけですよ。ブスが。あの当時僕が話しかけると露骨に嫌な顔とかしてやがった癖に、どの口がそんなこと言いますかってこと言いやがるわけ。

おまけに別れ際に、なんかしらんけどブスが目をつぶって「んー」って感じになっててな、もうどうしていいか分からなくて膝とかガクガク震えててしまってよ、よくよく見たら鼻から鼻毛が出てるんだよ。ブスが、陰毛並に剛毛な鼻毛をニョルンと出してやがるんだよ。もう、近くにあった石でぶん殴って逃げようかと思ったからな。もう許してくれって思ったからな。

結局な、恋のチャンスってのはいっぱいあるんだよ。それこそ鬼のように転がっているわけ。でも、それは転がってるだけではただの石なわけで、鼻毛が出てるブスを殴る石くらいにしかならない。それを拾い上げて磨き上げ、恋という名の宝石にするには様々なハードルがあるわけだ。

それがタイミングだったり、運だったり、お互いの好みだったり気持ちだったり、それはそれは沢山の要素が絡み合って恋になるわけ。

恋のチャンスは沢山あれど、本物になりうるのは数少ない。そういうこっちゃ。

結局、長々と書いてきて何が言いたかったのかというと、Numeriオフでカップルになった人は運良くモノになる恋のチャンスを手に入れられたわけだ。だからな、死ぬほど僕に感謝しろとはいわんから、せめてお互いのプレイを記録したハメ撮り動画を送って来いってこった。うん、それがいいたかっただけ。待ってるから。ずっと待ってるから。


5/14 優しさのバランス

母親と父親の役割ってのはそういうものだと思う。

僕が子供の頃、何か悪いことをすると親父は憤怒した。長男ということもあり、何かと厳しく育てられた僕、事あるごとに怒られていたような気がする。そんなに怒って疲れないのか、そんなに怒って何が楽しいのか、そう思わざるを得ないほど親父はいつも怒っていた。

僕の悪戯が原因だったり、テストの点が悪かったのが原因だったり、親父のポケットから500円を盗んだのが原因だったり、客人にタメ口を叩いたのが原因だったり。とにかく毎日怒られていたような気がする。

普段はアッパーパーな親父で、パンツ姿(ブリーフ)で踊り狂ったりしていたが、ひとたび怒りの導火線に火が付くとそりゃもう凄かった。気性が荒く、とにかく大暴れ。もともと力仕事を生業としているので腕力も物凄い。スコットノートンみたいな腕してるかもんだから、それはそれは凄いパワフルに殴られたものだった。

顔の形が変わるまで殴った後、親父は僕の首根っこを掴んでひょいと持ち上げると、まるで不法投棄でもするかのように家の外に投げ捨てた。で、まるで盗賊の襲撃に備える人の如く、家中の窓や戸の鍵を物凄い勢いで閉めていった。玄関や裏口の電灯を消し、どうあっても家の中には入れないぞ、外で反省しろ、という姿勢丸出しだった。

裸足で投げ出された僕は夜の闇に怯え、「ごめんなさい、ごめんなさい」と泣きながら玄関の戸を叩くくらいしかできなかった。

1時間もすれば、泣き疲れ、叫び疲れて座ってしまう。ちょうど玄関に置いてあった亀を飼う用の大きな水槽にもたれかかり、体育座りでヒックヒックと言っていると、ソロリと玄関の戸が開いたものだった。

そこには母の顔があり、心配そうな顔をして声を押し殺しながら

「はやく入りなさい、お父さんはもう寝たから。もうあんなことするんじゃないよ」

と言ったものだった。泣き声を押し殺しながら家の中に入った僕は、食べられなかった夕食を母に暖めてもらい、いつもいつも白米を押し込みながらまた泣き、そのうち泣き疲れて寝てしまうのだった。

これこそが母親の役割と父親の役割を端的に示した好例でないかと思う。父も母も根底にあるのは子を思う「優しさ」。どちらも優しさを表現しているものの、その役割が違うのだ。

厳しく接し、本人のことを考えて怒る。時には罰を与え、本当に悪いことをしたのだと子供に分からさる。これはもちろん優しさだ。人を怒るってのは難しいことだし、ましてや自分の子供を叱って殴るなんてのは通常の親なら苦しいことだ。それをあえてする。子供のために自分が憎まれ役になってもあえてする。それこそが父的優しさと言えるのではないだろうか。

また、母親のように全面的に優しさを打ち出すことも必要だ。母がフォローし、外で泣いている子供を家の中に入れる、これがなければ事態は洒落にならないことになる。子供をずっと外に出してりゃ凍死するかもしれないし、勝手にどっか行って車に轢かれるかもしれない。どこかで許してやって家の中に入れねばいけないのだが、怒り狂った父はそうするわけにもいかない。そこで母親のフォローの登場だ。怒った父も母のフォローは承知の上で家の外に放り出している。そんな暗黙の了解的な雰囲気があった。

この父親的優しさと母親的優しさ、双方が良好にバランスを形成し、1人の人間を育て上げる。父のことは怖いけど、親を憎めない。母は優しいけど、親を舐め腐ることもできない。二つの優しさがそんな心情に導いてくれる。きっと子育てにおいて大切な役割を果たす、それが二つの優しさなのだと思う。

そして、この二つの優しさシステムが最近では大きくバランスを失っているように感じる。母的優しさのみで育てられた子供がクソガキ化し、電車の中で地べたに座って大暴れする、モラルもクソもない時代なのだ。

また、何も子育てだけではなく、社会システムを円滑にすすめる上で優しさのバランスは重要なウェートを占めるのではないかと思う。

例えば、交通違反の取締り。僕は免停になるほど幾度となくパトカーに検挙されているが、あれだって二つの優しさのバランスだ。

パトカーには二人の警察官が乗っている。違反をするとパトカーに乗せられ、そこで怒られたり反則切符を切られたりするのだが、だいたいいつも2つのタイプの警察官が対になってパトカーに乗り、検挙にあたっていることに気が付く。

1人は血気盛ん、若干若手風の真面目警察官。違反を許せず、冷血に反則切符を切る。で、ちょろちょろと説教を述べ、違反がどれだけ危険なことかを少しばかり厳しく教えてくれる。言うなれば父的優しさを持った警察官だ。

で、大体もう一方の警察官は、やや年配、それでいて穏やかな表情をしている。なんとなく話が分かりそうな警察官。若手警察官に一通り怒られた後、フォローをするかのように優しく「気をつけなさいよ」と言ってくれる。時には若手を無視して違反を見逃してくれることもある。間違いなく母的優しさだ。

幾度となく交通違反で検挙されたけど、パトカーに乗ってる警察官は、まるで狙ってるかのように父的役割と母的役割をもった二人がバランスよく配置されている。きっと、怒られすぎて恨みを持つことがないように、それでいて舐め腐ることがないように配慮されているのではないだろうか。

飴と鞭、なんて言葉があるように、社会における多くの場面では父的優しさと母的優しさがバランスよく混和した状態が見受けられる。極度に厳しくされれば凹むし、極度に甘やかされれば舐め腐る、そういったことがないように自然と配慮されているのではないだろうか。

昨今の日本をざっと見渡すと、どうやらやけに父親が蔓延した社会のような気がする。痛みを伴う構造改革の名の元、厳しさだけを強いられ、アメリカ式の成果主義が僕らを苦しめる。誰かは誰かを騙そうと狙っているし、知らないことが悪だと言う風潮が蔓延する。ここで「優しさ」という単語は適切じゃないかもしれないけど、言うなれば父的優しさが社会を覆っている殺伐とした状態に感じる。

父的優しさも大切なのだけど、それだけじゃ辛すぎる。もっと母的優しさも必要なのじゃないだろうか。これは甘えなんかじゃない、バランスの問題なのだ。家の外に投げ出されたまま、いつまでもいつまでも家の中に入れてもらえないんじゃ辛すぎるのだから。

涙を流さず、闇に怯えて玄関先で泣いている僕たちに、声を押し殺して家にそっと招き入れてくれる母親が、もう少しいてくれてもいいのではないか。どんどんと父親化していく社会を見つめ、そう思えてしまって仕方がないのだ。

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上の文章は、サイトとは全然関係なく、私生活な部分で依頼されて書いた文章の草稿です。すげえ真面目な機関紙に載る用の文章らしく、僕としても自分なりに真面目に書いたつもりなのですが、なんというか、物の見事にボツにされました。なんたる厳しさ。

マンコとかチンコとか下品なこと書いてないのにボツにされ、まるで片翼を失ったエンジェルのように傷ついてしまった僕なのですが、一体何が悪かったのか、皆さんにも考えて欲しいな、などと思う次第なわけなのです。

ということで、皆さん、一体上の文章の何が悪かったのか、ダメ出ししてやってください。ただし、父的厳しさで「あれもダメ」「これもダメ」「全部ダメ」などと言われると、僕もナイーブでセンシティブな心の持ち主ですので、非常に凹みます。ですから、母的優しさでフォローしつつ、ダメ出ししてやってください。お願いします。何事も優しさのバランスが大切なのですから。

5/12 Numeriキャラバン2004 Round16-1

先に行われた全国キャラバンの旅日記の続きです。名古屋での手羽先祭り終了後、次の日の朝の静岡開催に向けて夜移動をし、力尽きて浜名湖で寝てしまったところからです。

3月12日静岡神奈川編-1

寝起きでボケまくった頭でも、半分しか開いていない両の眼でも分かる。朝もやの中の浜名湖は綺麗だ。できることならずっとこの景色を眺めていたいが、そうもいかない。おっと、もう朝の8時だ。静岡開催は朝の10時。こんなところで時間を浪費するわけには行かない。先ほどまでベッドだった場所が運転席に変わり、僕は颯爽と車を走らせた。

それにしても東名高速ってのは酷い。なんだ、あの暴走するトレーラーたちは。ならず者達の無法地帯じゃないか。危うく、幅寄せしてきた大型トレーラーに道路のシミに変わられるところだったわ。

そんなこんなで命からがらのドライビングで静岡に到着。集合場所周辺に駐車場が皆無だったり、到着した瞬間に雨がどか降りになったりしたけど気にしない。ぬめり本を手に真っ直ぐ集合場所を目指す。

16-1静岡市 駿府公園
参加人数:16人くらい
売上冊数:2冊

備考:
雨の中、実に多くの人が集まってくださいました。まさか静岡でこんなにも人が集まるとは思わなかった。子連れの人とかいたし、その子供が大ハッスルしてたし。なんか若々しい女の子集団とかいたし。最初は花壇の真ん中みたいな場所で談笑してましたが、雨が容赦ないレベルになったので近くの茶屋に移動、そこで僕だけラムネなぞを飲みつつ談笑しました。ここで貰った広末涼子ファーストアルバムを収録したカセットテープは、後の旅において絶大な威力を発揮するパワープレイカセットとなるのでした。そんなこんなで、次の日程の関係も有るので静岡は談笑のみで終了。後ろ髪惹かれる思いで後にするのでした。

「patoさん、静岡インターまでは渋滞しますから、静清バイパス使った方がいいっすよ!自分ら先導しますから!」

参加者のイケメンなお兄さんがそう言ってくださいました。なんたる親切、なんたる慈悲の心。やっぱな、一人で全国をロンリーに旅してるとこういった親切が有難いわ。ホント、有難すぎて泣けてくる。人間って心だぜ、心。

そんなこんなで、僕の前を走る車に先導されるがままに静清バイパスへ。さすが地元の民、これで渋滞回避、時間短縮だぜって思いながら静清バイパスに到着すると、どう理解して良いのか分からないくらい車が渋滞してました。地平線の先まで続いてるんじゃねえの?ってほど車が列を成してました。ありゃ見事としか言いようがなかった。

「いかん、これでは先導してくれたお兄さん達がションボリしてしまう。せっかく渋滞を避けるために先導してくれたのに、その先が歴史的大渋滞。バツが悪くて、patoさん怒ってるんじゃ?なんて気を使わせてしまう。いかんいかん、ここは満面のスマイルで彼らを安心させねば」

前にいる先導車からも見える勢いで満面のスマイルをする僕。大渋滞の中、意味不明にグッドスマイルでハンドルを握るアホ一名。しかも車内は見事に一人だけ、How many いい顔。全然manyじゃない。

そんなこんなで、渋滞を抜け、先導してくれたお兄さんがたに「ありがとー」と挨拶をしつつ高速に乗って神奈川へ。目指すは茅ヶ崎。よっしゃーいくぜー。いつの間にかすっかり雨も上がり、僕は東へと車を走らせるのでした。

神奈川に入り、高速を降りて一般道で茅ヶ崎を目指します。途中、湘南ナントカ道路みたいなのを使ったのですけど、湘南に入った瞬間に腹が減ったからウドン屋に入ったんですよね。そしたらアンタ、ウドン屋のBGMがサザンオールスターズじゃないですか。

もうね、湘南に入った瞬間にこれですわ。湘南に入った瞬簡にウドン屋にサザンですわ。いくら湘南だからってな、ウドン屋でサザンはヤリすぎ、乗りすぎ、合わなさすぎ。高気圧なヴィーナスとか言ってる場合じゃないぜ。もう、すっげえ暑苦しい思いしながらウドン喰ったわ。

そんなこんなで、予定より早めに茅ヶ崎市に到着したので海岸の駐車場に車を停めて日記を書いたりオナニーしたり、そいでもって時間になったのでぬめり本片手に海岸へと向かったのでした。そして、そこでは衝撃の展開が待っているのでした。

16-2茅ヶ崎市 茅ヶ崎海岸
参加人数:0人
売上冊数:0冊

備考:
参加人数:0人 

参加人数:0人 

参加人数:0人 

参加人数:0人 

参加人数:0人 

誰も、来なかった。

もうね、見紛う事なき0、ゼロ、ZERO。

B'zが出てきてシャウトしてもおかしくないくらいゼロだった。どうなってんだ茅ヶ崎。なんかな、普通に一般人なジョギングのオッサンとチョーヨンピルに平安時代メイクしたみたいなオバハンしかいなかった。

あのな、お前らに俺の気持ちが分かるか。道行くジョギングのオッサンに、「すいません、シャッター押してください」って頼んだ俺の気持ちが分かるか。そそくさと↑のようなポーズをとった俺の気持ちが分かるか。バックに移るついたてみたいなの見るだけで泣けてくるわ。

いやね、誰も来ないのはいいんですよ。旅の最初から参加人数0の開催地が出ることを期待してて、0人だったら↑みたいな画像を撮ろうって決めてましたから。それよりなにより僕が怒ってるのはですね

待ち合わせ場所広すぎ

なんですか、待ち合わせ場所「茅ヶ崎海岸」て。もう、数キロに及ぶ砂浜で待ち合わせってなんですか。実際に何人かの方は来てくださったと後で聞いたのですけど、あれでは出会えるわけがありません。

僕が↑のような画像を撮ってる時に怪しげな小僧がウロチョロしてて、ジロジロと見ていたのですけど、なんかヌメラーっぽいなーと思いつつ違ってたら嫌なので放置してました。基本的にシャイだから。

そんなこんなで、潮風に晒されながら浜辺に仁王立ちし、随分と待ったのですが誰も来ず。キャラバン開催初の参加者ゼロという勲章を引っさげ、失意のまま次の開催地、逗子市を目指すのでした。サザンの歌を口ずさみながら。

もう茅ヶ崎なんて嫌いだ。

静岡神奈川編-2につづく


5/10 アパートパート

おっす!オラNumeriのpato!みんなヨロシクな!好きなSMは鼻フック!aikoに鼻フックとかしたいぜ!ビルの五階から吊り下げたいぜ!

そんなこんなで、ゴールデンウィークの惨劇が抜け切らない昨今、ボケボケにボケた頭と体を引きずりながらやっとこさNumeri本の発送作業が始まりました。まるで内職の人みたいになりながら本を梱包してメッセージカードを同封して、物凄い量の郵便物を手に郵便局へ。プロ野球チップスを大人買いする人みたいな状態で郵便局へ。

振り込み確認や梱包作業や、気が狂いそうになるばかりの作業でミスの連発、おまけに睡眠不足の連発だったりするのですが、それでも、楽しみに待ってくださってくれる方がいることを思うと、老体に鞭打って頑張れるというものです。まあ、鞭は嫌いであくまでも鼻フックが好きなんですけど。

でまあ、色々な購入者の方々の送付先を眺めておりましてね、思うわけなんですよ。あ、まあ心配しなくてもこれらの個人情報は通販終了後にビックリする勢いで破棄いたしますが、今の段階で作業しながら眺めていて思うわけなんですよ。

いやね、皆さんの住所、なかなか面白い。

立地的な面白さも確かにあります。今僕が住んでいる新住所に極めて近く、こりゃ郵送するより直接持っていたほうが早いんじゃねえか、って人もいますし、前に住んでいた広島や僕の実家に極度に近い人もいます。

でもまあ、そういった個人的面白さは別として、やっぱ相対的に見ても面白い住所ってあると思うんですよね。

○○市○○町○○11-5○○アパート

とかいって、○○の部分が全部同じ地名。すっげえ覚えやすい住所だったりして面白いんですよね。他にも、全く持って読めそうにない地名が羅列された住所だったり、文字化けなのか本当の住所なのか紙一重の住所もあります。さすが、住所ってのは二つと同じものがありませんから、それぞれが個性があって面白いものなのです。

でもまあ、住所的個性もさることながら、やはり最も個性が出る部分はアパートやマンションなどの名称ではないでしょうか。地名などの住所は歴史的背景を重んじ、脈々と使われてきた名称が使用されるものです。しかしながら、アパートやマンションは好きなだけ名称つけ放題。もうなんでもありの無法地帯になっているのです。

一応、僕が今まで見てきた中で、ちょっと変わったアパート名なんかを思い出せる範囲で挙げてみますと、

青春アパート(すげえぼろい)

ゴージャスコーポ(妖怪屋敷みたいな佇まい。別の意味でゴージャス)

メゾン ド レジデンス ナンチャラカンチャラ(5回聞いても覚えられないくらい長い)

レッツゴーコーポ(どこにいくのか。もちろんボロい)

吉田浩一郎荘(たぶん、モロに大家の名前)

メゾン ド S. M. (鼻フックか)

とまあ、大家のヤロウは一体何を考えているんだ、と問いただしたくなる名称が山のようにあるのです。

僕は以前に住んでいたアパートが極めて普通の名称で、「変わった名称のアパートに住みたいなぁ」とか隣の芝生は青い理論で考えていました。

けれどもですね、実際に変な名称のアパートに住んでみるとですね、これがまたとんでもなく厄介というか気恥ずかしいというか、たかが居住アパートの名称なのに、これほど苦労させられるのか、と理不尽な想いに駆られるわけなんですよ。

適当に、それでいて豪放に部屋探しをした現在の僕のアパート、それはそれは見事にファンキーな、理解不能なアパート名が名付けられていまたのです。いやもう、ホント、聞いてビックリ、最初に聞いたときなんか自分のアパートながら我が耳を疑ったもの。

パラッディオン・サトウ・パートV(ニュアンスだけそのままに名称を変えてあります)

とかいう、ハイパボリックでアバンギャルドな、どう考えても大家が場末のスナックで酔いつぶれて勢いだけで決めちゃったようなアパート名がついてるんですよ。なんかの必殺技か。

もうね、最初の部分も意味不明だし、サトウがカタカナなのも意味が分からない。おまけに近所をくまなく探したけどパート1も2も出てきませんでしたから、何で3なのか、しかもご丁寧にVなのか意味不明なこと山の如しなんですよ。

でまあ、最初こそは、「やった!変なアパート名だ!それも極上の!」と喜んだりもしたのですが、実際に住んでみると問題点というか不便な点が結構あるんですよね。

まず、自分の住所を書くのが恥ずかしい。

カラオケボックスやレンタルビデオ店、街灯でのアンケートなど、至る所で住所を書く機会って多いと思いますけど、そういう時に恥ずかしい。それだけならまだしも、職場などでパブリックな書類に書く際に鬼のように恥ずかしい。自分で書きながらハッと我に返り、「なんだよ、パラッディオンて・・・」と死にたくなる時があります。

それだけならまだしも、電話なんかで口頭で伝える時など拷問に近く、なかなか伝わらないものですから何度も恥ずかしいアパート名を連呼する、ちょっとした罰ゲームかSMプレイの一環みたいな状態になってるんですよ。SMプレイなら鼻フックの方がいい。

つい先日もこんなことがありました。免停および引越し関係のことで免許センターの方から電話があったのですけど、

「免停に関する書類を新住所に送りたい、住所を教えてくれ」

とまあ、すげえ老齢の、声からして加齢臭が漂ってきそうなオッサンから電話がかかってきたんですよ。もうその瞬間に、「ああ、オッサンにウチの住所を伝えるのはムリだ」と思いましたね。あまりにアバンギャルドなアパート名ですから、年老いたオッサンには理解できない、例えるならオッサンにエヴァンゲリオンを見せるようなもんだ、そう思いました。

伝えるの面倒くさいなー、どうせ分かってくれねーしなー、と思いつつも、免許証の住所変更してない自分が悪いんだよなーと渋々伝えました。

案の定、僕は軽快な口調で自分の住所を伝えたのですが、どうしてもアパート名の部分がオッサンに伝わらない。

「パラッディオン・サトウ・パートVです」

「タラッディオん?」

「ちがいます、パラッディオン」

「タラッディオン?」

「いえ、パピプペポのパ、パラッディオンです」

「パラディン?」

「短すぎます」

最終的にはオッサンの許容範囲を越えてしまったらしく

「タラッ!タラッ!パラッ!パラッ!パラッ!パラッ!」

と、電話口の向こうで壊れたロボットみたいになってました。高血圧で倒れる直前みたいになってた。死んじゃうんじゃないかって心配になった。電話口で連呼していましたから、他の免許センターの事務員さんに筒抜けだったらしく、後ろからは冷笑とも失笑ともつかない笑い声が聞こえてきました。

「サイトウじゃないですサトウ」「で、ハイフンが入って、いえいえハイフンって書くんじゃなくて、点です、点」「で、パート3、3番目です」

とまあ、SMプレイみたいな羞恥プレイを経て、やっとこさ彼に僕の住所が伝わったのです。ホント、死ぬほど苦労した。

そんなこなんで、ずっと憧れていた変なアパート名ですが、いざ住んでみると異常に不便、謂れのない苦労を必要とする、ということであまり良いことはないというお話でした。

ちなみに、件のオッサンに必死になって伝えた僕の住所、実際に届いた書類の宛先を見てみますと

「タラッディオ、サトウ、パート3」

あれだけ苦労して伝えたのに・・・間違ってるじゃん。すごい徒労感に襲われました。もうなんというか、送ってきたオッサンに鼻フックとかしたい、そう思った。

住所を間違えると大変な騒ぎですので、ぬめり本通販の方は間違いないように届けたいと思いますので、今しばらくお待ちください。


5/6 大阪クライシス

ホント、大阪ってのは腐り果てた街だな!瘴気に満ち満ちとるわ!

とまあ、定番の如く大阪ネタの登場です。僕は以前から大阪に行くとロクなことがない、と公言しており、大阪を鬼門、魔都市と位置づけているわけなんです。

以前は、大阪に到着してものの数分、マクドナルドでオツリを貰えないという大惨事が発生したり、ミスタードーナツで辱めを受けたり、蟻地獄みたいな風俗店に引き込まれそうになったり、名も知らぬローカル駅で寒さに震えたり、新幹線に乗り遅れたり、全ての酷い体験が大阪で束になって襲ってきたものでした。そうそう、全国キャラバン初の警備員登場も大阪の地でした。

とにかく、僕が大阪に行くと定番の如く何かのイベントフラグが立ち、不幸のどん底に叩き込まれる。そんな事情から幾度となくこの日記で大阪という街を叩いてきたのですが。

「今日の日記はあんまりです。私は生まれも育ちも大阪で、大阪という街を愛しています。それだけに今日のpatoさんの大阪叩きネタは許せません。もうnumeriは見ません、さようなら。失望しました」

なんて、真に受けちゃった人から微妙に反応に困るメールを貰ったりして、ブロークンハートしちゃっうわけなんです。まあ、それでも大阪ネタはやめないんですけど。

でもですね、こう言っちゃなんですけどね、僕はそれこそ「大阪なんてなくなればいい」とか「大阪は独立国家になればいい」なんてユーモラスに叩いたりしますけどね、本心では大阪のことが好きなんですよ。好きで好きでたまらない、大阪府知事になりたいって思ってるくらいなんですよ。

やっぱね、大阪の街って人情味に溢れてるじゃないですか。他人に介入せざるを得ない大阪オバチャンとか、立ち呑み屋でくだ巻いてる阪神大好きおっちゃんとか、そういった開放的な大阪独特の文化って大切だと思うんですよ。そう、間違いなく言える。僕は大阪が好き、愛してる。

そんなこんなで、このゴールデンウィークだかゴールデンウィンクだか知りませんが、大型連休を利用して大好きな第二の故郷大阪に行ってきましたので、その報告をしたいと思います。

5/1から5/5まで大阪に滞在したのですが、前半戦は何事もなく楽しく過ぎました。最初に新幹線で新大阪駅に降り立った瞬間、やはり瘴気というか腐敗したガスと言うか、大阪独特の嫌なものを感じたのですが、それでも5/3までは何事もなく、毎日面白おかしく過ごさせて頂きました。

問題は5/4でした。この日は阪急電車に乗って梅田から神戸まで移動してたのですが、つい先日購入した真新しいFOMAでピコピコとゲームしたりメールしてたりしたんですわ。で、乗り換えの駅に到着したから降りて電車を待った。

さすが関西ってのは大都会だよな、待たなくても電車がやってくる。それでまあ乗った。しかも座れた。よーし、メールとかゲームの続きしちゃうぞーって携帯を取り出そうとしたらさ、

ないのよ。

もう、姿も形も、煙のように消え失せてやがんの。買って一週間もしない新品携帯電話が、職場でも我が家でも風向きが良くないと電波が入らない携帯電話だけど、新品の電話がないの。もう、さっき降りた時に電車に忘れてきたとしか思えない。

電車を降りてですね、タウンページをめくって阪急電車に電話しましたよ。そしたら、「失くした駅に電話して、番号教えるから」「三宮の駅に電話して」「明日になったら梅田の忘れ物センターに電話して」などと体よくたらい回し。もう途方に暮れて泣きそうになったわ。

でまあ、携帯も見つからず、失意のまま大阪は梅田に舞い戻りましてね、酒を飲んだり焼肉を食ったりしてたんですわ。で、腹も満腹、ほろ酔い気分でフラフラーと阪急梅田駅を歩いていたんです。だいたい0時前後だったかな。

そしたらアンタ、ムチャクチャウンコしたくなるじゃないですか。

サドゥンリーウンコというかなんというか、もう出る寸前、下手したら頭頂部がちょっと出ていてもおかしくない、って感じのP4レベルの便意が襲ってきたのですわ。

やばい、やばい、どこかにトイレはないものか。こんな梅田のど真ん中でウンコなんか漏らしたら世捨て人になるしかない。

必死で案内表示を探すんです。そしたら、階段を上がったところにトイレがある旨の案内表示が。

なんかですね、知ってる人は知ってると思いますけど、阪急梅田駅の構造って変わってるんですよね。微妙に複雑な構造で分かりにくいのですけど、階段を上がっていくと、トイレとコインロッカーくらいしかないうら寂しいフロアに出るんですよ。

0時を回っていると言うことで人通りも全くない、おまけにSF映画に出てくるような寂しいフロア。ちょっと躊躇しますが、やはり背に腹は変えられません。いや、ウンコで腹が痛いのですから腹に腹は変えられません。もう、砂漠でオアシスを見つけたような嬉しさでトイレに駆け込みましたよ。

うん、そしたらさ。もうホントお約束なんだけど、大便ブースは見事に満員御礼、ソールドアウト。まあ、元々が目立たぬ場所にあるショボイトイレですから、大便ブースが二個しかなかったのですよね。もうホント、ケツの穴は見事に臨界点を迎えてるんですけど、満員とあらば待つしかありません。大便ブースの前に仁王立ち、直立不動で尻に刺激を与えないように待ちましたよ。

でもな、どっちの大便ブースも一向に開かないのな。中からゴソゴソと音はするんだけど、一向に開かないの。

ああ、もうダメだ。出るかもしれない。無我の境地に達し、少しばかり気が遠くなり、ウンコと共に何か大切なものを大地に落とそうとしていたその瞬間でした。

ガチャ!

右側の大便ブースの扉が開いたのな。それはそれは見事に豪快に、ドアが外れるんじゃないかって勢いでバシーンと開いたの。水を流す音が聞こえなかった気がしたんですけど、そんな気にせず駆け寄りましたよ。

おお、天の助け。神はまだ我を見捨てていなかった。

開いたドアからはケミストリーの右側をさらに右側にしたような、下手したら右側過ぎて左側になるんじゃねえの?って感じの20代の若者がですね、それはそれは猪突猛進、敵の陣地を突破せん勢いで出てきたのですよ。

オラ、やっとこさウンコできるだ。そう思ってトイレに近づくと、半開きのドアから傘が立てかけてあるのが見えました。うん、大便ブース内にシックな傘が立てかけたあった。

あらら、さっきのケミストリー兄ちゃんが忘れたのか?すぐに追いかけて届けてあげた方がいいかな?そう思いましたけど。今は僕の人間の尊厳を賭けた一刻を争う時。申し訳ないですが、人様の傘になど構ってられません。もうウンコまっしぐらで半開きのドアを押しましたよ。

うん、開かねえの。

さっきケミストリーが物凄い勢いで出てきたドアが、それがいくら押しても半開きから開かないの。何かにドアの向こうでつっかえてるみたいで、全然開かないの。

おかしいな。そう思ってよくよくドアを見てみるとですね、ドアのブース内側に背広がかかってるんですよね。なんかドアの内側にフックみたいなのがついてるじゃないですか、そこに背広がかかってるの。

不審に思って半開きのドアに顔を突っ込んで大便ブース内を見てみたところ、そこには途方もない、全米が震撼するほどの光景が広がっておりました。

うん、気の弱そうなサラリーマン風のオッサンがな、ちょっと涙目になって床に膝をついてた。なんか下はブリーフ姿だった。

さっきまでケミストリー右側が入っていた大便ブース→そこにサラリーマン風のオッサンが入ってる→二人は一緒に入ってた→ゴソゴソ音がしていた→水を流す音が聞こえなかった→サラリーマンは下はパンツ姿で涙目→2人はホモ

一瞬何のことか分からずパニックになったのですけど、どう考えてもコレしか考え付かない。ホモであるケミ右とサラリーマンが大便ブースでプレイ、終ったらケミ右は猛烈な勢いで飛びだす。性欲を処理した後の男なんてそんなもんだ。で、サラリーマンは涙目、床に膝まずく(女役?)

この答えが導き出された瞬間、戦慄したね。数々の状況から計算して上のような答えを出したのだけど、チーンと答えが導き出された瞬間にブリッといきそうになったもの。我慢してたブツをブリッといきそうになったもの。

余りの状況にパニックになった僕、しかも僕まで掘られたらかなわんとでも思ったのでしょうか、涙目のサラリーマンに

「ご、ごめんなさい」

と、何がごめんなさいなのか分からないけど謝ると、脱兎の如く逃げ出しました。もう、ウンコとか下手したらちょっと出てたかもしれないけど、そんなの気にせず一心不乱に逃げ出しました。

ウンコを漏らしそうになるわ、ホモセクシャルな人が愛の短歌を詠みあげている現場に出くわすわ、ホント、夜の梅田ってのはありえないよな。大阪ってのはホントありえない。

次の日、阪急に電話すると失くした携帯は三宮駅にあるとのこと。朝一から電車に乗って携帯を取りに行きました。買いたての僕の携帯は電池が極度に消耗されていて充電切れそうになってたけど無傷で生還。

やれやれと伊丹空港(大阪空港)に向かって岐路に着きます。事前に予約しておいた飛行機チケットを購入し、搭乗手続きをしようとすると

「このチケットは取り扱いできません、お近くの係員にお問い合わせください」

という無情なる機械の表示。おいおい、どうなってんだよ、大阪よーいい加減にしてくれよなー、搭乗手続きできないじゃねえかー、と近くにいた係員にさんに猛烈に抗議しましたところ、

「これは関西国際空港発のチケットですね」

と冷静に、裁判官の如き淡々とした口調で言われました。うん、予約する便を間違えたみたい。間違えて関空発を予約しちゃったみたい。もうなんというか、顔から火が出るほど恥ずかしかった。

おまけに、その日はGW最終日と言うこともあって、伊丹発の便は最終まで全部満席。おまけにキャンセル待ちも相当数いるということ。ここから関空に急いでいっても予約した便にゼッタイに間に合いませんし、絶体絶命。

そしたら、起死回生の一手として、まだ空席のある隣の県に向かう飛行機に乗ればいいと提案されました。で、そこから電車に乗って帰れば大丈夫と。

当日に飛行機チケットを取ると運賃が高くなるのですが、web割りという手法を使えば若干料金が安くなります。iモードで予約するだけで安くなるというのですから、使わない手はありません。

係員さんもそう提案してくれましたので、さっそく先ほど帰ってきた携帯電話を取り出してiモードで隣の県まで飛ぶ便を予約しようとアクセスすると、

「電池がありません、充電してください」

という無情なる表示。もうなんというか、テロリストでもハイジャックでも何でも来いって気分になった。死にたい。あまりのショックに手負いのマイケルジャクソンみたいに踊るくらいしかできなかったわ。踊らなかったけど。

GWの大阪滞在、携帯なくすわホモ見るわウンコ漏らしそうになるわ空港間違えるわ、一番必要な場面で携帯の電池切れるわ、ありえない状態でございました。ありなえい、大阪。ノーモア大阪。

冷静に考えてみて、元を正せば全部僕が原因で自業自得な感が否めないのですけど、それでも声を大にして言いたい。大阪なんて国土からなくなってしまえば良いと。やっぱあそこは鬼門だ。


5/5 変わらないもの変わるもの

はい、ゴールデンウィーク中はモリッと更新が止まっておりました。おまけに通販業務の方も止まっておりまして、何だか知らないけどてんてこ舞いです。ボチボチと確認メールやら振り込み確認、そいで発送などをやっていきますので、「本代詐欺にあった」などと所轄の警察署に駆け込むのだけはやめてやってください。そんなこんなで日記本編をどうぞ。

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変わらないもの。変化の多い、やけに時間軸が凝縮された現代において、多くのものは目まぐるしく変化する。街並みなんてちょっと見ない間に変わってるし、回りの皆もどんどん変化していく。人間関係も恋愛関係も、そして自分自身も、形の有る無しに関わらず常に変化していく。

日本国憲法すら改正しようとする動きが見られる昨今、あらゆるものは変化に晒される。高度情報化社会において変化は美徳であるし、喜ばしいことと考える傾向がある。そんな時代だからこそ、逆に「変わらないもの」が価値あるものと考えられるんじゃないだろうか。

古くから伝わる「伝統」は重んじられるし、普遍的な価値を生む財産を何より好む。昭和時代への回帰やアンティーク思考、数々の「古き良き物」的考え方。そして、恋人達は「永遠」という言葉に酔いしれ、変わらない何かを必死で求め続ける。

様式美という言葉が適切かどうか知らないけど、古くから脈々と伝わる「お約束」のようなものが大好きだ。子供の日に鯉のぼりを上げるなんて明らかにお約束だし、ゴールデンウィークに全国各地が混雑するのもお約束。そういった、ずっと変わることない「お約束」が好きでたまらない。

何度も話したと思いますが、僕が高校生だった頃、学校に内緒で駅前のパチンコ屋でアルバイトをしていました。まあ、もともとフランクな校風の学校でしたから、表向きはアルバイト禁止!なんて言ってましたが、普通にみんなアルバイトしていました。

うら若き高校生の僕にとって、パチンコ屋でのアルバイトってのは至極魅力的でした。往々にしてパチンコ屋ってのは時給が高いものですから、それはそれは稼げる。それになんだか、大人の世界に足を踏み入れたかのような錯覚を覚えたものでした。

まあ、本来、パチンコ屋ってヤツは18歳未満および高校生は立ち入り禁止なはずなのですが、豪放にも明らかに高校生な僕を雇う時点で何かが決定的におかしい店で、とてもマトモじゃないエピソードが山ほどあったものです。

店長は見事なまでにスキンヘッドで暴力的、明らかにカタギ率0%のスパイシースメル漂う人でしたし、住み込みの店員は給料貰って夜逃げするわ、女性店員はヤンキー上がり100%で夜叉姫みたいになってました。客も客で暴力的で、台のガラス割って逃げるわ店で暴れるわ。店も店で「暴れる客は店外に連れ出して殴ってよし」なんて訳の分からない制度を作っていました。

まあ、基本的にボッタクリ店で、客は来ないわ玉は出ない。駅前という立地条件のよさにアグラをかいたような店でした。

そんな店において、「変わらないもの」といえばやはり常連客でした。どこのパチンコ屋でもそうなのですが、昼間っから毎日パチンコ打ってる、どうやって生活してるんだろう?と疑問に思わずにはいられない輩が最低でも10人はいるものです。

勿論、僕がアルバイトしていたパチンコ屋にも常連客はおり、しかも普通ではない香ばしい店でしたので、常連客も濃厚で、そのままビックリ人間ショーの世界最大のオッパイ女性の前座くらいで出れそうな人々でした。

いつも鼻に絆創膏をしており、ガキ大将的茶目っ気たっぷりの40代男性や、その彼女と思われる30代後半の頭に蚤でも飼ってそうな不潔女性。5人の子供を連れてくる肝っ玉母さんなど様々でした。しかし、そんな香ばしき常連の中でも圧巻だったのが、一人の老婆でした。彼女は店長とも仲が良く、店長や常連仲間の間で「ヨシさん」と呼ばれていたのですが、とにかく凄かった。

ヨシさんにとって、パチンコ屋とはギャンブル場でもなく遊戯場でもなく、社交場でした。一人暮らしの寂しき老婆にとって、パチンコ屋とは唯一人と触れ合える楽しき場所だったようです。店に来れば常連仲間に会い、「今日も出ないねー」と軽口を叩き合うことができる。僕のように若い店員を捕まえては「出ないわよ、どうなってんの」と悪態をつくこともできる。そう、彼女は遊戯が目的ではなく、間違いなく人と触れ合うことが目的だった。

だから、ヨシさんはパチンコ屋でほとんど金を使わなかった。いつもいつもお決まりの「たぬ吉くん」の角台にタバコを置いて台をキープし、別のシマで打っている常連仲間とお喋りに興じていた。そう、たぬ吉くんの台にヨシさんがタバコを置いてキープしている姿こそ、いつも変わることない風景だったのだ。

店としては、いつまでもいつまでもタバコを置いて台をキープされても困るというのが本音だった。キープされてると他の客が打てないから台の稼動が下がる。結果、売り上げが減少して儲けが少なくなる。正に百害あって一利なしという言葉が適切な行為だった。

「125番台のたぬ吉くんにタバコを置かれているお客様、少々時間が過ぎております。至急台の方にお戻りください。戻られない場合、整理開放いたします」

店によってまちまちだろうが、大体ウチの店では台をキープしたまま客がいなくなって30分経ってからそう放送することになっていた。放送から5分待って客が戻らなかった場合、キープしている私物を回収し、他の客が打てるように開放することになっていた。

ヨシさんの場合、この放送をすると5秒くらいですっ飛んで台に戻ってきて、キープしていたタバコの箱から一本取り出し、「まだ30分経ってないじゃろが」と、モアーっと煙を吐き出しながら言っていた。で、またしばらくするとタバコを置いたまま別の常連の場所へと消えていく。その繰り返しだった。

たぬ吉くんのシマにヨシさんのタバコを発見する。30分待つ。放送する。ヨシさんが帰ってきて悪態をつく、そしてまたタバコを発見する。このルーチンワークで、いつもいつも変わることない繰り返しだった。お約束的イベントだったし、放送があるたびに店舗全体で「またヨシさんか」と和む瞬間でもあった。お約束ってのは時には大切なものだと思うし、やっぱり何か美しいものだと思う。

そんなある日、このお約束が崩壊する日がやってくる。

いつもの如く、玉を運びながらたぬ吉くんのシマを歩いていると、やはりいつものごとく角台にタバコが置いてあるのを発見した。

「またヨシさんか、しょうがねえーなー」

30分待ち、さあ店内放送をしようかと件の台の場所に赴き、マイクを取り出して放送しようとしたその瞬間だった。

ちょっとまて・・・これ・・・タバコじゃない・・・

いつもいつもタバコでキープしていたヨシさんだったから、今ココに置いてあるものもタバコだと無意識のうちに思っていたのだけれども、よくよく見るとタバコじゃない。

箱の大きさはタバコと同じくらい、けれども当時存在したどの銘柄にも当てはまらないパッケージ。注意して箱の表面を見てみると、青い背景にいくつかの光が瞬いている絵が描いてあり、右上部分にドドーンと「蛍」と描いてある。

なんだこれ?タバコじゃないよな?

不審に思い、台の下皿に置いてあった箱を手に取り、裏面を見てみる。

そこには艶かしい肉棒的イラストと、なんかそれを被覆する皮のような絵が描いてあった。で、しっかりと「コンドーム<避妊具>」と描かれていた。おまけに「コンドームは100%の避妊を保証するものではありません」と親切に注意書きが。

これ、コンドームじゃねえか。

おいおい、コンドームで台をキープするんじゃねえよー、と思うよりも先に、「なぜ、あんな老婆がコンドームを?なぜ?必要なの?おセックスするのあんた?1万歩譲ってしたとしても、既に避妊は必要ない高みに登ってしまってるのでは?」という下世話な思考が先走ってしまい、恥ずかしながら赤面してしまった。当時はアワビを見るだけで暴走し、5回はぶっこけた多感な高校生、老婆のコンドームと言えども興奮した僕は赤面してしまった。

どうしようどうしよう、これ、なんて放送したらいいんだろう。

普通に「タバコを置いておられるお客様」なんて放送して、そのままヨシさんが戻ってこなくて、この台を整理開放した後に「これはタバコじゃない、分からんかったわ」ってヨシさんに詰め寄られたら反論できない。かといってそのまま放送するのも・・・・。

苦悩という表現が適切なほど迷いに迷った僕は、

「125番台のたぬ吉くんに・・・・・こ・・・コンドームを置かれているお客様、少々時間が過ぎております。至急台の方にお戻りください。戻られない場合、整理開放いたします」

と、やはり正確さを優先して放送した。乳房、クリトリス、そんな言葉に反応してエレクトする多感な高校生の僕にとって「コンドーム」なんて言葉をマイクに乗せて発するのは国辱的なものがあり、言い知れぬ敗北感を覚えたものだった。心なしか、「コンドーム」の部分だけ声のトーンが高くなっていたのがまた口惜しい。

その放送を聞いてヨシさんは毒リンゴでも持ってそうな魔女的微笑をしながら戻ってきて

「若いねぇ」

と言いながら嬉しそうに125番台たぬ吉くんに座ったのだった。

言い知れぬ敗北感に襲われた僕は、その日、いくらヨシさんの台がキープしたまま放置されていようとも、二度と放送はせず、常に黙殺することにしたのだった。あの頃は若かった。

それからというもの、ヨシさんの暴走は止まらず、コンドームで台をキープするわ、買い物帰りなのかパックに入ったサンマで丸ごとキープするわ、長ネギでキープするわ、醤油でキープするわ、どういう方向への暴走か知らないけどやりたい放題だった。

「125番台のたぬ吉くんに醤油の瓶を置かれているお客様・・・・」

そう放送するのが新たなお約束となり、またもや店舗全体を和ませることになったのだった。古き良き様式美の世界、変わらないものの心安さ。

それからしばらくして、僕はアルバイトを止め、程なくしてその店自体も経営難からぶっ潰れてゲームセンターになった。あの日、あの店に通っていた常連客も、スキンヘッド店長もどうなったのか知らない。

ただ、ヨシさんだけは、それから8年後、広島に移り住んだ僕が帰省で故郷に帰った際に、フラリと入ったパチンコ屋で目撃することになった。

店内で懐かしいヨシさんの姿を目撃し、まさかと思って羽モノコーナーに走ってみると、やはりそこにはヨシさんの物と思われるブツが誇らしげに置いてあった。その時は意味不明な観音様みたいな置物で台をキープして、他の常連とお喋りに興じていた。

当時と違い、近代化されたパチンコ屋は数分で店内放送に踏み切る。どんな放送がされるのかワクワクしながら成り行きを見守っていると、

「225番台にを置かれているお客様・・・」

至極普通に放送をする店員。そして、「観音様と放送して欲しかった」という不満げな顔で台に戻ってくるヨシさん。店員の生真面目な放送とやたら小奇麗な店内の内装、そしてやたら無反応なオーディエンスたちを除いては、全てがあの日のままの光景だった。そこにはやはり変わることのないお約束の美しさがあった。

どうせ覚えちゃいねえだろ

見事に3万円負けた僕はヨシさんと言葉を交わすことなく店を後にし、変わらない普遍的なお約束の素晴らしさを噛み締めて駐車場を歩くのだった。3年前のゴールデンウィーク、青い空に鯉のぼりがはためく時のことだった。

こんな時代にあって変わらない事は美しいし素晴らしい、けれども、あれから8年も経っており、僕は高校生から立派な大人になっていると言うのに、ヨシさんは老婆で老婆のまま、見てくれも何も変わっていないのは、それはそれで怖いと思ったのでした。


 

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