2008年07月03日

◆ サマータイムと人命

 「サマータイムを普及させよ」という声がある。しかし、これによってエネルギーを節約できるとしても、同時に、かなりの人命が失われる恐れがある。

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 「サマータイムを普及させよ」という声はかなり多い。「それで照明の電気を節約できるから」という理由だ。
 一方、「照明の電気代を節約できても、冷房の電気代が上回るので、差し引きして、かえって電気の使用量が増えてしまう」という調査もある。
 「サマータイムは、省エネになるどころか、エネルギー浪費になる。インディアナ州の例では、照明の電力削減効果はあったが、冷房の電力使用増加が、その何倍もあった」
 ということだ。(朝日・投稿・コラム 2008-06-26 )

 これは睡眠学界の副会長か何かの投稿だったが、別途、同じく睡眠学界の副会長から、読売にも投稿があった。
 「サマータイムで生活リズムが1時間ズレると、体の調子が崩れてしまう人がかなり多く、睡眠時間が減少する。25分ぐらい減る。そういう影響がサマータイム開始後の3週間ぐらい続く。4週間たっても完全には戻らない 」
 ということだ。(読売・投稿・コラム 2008-07-02 )
 ま、このことは、経験的に覚えている高齢者が多い。昔、日本でもサマータイムが実施されたことがあって、「あのときはリズムが狂って眠くて仕方なかった」と訴えている人が多いのだ。

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 以上からこう結論できる。
 「サマータイムの実施により、生活リズムに変調を起こす人は、かなり多い。全員がそうだというわけではないし、若い人ならば問題は起こりにくいかもしれないが、かなり多くの国民が生活リズムを崩して、体調を崩す」

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 さて。ここまでの話は、すでに何度も指摘されたことだ。だが、私はさらに別のことに着目する。
 同じ読売の投稿によると、別の情報もあった。こうだ。
 「日本人の睡眠時間は、ここ 50年の間に、1時間も短くなっていて、欧米よりも1時間短い」
 
 これは非常に重要なことだ。なぜなら、次のことは成立しなくなるからだ。
 「欧米でもサマータイムをやって問題ないから、日本でも問題ないだろう」
 なるほど、十分な睡眠時間があるなら、少しぐらい睡眠不足になっても、大丈夫かもしれない。欧米人なら、そうだろう。
 しかし日本人は違う。もともと睡眠時間が足りない。そこへもって、サマータイムで生活リズムが狂い、睡眠不足になると、生命活動を維持するために必要な睡眠時間を確保できなくなる。また、生活リズムのズレから、不眠症になったりする人もいるらしく、その場合には極端に大きな問題が起こる。
( ※ たとえば、「サマータイムで早寝早起きをすることになったが、いつもよりも一時間早く寝床についても、なかなか眠れない。眠れない、眠れない、と思っているあいだに、三時間ぐらいが経過してしまい、ひどい睡眠不足や不眠症になる」というふうな。)

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 このように生命活動のリズムが狂うと、医学的には次の問題が発生する。
  ・ 免疫力の低下。そのせいで病気になりやすくなる。
  ・ うつ病や心身症になりがち。精神疾患。

 そのいずれも問題だ。

 さらに、サマータイムによる生活リズムの変化は、秋にも起こる。サマータイムを廃止するときだ。ここで、風邪を引きやすくなったりすると、風邪のせいで大幅な損失をこうむる人がたくさん出てくるはずだ。
( ※ 実は私は高校生のころ、毎年、秋に風邪を引いていた。受験勉強による睡眠不足のせいでしたね。……同様のことは、他の人々にもいくらかは起こるはずだ。)

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 まとめて言おう。
 生活リズムを勝手に変更することは、人間の生存活動に変調をもたらす。そのことをうまく吸収することのできる強者もいるが、そのことをうまく吸収できない弱者もいる。
 そして、1億3千万人もの国民がいれば、その被害を受ける人は数十万か数百万という数になる。(3%だとしても、500万人だ。)
 しかも、現状では高齢者がかなり多いから、そのうちのかなりの部分が生命活動に致命的な打撃を受けそうだ。たとえば、免疫力低下のせいで病気で死ぬとか。また、もともと不眠がちなところに決定打が下って、完全な不眠症となってから、うつ病になって、自殺する、というふうに。

 そして、これほどの代償(莫大な人間の生命を失うこと)を払って、何を得ることができるか? ほんのわずかな電気代だけだ。しかも、節約した量を上回る無駄が、冷房代によって発生する。

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 結論。
 サマータイムというのは、ただのエネルギー浪費であるにすぎない。省エネを上回る浪費が発生する。
 さらに、生活リズムを崩して能率低下を起こす、という被害者がたくさんいる。
 さらにその上に、人間の生命が大量に失われる、という損害が発生する。
 あらゆる意味で収支は大損なのだが、ただ一つ、「照明エネルギー」という項目だけを見れば、収支はプラスとなり、「省エネをしている」ことになる。そして、そのことだけを目的として、「サマータイム」という制度が唱えられている。(福田首相も賛同している。 → ニュース

 この意味は何か? 「省エネ気違い」である。「省エネをすることが何にも勝る」と信じて猪突猛進する。そのせいで、どんなにエネルギーを浪費しても、どんなに経済効率が低下しても、どんなに人々が苦しんでも、どんなに多くの人命が奪われても、ごくわずかな部分的な省エネだけをめざす。
 これが今の日本を覆っている現実だ。



 【 関連項目 】

  → サマータイム

 【 参考サイト 】

  → 「サマータイムに反対の声の嵐」という記事
 ※ 興味深い話が多いので、一読をお勧めする。
 
posted by 管理人 at 16:38 | Comment(0) | エネルギー・環境1
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