ESSAY

ニューヨークからのプレゼント
元テレビ東京アナウンサー 土川由加

【プロフィール】
 海外生活8年を経て国際基督教大学卒業。テレビ東京でスポーツキャスターとして、スポーツTODAY、全仏オープンテニス等を担当。現在はフリーとして活動。


●I LOVE NEW YORK
 今、ニューヨークからこの情報宅急便を書いています。私はこの町が大好きです。3才〜5才、中学と高校時代を父の仕事の関係でニューヨークで過ごしましたが、この町の持つエネルギーと共に毎日必死に過ごしていた思い出が心に残っています。その人にとってどこで、どんな環境で幼少時代や学生生活を過ごしたかというのは大人になってから様々な面で影響が出てくるものです。私にとってもまさにそうでした。

●High School Days
 今振り返っても一番大変だったのはハイスクール時代でした。英語ができない私にとって毎日出される宿題の山は、不可能に近いものでしたし、次の日に学校へ行きたくなくなる大きな原因でした。仕方なく行くのですが、いつ先生にさされるかとびくびくしていた自分を思い出します。今思えば英語の話せない生徒達にも同じ様に接していた先生達もかなり大変だったでしょう。とにかく全てが日本の授業とは違っていました。
 例えば英語の時間、シェークスピアの作品をまるで自分がステージに立った俳優の様な気持ちで読みなさいと言われます。恥ずかしいなんて言ってられません。その世界に入ってしまわないといけないのです。ただ読むのではなく、「心」から読む事が大切と先生は言ってました。社会の時間は政治や経済について教科書を元に語り合います。最近起こった時事問題についても話し合い、ある時は大統領のスピーチについてでした。いきなり先生にさされ、「YUKAが大統領だったらどう言った?もっとこういう風に言うべきだったという意見はない?」と聞かれたりします。もちろん最初はとまどいましたが、次第に意見を言わないと相手にされなくなるので常に自分なりの意見を考える様になりました。
 その他に印象に残っているのが「クリエイティブ・ライティング」というクラスです。毎日の様に作文を書くのですが、まるで小説の様に細かい状況描写、表現力を要求されるので最初はとてもついていけませんでした。こういった書く表現力、想像力は話す時に大変役立ってくると先生は教えてくれましたが、言葉やフレーズが自然に増えていったのは確かでした。ニューヨークで受けた授業は、私に「話す」という事への意識を少しずつ変えていきました。

●生きた英語
 今、社会人になってビジネスでニューヨークへ来ても、あの中学と高校時代の経験は大変役に立っています。お互いに語り合い、自由に意見を出し自分の考えをはっきりと伝えられる言葉。あの頃の学生生活は、私に「生きた英語」という大きなプレゼントをくれたのです。今になってその有難さがわかってきましたが、やはり人は必死になって何かをすれば必ず後で残るんですね。
 ニューヨークに来ると、こちらの人はすぐに「WHAT DO YOU WANT?」と聞いてきますが、自分の要求をクリアにきちんと伝える事は生活や仕事の上で重要です。私はこうしたい、だからこうしてもらえるかしらというやりとりは毎日の様にありますし、それがきちんと伝わらないと、こんなはずではなかったという目にあったりします。「生きた英語」は、私にとってかけがえのないコミュニケーションの手段となっています。

●帰国子女の皆さんへ
 今、海外生活をされている皆さんも、きっとそれぞれに悩みやつらい経験があったと思います。もちろん楽しい事ばかりという方もいらっしゃるかもしれません。とにかく一生懸命だった全ての事が後でいい思い出となるのでいろいろな事を体験するべきだと思います!私の8年間のアメリカ生活でいつも力になってくれた言葉やフレーズがありました。今も時々思い起こしては元気を出したりしています。
“YOU NEVER KNOW UNTIL YOU DO IT”(何事もやってみなければわからない)
“LEARN TO LOVE YOURSELF”(自分自身を大切に)
などです。自分を大切にできない人は人にも親切にできないという事ですが、いつも私を前向きな気持ちにしてくれます。今でもステキな言葉さがしは大好きです。
“I LOVE NEWYORK”今度はニューヨークが何を魅せてくれるのか、今からとても楽しみです。



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