【教育の目的】
第一条 教育は、人格の向上発展を目指し、日本国憲法の精神に基づく真の主権者として、人間の尊厳を重んじ、民主的で文化的な国家、社会及び家庭の形成者たるに必要な資質を備え、世界の平和と人類の福祉に貢献する心身ともに健やかな人材の育成を期して行われなければならない。
【 学ぶ権利の保障】
第二条
【普通教育及び義務教育】
第七条
3 国は、普通教育の機会を保障し、その最終的な責任を有する。
特に大事な条文として第二条に「学ぶ権利の保障」を位置づけました。国民の皆さんを、国家の「道具」として教育するのではなく、すべての人の学ぶ権利を保障します。
さらに、これまでの形式的な平等主義から、それぞれの子どもの発達状況に応じた教育機会の確保、整備を目指します。
また第二条では、あえて「国民」とせずに「
【適切かつ最善な教育の機会及び環境の享受等】
第三条
2
3 国及び地方公共団体は、すべての幼児、児童及び生徒の発達段階及びそれぞれの状況に応じた、適切かつ最善な教育の機会及び環境の確保及び整備のための施策を策定し、及びこれを実施する責務を有する。
4 国及び地方公共団体は、経済的理由によって修学困難な者に対して、十分な奨学の方法を講じなければならない。
【教員】
第五条 法律に定める学校は、公の性質を有するものであり、その教員は、全体の奉仕者であって、自己の崇高な使命を自覚し、その職責の十全な遂行に努めなければならない。
2 前項の教員は、その身分が尊重され、その待遇が適正に保障されなければならない。
3 第一項の教員については、その養成と研修の充実が図られなければならない。
◆就学援助について
学校教育法に基づき、経済的な理由で就学に支障がある子どもの保護者を対象に「市町村は必要な援助を与えなければならない」と定め、具体的には、学用品や給食費、修学旅行費、医療費の補助を行っています。
◆就学援助を受けなければならない子どもが近年急速に増えています。
◆164回通常国会において、政府・与党は、教員数を5%減らし、優秀な教員確保のための措置を廃止する行政改革推進法を成立させました。
◆イギリスはここ数年前から政策転換をして、教員増に踏み切りました。
民主党が今いちばん教育現場について心配し、問題だと思うのは、教育格差の存在です。「格差があってなぜ悪い」と言い切る政党もありますが、民主党は少なくとも人生のスタートラインにおいてすべての人に学びの機会、その人にとってふさわしい、最善かつ適切な教育の機会が十二分に保障されるということを約束します。それぞれの人生を豊かに生きていく権利は、あらゆる人に保障されるべきです。教育の格差をなくすことを、私たちは明言します。例えば、塾に行ける子どもと、そうでない家庭の子どもの学力の差が広がっていることも大いに心配です。
教育は、教員の質と数を充実させることが必要です。OECD平均に満たない水準にある教員一人あたりの子どもの数を改めます。
また、教員の質については、第五条で「教員は、全体の奉仕者」とし、引き続き子どもを教えるというきわめて重要かつ崇高な仕事の専門職であるということを自覚してもらい、さらに研鑽を積んでいただく。そして、高度な専門職としての使命を自覚して、その職責を十分に果たしてもらうということを明記しました。また3項で、そのための養成と研修の充実ということにも触れています。
昨今問題となっている学力低下の問題。その背景のひとつに、保護者の経済状況のばらつきがあります。親の所得・職業によって、その子どもの学びの機会に差がつく。その結果として、習得できる能力や就業できる職業、ひいては生涯の所得に格差がつく。まさに「格差の世代間連鎖」という問題が起こっています。
民主党はこれを断ち切り、一掃することに努力します。すべての子どもが、どんな家に生まれようと、その夢をかなえるチャンスを奪ってはいけないという決意のもと、教育格差の一掃に向けて大きな第一歩を切ることが、今回の教育基本法を制定する大きな願いです。例えば、経済的理由などで塾に通えない子どもに対して、放課後や土曜日などに教員とボランティアなどが協力し合って、すべての子どもの学力や才能を伸ばしていくことなども具体的に考えていくべきだと考えています。そのためにも人材の確保は重要です。
【適切かつ最善な教育の機会及び環境の享受等】
第三条
3 国及び地方公共団体は、すべての幼児、児童及び生徒の発達段階及びそれぞれの状況に応じた、適切かつ最善な教育の機会及び環境の確保及び整備のための施策を策定し、及びこれを実施する責務を有する。
4 国及び地方公共団体は、経済的理由によって修学困難な者に対して、十分な奨学の方法を講じなければならない。
【学校教育】
第四条 国及び地方公共団体は、すべての国民及び日本に居住する外国人に対し、意欲をもって学校教育を受けられるよう、適切かつ最善な学校教育の機会及び環境の確保及び整備に努めなければならない。……
【家庭における教育】
第十条 家庭における教育は、教育の原点であり、子どもの基本的な生活習慣、倫理観、自制心、自尊心等の資質の形成に積極的な役割を果たすことを期待される。保護者は、子どもの最善の利益のため、その能力及び資力の範囲内で、その養育及び発達についての第一義的な責任を有する。
2 国及び地方公共団体は、保護者に対して、適切な支援を講じなければならない。
3 国及び地方公共団体は、健やかな家庭環境を享受できないすべての子どもに対して、適当な養護、保護及び援助を行わなければならない。
【地域における教育】
第十一条 地域における教育においては、地域住民の自発的取組が尊重され、多くの人々が、学校及び家庭との連携のもとに、その担い手になることが期待され、そのことを奨励されるものとする。
教育格差をなくすには、国や政府の役割がいちばん大事です。まずは、すべての子どもたちの学びを保障するため、国が子どもたちをまさに愛さなければいけません。そしてそのことを具体的な政策の形で示し、それを実施するための財源を確実に確保しなければなりません。新法では、学ぶ意思のあるすべての子どもたちに対して、十分な奨学金を講ずるという責務を国及び地方公共団体に課しています。こうしたことによって、子どもに対する愛情を具体的な形にしていくべきだと考えます。
そして、問題解決のためには、国や政府の力にのみ頼っていては解決できません。第十条では家庭において、保護者の皆さんが子どもの最善の利益のために、その養育及び発達について責任を有して、積極的な役割を果たすことを期待しています。また、第十一条では、地域住民の自発的な取り組みや、あるいは多くの人々が地域における教育の担い手になることを期待する、という条文も盛り込みました。
行政も教員も保護者も地域の住民も、すべての人たちが子どもへの愛情を持ち、そのことを具体的な形にすることを期待しています。また、そういうことが奨励されるような仕組みもこれからつくっていきます。例えば保護者が子どものために時間やエネルギーを割くことを奨励するために、企業なども、父親や母親である勤労者の働き方、休暇のとり方について積極的に協力することが期待されます。こんな例をはじめ、あらゆる人や組織ができることがたくさんあると信じています。
※子どもの権利条約とは児童の権利条約は、18歳未満を「児童」と定義し、児童の人権の尊重及び確保の観点から必要となる詳細かつ具体的な事項を規定したものです。1989年の第44回国連総会において採択され、1990年に発効しました。日本は1994年に批准しました。