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 論説 :  週刊新潮誤報/なぜ放置し続けたのか
 記者二人が殺傷された朝日新聞阪神支局襲撃事件などをめぐる記事で、週刊新潮が誤報を認めて謝罪記事を載せた。一月末から四週にわたり、実行犯を名乗る男性の「実名告白手記」を掲載した記事は、うそだったという。タイトルは「こうして、だまされた」。謝罪とともに、十ページを割いて取材から掲載に至るまでの経緯を明らかにしている。

 取材の過程で何度かおかしいと思ったものの、男性の証言は具体的で迫真性があり、だまされてしまった。裏付け取材が不足していた。おおよそ、そういう内容だ。謝罪と反省を繰り返しながら、全体として自らを被害者の立場に置いた経過説明にすぎない。

 いま必要なのは、なぜだまされたかではない。なぜ誤報をし、二カ月近くも放置してきたかの詳細な検証と公表ではないか。歴史ある週刊誌として新潮には、その責務がある。

 発生から二十年余りが過ぎ、阪神事件など一連の朝日事件(警察庁指定116号)は、すべて時効になった。だが朝日はもとより、どのメディアも情報を追い続け、さまざまな集会で事件を風化させまいとの努力が続けられている。手記は、こうした地道な取り組みに水を差し、混乱を招いた。

 雑誌ジャーナリズムはもちろん、メディア全体の信頼にかかわる問題だ。この謝罪記事では不十分と言わざるを得ない。外部識者ら第三者の目で問題点を洗い出し、自らに厳しい結果であっても受け入れるよう強く求めたい。

 告白手記の大筋は、こうだ。在日米国大使館の職員(当時)に頼まれ、朝日東京本社を銃撃。右翼の故野村秋介氏が「赤報隊」の犯行声明を考え、野村氏と一緒にいた女性がワープロで打った。さらに同じ職員の依頼で阪神支局記者二人を殺傷し、名古屋の寮や静岡支局でも犯行を実行した。

 実行犯を名乗る男性は各犯行の状況を詳述。しかし警察の捜査結果とは、いくつも食い違いがあった。新潮は犯行を依頼したとされた元大使館職員を取材したが、その証言は思わせぶりなだけで、手記を裏打ちする具体性はかけらもなかった。男性が阪神支局から持ち去ったとした手帳などの証拠も見つからなかった。

 なのに証拠はすべて男性の手元にあると言い張った。男性本人が四月になって「自分は実行犯ではない」と証言を翻すまで、報道各社がさまざまな疑問を呈しても、警察が「コメントに値しない」と背を向けても、犯行を依頼していないと抗議した元職員に謝罪し金銭和解しても、誤報を認めようとしなかった。

 新潮の説明では裏付け取材不足どころか、皆無に近い状態で手記掲載に踏み切ったのではないかとさえ思える。誤報を認めるまでのかたくなな姿勢に至っては、理解に苦しむ。社内でも議論があったはずだ。それを受けて一体、誰がどういう判断をしたのか。

 大相撲の八百長報道をめぐり、週刊誌に高額賠償を命じる判決が相次ぐ中、今回の誤報は雑誌ジャーナリズムの衰退を象徴しているようにも見える。これまで真っ先に疑惑に切り込み、一目置かれてきた意欲と迫力はどうしたのか。残念でならない。

('09/04/17 無断転載禁止)


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