2009年4月17日16時20分
「金閣寺を建てたのは誰」。女児は、母親からの問題の答えをノートに書き、「あってる?」=奈良県下市町の自宅、高橋写す
「ターンも出来るのよ」と車イスで自由に動く女児=奈良県御所市
■1日に上り下り800段
「800段。この中学校で生徒が1日に上り下りする階段の想定段数です」。下市町教委の堀光博教育長は入学を拒んだ理由をこう説明する。
女児が入学を望む町内唯一の中学校は71年建設の4階建て。高台の傾斜地に立つ。正門から校舎玄関への階段が27段あるほか、校舎から体育館への階段も35段ある。「理科室」「パソコン室」などの特別教室も多く、移動は小学校より多いという。階段にスロープはほとんどなく、校舎にエレベーターもない。
女児は小学校時代、町側が雇用した女性介助員2人と担任教諭に階段の上り下りを手伝ってもらっていた。しかし、堀教育長は「思春期になれば体が大きくなる。介助中に足を滑らせて階段から落ちれば、命の危険につながる」と話す。町教委は事故時の過失責任が問われることを懸念する。さらに年間約40億円の町予算では、介助員の増員、バリアフリー化の改修工事は難しいという。
町教委が「一番危険」と説明するのは、校舎から体育館までの階段。実は迂回路(うかいろ)があり、約3分遅れで着くが、町教委は「次の授業に間に合わず、保護者が望む同じ教育が実現できない」と説明する。(高橋友佳理、藤田さつき)
■受け入れ態勢あれば進学可能
文部科学省によると、障害のある義務教育段階の児童・生徒は全国で約23万人。その進路は、どのように判断されているのか。
地元の公立小中学校か、特別支援学校(旧盲・ろう・養護学校)のどちらに進むのが適切かは、各市町村教委に置かれた就学指導委員会が、保護者の意見も聞きながら審議する。原則、国が定める障害の程度にあてはまれば特別支援学校に通う。