進化する乳がん治療
私は健常者を守りたい気持ちもありますが、患者さんの気持ちも守りたいんですね。ピンクリボンの早期発見啓発の運動というのは、患者さんを傷つける一面もあります。「早く見つかれば助かりますよ」ということばが氾濫していますと、「私は早く見つけられなかった」「私は遅かった、だから助からないのだろうか」と思ってしまいます。
それは、当会でも話し合ったことがあります。「早く発見できなかったあなたが悪い」というように感じてしまう方もいるのではないかと。それはあってはならないことですね。
私自身も何度か手術をしていますので、早期発見ということの枠の中にはいらないこともやはりあるんですよね。その気持ちはとてもよくわかりますね。
直そうとするときに、早い発見ということは非常に大切。でもそうではない場合も、治療手段がちゃんとあるということをきちんと言いたいですね。
かつて「乳房温存」が大きな議論になったことがありました。今日の日本の乳がん治療は、どこまですすんでいるのでしょうか。
かなりの人々の乳房が温存できるようになりましたね。もちろん、早期発見がすすめばすすむほど、小さく切り取って治せるがんが増えるのは当たり前ですが、そうではないものも乳房温存率は上がっています。たとえば、手術の後に抗がん剤が必要な患者さんを中心に、術前に抗がん剤を使うことでがんを縮め、小さく切る方法が広まっています。欧米でも、この療法で温存率が上がるというデータが出ています。
ただし、早い段階でみつかっても、乳がんのタイプによっては広く切除する必要があるものもあります。その場合も、温存はできなくても形成外科で乳房再建ができるということを告知の段階で教えて、患者さんが準備できるような説明をすることも大事ですね。このことについては(2)で詳しく解説します。
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