2009年4月17日 12時44分 更新:4月17日 15時17分
外からの栄養供給や光、酸素がないという過酷な南極の氷河下の湖で、微生物が鉄分などを使って150万年以上も生き延びた仕組みを米ハーバード大などが解明し、17日付の米科学誌サイエンスに発表した。数億年前に地球全体が凍結したとされる「スノーボールアース」時代に生物が存続し得た理由の解明につながるほか、氷に覆われた火星の極地に生命が存在する可能性を示す成果として注目されそうだ。
東南極のテイラー氷河の末端では「血の滝」と呼ばれる鉄分の多い赤茶けた水が漏出している。水源は、4キロ離れた厚さ400メートルの氷の下にある湖。以前は海だったが、150万~400万年前に拡大してきた氷河がふたとなって密室状態を作った。光は当たらず水中に酸素はない。塩分濃度は海水の3倍、水温は氷点下5度と厳しい環境だが、複数の微生物が見つかり、なぜ長期間生存できたのかが謎だった。
研究チームが微生物の遺伝情報などに基づき分析したところ、岩盤中の鉄や水中の硫黄分を使う独自の代謝方法で生命活動に必要なエネルギーを得て、150万年以上の生存を支えてきたと結論づけた。研究チームは「この湖は『スノーボールアース』時代を含めた地球の歴史を解明する上でまたとないタイムカプセルだ」としている。【田中泰義】
【ことば】▽スノーボールアース▽ 先カンブリア紀の終わり(6億~8億年前)ごろ、地球全体が赤道付近を含めて氷に覆われたが、その後、火山活動などで温暖化、多様な生物が爆発的に増加した。こうした冷却と加熱のサイクルが生物の進化に重要とされている学説。92年に米国の研究者が提唱し、98年にアフリカでその現象を示す調査結果を発表した。