2008/02/21
大阪・茶屋町地区で建設が進む「(仮称)アーバン茶屋町プロジェクト」。低層部の商業施設の各フロアにはテラスをつくって回遊できるようにする(資料:入川スタイル&ホールディングス) |
10年ほど、商業開発のプロデュースに携わっているなかで、痛切に感じるのは、これまで、デベロッパーが街の特性をきちんと調べて商業施設をつくってこなかったのではないかという疑問だ。
例えば、最近、完成した大型複合施設を見に行くと、オフィスで働く若者のほとんどが、昼休みになるとコンビニエンスストアへ向かい、お弁当などを入れた袋を持って戻っていく。おそらく、施設内にある飲食店の食事の値段が高く、利用しにくいのだろう。考えてみれば変な話で、身近にある飲食店が気軽に使えないのだ。そういう街で、働いている若者の気持ちが豊かになるとは到底、思えない。
その地域にどんな人が働きに来て、どんな人が住み、彼らがどんなお店を必要としているのか。ユーザーの要望に応えながら、今後発展しそうな店も選んで集客していくというのが、本来の施設づくりの姿ではないのか。
だから、私たちのマーケティングは、まず、開発地区の周辺に住む人たちの特性を徹底的に調べることから始める。歩いている人の化粧、メガネやバッグの種類、髪型などを観察して、地域住民の「プロファイル」をつかむ。そして、そういう人たちに好かれたり、日常生活を豊かにしたりする施設の理想像を見つけ出す。
有名テナントを誘致する際にも、その地域に合うように店舗をカスタマイズ(仕様変更)してもらうことが多い。例えば、書籍などを販売する「TSUTAYA TOKYO ROPPONGI」(東京・六本木ヒルズ)をプロデュースしたときは、プロジェクトメンバー全員で考え、通常の書店のように新刊や文庫を中心に据えるのではなく、アートや建築、旅行、クッキングに関する専門的な本を核にした店に大きく変更してもらった。事前調査で、六本木に住む人たちが、デザイン的な思考や趣味を非常に大切にしているとわかったからだ。結果として街になじんだ店になったと思う。
大阪で進む超高層プロジェクト、街になじませることを最優先
今、手がけている大きな仕事が、大阪・茶屋町地区で建設が進む「(仮称)アーバン茶屋町プロジェクト」。商業施設とオフィス、ホテル、レジデンスが一緒になっている超高層複合開発ビルで、私たちは総合プロデュースとしてプロジェクトを推進しているところだ。建物の設計は建築家の安藤忠雄氏が進めている。
梅田駅に近い茶屋町は、都心部にあるものの、低層の路面店が数多く並んでいた地区で、散歩しながら買い物や食事が楽しめる良さがあった。この街の記憶と感覚を継承し、外を歩いている人が施設内にすっと入っていける施設を目指している。商業施設部の各フロアにはテラスをつくり、回遊しながら買い物を楽しめるようにする。さらに、緑が少ない地区なので、中層階には公園をつくり、地下1階から公園フロアまでをパブリック的な空間とする。誘致するテナントは、地域住民が普段利用しやすい業態を優先し、茶屋町の地域特性に合わせて商品構成などをカスタマイズしてもらう予定だ。
街づくりのコンセプトは「私の好きな生活」。地域の日常の生活を豊かにしたいという思いを込めている。50年、100年という長いスパンで考えれば、施設が地元に根付いて、おじいさんから小さな子どもたちまでに愛されるのが、街にとって健全な姿だ。地域に合った施設をつくり、それが次々と生まれていけば、自然と豊かな都市ができ上がると思う。
アーバン茶屋町プロジェクトはこの私たちの考え方を具体的な形で示す最初の大型複合施設となる。オープンは2009年の予定だ。
商業開発プロデューサー 入川 秀人氏
1957年兵庫県生まれ。ダイエーなどを経て、99年にLDKを設立。2001年コミュニティ&ストアーズ(現カフェカンパニー)を設立。05年に街づくり・商業開発の企画などを手がける入川スタイル&ホールディングスを設立。現在、同社社長/チーフプロデューサー
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