■迷子~chapter#16~
『今終わったよ!』
バイトが終わって急いで着替えアナタに電話をかけた。
『おぅ。つーかさぁ、焼そばパン買って来て。ついでにお茶も。』
甘えた口調でアタシにねだってきた。
パシリに使われてるけど、もうそんなことどーでもよかった。
アナタに会えるなら何でも良かった。
『あとでお金徴集するからねー。』
『いいよん。』
ケータイをかけながらアナタのご飯を手に取りレジに向かう。
『じゃ車乗るから切るね。』
とにかくアナタのもとへ行きたくて行きたくて…。
アナタに夢中になってる時にとんでもない事が起こる事などその時は何も考えてなかった。
アナタの所まで車で約20分。
…道乗りだったんだけど、約1時間半かかったのだ。
実はアタシ、アナタの所に自分で運転して行く事が2,3回しかなかったのだ。
いつもアナタの車に乗ってることが多いアタシ。
よく道を覚えていなかった。
しかも夜道で、周りの景色が見えないときた。
そうアタシは迷子になった。
今では笑い話だけど、その時はマジで血の気が引いた。
なぜなら標識の行き先が県外になってたから…。
あわてて引き返し、元来た道を戻ってたら、違う道走ってた。
本当自分でも馬鹿だと思った。
ここまで方向音痴だとは自分でも思わなかった。
んでどこだかわからない不安で半泣きでアナタに電話。
『迷子になったぁ。』
『お前どこいんの?』
『どこだかわかってたら迷子にならないよぉ。』
『そーだよなっ。』
ケラケラ笑いながらアナタ。
電話しているうちに見た事のある所に出てきたが、このままでは辿り着けないってことでアナタに迎えに来てもらった。
アナタが来てくれた時本当にホッとしたの。
『馬鹿だなぁ。』
ってアタシにそう言って迎えに来てくれた時本当に助かったって思った。
情けないことに、アナタの車の後をくっついてアナタの所へ行ったね。
こんなに長い道のりになるなんて思わなかった。
でも何とか無事にアナタに会う事ができて本当に良かった。
いつもの4倍近くかかった時間。
もったいなかった。
その分アナタと一緒にいられないから。
今度は迷子にならないように行こうと、1人心の中で小さく誓った。
…はっきり言って恥じだし。
迷子になったせいか、一段とアナタに会いたいって思った日になった。
でも迷子で泣いたのって一体何年ぶり?
ってそう恥じをかきながら、アナタの横に座っていた。
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