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【社説】

中国経済急減速 『民生重視』の対策を

2009年4月17日

 中国の経済成長が今年初めの三カ月で、一段と減速した。金融危機で輸出が激減したのが響いた。景気対策では、発展から取り残された農民など民衆の生活水準を向上させる方針を貫いてほしい。

 国家統計局が十六日に速報した一−三月期の国内総生産(GDP)の実質成長率は、前年同期に比べ6・1%増にとどまった。

 金融危機で経済減速が明らかになった昨年十−十二月期の6・8%増から、さらに伸びが鈍った。中国の四半期ごとの成長率は前期と比べる日本や米国と違い、前年同期との比較だ。日米と同じやり方ならマイナス成長になったかもしれない。

 しかし、北京の街角で不況の影を探すのは難しい。高級レストランには一万元(一元=約十五円)以上のワインリストも並び、デパートの服の値段は日本を上回る。ただ、天安門広場の出入り口すべてで金属探知機による検問を行う厳戒ぶりが緊張を感じさせる。

 輸出不振で沿海地方の加工製造業が数多く倒れ、農村出身労働者(民工)二千万人以上が失業した。しかし、民工の動向は首都はもちろん、当局が統制を強めたメディアで知ることも困難だ。

 高額消費が活況を見せ始めたのは株価回復の影響が大きい。株価の上海総合指数は年初三カ月で約三割上昇し、不動産市場も下げ止まる気配だ。背景には四兆元にのぼる景気対策への期待と銀行融資の緩和がある。

 銀行融資の累計は年初三カ月で昨年一年間の総額に迫る約四兆六千億元に達した。市場には融資が景気対策や企業救済よりも、株や不動産に流れ込んで相場を支えたという見方も出ている。

 国務院は昨秋の景気対策発表では、鉄道・道路などインフラ整備だけでなく、住宅や医療・教育事業など民生向けに大規模な投資を行い内需を創出すると誓った。

 これに対し、一九八〇年代に政治改革を推進した李鋭氏ら元党幹部は連名で党中央あて意見書を公表した。景気対策を支持しながら「特権、腐敗分子がこの機に乗じ私腹を肥やし社会矛盾を激化させることを懸念する」と述べメディアに投資の用途を監視させるよう要求した。

 今年に入り成長が一段と減速したことで追加経済対策を求める声も強まろう。その場合も、金融危機で打撃を受けながらメディアが取り上げにくい民衆の生活改善に重点を置くことが、内需主導の発展を確立することにつながる。

 

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