4月13日(月)は、不法滞在をしていたカルデロン父母がフィリピンへ強制退去処分となる日です。マスコミは各社一斉にその顛末を報道しました。一人娘のノリコさんに焦点をあて、家族を引き裂くことの非情を訴え、在留特別許可の裁量権を持つ法務大臣の「決断」を求める内容となっています。私は、この報道を聞いて、唖然とするばかりです。
●カルデロン一家の顛末
今回の事件の経緯は以下です。平成20年1月17日の東京地裁判決文より要約します。
カルデロン父母はフィリピン生まれで在住時代から恋人関係で、マニラ市内の大学を中退して、日本で就労して多くの収入を得るために、ブローカーから他人名義のフィリピン旅券を入手して、平成4年に母となるカルデロン・サラ・ビオラが、翌年平成5年に父となるカルデロン・アラン・クルズが相次いで不法入国します。さらに、それぞれ、他人名義で外国人登録をします。平成7年には長女であるノリコが日本で生まれ、入管法の在留資格取得を申請することなく、長女も不法残留となりました。
カルデロン父の家族は、兄を除いて、両親2人、姉1人が、不法残留歴があります。姉は残留特別許可をもらい、日本にいます。カルデロン母の家族は、弟一人を除いて、両親2人、弟妹の4人に不法在留歴があります。弟と妹の2人は定住者の在留資格を取得して日本にいます。カルデロン父母の両親や家族は、ほとんどが不法入国または不法残留したことがあり、日本において同居もしており、親族関係にある者が感化しあって、集団で入管法違反を繰り返しており、日本の法律を遵守しようという意識が極めて希薄であると判決でも指摘されています。
平成13年父が長女ノリコを認知し、平成18年2月父母が婚姻をします。その年の7月母が入国管理法違反により警察に逮捕されます。8月に父及び長女が東京入国管理局に出頭し、不法滞在であったことを申告します。9月には母親がさいたま地裁において、入管法違反により懲役2年6月、執行猶予4年の判決が言い渡され、東京入管に収容されます。10月父及び長女が仮放免となり、11月に一家3名に退去強制令書が発布されます。
ところが、12月になって一家3名が東京地裁に退去発布処分取消等請求訴訟を提訴します。続いて、入管に再審査情願申立てをします。平成19年5月に母親が仮放免となります。平成20年1月東京地裁において国側が勝訴判決、5月東京高裁においても国側が勝訴判決、6月一家3名が最高裁に上告及び上告受理申立てを行います。9月一家3名、最高裁において上告が棄却され、上告不受理の決定がなされ、同日刑が確定したわけです。行政処罰だけでなく、裁判でも適法であることが認定されております。
ブローカーをから他人名義の旅券を入手して相次いで不法入国した入管法違反、さらに他人名義で外国人登録した外国人登録法違反、そして、長女ノリコも在留資格を申請しない入管法違反の三重の法律違反をしています。驚くことに、両家の家族のほとんどが不法入国、不法残留歴があり、協力し合って日本に入ってきていることです。
それに対して、法務省は国会答弁でも明らかな通り、3月13日までにカルデロン家族3人が強制退去するか、長女ノリコだけは在留特別許可を出してもよいと通告しました。そして、カルデロン一家は長女を残して、父母はフィリピンに強制退去することを選びました。そして、4月13日に父母がフィリピンに強制退去されたということです。
●法律違反が許されるのか
今回の問題は3つあると思います。第1は、法務省の対応です。なぜ長女に在留特別許可を出したのか、甚だ疑問です。最高裁判決でも確定した通り、原理原則に則って一家3人を退去強制にすれば良かっただけです。東京地裁判決でも、こどもの権利条約はじめ国際条約違反に当たらないこと。日本で生まれ育ち現地語でできない長女が、フィリピンでは困難に直面するが、それは帰国子女一般にも当てはまることで、両親はフィリピンで生まれ育ち、両親の家族(父には母と兄2人、母には弟と妹2人)がおり、支援が期待でき、長女は子供で柔軟性があり、フィリピンに順応し、困難を克服できると指摘しております。さらに、年少の長女は、自立できるまでの間、両親の扶養を受け、両親と共に生活をするのがその福祉に適うとまでいっています。当然の判決です。
それにもかかわらず、法務省が「長女はずっと日本で育って、日本で学び、どうしても日本で学業を続けたいという希望がある、本人の血を分けたおじさん、おばさんがすぐ近くにいるということ(不法残留歴があるのに。筆者注)、あるいはごく親しい人たちの監督あるいは養育の環境が整うならば、娘さんだけには在留特別許可を出そうというふうに既に通告している。私どもとしては、この事案についての事情をしんしゃくして、最大限の配慮をした」(3月11日衆議院法務委員会答弁要旨)というのは、法の番人である法務省として、裁量権の逸脱ではないかと言わざるを得ません。
法務省の資料によると、在留特別許可件数は、平成16年13,239件、17年10,834件、18年9,360件、19年7,388件、20年8,522件となっています。驚くべき数の方々が不法残留にもかかわらず、在留特別許可をもらって日本にいるのです。実態は日本人と結婚したり、子供ができたケースがほとんどだそうです。そして、今回の事例のように、ブローカーによる他人名義の旅券で不法入国し、外国人登録法まで違反し、両方の家族も常習者となるような悪質な人間でも、子供には罪はないとして、子には在留特別許可を出すとなると、今後そのような事態が多くなることが当然予想されます。日本人は子供には甘いとして、不法入国して子供さえをつくれば、子供たけは日本にいることができるという悪しき前例をつくったことになります。
●違法行為に加担する「反日」マスコミと日本人
問題の第2は、違法行為に加担するマスコミ報道です。法務省では、マスコミ各社に対して、今回の事情を数度に渡って説明したといいます。しかし、報道の内容は子供が可哀そう、家族を引き裂く日本政府はけしからん、国際条約にも違反するとの扇情的な論調が目立ちました。ある報道機関では確信犯的に報道しているのではないかと思いました。それに法務省の対応が引きずられたのではないかと思います。事実の経緯を踏まえて、冷静な報道を望みたいと思います。
問題の第3は、違法行為に加担する反日的な日本人の存在です。署名集めに協力したり、最高裁まで戦った弁護士費用、裁判費用は一体誰が負担しているのでしょうか。事実も知らず人情から協力するのであればまだいいのですが、確信犯的に協力する方々がいたのではないでしょうか。
以上、カルデロン一家の事件を見ながら、法務行政、マスコミなどの在り方を考えました。不法滞在半減プロジェクトによって、5年間で不法残留者が11万人に減少しました。今後、今回の事例が前例とならないように、在留特別許可のガイドラインをしっかり見直し、法を守り国家を守るべき法務行政を、しっかり監視していきたいと思います。
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コメント(25)
私も法務省の対応が全く理解不能です。
私事ですが私達姉弟は昭和48年、父の仕事の関係で渡米いたしました。当時はもちろん日本人学校などなく、生まれてから日本語にしか触れたことのない小学生〜中学1年生がいきなりアメリカの公立校に放り込まれたのです。それでも毎日ヘトヘトになって帰ってくる父の帰宅を待ち、深夜まで時には泣いたり怒鳴られたりしながら宿題を教えてもらい必死で英語を身に付けたのです。
カルデロンの娘にそれが出来ないことはありませ。そもそもフィリピンで生まれ育った両親が日本で家庭生活で日本語だけで暮らしていたとは思えず、娘だって全くフィリピン語ができないということはあり得ないと思います。
本当に何を考えての叙情酌量なのか理解できません。悪しき前例を作っただけですし、仰るとおり法務省がこんなことを勝手に決めるのはおかしいと思います。
そろそろ我々一般の国民はこういった行為に加担するマスコミや国家解体をもくろむ勢力とはっきり対峙しないといけない時期にきていると思います。赤池先生頑張ってください。
2009/4/15(水) 午後 5:48
正論です
2009/4/15(水) 午後 7:00 [ yun**ashi ]
日頃のご活動有難うございます。
報道によれば、毎年1万人位の不法滞在者が、
特別在留許可を得ているそうですが、このような
状態は正すべきだとおもいます。
国民として何ができるのか、どうすれば安易な
特別在留許可をなくせるのか、教えて頂けると
ありがたいです。
2009/4/16(木) 午前 9:48 [ n5w*ww ]
現地のインタビューに答えた両親は、1年だけ我慢すれば日本に再び滞在する事ができるようになり、将来的には帰化する事ができると思っているようです。
日本をここまで馬鹿にされて、本当に悔しいです。
がんばって下さい。あなたの名前、覚えておきます。
まともな事を言える政治家が、あまりに少ない事が本当に残念でなりません。
2009/4/17(金) 午前 0:24 [ remyahoo ]
赤池さん、素晴らしいです。前に法務委員会をネットで見ましたが、この一家について日本にいさせるべきではないか、という意見の方で辟易してました。法務委員会とやらにはまともな方はいないのかとすら、思ってしまいました。
不法入国者も不法滞在者も悪質です。在留特別許可など与えるべきではありません。
法務委員会をしっかり拝見させていただきます。応援しております。
2009/4/17(金) 午前 0:42 [ na2mi_kan ]
両親はノリコが帰化できれば自分たちも在留許可がおりて日本に住めると思っているようです。
これが三人で帰国しなかった理由のようです。
Arlan and Sarah said they will eventually live in Japan when Noriko turns 16 or 18, but are not sure if their daughter could apply to be a naturalized Japanese.
http://mb.com.ph/articles/202411/couple-deported-japan-arrives-sad-over-daughter-s-fate
2009/4/17(金) 午前 0:48 [ ななし ]
カルデロン一家を支援してる組織も怪しい人たちみたいなんで
とても心配してました。がんばってください
冗談で回りにも不法滞在者いっぱいなんじゃと思ってたんですけど、カルデロン一族が常習者なんて知りませんでした。マスコミもおかしいですね
2009/4/17(金) 午前 0:55 [ トマト ]
支援している団体やメディアに別の意図を感じますね。
↓このようなことにならなければいいのですが、ケース・バイ・ケースとはいえ、これは真実ですか?
http://bbs.jpcanada.com/log/6/2502.html
2009/4/17(金) 午前 1:11 [ J ]
お涙ちょうだいのメディアの報道を見て疑問に思いました。
法務省の対応やメディアの報道姿勢には自分も納得いきません。
「日本語しか話せない」のがたとえ事実であったとしても、
法を曲げるだけの理由にはならないと思います。
日本人や正規の手続きで日本に住んでる外国人のためにも頑張ってください。
_
2009/4/17(金) 午前 1:16 [ miw*c*an42*p ]
URLが間違っていました
正しくは
http://www.philstar.com/Article.aspx?articleId=457711&publicationSubCategoryId=202
2009/4/17(金) 午前 1:20 [ ななし ]
まったくの正論だと思います。法治国家日本のシステムを堅持してください。
2009/4/17(金) 午前 1:24 [ じゃん ]
不法入国の外国人に対しては厳正なる処罰を求めたいです。
私が、カルデロンと同じ他人名義での不法入国外国人で思い出すのは、広島で木下あいりちゃんを殺したぺルー人です。
彼はペルーで性犯罪歴があったのにも関わらず、他人名義であったため日本に入国できて、そして小学生の女の子を殺しました。
このような悲劇を繰り返してはいけません。
他人の名を騙ってしか日本に来ることができないような外国人には、
日本に来てほしくありません。
「ノリコさんがかわいそう」とマスコミは騒いでいますが、
それはすべてカルデロン夫妻の自業自得です。
「かわいそう」みたいな感情論よりも、守るべきは日本の治安だと思います。
2009/4/17(金) 午前 2:06 [ 鈴木 ]
赤池さん、すばらしいです。
そして先日のヤフーのコメントのように
ほとんどの国民は赤池さんと同じ意見なのです。
どうか、国民の意見を届かせてください。
お願いします!!
2009/4/17(金) 午前 2:12 [ prim3579 ]
http://www.nicovideo.jp/watch/sm6569075
アカウント作ってみてほしいです。
2009/4/17(金) 午前 2:15 [ ニコニコ ]
私も同意見であり、正論だと思います。3人で退去するべきです。
2009/4/17(金) 午前 2:20 [ KAN ]
私が疑問に思うのは、そもそもノリコさんが小学校に入学する時点、あるいは他の機会にでも、
カルデロン一家の不法滞在が発覚しうる機会はいくらでもあったのではないか、ということです。
小学校に入学する時点でもカルデロン一家の不法滞在が判明していれば、
ノリコさんも早いうちからフィリピンに帰国でき、フィリピン社会に溶け込みやすかったはずだと思います。
行政は今回のような事態を再び招かないためにも、不法滞在をみすみす見逃す制度上の欠陥を見直すべきだと思います。
2009/4/17(金) 午前 3:26 [ l0lzzz0 ]
赤池さんの意見を支持します。
「少女の人権」を言いながら、未成年のプライバシーを「お涙ちょうだい」のために最大限に悪用する支持者達とマスコミは異様だとしか思えません。しかし彼らが「人権のため」ではなく「自分たちの目的のため」に動いているとしたら少なくとも筋道が通っていると言わざるを得ない。彼らは未成年の少女を自分たちの政治主張のための道具にしてます。こんな事が許されるべきではない。
そして一家を特別扱いすることは、他の強制送還者を差別する事になると思います。「一家が気の毒」と思うことは良い。私も彼女の立場は気の毒だとは思います。しかし、この特例を認めたら、日本国は他の外国人から「我々は気の毒じゃないのか?」と訊ねられるでしょう。こんな差別を許してはならない。我々は法の下の平等を貫くべきなのです。
2009/4/17(金) 午前 4:18 [ kan**y ]
赤池議員がブログでご指摘されていることはいちいちごもっともであり、これまで圧倒的多数を占めていながらマスメディアから全く無視されていたネット世論から喝采を受けることでしょう。特に判決内容をすべて承知していながら一切報道しようとしなかったのはある種の「世論操作」を予感させます。しかしながら、赤池議員は一番肝心なことを忘れているように思います。大臣や官僚はマスメディアの報道にいちいち影響を受けることはありません。何が恐ろしいかと言えばそれは国会での追及です。この問題に関するこれまでの衆参法務委員会での質疑内容、大臣室への度々の陳情、某党の部会での議論、これらすべて「擁護派」によるものでした。それは見事なまでにマスメディアの主張をなぞるようなものでした。これらが共鳴しあうと大臣の自由裁量にいかほどの影響を与えることになるかよく考えていただきたいのです。
2009/4/17(金) 午前 8:42 [ Oh!Meiji ]
(上記の続き)
詳しくは以下をご参照ください。(Yahoo!知恵袋の中には結構まともな意見も見受けられます。)
http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1324099218
娘さんだけが日本に残ることになったカルデロンさん一家に同情しますか?
http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1324398483
民主党は外交人参政権獲得、在日外国人の待遇改善が政策ですか。もし民主党が政権を取ったらフィリピン人不法滞在者カルデロン一家のような事件が増える気がしますがどうでしょうか。
2009/4/17(金) 午前 8:42 [ Oh!Meiji ]
「一連の不法滞在外国人問題に関する公正かつ公平な報道を求めます」というネット署名がすでに始まっています。相手は今回の不法滞在者一家のお涙頂戴劇を扇動したTBS報道局になっていますが、議員もご指摘になられているようにマスコミ各社に向けられたものと考えていいでしょう。参加の是非は各自ご判断いただくとして、その趣旨説明は共感を得られているのではないかと思います。ご一読いただくとよろしいのではないでしょうか。
http://www.shomei.tv/project-921.html
2009/4/17(金) 午前 8:52 [ stampbclhampc ]
とりあえず法務省にメール投げておきました。
とっとと三人全員フィリピンにつき返せと。
2009/4/17(金) 午前 9:09 [ yki**99jp ]
はっきりいって不法滞在韓国人及びさらにこれから来る韓国人が日本に移民させる為の大掛かりな政治工作なんでしょ
一般国民から見てもTBSを見ていると時々朝鮮人に乗っ取られているのではないだろうかと思わざるを得ない報道や番組が多い
先生これをみてください今日から始まるTBSのドラマだそです
http://www.tbs.co.jp/smile09/story/
もう前々からTBSと在日の政治工作としてカルデロンを含めて用意してあったのでは?と言う疑いではなく確信します。
我々の祖父祖祖父はフィリピン人や韓国人のために働いてきたのではありません我々が先祖から作り上げた社会学校は日本人の子供のためにあるのであって外人のためにあるのではありません。
日本と言う巣に外人が卵を産みつけ我々に育てさせようとしています
戦わないと乗っ取られるのではないのでしょうか
TBSの報道には疑いより恐怖を感じます
2009/4/17(金) 午前 9:22 [ 鳥 ]
これほど筋が通った正論は他にありません。
マスコミがどう報道しようと、「おかしい」と感じている国民はたくさんいます!
応援しています。
2009/4/17(金) 午前 9:34 [ nyan ]
それなりに評価して応援しておりますが、誠に申し訳ありませんが赤池さんの対処は国籍法にしろ今回の件にしろ、対処があまりに遅く全て終わってしまってからの人気取りのポーズにしか見えません。
2009/4/17(金) 午前 9:37 [ reb*ne*0*0 ]
確信犯的に協力する方々と断定はできませんが、「ノリコ基金」なるものを設立し"学費がない"、"叔母(身元保証人)だけでは生活が苦しい"と募金を集めている者もいます。本当に長女の身元保証人が保証人としての責務(経済的保証)を果たしているのかが非常に心配です。この点もぜひ調べて頂きたいです。
2009/4/17(金) 午前 9:39 [ XV359 ]