加速する「ネット政治」 現実選挙にも影響、世論形成で危うさも
2009/03/31 23:50更新
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インターネットを利用する若者は、政治に関心をもっているという。ネットと政治。新聞やテレビなどの既存メディアによる世論調査をはるかにしのぐサンプル数を誇るサイトが政界でも話題を呼ぶなど、政治家も「ネット世論」を無視できない状況になってきた。地方選挙では、鹿児島県阿久根市長が自身のホームページで「市議の不人気投票」を掲載した騒動も記憶に新しい。ネット利用者やサイト運営者は現実の政治にどこまで影響を及ぼすのか。その一端をのぞいてみると…。
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記事本文の続き ■ケタ違いの7万人世論調査、「偏り」に課題
1000万人の登録者がいる動画サイト「ニコニコ動画(ニコ動)」のネット世論調査は昨年8月から不定期で実施。特定の日時にたまたまサイト上で動画を見ている人を対象に、動画に調査画面を割り込ませる「ニコ割アンケート」の一環として行われ、毎回7万人前後が回答している。既存の世論調査の回答者は500~3000人程度とされ、これに比べるとサンプル数はかなり多い。回答者には未成年も含まれるが、総合値は20~40代の回答を集計する。
3月4日の調査では麻生内閣の支持率が32%、政党支持率は自民35%、民主14%、共産4%、公明2%、社民1%-だった。既存の世論調査と比べて麻生内閣と自民党の支持率が高いのが特徴だ。
ニコ動を運営する情報サービス会社ニワンゴ(東京)の小玉誠一広報・IR室長(42)は「ネット上の冷静な議論の助けになるのでは、と始めた。予告なく調査することで組織票による結果の操作が事実上不可能になり、ネットユーザーのリアルな意見を集計できる」とアピールする。
主要政党はどう受け止めているのか。自民党は「既存の世論調査より対象がけた違いに多いので注目している。結果は毎回、広報本部長に上げている」(広報本部)。民主党は「これも一つの国民の声だと思う」(広報委員会)。
公明党は「参加者の年齢層が若いことや、いわゆる世論とは同一のものではないことを考慮した上で、参考にしている」(ネット企画部)と限定的な受け止め方。ニコ動利用者に「C(志位)」という愛称で知られる共産党の志位和夫委員長は「既存調査は対象が自宅で固定電話に出られる層に限られる。おのずから違いがあり、両方を見ないと分からないと思う」と語った。
ネット上の世論調査としては、福岡市のホームページ企画制作会社イーハイブが平成12年から非営利で続ける「オンライン世論調査」や、東京都のリサーチ会社イクオリティが16年から営利で行っている「世論調査.net」などがある。いずれも課題は調査対象の偏りだ。
ニコ動の場合、参加者数がけた違いに多いため回答が平準化されるという長所はあるが、調査対象はニコ動の利用者に限られる。既存の世論調査のように年齢、性別、地域バランスが取れるよう対象を無作為に抽出するわけではない。こうした点についてニコ動の番組にかかわる政治評論家、角谷浩一さん(47)は「ネット世論がいわゆる民意だとまでは思わないが、世の中の空気は分かるのではないか」と指摘する。
■反市長派を“攻撃”、話題先行の阿久根市議選
「市議の不人気投票」などブログ上の書き込みが問題視され、2月6日に不信任決議を受けた鹿児島県阿久根市の竹原信一市長(50)は自らが議会を解散したことに伴う出直し市議選(定数16)でも、ブログ上で有権者に訴えかける“ネット選挙”を展開した。
告示前の2月23日には、年収700万円以上の職員が過半数を占める市職員全員の給与明細一覧を公開。地元市民の平均年収とかけ離れた実態に、「良心の破綻(はたん)した無能な人間が選挙で選ばれた結果だろう」と反市長派が牛耳る議会を批判し、ネット上の話題をさらった。
ただ、人口約2万4000人のうち、65歳以上が3割以上を占める地元では「市長のブログなんて1度も見たことがない」(60代男性)との声も多く、存在感の薄さは否めない。
むしろ影響力があったのはビラの方で、市職員の給与明細一覧を簡単にまとめたビラ2000枚を配布したという市長派の政治団体「阿想会」の松岡徳博会長(54)は、「ビラの方が有権者によく読まれた」と明かす。
竹原市長は産経新聞の取材に「市外からのアクセスが大半」と認め、「市や議会のひどい実態を伝えるために何もしないのもむなしいので、ブログで訴えているだけ」と話した。
一方、告示日の3月15日付のブログでは、2つのエントリーが“グレーゾーン”として波紋を広げた。
一つは市長派の新人候補4人の実名紹介。もう一つは、反市長派候補の政務調査費問題を追及した地元テレビ局の番組映像を閲覧できるよう、無断でリンクを設定したことだ。
市選管は当初、実名紹介について公職選挙法に抵触する可能性もあるとみていたが、「名前だけの書き込みでは選挙運動と解釈するのは難しい」として注意するにとどめた。無断リンクについても、「(映像を)張り付けただけであって、具体的な候補者に関する記述を行っていない」として事実上黙認。結局、リンクは地元テレビ局の抗議で削除された。
3月22日の開票結果では、市長派は選挙前の1人から5人に増加し、当選者の合計得票数も反市長派に迫る健闘をみせた。ただ、市長の一連の“攻撃的”な手法には批判的な声が多く、ネット利用の政治活動や世論形成の危うさが浮かんでいる。
公職選挙法では選挙期間中にはがきなどの法定文書、図画以外の頒布を禁止している。総務省によると、パソコン画面などに表示されるホームページ(HP)やブログも文書図画にあたると解釈され、「選挙運動」にかかわる内容を記述した内容は更新できないことになっている。ただ、現実には国政選挙の期間中に党首の第一声や遊説活動を掲載している政党のHPは少なくない。政党が党幹部らの遊説活動を「政治活動」と位置づけているためだ。総務省でも「選挙運動」と「政治活動」の明確な基準がないために、こうした状況に追随せざる得ないのが現状となっている。
インターネットを活用した「選挙運動」をめぐっては、総務省の研究会は平成14年にHPに限定してネット利用を解禁すべきとの見解をまとめ、民主党も18年に公選法改正案を国会に提出している。
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