◇…スポーツ報知の購読申し込みは、フリーダイヤル 0120-16-4341(イロ ヨミヨイ) まで…◇
◇…過去の記事は、ご使用のプロバイダのデータベース・サービスをご利用ください。…◇
プロボクシング元世界ランカーで、元東洋太平洋フライ級王者の小松則幸さん(グリーンツダ)が13日、精神修行で訪れていた滋賀県大津市葛川坊村町の比良山系三ノ滝で死亡した。誤って滝つぼに落ちたと見られる。29歳だった。小松さんは5月13日の亀田大毅(20)=亀田=とのノンタイトル戦(後楽園ホール)に向け、11日から京都市内の寺に座禅を組みに行っていた。世界戦の経験もあるジムの人気ボクサーの突然の事故死に、関係者は悲しみに包まれた。小松さんのプロ戦績は24勝(10KO)6敗6分け。
注目の一戦を前にした現役プロボクサーが事故死した。大津北署によると午後4時15分ごろ、同行していたクラブ関係者らが「滝付近で姿が見えなくなった」と地元の住民を通じて通報。6時25分ごろ、小松さんが滝の底に沈んでいるのを捜索中の消防隊員が発見。引き揚げたが死亡が確認された。滝のそばに小松さんの上着が残されており、同署は誤って滝つぼに落ちたとみて、詳しい状況を調べている。
小松さんはグリーンツダジムの本石昌也マネジャーらとともに、11日から京都市内で座禅修行に出かけていた。突然の死にアドバイスしていたトレーナーは「なぜ滋賀にいたのかわからない。あまりのショックで言葉にならない」と話した。
大毅戦に向けて3月中旬からスパーを始め、3月31日には12日にプロデビューした井岡一翔(20)と3回のスパー。「技術があるのはわかっているけれど、一番大事な気持ちがある。もっと強くなると思う」と後輩にエールを送っていたばかりだった。
97年にプロデビュー。打ち合いでKOを狙うスタイルで、02年9月に東洋太平洋フライ級王座を獲得し、05年1月にはWBC世界フライ級王座に挑戦。06年6月には日本王座とのダブルタイトルマッチで内藤大助(34)=宮田ジム=と壮絶な打撃戦の末6回TKO負けした。豊富なキャリアとリング上での派手なマイクパフォーマンスからジムの看板選手として人気を集め、興行はいつも小松さんのファンでいっぱいだった。
今年2月の試合では1回TKO負け。小松さんにとって大毅戦はもう一度ブレークする大きなチャンスだった。知人らには「追いつめないといけない」と話していたといい、デビュー当初から小松さんを知るトレーナーは「性格はナイーブで気持ちで戦うタイプ。冗談抜きで命をかけていたと思う」と、この一戦にかける思いを代弁した。
グリーンツダジムは元世界2階級制覇の井岡弘樹ら世界王者を3人輩出した関西の名門。しかし07年5月には元2団体世界ミニマム級王者の高山勝成へのファイトマネー330万円の未払い問題が発覚するなど経営難に陥り、ジム解散の危機に直面。昨年4月に大阪市西成区から東成区へ移転し、本石マネジャーを中心に若手の育成で再起をはかっていた矢先だった。14日にも、大阪でジム側が事故について対応すると思われる。
◆大毅ショック ○…思わぬ対戦相手の訃報(ふほう)に大毅の所属する亀田ジムは対応に追われた。五十嵐紀行会長(34)は書面でコメントを発表。知らせを受けた大毅について「相当ショックを受けている様子でした」とし、本人のコメントを差し控えた。5月13日の試合については開催する方向だが、詳細については突然の出来事だったため「今後、関係スタッフと話し合い決めていく次第です」と、話すにとどめた。
◆小松則幸(こまつ・のりゆき)1979年4月21日、大阪・寝屋川市出身。エディタウンゼントジムから97年9月にプロデビュー。02年9月に東洋太平洋フライ級王座獲得。05年1月にWBC世界フライ級王座に挑戦、王者ポンサクレック・クラティンデーンジム(タイ)に5回TKO負け。05年11月に東洋太平洋同級を再奪取も06年6月、内藤大助に6回TKO負けを喫した。同年12月にグリーンツダジムに移籍。165センチの右ファイター。
◆三ノ滝 滋賀・大津市葛川坊村町の比良山系の白滝山中に位置し、平安時代初期に比叡山回峰行の始祖・相応が修行した地として知られる。近くにある明王院には相応が滝に飛び込み、引き揚げた霊木で刻んだとされる不動明王像がある。かつて室町幕府3代将軍の足利義満らも参籠(さんろう)したとも。毎年7月に行者が訪れ、読経をあげる修行は行うが、水行を行う者はいないという。滝の落差は約40メートルで、滝つぼの直径は12~13メートル。別名・不動滝。
◆主なプロボクサーの死亡事故
▽交通事故 1973年1月25日、当時WBA世界フライ級王者、大場政夫さんが都内で運転を誤り、対向車線のトラックと衝突。享年23歳。
▽リング禍 今年3月21日の日本ミニマム級王座決定戦でKO負けした同1位の辻昌建さん(享年30歳)が同24日、急性硬膜下血腫で死亡。日本ボクシングコミッション(JBC)によれば、国内試合の事故で死亡したのは、日本バンタム級王者グレート金山さん(95年9月9日死去、享年33歳)ら、52年のJBC発足以来、35人目。
▽引退後水死 元東洋太平洋フェザー級王者、浅川誠二さん(享年33歳)が2001年7月25日、兵庫県三木市のつくはら湖で趣味のバス釣り中におぼれ、同30日に遺体で発見された。
(2009年4月14日10時27分 スポーツ報知)