MKの悪を支えているもの その2

 前回力尽きたシリーズの2回目です。第二章に行く前に第一章の「なぜ悪いか」部分がまだ足りないだろうというご指摘を受けました。その通りだと思いますので、章だてを変更して「なぜ悪いか」部分を付け足します。

第二章 MK式給与計算は経営の放棄

 MKの給与計算は「売上マイナス経費」であることは有名です。要するに経営リスクがほとんどゼロです。おそるべき経営放棄になっています。

 たとえば営業マンにMK流の報酬を当てはめましょう。MK流の営業会社の報酬は「粗利マイナス経費」です。確かに優秀な営業マンはどかんと報酬が入ります。しかし売り上げが減ってくると当然粗利は減り、報酬はあるころでブレークイーブン、つまりゼロに達します。それよりも売り上げが下がると論理的にはマイナスの給料となります。被雇用者というより事業家の世界です。

 実はMKで給料がマイナスになるという話をよく聞きます。さすがにいくらなんでもそれはないだろうとは思いますが、上の方程式の定義域を0以上の整数に取れば、固定経費分を稼ぐまではマイナスの報酬ということになります。

 話は少し脱線します。東京の「まとも」と言われている会社でも「GPS車両利用費」、「黒タク乗務費」を平気で取っています。これはまさしくミニMKです。私はよく乗務していた頃、最初の一本を終えて初めて「やっとポジションがマイナスからゼロになったか」と思ったものです。後で詳しく書きますが、多くのタクシー事業者はMKだけが悪いみたいなことを言ってちゃダメです。私から言わせれば五十歩百歩です。

 営業マンの話に戻ります。さて、このMK流報酬の会社の経営者はどう考えるでしょうか。会社の利益は、実は総売上に全く関係ありません。関係あるのは営業マンの数です。売上が変わらなくても営業部員が倍になれば会社の利益は倍になります。確かに高額収入の営業マンは広告塔として使えますし、求人広告に出す平均給与を上げるためには使えますが、エース営業マンが会社にもたらす利益はダメ社員がもたらすそれと同じです。結果、経営者が考えることは「営業マンをひたすら増やす」に収斂するはずです。

 こういう会社がもし存在したら、営業部内の雰囲気は最悪でしょうね。同僚は全員が敵です。新人はイジメにあい、営業技術を教えるなんてことは夢にも考えません。そして会社は営業マンを育てようとはしません。単に報酬で動かすだけです。これは経営の放棄だと私は思います。

 「しかしMKタクシーは教育に力を入れているではないか」という反論が来そうです。これはMKの創業者の実に非凡なところで、自らのビジネスモデルの最も弱い部分を徹底的に補強してこれを世の中にアピールしました。ただし、私個人は、あれは教育ではなく別のカテゴリーに入るものではないかと感じています。

 また脱線してしまいました。MK型報酬の世界では営業マンの稼ぎと会社の利益は無関係という話をしました。これが歩合給の会社だと、営業マンが稼いでくれれば稼いでくれるほど会社は利益が出ます。営業マンを育てる一定のインセンティブが会社側に発生します。逆にダメ営業マンは会社の損になります。採用において会社に一定のリスクが発生するということです。

 時間給の会社ではさらに会社のリスクは高まります。ダメ社員は文字通り「給料泥棒」となります。会社にとって社員の採用と教育は最高度の投資案件とならざるを得ません。日本の多くのサラリーマン(行政官や裁判官を含む)はこの状態を当然と思っており、労働基準法も基本的に時間給の概念を中核に据えています。こちら側の世界から見ると一般タクシーの歩合給文化は別世界であり、MK式の報酬体系などは想像を絶する世界なのだと思います。本稿最後の脱線をしますと、オーナー経営者の考えていることがサラリーマンに理解できないのはこの断絶のせいなのかなと思います。

 日本を含む先進国の労働契約は、情報や立場の非対称性を根拠に、雇用者側により多くの責任を負わせる非対称の形になっています(個人的には雇用契約の非対称性が行き過ぎているのが日本経済沈滞の原因だと思いますが)。そのなかで、被雇用者側がほぼすべてのリスクを背負うMK式雇用(そもそもこれが雇用と言えるのかどうかも怪しいですが)は、明らかに異質です。異質すぎます。

 その結果、MKでは数限りない労使間のトラブルが発生しています。今回の給料ゼロ訴訟もその一つです。どう見ても労働基準法違反、最低賃金法違反ですし、求人広告は不当表示だと私は思います。大阪地裁がどのような判断をするのかが注目される所以です。
押していただけると励みになります

コメント

勝つとは思わないが、裁判でMKがもし勝っちゃったら他のタクシーは全てMKの真似をした経営に変えるだろう。
主義主張で動いているのではなく、右習えで動いている経営者しか居ない業界。
悪い悪いと言うのは簡単だが、それに変わる素晴らしい代替案を提示して乗務員待遇を良く出来なければ共産党と同じ。
キャッシュレスタクシーなど経費ばかり掛かってプラスに転じない発想じゃなく、管理人さんには共産党とは違う具体的な代替案を提示してもらいたい物である。

右の サイト内検索+α で検索のこと

累進歩合は廃止が順当

Re: タイトルなし

> 悪い悪いと言うのは簡単だが、それに変わる素晴らしい代替案を提示して乗務員待遇を良く出来なければ共産党と同じ。

ご自分に向かって言ってるんですね。よく分かります。

私の勤務する会社には「走行キロ不足」のペナルティがあります。地方都市なので駅付けがほぼメインなのですが、一日の走行キロが規定に達しないと給料からマイナスするというもの。その癖無線稼動を増やす為の営業は経費がかかるといってしない。これなども会社から乗務員へのリスク転嫁だと思います。全体に乗客の少ない日の収入を乗務員の報酬を削って補填するわけですから。
経営の放棄、別にMKさんだけに限ったものでもないですね。

つい17〜18年前までは、売り上げのいかんを問わず、入社一年以上経たないとボーナスは無し。だとかの、会社の胸先三寸で分配率が決定されるというおよそ前近代的な分配手法が普通に散見されていましたが、ひょっとすると現在でもそのようなタクシー業界用語で形容するところの「家庭的雰囲気な会社」がまだまだ沢山残っているのかも知れません。
何しろ、竹中平蔵大先生に「労働基準法を遵守していない」とTV番組の中でお叱りを受ける程の業種ですから。
また、MKほどではありませんが、結構な割合でMK流の労使分配方法(リースではありませんが)や、乗務員洗脳教育を模倣している会社は多いです。そういった会社は押し並べて地域の普通の会社よりも業績が上であることが多いのも特徴です。
ようするに労使分配での大まかな問題点から言えば、MKだけが殊更特別というわけではなく、単に程度の問題でしかありません。

それに、既存の事業者が大騒ぎしているのは「規制緩和問題」の一点だけであり、「タクシーとしての経営手法」や「労使分配問題」そのものが槍玉に挙げられたことはありません。

簡単にいうとMK以外の事業者は、自分に取って都合の悪いところだけはMKを非難しつつ、メリットのある部分だけはチャッカリと良いとこ取りしてホッカムリしている。そういうことではないかと思います。

「MK式給与計算」は異質な問題点を含んでいます

給料(賃金)が確定した後に、会社側が、この給料について制裁やペナルティを目的として差し引くこと問題と、

給料(賃金)が確定する前の段階、言い換えれば、給与計算式の段階で、会社側が、タクシー乗務員の「売上」からいろいろ差し引く問題とは、

法的にも、又、会計学的にも、全く異なるものです。

 前者、給料(賃金)が確定した後に、会社側が、この給料について制裁やペナルティを目的として差し引くこと問題については、労働基準法をはじめとして多数の法律による『縛り』が存在するため、タクシーの乗務員さんは対応がし易いはずです。

 しかし、後者については、問題が複雑になります。

 このことについては、「MKの悪を支えているもの その3」に記載しました。

「MK式給与計算」は異質な問題点を含んでいます

給料(賃金)が確定した後に、会社側が、この給料について制裁やペナルティを目的として差し引く問題と、

給料(賃金)が確定する前の段階、言い換えれば、給与計算式の段階で、会社側が、タクシー乗務員の「売上」からいろいろ差し引く問題とは、

法的にも、又、会計学的にも、全く異なるものです。

 前者、給料(賃金)が確定した後に、会社側が、この給料について制裁やペナルティを目的として差し引く問題については、労働基準法をはじめとして多数の法律による『縛り』が存在するため、タクシーの乗務員さんは対応がし易いはずです。

 しかし、後者については、問題が複雑になります。

 このことについては、「MKの悪を支えているもの その3」に記載しました。

(管理人さんへ、若干修正しましたので2009/03/22 10:34を削除願います。 )

コメントの投稿




URL:

Comment:

Pass:

 管理者にだけ表示を許可する