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政府が昨年8月にまとめた第3次薬物乱用防止5カ年戦略によると、覚せい剤や合成麻薬、アヘン、大麻の検挙人数(07年)は1万5175人。覚せい剤が8割を占めるものの、大麻の2375人は10年前の約2倍に増加した。20代の乱用が顕著という。若者はなぜ薬物に走るのか。
「インターネットで手に入りやすくなった。目標や夢を持ちにくい社会で、今が楽しければいい風潮が要因」と推測するのは、埼玉県立精神医療センター副病院長の成瀬暢也さん。「ださいイメージのシンナーとは違ってファッション性もある」
軽い気持ちで始めると命取りになる。「たまに吸う『乱用』がいつしか、切れると不快感となる。しまいに妄想や幻覚、幻聴を繰り返す」。これが薬物依存症で、成瀬さんによると「意志が弱いからやめられないのではなく、治療が必要な病気」なのだ。
川崎市の岡崎さんは、今はNPO「川崎ダルク支援会」の責任者。「自分が病気だと受け入れ、新しい生き方を求めて前に進むことから始まる」と話す。約3年前に母(享年59)を病気で亡くした時「クリーンな心と体で見送れたのが救い」だった。
小西さんの長男はダルクによって薬物依存から脱したが統合失調症と診断され、1人アパートで暮らす。小西さん夫妻は新潟県「家族会」世話人として奔走するが、家族の高齢化が進み、「本人の更生を見届けずに亡くなる方も多い」と嘆く。
若者よ、それでも、大麻を吸いますか?
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毎日新聞 2009年4月15日 東京夕刊