雑誌記事バイリンガルの赤ん坊は有利?ナショナルジオグラフィック 公式日本語サイト4月14日(火) 18時44分配信 / 海外 - 海外総合
生後7カ月の赤ん坊を対象にした新たな研究で、新生児に2つ以上の言語を聞かせても混乱を招くことはなく、むしろ知能を高める効果があることが示された。 研究リーダーで、イタリア、トリエステにある国際先端研究所の言語認知発達研究室に所属するジャック・メレール氏は、「ヨーロッパの多くの国では、親たちは子どもへのバイリンガル教育に慎重で、1つの言語だけで話そうとする。子どもが学校に通い始めたときなどに苦しむかもしれないと心配しているためだ。だが、今回の結果を見る限りそれは非常に疑わしい」と言う。 研究に参加したのは40人の赤ん坊。そのうち半数が家庭でイタリア語ともう1つの言語(スロベニア語、スペイン語、英語、アラビア語、デンマーク語など)を普段から耳にしており、残りの半数は家庭でイタリア語しか使われていない。 今回のテストでは、コンピューター画面に表示されるアニメのキャラクターを使用して言語処理能力が調べられた。用意されたのは、2つのエリアに分かれた画面と3音節の単語のような音が2種類。どちらかの音が一瞬流れてから、それに対応した方のエリアだけにキャラクターが表示される。赤ん坊がキャラクターの現れるエリアを音から予想できるかテストされた。 その結果、バイリンガルのグループは新しい音を学び、それを手掛かりにどこにキャラクターが現れるかを予測できたのに対し、イタリア語だけの家庭で育ったグループはできなかった。バイリンガルの赤ん坊が持つこのような能力は、言語の切り替え以外にも応用できるという。メレール氏はこの高度な認知能力を、「脳が正しい作業のために正しいツールを選ぶ能力」と例えた。これは実行機能とも呼ばれる。 脳はこの処理を行う際、状況の変化に応じて学習した反応を素早く切り替える。もともと柔軟性のある脳にとっては基本的な処理であるため、「1言語しか聞いていない赤ん坊も若いうちにこの能力が鍛えられていく」と、メレール氏は提唱する。同氏によると、研究に参加した赤ん坊はまだ話せないが、バイリンガルの大人は言語を切り替える際に同様の能力を使用するという。 メレール氏らは既に別の研究で、赤ん坊が極めて早い時期から異なる言語の音を区別できることを示している。ただし、「1つの言語しか習得していない子どもも同年代のマルチリンガルに追い付くことは可能だ。バイリンガルの方が賢いと結論づけるつもりはない」と、メレール氏は指摘する。 今回の研究結果は14日、「Proceedings of the National Academy of Sciences」誌で発表された。 James Owen for National Geographic News 【関連コンテンツ】 ・ ストレスと闘う遺伝子が幼児虐待で変化 ・ 友人の数や社交性は遺伝子で決まる? ・ 人の災難を喜ぶいじめっ子の脳 ・ “左利き”の生き残り戦略 ・ オランウータンの口笛、言語の起源か?
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