【社会】失業保険の制度知らず…愛知・豊川市の男性、厚生年金打ち切り2009年4月15日 14時28分
定年後の第2の人生で“パート切り”に遭い、わずかな失業保険を受け取ったばかりに、厚生年金が打ち切られる−。そんなケースが愛知県であったことが分かった。厚生労働省は「本人が失業保険を選んだため」とつれないが、失業者からは「制度を十分、知らされていない。国にだまされたようなもの」と悲鳴が上がる。 同県豊川市の浜本延夫さん(64)は定年退職後、自動車部品メーカーの下請け会社にパート社員として入社。厚生年金を受け取りながら月9万円ほどの収入を得ていた。 自動車不況のあおりで昨年末、「契約更新はしない」と言い渡された。10日ほどして会社から離職票が送られ「ハローワークで手続きすれば失業保険がもらえます」と書いてあった。 1月下旬にハローワーク豊川で講習を受けた後、窓口で失業保険を申請。手続きは淡々と進み、3月に6万6千円が振り込まれた。ところが、ハローワークで4月の失業保険を申請した3月上旬、帰宅すると厚生年金支給停止の通知が届いていた。「なぜ?」。すぐにハローワークと社会保険事務所に足を運び、失業保険を受け取ると厚生年金が打ち切られることを初めて知った。それまで受け取っていた厚生年金は19万6千円。月額13万円の損失だ。 「窓口で制度を説明してもらえれば失業保険の申請はしなかった」。ハローワークで、そう主張したが、「ご自身で申請され受理した以上、どうしようもない」。その日申請した4月分の失業保険は取り消してもらえたが、3月分の13万円は戻らない。浜本さんは思う。「制度を知らずに何カ月分も損してしまう人もいるのでは」 厚労省雇用保険課は「同様のケースは以前から一定程度あるが、件数は把握していない。制度は周知しているはずで、本人が選択したこと」。一方、ハローワーク豊川雇用保険課の松下浩巳課長は「説明不足だったとも思う。今後は制度の周知に努めたい」としている。 ◆失業保険と厚生年金 60歳以上65歳未満の特別支給の老齢厚生年金受給者が失業保険を受け取った場合、その期間は自動的に厚生年金が停止される。厚生年金は高齢化などにより働けない人に対する所得補償で、失業保険は働く意思も能力もあるのに働けない人に対する所得補償。2つの制度は趣旨が矛盾するとして、当時の厚生省が1998年、失業保険受給者には厚生年金を支給しない制度に改めた。 (中日新聞)
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