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番組バックナンバー
目次 > 2009年4月14日放送の番組バックナンバー


企画/「医療危機に揺れる医学生」

医師を育てる研修制度が、来年から大きく変わろうとしています。地域の病院を悩ませる医師不足を解決するためです。
医療の危機が叫ばれる中、医学生たちは今、何を感じているのか、取材しました。


モニター画面で風船割りゲームをする若者たち。彼らは、大阪市立大学医学部の医学生です。最新のシミュレーターを使った大腸カメラのトレーニング中なのです。このシミュレーション・センターでは、医療機器や人体模型などを使って、注射からエコー検査、胃カメラまで、様々な技術を学ぶことができます。
以前は現場で覚えるしかなかった技術を学べるシミュレーター、いち早く使いこなしていたのは、垣井文八(かきい・ぶんぱち)さん(23)、大阪生まれ・大阪育ちの医学生です。 「思うようにはいかないんで、先生ってすごいんやなって、当たり前ですけど」(垣井さん)


垣井さんが医師を志したのは、「小児科医になりたい」という思いからです。 「(小児科医が)足りてないという話が僕が高校生くらいの時に出始めて、何かできへんかなと思って、頑張ろうかなというのが単純な考えなんですけど」(垣井さん)
一念発起して飛び込んだ医学部の6年間。4年生までは、講義を中心に、解剖実習などで知識を身につけます。病院の現場で学び始めるのは意外と遅く、5年生になってからです。「君がまずリラックス、ちょっと口角上げて。しっかり目を見てうなずいてあげる」(指導医・首藤太一准教授)

垣井さんは初めて、外来患者の問診を体験しました。
 「垣井君といって医学部の5年生で、来年お医者さんになるんですが」「お子様とかお孫さんの世代は彼らがもう10年したら1人前になってやらんとアカンので、ちょっとご協力いただけたらと」(首藤准教授)
ベテラン医師ならあっという間に終わる問診や診察も、学生には大変な仕事です。
「お酒はだいぶ飲まれるんですか?」(垣井)
 (脈を取ると・・・)
「ちょっと早いですね、100…」(垣井)
「そんなあるか?」(患者)
「時計もなくて脈拍はかれないよ」(首藤准教授)

「初めてやからな。顔見たらまだ子どもや」(患者)
「初診の患者さんにはじめて接して話を聞いて、いろんな情報をリストアップしてチェックしていくのが難しいなと」(垣井さん)
こうして医学生は、患者から多くのことを学んでいきます。
「患者さんたちというのは、お医者さんは特別だからとか、特別な存在で育ってるというのを今でもお持ちの方が多いです。でも、そのへんのローソンでたむろしている子とほとんど変わらない子達が、ただ勉強が出来るということで医学部に来てるだけというのも多いのです。患者さんと彼らの考えのズレというのはよく感じますね」(首藤准教授)


医学部を卒業すると、現場研修は一気に本格化します。大阪府吹田市の千里救命救急センターでは、1年目の新人医師たちが、日々、研修に励んでいます。心筋梗塞を起こした患者の血管に細い管を通す手術に、新人医師が初めて立ち会いました。「指を離してケースごと引っ張ってくる。そうするとワイヤが出てくる」(指導医)

新人医師には2年間で、救急や産婦人科、小児科など7つの診療科を回って研修することが義務付けられています。幅広い経験を通して良い医師を育てようと、2004年から始まった制度です。
「昔は卒業したらすぐ医局入ったり、学生時代に(進路を)決めてすぐ入るしかなかったけど、今は2年間考える時間があるから」(新人医師)
「卒業した時に抱いてるイメージと実際に回ってみて抱くイメージが違うケースがあると思うので、回ってみてから決めれるのはいいと思うんですけど」(新人医師)


しかし、研修制度が今、大きな曲がり角に立たされています。原因は、「医師不足」です。この制度で研修先を自由に選べるようになったことから、新人医師は都会に集中し、地方の医師不足を加速させたと言われているのです。そこで国は、5年で制度の見直しに着手しました。研修期間を短縮できるようにするとともに、都道府県ごとに定員の上限を定める方針を打ち出しました。大阪や京都などの新人医師を減らし、地方に回そうという考えです。

来年卒業する垣井さん君の学年は、突然、制度の見直しに直面しました。サークルの先輩に不安な胸のうちを明かします。
 「地域枠(定員)ってすごいネガティブやんな。ダメって、それ以上ダメみたいな」(垣井さん)
「地域で何でもできるドクターが足りへん。そういう教育を実際俺らは受けてきてないから。そういう意味では、地方行って何でもやらなアカンっていう人の枠を確保するっていうのは、いいことなんかなと思うけどな」(上級生)
「そこ(地方)で教えてくれる先生が果たしていてるのかなというのがすごい不安じゃなかった?地方行く時に果たして指導医の先生が充実してるのかとか」(上級生)


一人前になるまで10年かかるといわれる医師の道、医療危機は待ってくれません。地域の医療を支えるために、医学生の立場からできることはないのか――そう考えた垣井君さんたちが注目したのは、「AED」でした。心臓に電気ショックを与え、心臓マヒなどで倒れた患者を救うAED。垣井さんらはAEDを普及させることで地域の救命率を上げようと、おととしから講習会を開いています。
 「地元(富田林)で救急車の到着が遅いというニュースが多い時期だったので、自分も救急車が到着するまでに何か出来ることがあるんじゃないかなと」(参加した医学生)
「ふつうの生活してたら絶対に関われない人達と講習会を通して関ることによって、私達の知識の幅というのも医者としての幅も広がると思って」(参加した医学生)
多くの人と接する中で学生たちが思い描いてきたのは、医師と患者が一緒になって支える医療のあり方でした。
 「倒れている人のそばにいた人、その人しかできません」「その人がやってあげるかあげないかによって、助かる可能性がぐっと上がります」「世の中がもっと良くなっていったらいいなと思って僕らはこういう活動しています」(医学生)
新しく医師になる若者は、年間約8000人。多くの課題を抱えた医療体制の中に飛び込んでいきます。


2009年4月14日放送

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