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救急勤務医手当 はやピンチ 大阪府・市補助せず

 大阪府内の病院関係者らの訴えで、夜間・休日の救急医の待遇改善のため、国が今年度に新設した「救急勤務医手当」について、手当の3分の2の分担、補助が期待された大阪府と大阪市が、いずれも補助分を今年度予算に計上しなかったことが15日、分かった。都道府県の手当への補助は義務ではないが、“制度発祥の地”である府、市が補助しない皮肉な事態。「財政難」が理由だが、制度普及を妨げ、救急医療の医師確保に影響する恐れもある。

 救急勤務医手当の創設は、昨年7月に舛添要一厚生労働相が大阪の医療現場を視察した際、府内の病院関係者らが夜間・休日の救急医の待遇改善を直訴したことがきっかけ。検討委員会を経て、わずか1カ月後の8月には、政府の「5つの安心プラン」の目玉として創設が決まった。

 関係者によると、スピード決定の背景には、大阪特有の事情があった。府内は首都圏などと異なり、2次救急の9割を民間病院が担当。医師不足で2次救急指定を辞退する民間病院が増え、本来は重篤患者を担当する3次救急機関の負担が増加した。

 救急患者の“たらい回し”も問題となり、2次、3次救急での医師不足が深刻になっている。

 大阪市内の300床クラスの民間病院で、夜間の当直医は2、3人が必要。救急1件当たり平均4万円の費用がかかり、経営的な負担は少なくはない。このため同手当で救急医の待遇を改善し、医師確保を目指した。

 ところが、大阪府は今年度予算で、同手当の「導入促進費用」として7億6800万円を計上したが、これは国の補助分として預かる金額。府の補助分として最大約15億円を上積みできるが、計上しなかった。大阪市も計上を見送った。

 都道府県の補助は義務ではないが、東京都や三重県は、それぞれ補助分3分の1を上積み計上。上積み分がないと、医療機関が残り3分の2を負担することになり、同手当導入に二の足を踏むことが懸念される。

 大阪府医療対策課は「国の要綱がまだ固まっておらず、財政状況が厳しいため、計上は見送った」。大阪市健康施策担当は「救急医療は第一義的に都道府県が広域的に担当するもの。今回、肝心の府が見合わせたため、予算計上しなかった」とする。一方、厚労省医政局指導課は「近隣の県が補助を始めれば、歩調を合わせざるを得なくなるのでは」としている。

【救急勤務医手当】医師に支払われる給与規定に同手当を新設する医療機関に対し、その3分の1を国が補助する制度。残り3分の2は都道府県と市町村、医療機関が分担する。支給額は最大で夜間が1人当たり1万8659円、休日昼間が同1万3570円。国の補助は都道府県を通じて実施。医師不足への対策は従来は診療報酬の引き上げが一般的だったが、今回の手当は医師の所得を直接支援する形となる。

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