2007年12月30日(日)
腹立たしくて恥ずかしい
テーマ:フィギュアスケート
以前、Sports@niftyに鈴木明子選手のことを書いた。
大学に入ってから摂食障害で体重を落としてしまい、スケートどころか普通に生活することも大変な時期があったそうだ。食べて消化するということ自体も体力を使うので、症状が進むと、食べようにも食べることができなくなってしまう。亡くなる人も少なくない。
摂食障害を克服することはとても難しい。ましてやアスリートとして復活した人など聞いたことがない。
鈴木選手は、スケートを滑りたいという一心で、少しずつ体重を増やし、すっかり落ちてしまった筋肉をつけて、一からスケートをやりなおしてリンクに帰ってきた。またスケートをやるというだけでもすごいことなのに、全日本選手権に出場し、最終グループでフリーを迎えるだなんて奇跡的なことだ。
ショートプログラムはトリプルフリップでステップアウトしてしまったが、ストレートラインステップでは拍手が起こった。ショートのステップでレベル3だったのは浅田、安藤、村主の3選手と鈴木選手の4人だが、鈴木選手はほとんどのジャッジからプラス2の評価を得て、ステップだけなら浅田選手と並んで全選手の中で一番得点が高かった。
会場にいる観客のうち、どれだけの人が鈴木選手のことを知っていたかわからない。ましてや彼女の摂食障害のことなど知らない人が大半だっただろう。それでも演技後には温かい拍手が送られた。理由は簡単だ。スケートが素晴らしかったからだ。
先日「フィギュアスケートDays」の企画で鈴木選手を取材させてもらったので、演技後の囲み取材が終わったあと「会場の拍手が温かかったね」と声をかけたら「そうなんですよ、もう終わったときに泣きそうで…」と言いながら、大きな瞳から大粒の涙をこぼした。
フリー終了後の囲み取材のときには、ある記者が「大変な思いをしてこの試合に臨んだわけですが…」と話しかけたら、それだけで感極まって「また最終グループに戻ってこれて…」と大きな瞳から涙が溢れた。本当に大変な思いをしてここまで戻ってきたのだ。
大阪から帰ってきて、録画しておいた放送を見ていたのだが、フリーの鈴木選手の演技のところで激怒してしまった。もちろんあの実況アナウンサーにだ。
同業者の先輩であるあのアナウンサーについては、これまでも時々書いてきた。それは一ファンであり同業者である私の個人的な思いだった。でも今回の実況は、同業者として許せない。
鈴木選手のフリーの音楽は「タイタニック」だった。演技前、例によってあらかじめ用意したであろう文章を読み上げた。「体調を崩し、苦しかった大学での4年間。乗り越えてきたからこその誓いがあります。鈴木明子、最終グループ堂々と」とまぁここまではいい。曲が始まったところであのアナウンサーはこう言った。
「もう沈んだりしません。タイタニック」
命の危険があったほどの大変な状況を、どうしてダジャレの題材にするのか。大変だった年月をなぜ安易に「沈んだ」などという言葉で表現するのか。知らないで言ったのならまだしも、体調を崩したことも苦しかったことも知っていて言っているのだ。信じられない。
演技の中盤にはこう言った。
「彼女の苦労を知っていれば、ディカプリオだって手を差し出すはず」
彼女の苦労を知っていたなら、そんなくだらないことなど絶対に言えないはずだ。そして一番腹が立ったのは、演技後ゲストの井上真央さんに話しかけたときだ。
「そして井上さん、まぁあの体重をコントロールしなければいけないスポーツというと摂食障害というのはついてくるんでしょうけれども、これ、女優という仕事にも当てはまりますよねー」
鈴木選手の摂食障害を、あのアナウンサーはゲストの女優さんへのただの話のフリに使った。摂食障害についてもスケートについても何の理解も無い。なんと中身の無い、愛情の無い、心のこもっていない言葉だろうか。一アナウンサーとして、どうやったらこんな心無い言葉が口から出てくるのか全く理解できない。
あれだけ頑張った演技の最中に、こんなに心無い、わけのわからない言葉が発せられているなんて、本当に恥ずかしいし、鈴木選手に申し訳無い。私が謝ることじゃないけれど、とにかく腹立たしくて恥ずかしいとしか言いようがない。
私にできることは、今後のアナウンサー人生において、絶対にこのようなバカなマネはしないことだ。誰かの辛い経験をダジャレのネタにするだなんて絶対にするものか。
大学に入ってから摂食障害で体重を落としてしまい、スケートどころか普通に生活することも大変な時期があったそうだ。食べて消化するということ自体も体力を使うので、症状が進むと、食べようにも食べることができなくなってしまう。亡くなる人も少なくない。
摂食障害を克服することはとても難しい。ましてやアスリートとして復活した人など聞いたことがない。
鈴木選手は、スケートを滑りたいという一心で、少しずつ体重を増やし、すっかり落ちてしまった筋肉をつけて、一からスケートをやりなおしてリンクに帰ってきた。またスケートをやるというだけでもすごいことなのに、全日本選手権に出場し、最終グループでフリーを迎えるだなんて奇跡的なことだ。
ショートプログラムはトリプルフリップでステップアウトしてしまったが、ストレートラインステップでは拍手が起こった。ショートのステップでレベル3だったのは浅田、安藤、村主の3選手と鈴木選手の4人だが、鈴木選手はほとんどのジャッジからプラス2の評価を得て、ステップだけなら浅田選手と並んで全選手の中で一番得点が高かった。
会場にいる観客のうち、どれだけの人が鈴木選手のことを知っていたかわからない。ましてや彼女の摂食障害のことなど知らない人が大半だっただろう。それでも演技後には温かい拍手が送られた。理由は簡単だ。スケートが素晴らしかったからだ。
先日「フィギュアスケートDays」の企画で鈴木選手を取材させてもらったので、演技後の囲み取材が終わったあと「会場の拍手が温かかったね」と声をかけたら「そうなんですよ、もう終わったときに泣きそうで…」と言いながら、大きな瞳から大粒の涙をこぼした。
フリー終了後の囲み取材のときには、ある記者が「大変な思いをしてこの試合に臨んだわけですが…」と話しかけたら、それだけで感極まって「また最終グループに戻ってこれて…」と大きな瞳から涙が溢れた。本当に大変な思いをしてここまで戻ってきたのだ。
大阪から帰ってきて、録画しておいた放送を見ていたのだが、フリーの鈴木選手の演技のところで激怒してしまった。もちろんあの実況アナウンサーにだ。
同業者の先輩であるあのアナウンサーについては、これまでも時々書いてきた。それは一ファンであり同業者である私の個人的な思いだった。でも今回の実況は、同業者として許せない。
鈴木選手のフリーの音楽は「タイタニック」だった。演技前、例によってあらかじめ用意したであろう文章を読み上げた。「体調を崩し、苦しかった大学での4年間。乗り越えてきたからこその誓いがあります。鈴木明子、最終グループ堂々と」とまぁここまではいい。曲が始まったところであのアナウンサーはこう言った。
「もう沈んだりしません。タイタニック」
命の危険があったほどの大変な状況を、どうしてダジャレの題材にするのか。大変だった年月をなぜ安易に「沈んだ」などという言葉で表現するのか。知らないで言ったのならまだしも、体調を崩したことも苦しかったことも知っていて言っているのだ。信じられない。
演技の中盤にはこう言った。
「彼女の苦労を知っていれば、ディカプリオだって手を差し出すはず」
彼女の苦労を知っていたなら、そんなくだらないことなど絶対に言えないはずだ。そして一番腹が立ったのは、演技後ゲストの井上真央さんに話しかけたときだ。
「そして井上さん、まぁあの体重をコントロールしなければいけないスポーツというと摂食障害というのはついてくるんでしょうけれども、これ、女優という仕事にも当てはまりますよねー」
鈴木選手の摂食障害を、あのアナウンサーはゲストの女優さんへのただの話のフリに使った。摂食障害についてもスケートについても何の理解も無い。なんと中身の無い、愛情の無い、心のこもっていない言葉だろうか。一アナウンサーとして、どうやったらこんな心無い言葉が口から出てくるのか全く理解できない。
あれだけ頑張った演技の最中に、こんなに心無い、わけのわからない言葉が発せられているなんて、本当に恥ずかしいし、鈴木選手に申し訳無い。私が謝ることじゃないけれど、とにかく腹立たしくて恥ずかしいとしか言いようがない。
私にできることは、今後のアナウンサー人生において、絶対にこのようなバカなマネはしないことだ。誰かの辛い経験をダジャレのネタにするだなんて絶対にするものか。