2008-11-10
■[編集]マンガ家志望者必携の一冊:泉信行「リーフィング・スルー/オンルッカー」
今日の一枚
寝返り。
第七回文学フリマに参加するため上京してきた泉信行さん達と新宿の中華料理屋で飲んだら、完徹になってしまった罠。泉さんは無事文学フリマに参加できたのかしら。
さて。その泉さんの文学フリマの新刊であり、私が刊行を一日千秋の思いで待っていた作品が「リーフィング・スルー/オンルッカー」です。泉さんは赤松健論や視線力学の基礎などで知られる、気鋭のマンガ研究者ですが、この本は彼が商業媒体などで書いてきた理論をまとめたものになっています。目次は以下の通り。
第一部 読者の〈目〉が漫画に与える力
立体的に注がれる視線
仮想アングルが生じる時
アングルの可動パターン
アングルが読者に何を与えるのか?
アングル揺動の八要因
コマの中に与えられるベクトル
ベクトルに絡む様々な効果
第四部 漫画の文法
左右で描き分けられる「立場」
漫画の会話は「主導権の奪い合い」
主語と客語の錯綜
左右のレイアウトと会話
世界地図
左右の位置関係と、メディアの文化差
国際化の中で
宇佐悠一郎『放課後ウインド・オーケストラ』
なぜ辻褄を合わせようとするのか?
この本は基本的にはディープなマンガ読みが読むことを想定して書かれています。たとえば第一部と第二部は「読者はマンガをどういう風に鑑賞しているのか」という、マンガ原稿の技術の巧拙以前に存在する、読者の視線がマンガに与える作用について言及しています。これはこれまであまり検討されてこなかった新しい視点であり、慣れていない私には少々手ごわく感じられました。
私がこの本をマンガ家志望者に推薦するのは、読者の心理に影響を与える技術について書かれた第三部と第四部が、コンパクトでとてもわかりやすいからです。内容が気になる人は泉さんが昔書いたこれとかこれをためしに読んでみてください。どうですか、わかりやすいでしょう? このような記事がまとめて一冊の本になっているわけです。欲しくないですか?
この本は同人誌なので普通の本屋さんでは買えませんが、メロンブックスやタコシェ、バサラブックス、Lilmagなどで委託販売されています。メロンブックスはオンライン通販もやっている(商品直リン) ので、遠方にお住まいの方も安心です。
マンガ研究の最先端と実戦的な技術の両方が読めるお得な一冊。再販の予定は無いそうなので、欲しい方はお早目にどうぞ。