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牧太郎の大きな声では言えないが…:時は血なり

 Time is money(時は金なり)--たこを使って雷が電気であることを証明した科学者・ベンジャミン・フランクリン(1706~1790)の言葉である。

 時間は尊い。無駄に費やしてはいけない。もともと古代ギリシャには「時は高い出費」という価値観があり、16世紀後期の英語圏では「Time is precious」。

 「時は金なりということを忘れてはならない。自らの労働により1日10シリング稼げる者が、半日、出歩いたり、何もせず怠けていたら、気晴らしに6ペンスしか使わなかったとしても、それだけが出費と考えるべきではない。(半日、働かなかった)彼は5シリングを捨てた」とフランクリンは強調した。

 出版印刷業者としても成功して、図書館や高等教育機関を創立したフランクリンは優れた政治家。アメリカ独立宣言起草委員になっている。

 昨今、政治家は100ドル紙幣の肖像画にもなった大先輩の「教え」をすっかり忘れてしまった。(中には、言葉を曲解して「カネで何でも手に入る。時間だって金で買える。寿命だって買える」なんて不埒(ふらち)なことを言う拝金主義者までいるが、それはともかく)政治家たちは「時間」を無駄に使っている。

 この欄で、「特定の企業から2億円もらって何もしないのなら、詐欺じゃないか! 2億もらって動かないのは小沢だけ」と皮肉を込めて書いたが、小沢一郎さんは「世論の動向を見て」と出処進退を先送りする。時間の無駄だ。

 ネットで「守備の目をかいくぐるのが(野球の)イチロー、法の目をかいくぐるのが(小沢)一郎」とまで、おちょくられても、小沢さんは動じない。でも、多分、民主党はコレで死ぬ?

 政局より政策--のハズの麻生内閣。後手後手の15兆円追加対策の目玉は車、テレビの買い替え補助? どう見ても、時間稼ぎのバラマキ施策?

 今、求められているのは、金欠で倒産する企業を一社でも出さないための工夫。金融機関の「貸しはがし」をなくし、雇用を確保する。失業者増大を食い止めないと日本は死んでしまう。

 1942年、スターリングラードの防衛戦で、ソ連のワシリー・チュイコフ将軍は兵士の前で「時は血なり」と演説した。ドイツ軍と戦っているのではない。時間との戦いなんだ!

 OECDの予測では日本のGDP落ち込みは世界最悪。まさに「時間との戦い」ではないのか?(専門編集委員)

毎日新聞 2009年4月14日 東京夕刊

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