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朝日支局襲撃事件:証言裏付け、ほぼ無理

 島村氏は毎日新聞の取材に対しても「舎弟と若い衆に襲撃させた」と朝日新聞阪神支局襲撃事件に関与したことを強調するが、その証言の信ぴょう性を解明することは無理に近い。

 「共犯」の舎弟と若い衆は既に死亡。「犯行を元在日米国大使館職員から依頼され、約5000万円の振り込みがあった」と話すが、肝心の通帳は「見当たらない」。当の元職員は毎日新聞の取材に「事件当時は島村氏を知らなかった。電話のやりとりはあったが、直接会ったのは09年1月が最初」と証言を全否定する。島村氏は、元職員と直接会うことにも難色を示す。

 新潮は島村氏の話を信じたとみられるが、どれだけの裏付け取材をし、どの程度の確信を持って手記を掲載したのか、明らかにすべきではないか。事件の究明は報道機関にとって重要な役割で、新潮が未解決事件に取り組んだことは評価できるが、これからは「信じた根拠」を公にする必要がある。

 未解決事件を巡っては、約10年前にも東京都府中市で68年に起きた3億円事件の犯人と名乗る男性が週刊誌で告白し、別の週刊誌が信ぴょう性を否定する騒ぎがあった。未解決事件の週刊誌報道の中には「関係者が死亡した」として、捜査機関さえ裏付けが取れない記事も散見される。阪神支局襲撃事件で殺害された小尻知博記者(当時29歳)の遺族の苦悩を考えれば「島村氏のテープがあるから真実だ」などの中途半端な言い訳では済まされない。【石丸整】

毎日新聞 2009年4月9日 2時30分(最終更新 4月9日 2時50分)

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