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きょうの社説 2009年4月14日
◎金沢へ福野の夜高祭 交流深化のきっかけにしたい
二十五日から金沢市中心部で開催される「春の舞ひろさか2009」に初登場すること
になった南砺市の福野夜高祭の「文久の大行燈(あんどん)」は、城下町のメーンストリートでもきっと映えるだろう。観客が曳(ひ)き手として参加できるのも面白い。せっかくの機会だから、南砺が誇る祭りの魅力を存分に体感し、県境を挟んで隣り合う両市の交流をさらに深化させるきっかけにしたい。春から初夏にかけて、砺波平野のあちらこちらで繰り広げられる夜高祭の「本家」とさ れているのが福野夜高祭であり、三百五十年余の歴史を持ち、富山県の無形民俗文化財に指定されている。祭りの日には夜空が行燈の光で赤々と照らしだされ、「ヨイヤサー」と掛け声が響き渡り、いつもは静かなまちが熱気に包まれる。各町の若者たちが力を結集してつくりあげた華やかな行燈同士の激しいぶつかり合いも、見どころの一つである。 ただ、富山県外での知名度は決して高いとは言えないのが現状だろう。金沢でも「聞い たことはあっても実際に見たことはない」という市民が多いのではないか。 東海北陸自動車道の全線開通などを受け、金沢と南砺をはじめとする富山県西部の各市 が、藩政期には同じ加賀藩の領内であったという縁を生かし、協力して観光誘客に取り組む機運が盛り上がっている。南砺の貴重な文化遺産であり、観光資源でもある福野夜高祭について、金沢市民が理解を深めることは、そうした動きを市民レベルにも広げ、より実のあるものにしていくためにも大切だ。 南砺側にとって、「春の舞ひろさか」への参加は五月一、二日に開かれる福野夜高祭の 本番に大勢の金沢市民を呼び込むための格好の事前PRにもなるだろう。有志の呼び掛けで二〇〇〇年に復元された「文久の大行燈」は、もともとはまちなかに電線がない時代につくられていたものだけに、高さ約十四メートルと迫力満点だ。郷土の伝統行事を大事に守ってきた人々の心意気が詰まった大行燈は、金沢市民の魂を揺さぶる「広告塔」としても、大いに活躍してくれるはずである。
◎タイの政治混乱 「アジア市場」に深刻な影
東南アジア諸国連合と日中韓の首脳会議(ASEANプラス3)や東アジアサミットな
どが全面中止に追い込まれたタイで、非常事態宣言が出され、治安部隊が反政府デモを制圧して多数の負傷者が出る事態に発展した。首脳による国際会議がデモ隊の抗議活動で中止になるのは極めて異例であり、混乱を抑えきれなかったタイの国際社会における信頼失墜は避けられない。ロンドンで開かれたG20の金融サミットを受け、ASEANを中心とした一連の会議 は、参加各国の内需拡大策や保護主義へのけん制、通貨安定策などが話し合われる重要な場と位置づけられていた。それがアジアの不安定さを国際社会に示す結果となったのは極めて残念である。 東アジアサミットでは、麻生太郎首相が二〇二〇年までにアジア全体の経済規模を倍増 させる「アジア成長戦略構想」を表明する予定だった。首相が出発前に強調した「日本を超えてアジア全体で成長する」という視点は、日本経済の成長戦略の要といえる。 一国の政情不安が、今回のように多国間の結束の場に悪影響を及ぼす事態は、欧米以上 に成長が期待される今後の「アジア市場」にとっても潜在的なリスクであり、地域全体の連携にも深刻な影を落としかねない。 ASEANの関連会議は昨年十二月にタイで開かれる予定だったが、海外逃亡中のタク シン元首相に反発する勢力がバンコク国際空港を占拠するなどした混乱の余波で延期となっていた。 反タクシン派に担がれて政権の座についたアピシット首相だが、タクシン派との国を二 分する対立はますます先鋭化し、デモの強制排除に動いたことで政権は苦境に追い込まれている。首脳会議は二、三カ月後に延期されたが、タイでの開催はしばらくは無理だろう。 日本としてもタイは重要な貿易相手国であり、進出企業も多く、大勢の観光客が訪れて いる。内政の混乱がアジア全体にどんな影響を及ぼすのか各国と問題意識を共有し、タイに対して適切なメッセージを発する必要がある。
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