【社会】田口さん長男の手紙、外務省が5年間放置 金賢姫元工作員あて2009年4月14日 朝刊 北朝鮮に拉致された田口八重子さん=失跡当時(22)=の長男、飯塚耕一郎さん(32)が、田口さんから日本語を学んだ大韓航空機爆破事件の実行犯、金賢姫(キムヒョンヒ)元北朝鮮工作員(47)に面会を求めて書いた手紙が、5年近く外務省内に放置されていたことが13日、分かった。 手紙は当初、同省が耕一郎さんから預かって韓国政府に渡し、金元工作員に手渡すよう依頼した。しかし、韓国政府は金元工作員に渡さず、日本の外務省に返却。同省北東アジア課は最近まで、耕一郎さんに返さずにいた。複数の関係者が明らかにした。 耕一郎さんとともにことし3月、金元工作員との面会を果たした田口さんの兄、飯塚繁雄さん(70)は「心情的に穏やかではないが、あえて言わない」と問題視しない考えだが、政府関係者の中には「被害者家族への配慮が欠けた対応だ」と批判の声が出ている。 田口さんは1978年に拉致され、北朝鮮で81年から83年まで、金元工作員に日本語を教えていたとされる。 政府関係者らによると、手紙は2004年2月下旬、当時の斎木昭隆外務省アジア大洋州局審議官(現アジア大洋州局長)が預かり、韓国政府に渡した。しかし、北朝鮮への融和政策を取っていた韓国政府は元工作員に渡さず、同年4月に外務省に返した。 耕一郎さんと繁雄さんはことし3月11日、韓国・釜山で金元工作員と初めて面会。この際、金元工作員が手紙を「受け取っていない」と明らかにし、外務省に保管されたままになっていたことが発覚。外務省は翌12日、内閣官房拉致問題対策本部を通じて、耕一郎さんに返却した。 耕一郎さんの手紙には田口さんへの思いがつづられており、「母のことを聞いて、母の面影を自分の心の中にじかに焼き付けたい」と金元工作員に伝える内容。 外務省北東アジア課は「調整が必要な内閣官房から返事が来ないので、現段階で回答できない」としている。
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