2009年4月12日18時21分
【バンコク=山本大輔】タイのアピシット首相は12日、内務省から国民向けにテレビ演説し、首都バンコクなど6都県に非常事態を宣言、治安回復のための全権をステープ副首相に委任した。東南アジア諸国連合(ASEAN)の一連の首脳会談を延期に追い込んだ反政府デモなどで混乱する国内情勢を正常化させるのが目的だと説明している。
現政権の退陣などを求めて抗議行動を続けているタクシン元首相派「反独裁民主同盟」は、演説後に内務省を去ろうとしたアピシット首相の車列を襲撃。首相は無事に脱出したが、警備員らが負傷した模様だ。地元テレビの報道によると、銃声も報告されており、バンコクは緊迫の度を高めている。
軍は非常事態宣言の発令を受けてバンコク中心部の要所要所に戦車を配置。タイ警察は同日、反独裁民主同盟の幹部で、11日にパタヤで首脳会議場への乱入を率いたアリスマン氏を逮捕した。
バンコク全域に非常事態が宣言されるのは、08年9月にサマック首相(当時)がタクシン元首相派支持者と反政府運動を展開していた民主主義市民連合(PAD)の衝突を受けて発令して以来。この時は全権を委任されたアヌポン陸軍司令官が事態の収拾には動かず、約2週間後に解除された。