北朝鮮の弾道ミサイル発射問題で国連安全保障理事会は、北朝鮮の行為は安保理決議に違反するとして同国を非難する議長声明を採択する。日本が目指した新決議の形をとれなかったのは残念だが、声明の中で日本の主張が反映された部分も多い。国際社会が北朝鮮非難で足並みをそろえたことを重くみたい。
安保理は北朝鮮の核実験を受けて06年10月に制裁決議1718を全会一致で採択し、弾道ミサイル計画関連のすべての活動の停止を求めた。人工衛星も弾道ミサイルも同様の技術を用いる。北朝鮮が「人工衛星」と主張しても、決議1718が停止を求めた「弾道ミサイル計画関連の活動」に当たるのは明らかだろう。
日本や米韓両国が「決議違反は明白」と主張したのは当然であり、私たちも支持した。その立場からすると、議長声明が北朝鮮の行為を決議1718違反と認定した点は評価できる。
不満が残るのは、決議より格下の議長声明で妥協せざるをえなかったことだ。決議は安保理の意思表明の中で最も効力が強い。しかし、15理事国のうち9カ国以上の賛成と、5常任理事国がいずれも拒否権を行使しないという条件付きだ。
今回、常任理事国の中国とロシアが決議に反対した。特に中国の姿勢は硬かった。このため米国が日中の間に入り、日本が決議を断念する代わりに議長声明の内容を厳しくすることで双方に妥協を促したというのが実情のようだ。
議長声明に「ミサイル」の言葉が盛り込まれなかったのも、「人工衛星打ち上げ」と主張している北朝鮮に理解を示す中露両国への配慮だろう。常任理事国に拒否権を与えている安保理の現実を踏まえればやむを得ない結果とも言える。
北朝鮮問題の根幹は、いかにして核開発計画を断念させるかにある。その意味では、この問題を協議する唯一の多国間協議の場でありながら、核計画の検証方法をめぐる対立で休止状態が続いている6カ国協議の機能を復活させることがまずは大事である。
6カ国協議は05年の共同声明で北朝鮮の核放棄とともに、日朝国交正常化への取り組みも求めている。拉致、核、ミサイルの包括的解決を目指す日本にとっても有意義な存在だ。
議長声明も6カ国協議支持を表明し、早期再開を求めている。今回、中露両国が決議に反対したのは、北朝鮮を刺激して6カ国協議に悪影響を与えることを避けたいというのが理由だという。そうであるなら中露両国、とりわけ6カ国協議の議長国である中国は北朝鮮の協議復帰に全力を尽くすべきである。
毎日新聞 2009年4月14日 東京朝刊