5月に「亀田3兄弟」の次男・大毅(20)=亀田=と対戦予定だったボクシング元東洋太平洋フライ級王者、小松則幸さん(29)=大阪府寝屋川市=が13日、滋賀県大津市内にある滝壼で死亡しているのが見つかった。“打倒亀田”を誓って滝に打たれる修行中だったとみられ、所属のグリーンツダボクシングクラブ(大阪市)の関係者らは突然の悲報に言葉を失った。
20歳の大毅のパワーに対抗するため、折れない心を鍛えようとしたベテランの意地が、命がけの荒行になったのか…。
小松さんの遺体が見つかったのは、滋賀県大津市葛川坊村町にある比良山系三ノ滝の底。落差20メートル。脇を登るには本格装備が必要とされる滝だ。
県警大津北署によると午後4時16分、小松さんの関係者から「滝付近で仲間の姿が見えなくなった。通報してほしい」と頼まれた近所の男性(38)から110番があった。
ただちに警察と消防が捜索し、同6時25分ごろ、滝の底で死亡している小松さんを発見した。滝のそばには上着が残されており、同署は誤って転落したとみて、詳しい状況を調べている。現場は山道から分け入った険しい場所で、滝壼周辺も岩だらけ。遺体の引き揚げは難航したという。
グリーンツダボクシングクラブによると、小松さんはちょうど1カ月後の5月13日に東京・後楽園ホールで行われる大毅との試合に備え、精神修養の座禅を組むため、11日から京都市内の寺を訪れていた。
小松さんにアドバイスをしていた同クラブのトレーナーは「なぜ滋賀にいたのか分からない。あまりのショックに言葉にならない」と絶句。同署では、小松さんと同行していた5人から詳しく事情を聴いている。
2005年1月29日の世界初挑戦では、WBCフライ級王者ポンサクレック(タイ)に5回TKO負けした小松さん。体が不自由な両親から「体を傷つけるスポーツはやめて」といわれていたが、「世界王者になった姿を見せたい」と競技を続けていた。
WBC世界フライ級王者、内藤大助(34)=宮田=が日本同級王者だった2006年には、東洋太平洋同級王者として国内初の王座統一戦を戦った。この試合でTKO負けしてからは苦戦が続き、今年2月には元IBF世界ミニマム級王者に1回TKO負けした。
かつて拳を交えた内藤が“国民の期待”に応えて、大毅を破り、スターダムに駆け上がったように、小松さんも大毅戦を再起のきっかけとすべく滝に打たれていたのか。
“あきらめない”ボクシングでファンを熱狂させたド根性ボクサーの最期は壮絶だった。