財団法人「日本漢字能力検定協会」(京都市下京区)の今年度第1回日本漢字能力検定(6、7月)の受検者を、協会が例年の50%と試算していることが、内部資料で分かった。運営を支える団体受検者の10%が既に受検の見送りを決定しているといい、今年度の総受検者数は当初予測の3分の2の約200万人前後に落ち込むとしている。文部科学省から不適切な運営を指摘されたことが響いたとみられる。【広瀬登、木下武】
協会の調査によると、昨年度の受検者約286万人の86%は学校単位などでの団体受検者。09年度も継続して受けることを決めたのは10%で、80%は「分からない」と答えたという。こうした状況から、第1回の受検者数を例年の50%と試算。回を重ねるごとに回復しても、年間で193万~223万人にとどまると予測した。
受検者数は、財団法人化した92年度以降は右肩上がり。今年度は当初297万人と見込んだ。協会は06年度の250万人突破を機に「250万人の漢検」を掲げているが、250万人復帰は13年度になるとしている。
協会のホームページによると、漢検資格を入試評価の基準の一つとしている大学・短大は全国490校、単位認定に活用している高校も多い。最新の事業計画書は「(こうした活用を)取りやめるなどの動きが出てきた場合は、さらに減少が進む」と危機感を募らせている。
公益事業による過大な利益などが問題となっている財団法人「日本漢字能力検定協会」(京都市)について、文部科学省の銭谷真美事務次官は13日の会見で、協会側から「理事長と副理事長は辞職後も理事に残留」と伝えられたことを明らかにし「責任の取り方として十分なのか精査する必要がある」と述べた。また10日に開いた協会の臨時理事会について「運営の在り方が疑問」と批判した。
10日の理事会と評議員会は、大久保昇理事長と長男の浩副理事長の辞任や、理事長が代表を務める関連2社との取引解消などの改善策を了承。浩副理事長が11日に文科省を訪れ口頭で報告した。しかし理事会には7人の理事のうち5人(1人は委任状出席)が出席したが、うち2人は理事長親子で、銭谷事務次官は「重要な審議を行う理事会がこれでよかったのか」と疑問を呈した。
協会側は、京都市内に購入した土地建物を売却し検定料を引き下げるなどの方針も伝えた。文科省は記者会見を開くよう改めて指導したといい、銭谷事務次官は「説明責任を果たすよう要請してきたが、今日まで国民に十分な説明がなされていないのは誠に遺憾」と述べた。文科省は3月10日に協会への改善指導を行い、4月15日までに正式な報告書を提出するよう求めている。【加藤隆寛】
毎日新聞 2009年4月14日 東京朝刊