一緒にバイクでツーリングしていた兄が乗用車に追突、ひき逃げされたことに激高。約2.5キロ追いかけて停車させたところまではよかったが、“犯人”の運転手をボコボコにして頭がい骨折などの大けがを負わせてしまった男が13日までに、兵庫県警三木署に傷害の疑いで逮捕された。兄の一大事に冷静さを失ったようだが、いかんせん、これはやり過ぎの「兄弟愛」。しかも現代でのアダ討ちは“ご法度”です。
江戸時代、合法だったアダ討ち。それでも認められたのは、基本的に父母や兄など直系尊属を殺害した者に対して武士が報復する場合のみだ。
逮捕されたのは、神戸市北区筑紫が丘の自営業、浜田照夫容疑者(42)。逮捕容疑は12日午後7時45分ごろ、三木市内の路上で、同県小野市の男性会社員(56)の顔を殴るなどして重傷を負わせた疑い。
三木署や社(やしろ)署によると、浜田容疑者は兄(46)や仲間と4人でツーリングしていた。午後7時40分ごろ、日も暮れた加東市内の片側1車線の県道を走っていたところ、後ろから来た乗用車が追い越しにかかった。
しかし、乗用車が急にバイクの間に割り込んできて、1100ccのバイクに追突。バイクは転倒、運転していた兄は両肩の骨を折る重傷を負った。そして乗用車はそのまま逃走した。
1人が救護のためその場に残り、浜田容疑者ら2人が追跡を始めた。バイクから逃げられるはずもなく、約2.5キロ先で乗用車は停車。浜田容疑者らは同45分に「ひき逃げ犯人を取り押さえた」と110番通報した。
これだけなら美談で済んだ。うるわしき「兄弟愛」だったが、約5分後に三木署員が駆けつけると様子がおかしい。
「車を運転していた会社員と浜田容疑者がぐったりとして車の脇に立っていた」(捜査関係者)。よく見ると会社員は血だらけで意識もうろう。救急ヘリが出動するほどの状況で、すぐに神戸市内の病院に搬送されたが、頭がい骨やあばら骨を折る大けがを負っていた。要するに浜田容疑者が“半殺し”の目に遭わせていたのだ。
「木刀のような凶器を使っている様子はなさそう」(同)で、一緒に追跡した仲間は“助太刀”していないらしい。
浜田容疑者は「自分がやったことは責任を負います」と供述。また、社署は会社員にも回復を待って事情を聴く方針だ。