2007年06月30日

◆ バイオエタノールと砂漠化


 バイオエタノールの増産のためにアマゾンの熱帯林をつぶすことは、生態系の維持には有害だ、というふうに前に述べた。( → 2007年06月08日 「生態系の維持」)
 事実はもっと厳しくて、「生態系の維持ができない」というよりは、「地球の砂漠化を推進する」というふうになっているようだ。

 ──

 まずは、次の情報を見てほしい。
http://allabout.co.jp/family/volunteer/closeup/CU20070619A/

 アマゾンの熱帯林をどんどん開墾しているということだが、そのあとにできるのは、野菜畑や穀物畑ではなく、お金の儲かる牛肉飼育用の牧草地であるようだ。
 で、牧草地というのは、当然ながら、草があるばかりで、森林はない。もちろん、水分の蒸発量も少ない。
 こういう牧草地が増えて、熱帯樹林が減ると、どうなるか? 水分の蒸発量が激減するので、降雨量が激減する。その最終的な形態は、「降雨のなくなった牧草地のなれの果て」つまり「砂漠」である。

 ──

 これと同じことは、サハラ砂漠にもあったと推定される。かつては肥沃な森林が、なぜ今では砂漠になってしまったのか? おそらくは上記のことと同じ理由だと思える。
    森林 → 焼き畑 → 降水量低下 → 砂漠
 というわけだ。

( ※ 最後の  【 追記 】 を参照。話をいくらか修正している。)

 ──

 いくらか似た例は、モンゴルその他の砂漠地帯でも見られる。
    草地 → 放牧 → 草が食い尽くされる → 砂漠
 こういうふうにして、ゴビ砂漠などがどんどん広がっていく。

 ──

 では、それらに共通することは、何か? 次のことだ。
 「世界全体の資産である森林を食いつぶして、自分の利益のためになる開墾(焼き畑)をする。そうすると、世界全体は大損するが、自分だけは利益を得る。」

 つまり、エゴイズムによる全体の悪化、である。

 ──

 これはまあ、日本だって人のことは言えない。次のことがある。
    魚を食い過ぎる → 魚の資源量が激減する

 たとえば、ウナギ、マグロ、スケトウダラなど。魚ではないが、鯨も同様だ。
 どこでもそこでも、「自分の利益さえ増えればいい」と思って、世界全体の富を減らしてしまうわけだ。

 ──

 さて。話はここでは終わらない。最初の「バイオエタノール」に戻ろう。ここでも、同じことがなされている。ただし、そのエゴイズムは、ちょっとだけ異なる。
 バイオエタノールを推進して儲けようとしているのは、バイオエタノールの業者ではなくて、官庁とマスコミなのだ。
 「バイオエタノールで、地球温暖化が抑制され、地球環境が改善しますよ」
 というふうに嘘を言う。嘘を言って、人々をだまして、自分が利益を得ようとする。……それは、バイオエタノールの業者ではなくて、官庁とマスコミなのだ。彼らは、嘘によって人々を洗脳して、自分たちが(ほんのちょっとばかり)得をしようとしている。

 ついでだが、その尻馬に乗って、まんまと踊らされている人々もいる。「アマゾンの炭酸ガス吸収量はたいしたことはない」と言い張る人々だ。
 ここでは、問題は、「地球環境の破壊」であるのだが、話を故意にずらして、「アマゾンの炭酸ガス吸収量はたいしたことはない」と言い張る。こうやって、政府の手先になって、地球環境を破壊しようとするわけだ。自分では政府の手先になっているという意識がないままに。

 で、人々は、政府とマスコミに踊らされて、せっせとアマゾンを破壊する。では、そのはては? 地球は「猿の惑星」よりももっとひどくなり、「砂漠の惑星」となるだろう。

 ────

 《 余談 》
 もし「砂漠の惑星」となったら? 

 「愚かな人類が死滅したあとで、賢明な猿が第二の文明を建設する」
 というシナリオが成立しなくなり、
 「愚かな人類が地球を完全に破壊して、地球は死の惑星になる」
 というふうになりかねない。下手をすると。
 
(……ちょっと誇張気味です。「正確に言えば科学的には違うぞ」と半畳を入れないでください。シナリオの妥当性が問題なのではなくて、警告の妥当性が問題となっている。)

  【 補足 】
 本項の話は、笑い事ではないし、他人事でもない。アマゾンだけの話ではなく、日本だって同様なのだ。
 その例は、ヒートアイランドだ。東京を見るといい。明治のころでは(夏目漱石の小説を読めばわかるように)渋谷のあたりは森がいっぱいあった。ところが今や、東京には明治神宮や皇居ぐらいしか、森らしいものは残されていない。これらがなくなったら、とんでもないヒートアイランドになるだろう。
 特にひどいのが、最近の高層ビルの乱立だ。風の通り道をふさいで、ヒートアイランドに拍車をかけている。それを(景気回復や経済成長の証拠だと思って)すばらしいことだと思い込んでいる。「高層ビルにすると緑地が増えますよ」などと述べながら、莫大な熱を吐き出す高層ビルを建てて平然としている。
 ま、高層ビルを建てれば、建てた人だけは得をする。狭い土地を有効利用できるからだ。しかし、そのまわりの人々は、高層ビルから排出される莫大な熱量の被害を受けて、大損だ。渋滞だって増えるから、ダブルパンチだ。人口増加のせいで、トリプルパンチもある。
 かくて、高層ビルの乱立により、都市の砂漠化が進む。……アマゾンを笑えるものじゃないですね。
 


  【 追記 】( 後日記・訂正 )
 サハラ砂漠の砂漠化については、人為的影響よりは、地球規模の気候変動の方が大きな影響があったらしい。偏西風が上方移動したので、サハラ砂漠などの地域は高温砂漠化し、一方、欧州では寒冷気候から温暖気候になったらしい。( → 偏西風
 なお、「中緯度高圧帯だから砂漠化する」という見解もあるようだ。( → Wikipedia 中緯度高圧帯
 だが、この見解はちょっと苦しい。アフリカ・中東では成立しても、同じ緯度のアジアやアメリカでは成立しないからだ。

 
posted by 管理人 at 21:47 | Comment(3) | エネルギー・環境1
この記事へのコメント
ごく素朴な疑問をお許しください。
サハラ砂漠などは、緯度が回帰線前後だと地球全体の大気循環のレベルで雨が降らず、砂漠化すると聞きます。
反面アマゾンは赤道直下で、元々雨が多い地域です。
サハラ砂漠が有史以前に草原だったのは、当時は現在に比べて寒冷な氷河期だったため、湿潤な気候帯がサハラまで広がったからだ、と聞いたこともあります。

確かにサヘル・地中海沿岸など比較的雨が少ない地域は昔は豊かな森林であったことが知られ、人類が発生しなかったと仮定すれば今も豊かな森林でしょう。
でもサハラ砂漠はどうなのでしょうか。

ただし、アマゾンも雨量の多さが災いし、森を切り倒して農地にすると栄養塩があっというまに流されてしまい、水ばかり多いけれど不毛の地に変わってしまうようです。
大きな結論は間違っていないのでしょう。
Posted by Chic Ston at 2007年07月02日 22:33
サハラ砂漠では恐竜の化石が見つかっているし、その時期は地球が高温状態であった時代です。草原ということはないですね。草原では恐竜は生存できないので。

でもまあ、森林消失について、確実なことは断言できません。あくまで推定か想像です。
Posted by 管理人 at 2007年07月02日 23:43
 最新の記事。
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20080208-OYT1T00415.htm

 以下、引用。(一部、略。)
 ──
 バイオ燃料生産が温暖化促進!?森の減少で…米チーム試算

 地球温暖化防止で注目されるバイオ燃料を生産するため、森や草原を、原料となる大豆などの畑に変えると、逆に温暖化を促進してしまうという試算を、米国の研究者らがまとめた。
 森などが蓄えていた炭素が大量の二酸化炭素(CO2)として放出され、数十年から数百年後まではCO2抑制効果が出ないという。
 化石燃料を使う場合よりもCO2の排出量が総計で多くなり、地球温暖化を促進するという。
Posted by 管理人 at 2008年02月09日 11:03
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: