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雑誌記事

林業・造林公社の破綻が環境破壊をまねく

月刊FACTA2月 9日(月) 16時49分配信 / 国内 - 社会
1千億円もの累積債務を抱えた滋賀県造林公社とびわ湖造林公社の問題が越年した。約254億円の負債をめぐる下流自治体との交渉が暗礁に乗り上げている。二つの造林公社は、約40年前に国の施策で設立された。政府系金融機関や自治体の融資を受け、土地を預かって植林。伐採収益で借金を返済し、土地所有者にその一部を分配する計画だった。琵琶湖の水源保全のため下流の大阪府・市、兵庫県など8団体が計172億円の出資などに応じたが、輸入自由化などにより木材価格が下落、債務が急激に膨らんだ。このため滋賀県は昨年、大阪地裁に債務圧縮を求める特定調停を申し立て、最大の債権者である旧農林漁業金融公庫(現日本政策金融公庫)とは、県が利息など合わせて約690億円を42年かけて返済することで合意をみた。しかし、70〜80%もの債権カットを求められた下流自治体は猛反発。「すべて伐採した収益で返済し、不足分は県が補うべき」との極論まで出ている。確かに県の責任は重い。両公社が抱える森林は、滋賀県の人工林の約4分の1にあたる2万ヘクタール。伐採による収益は約250億円が見込めるが、破綻状態の公社に新たに植林する力はなく、見るも無惨な「はげ山」が広がることになる。

全国36都道府県にある40の林業・造林公社が抱える長期借入金は計1兆1700億円で、その多くが債務超過に陥っている。全国で公社が管理する山林は約39万ヘクタールに及ぶが、債務返済のための伐採でどこもかしこも「はげ山」になりかねない。ようやく国も公的支援の検討を始めたが、特別交付税の優遇枠をわずかに増やした程度。債務の減額や肩代わりなどの抜本策には消極的だ。

滋賀県では6年後に伐採が始まる。県議会から「県の債権放棄やむなし」との声が上がる一方で、「全国で伐採が始まれば木材価格は低迷するうえ、水源涵養という目的も果たせなくなる。どうせ破綻する公社に公的資金を投入するくらいなら、伐採時期を100年、200年後に延ばし、環境林として保護するべきではないか」と伐採計画の見直しを求める声も。どうなることやら。
(月刊『FACTA』2009年2月号)
  • 最終更新:2月 9日(月) 16時49分
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