雑誌記事G20サミット──ブッシュへの恨みは忘れませんニューズウィーク日本版4月10日(金) 10時39分配信 / 海外 - 海外総合オバマ政権は今、できるだけ多くの国を味方に付ける必要がある。今回のG20の最大の焦点は、経済危機に欧米諸国が一丸となって対策を取れるかにあった。ブラウン英首相は米政府に近い立場を取っているが、メルケル独首相とサルコジ仏大統領の主張は正反対で、満場一致には程遠い状況だ。 もっと深刻な問題もある。G20で本当に重要なのは全体会合でも首脳宣言でもない。舞台裏で行われる各国首脳の会談こそ、真の成果を挙げる場だ。例えば4月1日に行われた米ロ首脳会談。これによって両国は新たな核軍縮交渉を開始することに合意した。 今回の一連の首脳会談で、オバマは欧州諸国の指導者が心の奥底に抱いているアメリカへの強い不信感を実感したはずだ。 ブッシュ前政権が欧州同盟国との関係に与えたダメージは計り知れない。引き金となったのは、イラク開戦に反対した独仏を「古いヨーロッパ」と切り捨てたラムズフェルド前米国防長官の発言だ。 関係悪化の根元にはアメリカに意見を無視され、情報操作などによって意図的に欺かれたという欧州の怒りがある。イラク情勢が泥沼化していた当時、ブレア英首相の上級顧問だった人物は「ワシントンの能無しどもに裏切られっぱなしだ」と憤ったという。 イラクだけではない。アフガニスタン政策、米軍兵士による捕虜虐待問題、イラン問題、そして中東和平をめぐってもブッシュ前政権は欧州諸国に相談しないどころか、真の狙いを明かさなかった。 欧州に言わせれば、経済危機を招いた元凶も金融機関の規制を怠った米政府の腐敗にある。アメリカはもはや尊敬にも信頼にも値しない国だという証拠だ。 G20でオバマは欧州首脳と個人的な絆を育んだと、ホワイトハウスは盛んにアピールするだろうが、それは幻想だ。欧州首脳の助言役である政府高官たちは、ブッシュ政権時代の屈辱を忘れていない。 フランスのある軍当局者はイラク戦争をめぐって苦い思いをした。開戦への懸念を伝えたところ、米国防総省の高官は激怒し、フセインとシラク仏大統領(当時)の関係を示す証拠をバグダッドで見つけて公表すると脅したという(そんな証拠は見つかっていない)。一方、メルケル独首相の上級顧問の1人は06年、米政権にアフガニスタン情勢への懸念を語ったが、頼りにならない同盟国の意見に耳を貸す気はないと一蹴された。 国家の指導者はいずれ入れ替わる。しかし政府高官は(少なくとも欧州では)同じ役職にとどまる場合も多い。オバマが欧州の信頼を取り戻すには、かなりの努力と時間を要しそうだ。 (C) 2009 Newsweek, Inc. 2009 Hankyu Communications Co., Ltd.
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