2009年4月13日22時17分
【ニューヨーク=松下佳世】国連安全保障理事会が北朝鮮のミサイル発射非難の議長声明を採択する運びとなり、日本政府は「名より実」を取って強いメッセージの発信に成功したとしている。だが、交渉の過程で頼みの米国の態度は揺れ、最後は中国と結託。日本に新たな安保理決議を断念するよう迫る流れになり、米国に土壇場ではしごを外された形だ。
高須幸雄国連大使は、9日の安保理常任理事国との協議の後、記者団から日本のかたくなな態度を指摘されると珍しく声を荒らげた。「日本の立場を主張することが、なぜ生産的でないのか」
米国は日本とともに新決議採択を目指していたはずだった。ところが、この日の協議では議長声明を目指すことで中国と一致。米国の提案を下敷きに、中国の意向も反映した議長声明の素案がその場で示された。高須大使の声音には、米国へのいら立ちがにじんでいた。
米国が方針転換の姿勢を見せたのは前日の8日。中国との2国間協議で、決議を受け入れさせるのは困難と判断。日韓に議長声明案を提示し、受け入れを求めた。関係筋によると日本は難色を示し、米国も理解。ウルフ米国連次席大使は、あくまで決議採択を目指す日本の姿勢について「それが適切だと信じている」とまで述べた。
ところが、わずか半日後には米中共作の議長声明の素案の存在が明るみに出た。
初日に強い口調で新決議採択を訴えた米国のトーンは、日を重ねるごとに後退。米国が議長声明での最終決着を念頭に置いていることは、日本側も承知していた。中ロの国連大使も8日には、議長声明なら受け入れるとの考えを相次いで公言。もともと決議へのこだわりが強くなかった英仏に異論はなく、日本の外堀は埋められていった。
13日に採択される予定の議長声明には、北朝鮮の発射に対する「決議違反」と「非難」、過去の決議履行の要求といった日本が新決議に盛り込みたかった内容がほとんど含まれている。このため、決議採択に否定的な中ロとの交渉に際し中身で譲れない一線を決め、最後に形式で妥協するという作戦が功を奏した、との見方もある。
だが今回、米中が足並みをそろえ、日本は対外的に孤立を印象づける結果となった。06年の北朝鮮のミサイル発射と核実験を受けて安保理が対応を協議した際には、日米そろって強硬姿勢で中国に妥協を迫り、二つの厳しい決議が採択された。その時の日米の一体感は今回、なかった。
オバマ米政権は対話による北朝鮮問題の解決を重視しており、その点で中国と思惑が一致する。今後、米中が協調姿勢を強めれば、日本としては「後ろ盾」の米国という、北朝鮮への圧力のカードを1枚失うことになりかねない。