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ラジオの電リク今や昔…メールに押され電話窓口次々廃止

2009年4月13日10時42分

写真:スタジオの片隅に置かれた電話リクエスト用の電話機。普段は受話器を上げたままにしてある=神戸市中央区のラジオ関西、西畑志朗撮影スタジオの片隅に置かれた電話リクエスト用の電話機。普段は受話器を上げたままにしてある=神戸市中央区のラジオ関西、西畑志朗撮影

 関西のラジオ番組でこの春、リスナー向けの電話窓口が相次いで廃止された。メールやファクスでのアクセスに押され、電話利用が減っていた事情もあって、番組改編や経費削減の波にのまれた。かつて隆盛を誇った音楽番組の電話リクエストも消えつつある。年配のファンからは、一時代の終わりを惜しむ声が絶えない。

 朝日放送(ABC、大阪市福島区)の看板番組「おはようパーソナリティ道上洋三です」(平日早朝)が、リスナー投稿用の電話窓口を廃止したのは今月3日。オペレーター10人が電話応対し、聞き取った内容をアシスタントディレクター(AD)が選んでプロデューサーに伝えていたが、メールなどに比べて手間がかかる、との理由だった。

 同局では、ほかの2番組の電話窓口も同時期にやめた。編成制作部の担当者は「ここ数年、通信手段の選択肢が増えて投稿数が伸びる半面、スタッフの数は減るばかり。番組進行の効率を考えた」。3月末に窓口廃止を告知した際、「寂しい」などの声が10件ほど寄せられたという。

 毎朝のように電話してきた高齢男性から「長い間いろんなこと言うて悪かったなあ。話を聞いてもらうのが楽しみやった」と言われ、涙が出た――。そんな話を電話窓口終了後、オペレーターの送別会で聞かされたという道上洋三・エグゼクティブ・アナウンサー(66)は「電話は多くの人の力を積み重ねてリスナーの思いを受け止めてきた」と振り返る。「かかった人の数だけ思いが詰め込まれ、マイクの前に届いていた。その思いを今後は少ない人間で感じていかなければならない」

 平日朝、吉本興業の芸人が日替わりで出演するラジオ大阪(OBC、同市港区)の人気番組「むっちゃ元気スーパー!」でも、電話窓口が3月いっぱいで廃止された。経費削減で番組のADが2人から1人に減り、オペレーター役に人員を割けなくなった。担当者は「サービス低下と言われても仕方がない」と嘆く。

 毎日放送(MBS、同市北区)の「西靖&桜井一枝のわくわく土曜リクエスト」では、電話でリクエスト曲を受け付ける「電リク」が3月末で終了し、メール、ファクス、はがきのみの受け付けとなった。春の番組改編で放送時間が短縮されたためだが、一方で一般番組での電話投稿は継続する。担当者は「大阪の人は話すことが面白い。番組で生かさない手はない」。

 電リクは1952年、ラジオ神戸(現・ラジオ関西)がクリスマスの特別番組で実施したのが全国初とされる。60〜70年代には、各地のラジオ局に並んだ黒電話がひっきりなしに鳴った。ライブ感があり、双方向性に優れた電話窓口は、情報番組の投稿でも活用されるようになったが、ファクスやメールの台頭で次第に追いやられていった。

 先駆者のラジオ関西(神戸市中央区)でも電リクは88年に、一般番組での電話投稿も06年に消えた。かつて使った電話は年1回程度の特番で利用するだけという。

 そんな電リクも東京では健在だ。ニッポン放送(千代田区)は今月5日、「デジタルにはない臨場感がある」として、日曜朝の音楽番組で、長年途絶えていた電リクを復活させた。初回は電話が殺到したという。文化放送(港区)の編成部担当者は「電話はリスナーの生の声を聞ける重要なツール。ニーズはなくならない」。同局は音楽番組やトーク番組など複数の番組で電話窓口を維持している。(宮崎園子)

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