ヘッドギアから汗とともに、金髪が輝く。相手の荒い呼吸とは対照的に、一翔の息づかいは落ち着いたまま。20歳の目には、自信が満ちあふれていた。
「ここまでは1日1日、しっかり練習できている。一番の強化ポイントはスタミナだったけど、ついてきたと思う」
3回のスパー。小松則幸(29)=グリーンツダ=にパンチをもらうも、安易に下がることなく、パンチを繰り出した。3月上旬に和歌山・白浜合宿を敢行。ゴルフ場と砂浜を4日間で160キロを走り、12回戦い抜く体力をつけてきた。元東洋太平洋フライ級王者に「気持ちが強い」と言わしめたほど。スパーも計97回もこなし、プロ根性を身に付けた。
儀式も済ませた。29日に大阪市内の美容室で、髪を金色に染め上げた。アマでは禁止されていることだが、プロならOK。現役時代は金髪がトレードマークだった井岡会長も「僕をマネたんちゃん。かっこいい。女だったら告白する」と“ホレ直す”ほどだ。
「(金髪は)格好からだけど、気も引き締まる。しょうもない試合はできない。デビュー戦でメーンを大きい会場でやらせてもらうし、緊張はあります」
会場の大阪府立体育会館第1競技場は、約6000人の収容可能。堺市内にあるファミリーレストラン「和食さと」の本社工場で、食材管理のアルバイト(時給750円)を週5日やっていたが、前日30日から休職した。「目標はおじさん。最終的には3階級制覇」と言い切る“井岡2世”。拳闘界に目映いばかりの新風を吹き込む。