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【コラム】朝鮮日報の名誉と道徳性の問題(上)

 ある分野で社会的な責任を遂行する地位にある人物が、その職責と影響力を利用し、無力な人をもてあそんだとしたら、それは容赦できないことだ。厳しい罰を受けたり、事と次第によってはその社会から葬り去られたりすることもある。しかし反対に、そうした地位にいることが利用され、全く根拠のない謀略や策略に陥れられたとすれば、それは許しがたいことだ。

 3月7日に自殺した女優チャン・ジャヨンさんが残したと言われる「文書」がこれに当てはまる。この文書には、何の状況も具体性もなしに、朝鮮日報の上層部の人物が事件にかかわっていたかのように記されているという。これは深刻な事態だ。それは、単にその特定の人物の問題で終わることではない。それは、その人物と共に社会的責任を遂行する朝鮮日報の記者・社員全員の道徳性や名誉にかかわる問題であり、さらには朝鮮日報という新聞自体の存在価値にかかわる問題にならざるを得ない。

 だからこそ、大韓民国の有能な警察なら、早い時期に証拠を収集し事実かどうかを明らかにしてくれるだろうと期待していた。社会的責任があるだけに、問題の人物の名誉を守る責任も当局にあるためだ。これまで、朝鮮日報に悪意を持つ一部のインターネットメディアがバッシングの材料としてあれこれとあら探しに熱中しても、朝鮮日報は「真実は必ず明らかになる」と信じ、一つ一つ反応しなかった。チャンさんの自殺をめぐっては依然として多くの疑問が残っている。その文書が果たしてチャンさん自身の意志により書かれたものなのか、それとも誰かにそそのかされて作成し、それが流出して大きな波紋を呼ぶのを恐れて自殺したのか、その背後には誰がいるのかなど、疑問は一つや二つではない。

 ところが、1カ月が過ぎた今も警察は何一つ解明していない。テレビでは、ほぼ毎日のように警察の強力(凶悪犯罪担当)係長と名乗る人物が同じ言葉を繰り返し、各メディアは「当てっこ」でもしているかのように「朝鮮日報の人物」の周辺に関する記事を書き続けている。一方これに耐えかねたのか、野党議員らが一人、また一人と「免責特権」の背後に隠れ、根拠のない言葉を口にし、各メディアはこうした発言を待っていましたとばかりに紙面や放送で報じるという、口裏を合わせたかのようなゲームが演出されている。朝鮮日報の立場からすれば、警察も、ある意味では政権もこの「チャン・ジャヨンさん事件」の成り行きを楽しんでいるかのように見える。そのため、当局の無能さ・無力さが事件の「主演」で、一部の「アンチ朝鮮日報」の焦りが「助演」であるかのようにも思える。

金大中(キム・デジュン)顧問

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版

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