2009年4月13日17時34分
和室のセットを使って、納棺師の仕事が実演された=12日、福岡県桂川町の善光会館、山本壮一郎撮影
葬儀社の下請けで24時間対応。スタッフは社長を含む男性3人と女性8人だが、月に250件近く受注する中には厳しい現場もあり、「自分の心のコントロールが一番大事」と敏宏さん。仕事帰りの車内では努めて、明るく楽しいラジオ番組を聞くという。
敬遠されがちな仕事で求人に苦労していたが、2月に映画の受賞が報じられると状況は一変。故人の送り方が見直されたせいか、故人を入浴させる湯灌(ゆかん)サービスの注文が3倍に増えた。スタッフ増員で対応するため4月上旬、地元のハローワークに求人を出したところ、1週間で10人近くが面接に来た。「派遣切りなどで職を探す若者が多いせいもあるが、こんなに注目されたのは初めて」と服部社長。20代女性2人を採用した。
13日から勤務し始めた同県嘉麻市の山下香成さん(22)は、パチンコ店員を経て職業訓練校でコンピューター操作を学んだ。「納棺師」の道を選んだことについて、「人の役に立って感謝される仕事がしたかった。遺体も元々は生きていた人だと思えば抵抗はありません」と話す。(吉田耕一)
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〈納棺師〉 遺体の口元を整え、ひげそりや化粧をして生前に近い顔に戻し、体をふきながら着物などに着せ替えて棺に納める役割。元々は大手納棺業者の社内資格の名称で、公的資格ではない。納棺にはかつては遺族も積極的にかかわったが、核家族化に伴い葬儀社の業務の一環になった。近年は「故人をきれいにしてから送ってやりたい」「ゆっくりと、お別れがしたい」といった遺族の要望を受け、専門業者が台頭。専門スタッフを抱える葬儀社も多い。湯灌や遺体保全のサービスを提供する業者もいる。