CalculatedRiskでサンフランシスコ連銀にデモ隊が押しかけてきたことを知った。デモの模様はこちらに詳しい。まあ、静かな抗議行動であったようです。個人的には、バーナンキ議長は頑張っていると思うのだが、ウケは悪いようである。「ヘリコプターマネー」はうまくいくかどうかはともかく経済を救済するためだが、怒った人々には銀行救済に見えるようである。ウェルズファーゴの好決算も、家計から銀行への不当な利益移転とかいう批判もあった。日本でも低金利批判が巻き起こったが、日銀前にデモ隊が押しかけてきたことはなかった。衆愚的な色彩を強めつつある米経済の先行きが思いやられる。試しにデモの模様を伝えるサイトから写真をアップできるかやってみた。それにしてもこの模型、よく出来ている。
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FRBがMBSの追加購入や国債30兆円の買い入れを決めたFOMC(3月17-8日)の議事要旨が公表されている。国債買い入れは「質的緩和」の一環という位置付けだが、マーケットの一般的な受け止め方は「財政のマネタイズ」。ドラめもんさんが既に触れられているが、議事要旨ではどんな議論があったかを簡単に。
「One member preferred to focus additional purchases on longer-term Treasury securities, whereas another member preferred to focus on agency MBS」 国債買い入れ重視は一人で、その他はMBSとなっている。興味深いのはマネタリーベースの拡張を強く主張した向きがいたこと。以下である。 「one, in particular, stressed that sustained increases in the monetary base were important to ensure that policy was consistently expansionary」→Lackerさん(リッチモンド連銀のラッカー総裁)とみられているようです。 MBSに加えて国債を買い入れる理由だが、これについては「Such purchases would provide further monetary stimulus to help address the very weak economic outlook…」となっている。経済に追加的な緩和効果がある、というわけだが、効果のメカニズムは特に記されていない。 クリアなロジックがあって、それに多くが同意して国債買い入れに踏み切った、というわけではなさそうである。新たなアクションが必要になり、具体策として国債買い入れを決め、理屈は後から付いてくる、まあやってみようか、といった流れであったように思われる。 1人のメンバーの「マネタリーベースを増やせ」という主張、その手段として国債を買う、というのがとりあえず理屈としては分かりやすい。
国会の雑感を幾つか。本日は日銀の半期報告(参院)であった。
・民主党は大久保先生と大塚先生の金融政策論が食い違う。大久保先生は「もっとやれ」、大塚先生は「もういい」。政党が固有の金融政策論を確立していないことを象徴する現象。まあ、議員それぞれに考えている、ということであろう。大久保先生の路線は結果的に与党に都合良いロジックになると思った。政権取るのに備えた質問であった、ということでしょうか ・大塚先生 日銀法34条などでマニアックな攻め方。「中央銀行は憲法で定義されていない…」などかなり深い問いかけをしたが、驚くべきは白川総裁の答弁。これ、通告質問ではない、すなわち想定問答はなかったはずだが、総裁は「中央銀行が憲法で定義されているのはスイスであり…」と答えはじめた。日銀随行団&本店モニター組&ネットモニター組の私ら一同「へぇー、へぇー、へぇー」であった。(日銀OBの)大塚さん、この手の話、白川さんにはかなわないね。 ・真打ちはやっぱりこの方、わが共産党・大門先生でありました。 先生のしゃべりはアジテートするのではなく、ややボヤキ気味なところが良い。まあざっと以下の感じです。 大塚先生のまとめた伝統的手段と非伝統的手段の資料を取り上げ、「これ、非伝統的手段に行くのは社会主義化なんですよ」と警告。あとは「人間、一線を越えるとずるずる行くんです。日銀もそうなんじゃないですか。劣後ローンとか、やっぱりおやりになりましたか、そんな感じじゃないですか。ニーズもないものをやろうとする、そういうのが信任を落とすんじゃないですか」 スバラシイ…。この辺の指摘、日銀随行団や本店モニター組にメチャウケていたらしい。特に本店3階の43条組からは歓声?があがったらしい(嘘です)。民主党は大門先生をスカウトした方がよいと思った。まあ、無理でしょうけど。 マスコミ的にはニュースのない国会だったが、見応えは十分でありました。楽しかったな…。大門先生、党を離脱して欠員の審議委員をやってもらう、というわけにはいかないだろうか。
リチャード・クー氏の引用が目立ってきた感じである。日本人しか分からなかった「バランスシート不況」が世界で体感されてきたからだろう。世界的なデビューといった感じでしょうか。
まずPaul Kedrosky氏がこちらで取り上げ、「Good recent slide deck from Nomura's Richard Koo on what he calls "balance sheet" recessions」と紹介。これをクルーグマン教授が取り上げている。 それからfinantial Ninja氏が「The Age of Balance Sheet Recessions」でクー氏の野村証券リポートをばっちり紹介しておりました。 みなさん、クー氏の分析がしっくり来るようである。
6日に締結されたスワップ協定は、FRBに対して日銀、英中銀、ECB、スイス中銀などがそれぞれ自国通貨を供与するもの。各国が実施しているドル供給オペで締結された協定は、FRBが各国中銀にドルを供与するものだったので、今回は逆方向となる。つまり、これで双方向の融通が可能になった。
ただ、今回の協定は、ドル防衛に転用が可能だ。基軸通貨であるドルの防衛の際に問題となるのは、米国が通貨防衛用の外貨準備が薄いこと。ドルを防衛するとき、介入は「ドル買い・他通貨売り」となるが、他通貨の備蓄が貧弱で、防衛介入はすぐに頓挫してしまう。いざ介入してもすぐに弾切れとなるのですね。 そこで弾薬備蓄を増強する手段となるのがスワップ協定である。米国がドル買い・他通貨売りの介入を継続する際、他通貨準備が枯渇する状況となれば、各国がそれぞれの通貨を融通するわけだ。今回締結されたスワップ協定は、これに転用することが可能である。 もちろん、今回の協定の目的は、米系金融機関の外貨(ドル以外の主要通貨)資金繰りをサポートするためにFRBが各国中銀から借りるものであり、介入を目的としたものではない。さすがにこっそりとドル防衛のために今回の協定を使うことはないと思うので、転用する場合はアナウンスがあるはず。または、別途介入用の協定を結ぶのかもしれないが。 日銀、本日の決定会合で適格担保範囲を拡大した。交付税特別会計や預金保険機構の借り入れなどが適格だったが、似たような政府の借り入れを水平方向に広げる。また、地公体の借り入れ(証書貸付)も実績など見て適格担保に。昔はこの辺の適格化には非常に堅かったのだが、一線越えるとドンドン行きますな。一線越えると止まれない性分?なので、Rinbanには銀行券ルールという貞操帯を付けるんだろうか、と改めて思った。劇薬が混入してくる43条には何も歯止めがないですけど…。この辺の事情に関する比喩としては内部では面白いものもあるのだけど、まあパブリックには難しいネタですので、書くのは止めときます。
やっぱり市場機能の復活を狙った「質的緩和」に本気なのだろうか、と思った。
週明けの内外債券市場は下落(金利は上昇)したが、株高など景気底入れ期待、国債需給の悪化懸念とかいろいろ材料はあるが、バーナンキ議長が「出口政策」に言及したことも金利上昇要因の一因になった面もある、との指摘を受けた。出口に言及するのは、日銀の時間軸コミットメントでは反則であるのはよく知られたことで、リフレ政策のあり方としては確かに違和感がある。で、この点は連銀ウォッチブログとして秀逸な「Tim Duy's Fed Watch」でも取り上げられていた。 この中ではJohnson and Kwak(前者はIMFの元チーフエコノミスト)が「バーナンキ議長は(量的緩和で)インフレ期待を高める政策をやっている」と主張しているのに対し、Tim Duyがクルーグマン教授の指摘とかも引用して違うんじゃないのか、と反論している。なかなか面白いエントリーなので興味ある方はご覧あれ。 同エントリーによると、3日の講演でバーナンキ議長は以下のように言っている。 「In pursuing our strategy, which I have called "credit easing," we have also taken care to design our programs so that they can be unwound as markets and the economy revive」→我々の戦略においては、市場や経済に復活に伴って(質的緩和などの)流動性対応を縮小できる仕組みになるよう注意を払っている。 私は引き続きa-kunさんなども指摘されていたようにバーナンキ議長は政策の選択肢を狭めないようにリフレ政策と質的緩和のどちらにも取れるようなスタンスにあるとは思っているが、出口政策に言及すること自体はリフレ政策ではなく、市場機能に主眼を置いた質的緩和であることを暗示する。なぜなら、量にコミットする日銀型の量的緩和とは対照的に、市場機能論に立脚した質的緩和は、市場の正常化に応じて自動的に出口政策を行えるからだ。量的緩和によるリフレ政策を志向していれば出口政策は口しない、というわけだ。 Tim Duyは次のように言っている。①本気でインフレ期待を高めるなら政策をやっているなら出口に言及するのは間違っている②(リフレ志向の)量的緩和を成功させるには恒久的なマネーサプライの増加をコミットする必要がある③バーナンキ議長はそうしたコミットはせずに将来の出口をコミットした④これは本当にインフレ期待を高めようとしているのだろうか? で、クルーグマン教授の以下の指摘が紹介されていた。 「In that case monetary policy can’t get you there: once the interest rate hits zero, people will just hoard any additional cash – we’re in the liquidity trap. The only way to make monetary policy effective once you’re in such a trap, at least in this framework, is to credibly commit to raising future as well as current money supplies」 「金利がゼロになってしまうと人々は余分なお金を抱え込み、我々は“流動性の罠”に陥ってしまう。そうしたときに金融政策を有効化する唯一の手段は、将来にわたってマネーサプライを増やすことを信頼できる形でコミットすることだ」 リフレ政策のややこしいところは、その政策が金融市場に信用されると、ただち債券市場が反応して長期金利が上がってしまうこと。もちろん、この時には株価も上がる可能性があるのだが、市場反応と実体経済の相互作用において、株高のプラス効果と金利高のマイナス作用の両方があり、どっちが大きいかはよく分からないことだ。もちろん、株の上げ幅とその持続性、金利の上げ幅とその持続性、ともにどうなるかがよく分からないということもある。少なくとも、金利の上昇を抑えて株価だけ上がれ、というわけにはいかない。 明確なことは、FEDはイールドカーブのフラット化を企図して国債買入を実行しているのに、一方ではそれを無視してインフレ期待を高める政策をやっているとの主張があることで、中央銀行と市場の対話が二重性を帯びているor混線している、ということである。この問題、なお尾を引くであろう。引き続き、要ウォッチである。
日銀採用ページの「先輩の声」は、昔はリアリズムがあり、取材上も非常に参考になった。世の中、全般に情報管理が厳しくなり、いろいろな組織の声から息遣いが薄れた。私は、日銀の先輩諸君らの声をかなり保存していたが、多くはパソコンの故障や交換時のデータ喪失によって消えてしまった。以下は唯一残っていた某氏の声である。これは非常に良い。日銀諸氏(&インタバンク関係者)は某氏が誰かはお分かりになるかもしれないが、取り合えず個人情報は省いた。日銀を志望するみなさん、ご一読を。
ーーーーーーーーーーーーーーー 総合職 <BOJ Life> 199x年入行 某氏 金融市場局金融調節課は、日銀が金融政策の一環として行うオペレーション(金融市場への資金供給・吸収)の実務を担当する、文字どおりのフロントラインである。金融政策運営に対する国民の関心が高まる中、マーケットからのシグナルを的確に評価・分析する作業は必要不可欠なものとなっている。 現在、金融市場局金融調節課の一員として、日々の金融市場のモニタリングと市場動向の調査・分析に携わっている。 近年、日銀のオペレーション(以下、オペ)の方法は大きく変化している。すなわち、銀行に対する貸出や市場性のない手形の売買が中心であった時代はオペによってマーケットに影響が及ぶ可能性をそれほど心配する必要がなかった。しかし、オペの軸足が、市場で活発に取引が行われている国債の売買や貸借に移ってきている今、状況は一変している。日銀は最大の市場参加者であり、日銀のやり方次第では、マーケットに甚大な影響を与えかねないのである。 こうした状況を踏まえて金融調節の仕事は従来に比べ格段に高度化し、体制面でも拡充されてきている。私自身は短期国債とレポ市場の担当として、日々、マーケットをモニタリングし、金融政策決定会合で定められたディレクティブに基づき日々の金融調節を決定している金融市場局長をはじめ、金融調節の担当者に対して適宜、情報を伝えるという役割を担っている。 金融市場のモニタリングについては、市場での取引が開始される前の早朝から作業が始まり、市場での取引が一段落し、オペの結果が全て公表される夕刻まで続き、その間課内は終始、張りつめた雰囲気で満たされる。 モニタリング担当者の報告は金融市場に対する情勢判断や金融調節に関する意思決定に影響を及ぼすだけに、モニタリング担当者はそれぞれの担当しているマーケットの動向把握についてある意味での責任を負っている。もちろんマーケットでは予想外のことも起こり得るが、基本的にマーケットは効率的であり、そこから発せられたシグナルには必ず何らかの合理的な理由があるというのが私自身の考えである。 例えば一見予想外のオペの結果に対し、「オペ参加者が日銀の足下を見たとか、一時的な需給関係の振れ」という説明だけでは不十分である。なぜそうしたことが起こるのか、現行の取引慣行や制度が市場参加者の行動に与える影響も含めて合理的な理由を読み取ることが我々の仕事であり、当然ながら次々と処理・集計されるオペの結果には、全員の意識が一斉に集中することになる。 このほか、市場動向を調査・分析し、状況に応じて金融情勢を判断するための基礎資料を作成したり、現行のオペがマーケットの実状に合っているか、マーケット・オリエンテッドな形で常にオペのあり方を考えるのも我々の重要な仕事である。 入行後、調査統計局と支店を経験し、3年目の6月から2年間、金融研究所で金融とITの関わりについての調査に携わった。 具体的には電子マネーや暗号、知的所有権などに関する調査であり、金融分野における暗号技術導入事例のリサーチのほか、今でいうビジネスモデル特許をどう理解すべきか、法律系のメンバーと共同でリサーチペーパーをまとめたりもした。 私はもともと工学部の出身で、金融研究所でIT関係の調査を担当することになったのも、そうした事情が影響していたのかも知れない。ただし、自分では当時、実体経済の調査かフィナンシャルエンジニアリング関係の仕事をやってみたいと考えていたので、正直なところ、当初は不本意だという思いもどこかにあった。しかし、今となってはその頃身に付けた知識がすべて役立っているだけに、結果的には貴重な経験であったと思っている。 その後、シカゴ大学のビジネススクールに2年間、留学した。第一の目的は、ファイナンスの理論を学ぶこと。日銀で納得のいく仕事をしていくためには、入行後に身に付けた金融知識だけでは不十分だという思いがあり、与えられた2年間の間に理論をきちんとした形で修得したいと考えた。 ビジネススクールでは、証券投資論、コーポレート・ファイナンス、フィナンシャル・エンジニアリング等、ファイナンス全般を学んだ。中でも興味深かったのが、株や債券、投信等の金融資産のリスクと市場が要求するリターンの関係を突き詰めて考え、マーケットの効率性を徹底的に検証する授業である。 授業は、大量の論文のリーディングを課され、試験毎に成績の悪い者がクラスから追われる厳しいものであったため、受講した半年間は殆ど図書館に缶詰めのような生活を強いられた。しかし、そこで叩き込まれた知識は、金融市場を理解する上で必要かつ普遍的なものであり、貴重な財産となった。マーケットの効率性を前提に合理的な説明を探す性癖も、ここでの経験が強く影響している。 留学から学んだことはファイナンスの知識だけではない。他にも、会計、企業戦略、マーケティングなど興味深いものが多かった。 例えばデシジョンメイキングについて学ぶ機会があった。具体的には、人や企業の意思決定を誤らせるものは何かについて、データや事例を使って科学的に検証する授業であり、デシジョンメイキングの際に陥りやすい誤りを学んだ。 また、メンタリティの面も大きく変わった。一言でいえば考え方が非常にポジティブになり、意見を言うこと、質問することをためらわなくなったのである。当然の事象として前提とされていることも、改めて理由を問われると明確に答えられないものは意外に多い。こうしたことについて議論しながら理解を深めていくことの重要性を覚えた。 ディスカッションの機会が多いビジネススクールでは、発言しない者は結果的に相手にされなくなるし、ミーティングの場でわからないことがあれば途中で話を止め、その都度疑問点を解消していかないと、その後の時間がまったく無駄なものになってしまう。 その点は、日銀でも基本的に同じであり、とくに迅速な情報共有が求められる我々の職場では、周囲の人たちに気兼ねをすること自体、意志の疎通を阻害することにもなりかねないので、たとえ先輩や上司でも、疑問に思ったことは遠慮なく質問するようにしている。 留学で得たものとしてはもう一つ、コンピュータのリテラシーがある。米国では一般に、何でもまず自分でやってみようとする積極的な姿勢が目立つ。簡単なものではあるが、シミュレーションプログラムを自分で書くようになったのも、ビジネススクールの同級生たちのそうした考え方に触発されたのがきっかけだった。 おかげで、国債の流動性に関するペーパー作成に参画した際には、自分でプログラムしたシミュレーションを使った分析により貢献することができた。 金融市場が高度化、複雑化する中、日銀の金融調節を取り巻く環境は日々刻々と変化しつつある。決済リスクを削減するためのRTGS(即時グロス決済)の導入などもあり、今後こうした環境変化のスピードはさらに増していくことが予想される。 こうした状況の下、自分では入行以来、調査統計局、支店、金融研究所、留学、金融市場局とステップを重ねていく中で、金融とは何かというものが確実に積み上がってきたという思いがある。 金融調節の現場で今必要とされているのは、金融市場全体で何が起きているのか、デイリーのレベルで分析・評価できる能力である。 その点、私はたまたまとはいえ、現在のセクションに配属されてから、インターバンク、短期国債、長期国債、株式と、様々なマーケットをモニタリングする機会を得てきた。 その貴重な経験をもとに、今後もより多くの金融商品について、知識を深め、よりマーケットオリエンテッドな金融調節の実現に貢献していくことが当面の目標である。 そして、いずれはフロント事務のみならず、決済周り等のバック事務についても理解を深め、両者を有機的に機能させられるような人材になりたいと考えている。
茶話会続きの前にクルーグマン教授の「Japan’s recovery」についての感想を簡単に。このエントリーで、同教授は小林慶一郎氏の主張(日本の不良債権問題の教訓)に深く賛同している。ただ、小林氏の主張のある部分に引っかかってしまった。
「りそな銀行を国有化し、再生機構も設立し、邦銀が不良債権処理に全力を尽くしたことで、やっと株が上がり、人々はようやく景気回復を迎え入れることができた。それまでは政府が何をやっても苦境を一時しのぐ程度の効果しかなかった」という部分である。クルーグマン教授は、03年以降の景気回復は輸出が主導したものであって銀行は関係ないのではないか、と言っている。まあ、私もそう思う。 不良債権問題の処理は景気回復の必要条件ではあるが、十分条件ではない。日本は不良債権をほぼ処理して身軽になった。ちょうどそのころ海外は経済がブームになり、不良債権の重荷がかなり取れた日本は輸出主導でフワッと浮いた、そんな感じですかね。もっとも浮いたとは言っても、平均的なものではなく、非製造業は浮揚感乏しかったですが。小林氏も上記のところには回復の条件が整った、という意味を込めたのではないかと私は思っております。
しばらく前(大分前かも)、会社に蓄積された日銀人事情報を整理して超簡単に出身学部の分布を調べたことがあった。おぼろげな記憶だが、役員、局長、審議役、支店長など80人ぐらいの幹部のうち、東大法学部は10数人。これに対して経済学部は20数人であったように思う。ちなみに政策委員会メンバー(現在8人)では、法学部はゼロ(白川総裁は法学部から経済学部に転換)。理事クラスでは経済圧勝(法は一人)である。
何度も指摘しているように、法学部が優位と思われがちな日銀だが、人数としては全然優位にはなっていない。法学部神話は少なくとも日銀にはないわけだ。神話が根強いのは、霞ヶ関に対する印象がそのまま日銀にも当てはめられているのか、歴代総裁の出身学部という固有の事例が過大評価されているのかもしれない。 で、法学部出身者が毎年ほぼ一定入っていると仮定して、生き残りが少ないように思われるのはなぜか。ちなみに、個人的な印象としては、中堅レベル以下では取材先には法学部が多い気がする。みなさん優秀である。以下は日銀の何人(全員法学部)かとの話で浮上した仮説である。 仮説① 入ったときは優秀だが、徐々に劣ってくる。経済系などに逆転される。 仮説② もともと例外を除いてさほど優秀な法学部出身者は入っていなかった。 仮説③ 昔はガチガチの法学部出身者が多く、中央銀行業務の近代化(経済化&ファイナンス化)についていけなくなった。 仮説④ ③に重なるが、中堅以下の法学部出身者はもともとガチガチの法学部というより、金融系に興味を持った人材が多い(ピュア法学部から外れた人材)。 今後の中長期的な見所は、中堅以下で目立つ法学部系人材がそのまま生き残っていくのかどうか。生き残って勢力が拡大したとしても、それは法学部優位というよりは日銀に向いていた人材が生き残ったということかもしれない。まあ、結論的に言うと、学部閥はないです。強いて言うと、どこの組織にもありがちな、人脈閥的なものが大きい気がする。大学も結構バラエティがあるような印象である。 やはりこのご時勢なので公的人気の一環から日銀も志望者数が相当に増えているらしいです。目指しているみなさん、頑張りましょう。マニアック路線として「銀行券ルールとか意味ねえ」とか、「43条連発じゃあ日銀法骨抜きだろ」とか間違えても吹っかけないように(苦笑)。どういう反応があるか予断を許しません。 (自分用の備忘録として)明日も茶話会ネタ続く予定。昔の先輩の声。
・短観 サプライズ無き全滅。株は織り込み済みで、むしろ反発となった。短観の悪さはいろいろ取り上げられるので、逆張り的にポジティブな点などピックアップ。この状況下でDIが改善したのは以下の項目。
大企業・製造業の食品 +1 大企業・非製造業の電気・ガス +9 同対個人サービス +2 中小企業・非製造業の通信 +2 同電気・ガス +5 このほか、貸金業・投資業の先行きDIは26ポイントの改善(願望?)。銀行業、保険業の雇用判断DIはなお「不足超」となっていた。利益なき繁忙でしょうか。 ・連銀ブログ 米アトランタ地区連銀のmacroblogが「Careful with that language」とのエントリーをアップしていた。FRBの国債買い入れが「量的緩和」と報じられていることについて、それはちょっと違うのではないか、用語の使い方には気を付けよう、という内容。興味ある方はご参照を。 ・「Geithner-san」 クルーグマン教授のブログのエントリータイトルである。「日本の失われた10年に超詳しい」とクルーグマン教授が持ち上げるAdam Posenの指摘を引用したエントリーである。オバマ政権がやっていることはかつての日本とそっくりである、と。それでクルーグマン教授は「Japan is us」と結んでいた。 ガイトナー、クビなの!と思ったら、今日は4月1日でしたね。
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