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きょうの社説 2009年4月12日
◎COP10関連会議 舳倉島調査の成果生かす場に
石川県を訪れたゴヴィンダン・パライル国連大高等研究所長(同大副学長)が、石川開
催を約束した来年の生物多様性条約第十回締約国会議(COP10)の関連会議を、この地に住む私たちが、世界的視野で、ふるさとの自然に目を向ける機会にしたい。その際、地球規模の環境変化の格好の素材として生かしたいのが、能登沖に浮かぶ舳倉島・七ツ島である。パライル所長が本社インタビューで強調したように、持続型社会を実現するためにはロ ーカルな研究活動がカギを握る。昨年から両島一帯で実施されている本社の自然環境調査団の調査では多岐にわたる成果が得られ、とりわけ強い酸性雨や漂着ごみの確認により、日本海の孤島が、国境なき汚染の最前線となっている現実が浮き彫りになった。こうした最新の調査成果を関連会議で取り上げ、国際社会が協調して取り組む環境保護活動に生かしていきたい。 国連は来年を国際生物多様性年とし、メーンのCOP10は十月に名古屋市で開かれる 。これに合わせて多様なテーマを扱った関連会議が各地で開かれる見通しだが、石川県が開催をめざす会議では、里山・里海の保全をテーマに据え、独自の取り組みを世界に向けて発信する機会にする方向だ。 関連会議開催の可能性が高まったことを受けて、県としては、たとえば里山・里海の資 源を生かして産業化に取り組む動きに一層弾みを付けたいところである。 舳倉島・七ツ島の調査では、多様な生き物や渡り鳥にとって、海のオアシスに等しい両 島でも、環境破壊の影がはっきり読み取れるデータが検出され、先に実施された今年最初の調査では、ハングルやロシア文字の入った漂着ごみも見つかった。会議の場で、国境を超えた取り組みの必要性を促す事例として取り上げ、関係諸国にアピールすることも検討したい。 里山・里海との関連では、パライル所長も注目した舳倉島の海女の資源管理の慣習など 、自然と共生する生活スタイルから読み取れる舳倉の人々の環境への目線の温かさも、学ぶべき点として紹介する意義は大きいだろう。
◎国連の北朝鮮対応 議長声明でもやむを得ぬ
北朝鮮のミサイル発射を受けた国連安全保障理事会の対応は、日本の求める新安保理決
議ではなく、議長声明の採択で決着する方向となった。日本としては不満の残るところであるが、安保理の分裂は北朝鮮を利するだけであり、国際社会の統一した意思表明を優先すべきなら、麻生太郎首相が議長声明容認の意向を示したのもやむを得まい。それでも、声明の内容について安易に妥協してはいけない。少なくとも、北朝鮮がいく ら「人工衛星」と主張しても、「弾道ミサイル計画に関するあらゆる活動停止」を求めた安保理決議一七一八に反することを明示し、制裁措置を含む決議の履行を加盟各国に強く迫る内容にする必要がある。 安保理への議長声明案は中国が提出した形になっているが、交渉打開のため中国に歩み 寄りを見せた米国の提案でまとめられた。経済危機対応も念頭に、米中両国が関係悪化を避けるため、足並みをそろえた格好である。が、米国債消化のため中国に気兼ねしているとも言われる米国の姿勢には懸念もぬぐえない。中国の意向をくむばかりでは、融和路線で北朝鮮の核廃棄に成果を挙げられなかったブッシュ前政権の轍(てつ)を踏む恐れが否めないからである。 日本としては、議長声明を受け入れるとしても、米国には日米韓の結束強化を、中国に は安保理決議一七一八の制裁徹底を強く求めていかなければなるまい。 外交は妥協によって落としどころを探る作業でもあり、譲歩を余儀なくされることはあ っても、孤立化を恐れて本来の主張を曲げては禍根を残すことになりかねない。政府が独自に課してきた対北朝鮮制裁の期間延長と追加制裁を決めたのは当然である。 自民党が求めた北朝鮮への輸出全面禁止は、既に輸出額が大幅に減っていることに加え 、日本だけ突出した制裁を課すのは得策ではないとの政治判断から見送られたという。六カ国協議の枠組みを維持し、孤立を避ける思惑があるのだろうが、ミサイル発射に強い怒りと不安を抱く国民には、歯がゆい思いも残るだろう。
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