きょうのコラム「時鐘」 2009年4月12日

 人気映画「釣りバカ日誌」シリーズが次回作で終了、と決まった。7年前に富山、3年前には能登が舞台になり、地元ファンを大いに楽しませた

富山を舞台にした「釣りバカ日誌13」は、監督が地元出身の本木克英さん。気鋭の登用と評判になった。「きつかったな」と、苦労話を聞いたことがある。主演の西田敏行、三国連太郎さんは、押しも押されもしない名優。生半可な演技指導にはそっぽを向く。2人の呼吸にしても、いつもうまく合うわけではない

脚本は「寅さん」シリーズ監督の山田洋次さん。「2人に妙な芝居をさせるんじゃないよ」と、これまた現場にクギを刺す。まるで「監督だらけ」の映画づくりに、それまで何人もの監督が音(ね)を上げたそうである

船頭が多いと舟は山へ上がるが、「釣りバカ」は、そんな緊張感が逆にプラスに働いていたのに違いない。大勢の船頭を乗せて大海を航海する珍しい例である

1作50―70万人の動員を維持しながらの幕引きは、潔い。重責を突然放り出したり、逆に必死にしがみついたり。かんばしからぬ往生際が際立つ昨今だけに、一服の清涼剤となる。