
丁度1年前くらいですかね、倉持結香さんが通学中の山手線車内で痴漢を後ろ回し蹴りで撃退されて、空手で痴漢をやっつけた現役女子高生アイドルとして一躍時の人になられたのは?
「そうですね、ニュースになったのが2008年の今頃だったので、丁度1年くらい前ですね」
あれからあのアイドルはどうしているんだろう? っていうか、いったいどんな人なんだろう? さらにさらに芸能界をどう生き抜いてらっしゃるんだろうということで、今回は突撃取材にきてしまいました。よろしくお願いします!
「よろしくお願いします!」
そもそも芸能界を目指されたきっかけっていうのは?
「初めて芸能界を意識したのは小学校1年とか2年生の頃ですね。突然『私はテレビの中にいなきゃいけない人なんだ』って思って」
何かの歌番組とかを観てとか?
「いえ、お告げですね」
ん!? お、お告げですか。
「はい! 天からですね」
のっけから雲行きが怪しくなってきましたが、OG的には大好物なんで続けます。その天からというのは具体的に?
「『迷うな、行け、迷わず行くんだ』という感じのが天からバァーって降りてきたんです。もうそこから何の疑問もなく一心不乱に芸能界への道を歩み始めました」
台詞的には猪木さんみたいな神様なわけですが、その頃のアイドルってどんな人が売れてました?
「どうだろう? 小4の頃はモーニング娘。さんですね。後藤真希さんが加入された頃で『ニッホンの未来は〜♪』って感じで。で、わたしも近い将来この場所にいなきゃいけない!ってさらに強く思い始めて。そうそう、その頃『ちゃお』って少女マンガの雑誌に沖縄アクターズスクールをテーマにしたマンガが連載されてたんですよ」
安室奈美恵やSPEEDのブームにおもいっきり便乗した『はじけてB.B(今井康絵)』ですね。
「そうです! そのマンガは沖縄アクターズスクールからアイドルがデビューしてその後の生涯までを描いてるんですけど、そのマンガを読んで『沖縄に行くしかない!』って決意するんです」
ちなみにご実家はどこですか?
「千葉です!」
ちょっと遠いですね(笑)
「わたしもさすがにちょっと遠いのかなって思ってたんですけど、その頃は沖縄がどこにあるのかもよくわかってなかったものですから、とりあえず善は急げということで、お母さんに『わたし、沖縄に行ってアイドルになる!』って宣言したんです」
そりゃお母さんもびっくりしたでしょうね。
「お母さんにも言われました! 『あんた、沖縄がどこにあるか知ってるの?』って(苦笑)。でも、わたしはもうどうしても沖縄に行かなければならないというモードに入ってたものですから、小学校1年から貯めてた“テレビの世界に行く貯金”を持って単身沖縄に行こうって」
“テレビの世界に行く貯金”! 素晴らしいですね。で、どのくらい貯まってたんですか?
「5万円くらいだったかなぁ」
片道の旅費を捻出するにもギリギリの額ですね。でも、小学生で5万円もよく貯めましたね!
「はい! お母さんの白髪を1本抜くたびに100円貰えたんですよ。そんな感じで貯まっていって」
白髪100本で5万円ですか! お母さんも染めりゃいいものを…。で、その5万円を持って?
「家出ですね。でも、すぐに警察に保護されて見つかっちゃいました。両親に『目を覚ませ!目を覚ませ!』って何時間もそれだけ言われ続けて(苦笑)」
冬山の遭難みたいですね。そこで一度諦めたり?
「諦めたフリをしてましたね。テレビの中の世界に行く夢は休火山の下でフツフツと煮えたぎるマグマのように、それはもうグツグツと燃えてました」
後の噴火が楽しみです。でも、「アイドルになりたい」とか「女優になりたい」とか、そういうピンポイントなプランはなかったわけですよね?
「はい、その辺は超適当でした(照)」
いやぁ素晴らしい。で、噴火はいつ頃?
「小学校6年のときに本屋さんでたまたまオーディション雑誌を見つけて、パラパラと立ち読みしてみたんです。そしたら丁度千葉テレビのアイドル発掘番組の募集があって、『え! 沖縄じゃなくて千葉でもできるの!?』って驚いて」
アハハハハ! そりゃできますよ(爆笑)
「もう感激しちゃって、速攻で書類を送ったら書類審査に合格してオーディションって感じになったんです」
トントン拍子ですね!
「そうなんですよ!で、しばらくして松戸のカラオケボックスでオーディションがあって」
カ、カラオケボックス!? そりゃまたこの上なくきな臭いオーディションですね(苦笑)
「さすがにわたしも『え!? ここなの?』って、子ども心にうさん臭いなって思いましたけど、お仕事の内容が千葉のいろんなスポットを紹介する女の子ってことでちょっと興味があって、勝負服をガッツリ着込んで面接に挑んだんです」
小6の勝負服! なんだかとてもキュートな文言ですね。ちなみにどんな服だったんですか?
「ゴスロリですね(即答)」
勝負の日なのにゴスロリで行ったんですか?
「はい、わたしはその頃はもう身も心も完璧なゴスロリ女子だったんで」
身も心もゴスロリ! またなんでゴスロリに?
「(唐突に)わたし、元はジャンヌ・ダルクなんですよ」
へ!? ジャンヌ・ダルクって中世フランスの救世主で後に火あぶりになった女剣士の?
「そうです。わたし、ジャンヌ・ダルクの生まれ変わりなんです(きっぱり)」
いいですねぇ〜。聞きましょう!聞きましょう!!
「インフルエンザになっちゃったときがあって、もうスゴい高熱でフラフラだったんですね。でも、暇っちゃ暇じゃないですか。そんなときにお母さんが『これでも読みなさい』って、ジャンヌ・ダルクの伝記本を買ってきてくれたんです。ものスゴい字数の」
そんな状態の娘に活字だらけの本を! マンガとかでよかったんじゃ……。
「で、高熱に襲われながらもジャンヌの生涯を細かくて丁寧に読んでいったら、また天からお告げがあって」
その神様っての、小さな女の子の人生を振り回しますねぇ。
「『あたなはジャンヌ・ダルクの生まれ変わりです』って。最初は半信半疑だったんですけど、その声を聞いているうちにだんだんと、わたしがジャンヌだった頃の記憶が蘇ってきて」
そりゃ伝記本を丁寧に読んでますから詳しいに決まってますよ。
「(無視して)で、高熱から解放されたその瞬間に『わたしは千葉のジャンヌ・ダルクになる!』って決めたんです」
千葉のジャンヌ・ダルク! 決めちゃいましたかぁ、なんで決まっちゃうかなぁ(苦笑)
「そこからですね、キリスト教とかってよくわからないですけど、ミサとか黒ミサとか、魔術とか呪いとか、天使や悪魔とかにものスゴく惹かれ始めちゃって。もう部屋は黒魔術の道具や十字架だとか、悪魔的な置物だとか、頭蓋骨の置物だとかでいっぱいになっちゃって」

黒魔術の道具って……、そんなもん小学生がどこで買ってくるんですか?
「闇市ですね」
や、闇市?
「はい、変なオジさんがやっている闇市です。さっき言ったものや、ダウジングの道具やなんかもそこで全部手に入れました」
小学生の女の子に黒魔術の道具を売りつける変なおじさんですか……。今すぐ通報しましょう!
「アハハハハ!」
音楽なんかもヴィジュアル系なんかを?
「聴いてましたね。その名の通りジャンヌ・ダルクだとか、カゼットだとか、コテコテのヴィジュアル系ばっかり聴いてました」
体中を包帯ぐるぐる巻きにして血のりをつけちゃう様な人たちですね。
「私もやってました! 新品の包帯を買ってきて、赤い絵の具で体中血だらけにしてました。もう毎日が血みどろでしたね」
原宿の明治神宮前の橋の上にそういう女の子がたくさんいますよね。
「私もいましたよ(サラリと)」
へ!? 小学校5〜6年生で?
「はい! 自分で言うのもなんなんですけど、かなり早咲きだと思います。外人とかに『CRAZY!
』ってよく言われてました(ニッコリ)。」
最高です! で、カラオケボックスで行われたオーディションの話に戻りますけど。
「はい! ガチガチのゴスロリファッションで真っ赤な口紅と真っ黒なアイラインを引いて、もちろん血のりもまんべんなく吹かせて血みどろです」
落ちる気満々じゃないですか。
「いえいえ、受かる気満々ですよ。受かると信じてました。だって、わたしはジャンヌ・ダルクなわけですから、ジャンヌはこんな小さなところでつまずいたりはしないって」
な、なるほど。で、面接官にはどんな質問をされたんですか?
「開口一番で『なんでそんな格好をしてるの?』って(苦笑)」
アハハハハ!そりゃ聞くでしょうね、素通りはできないでしょう。なんて答えたんですか?
「『わたしの正装です』ってぴしゃりと」
アハハハハ!(爆笑)
「『これがわたしのアイデンティティです』って言ってやりました。面接の方は『は、はぁ……』って感じでしたけど(苦笑)」
で、合格した?
「はい! 合格理由は『なんだかおもしろい』でした」
なんだかおもしろいって理由で負けたライバルたちはさぞかし悔しかったでしょうね。
「ジャンヌには勝てないですよ。で、それから1年くらい千葉テレビとスカパーのアイドル番組に出演してましたね」
まさかそこもゴスロリで通した?
「通す気満々だったんですけど、残念ながらセーラー服みたいな衣装を着せられちゃったんですよ。『わたしはジャンヌなのに、なんでこんな格好をしなきゃいけないの?』って悩みましたけど、『これはこの世の仮の姿なのよ』ってことで自分を納得させました」
いやぁ、いちいち素晴らしいですね。でも、当初の“テレビの中の世界に行く”っていう野望は見事成就したわけですよね!
「軽くクリアーしました! そこでもうちょっと満足しちゃったんですけど、そのとき共演した女の子に『事務所が決まってないなら今度面接に行かない?』って言われて、誘われるがままに面接に行ったのが今の事務所なんです」
これまたトントン拍子じゃないですか! ひとつおうかがいしますが、学校とか、そういう日常的な世界の倉持さんってどんな女の子だったんですか?
「幼稚園の頃からずっと絵ばかり書いている女の子でした」
そういうの聞くとホッとしますね。なるほど、倉持さんはイラストレーターとしても活躍されてますからね。小さい頃はどんな絵を描かれてたんですか?
「女の子の裸の絵です(即答)」
は!?
「女の子の裸の絵ばっかり書いてましたね。アイドルとかセーラームーンのキャラクターを頭の中で丸裸にして、かなり細部までリアルに脳内描写した裸の絵をジャポニカの自由帳にビッシリ(ニッコリ)」
こりゃまたさらに雲行きが怪しくなってきたわけですが、家族に心配されませんでした?
「最初は隠してたんでけど、描き貯めていた自由帳が一気に見つかってしまって、ただ裸の絵ならまだましだったんでしょうけど、わたしが描く裸の女の子は必ず何かに陵辱されているものばかりだったんで(苦笑)」
アハハハハ! その陵辱のジャンルも倉持さんの想像で?
「はい、かなりきわどいエログロというか……、もう大変なことになっています」
是非、一度見せてもらいたいです。
「いいですよ! 今でもペンを持ったら無意識で描いちゃってます。もうかなりの数になってますね」
今でも描いてますか! もっぱらプライベートで描くのは女の子の裸のみ?
「中学では美術部に入ったんですけど、さすがに学校で女の子の裸なんて描けないですから悪魔の絵ばかり描いてました」
いやいやいや、それもどうかと思いますけど(苦笑)
「悪魔にもいろいろあって、上級悪魔や下級悪魔とか、そういうのを図書館で調べて、そこに書いてある文献からどんな悪魔なんだろうってのを想像して、悪魔を追求してましたね。で、必ずひとつ詩を作って」
悪魔を書き上げたキャンパスに詩をしたためるんですか!
「はい。黙示録的な、『わたしの赤き血で染めよ!』とか」
アハハハハ! ぶっちゃけ、友だちとかって少なかったんじゃ?
「友だちはですねぇ……、あの頃は多いとは決して言えませんね。みんなわたしと話すと引いちゃうんですよぉ(困)」
恐縮ですが、そりゃ引くでしょうね(苦笑)
「友だちに『わたしは天使なんだ』って言ったりとかしてましたからね。正直になっただけなんですけど」
ちょっと待ってください。えっと……、倉持さんは天使なんですか?
「はい、実はそうなんです。わたし、ミナエルっていう天使なんですよ。でも、羽が折れてしまって、翼の折れたエンジェル(ポツリ)」
それ、笑うとこですかね?
「(無視して)人間界に落ちてしまって、正直にお答えすると堕天使なんです」

正直になっていただいて大変光栄なんですが、それは倉持さんの中にいるジャンヌ以外の人格……、いや、天使なんで天使格っていうんですかね(苦笑)
「ジャンヌとミナエルは違います。あ、あと、悪魔のときはカサエルっていうんです」
カ、カサエルってのもいますか!
「ミナエルのときはお花のない公園にお花の種を蒔いたりしているんですけど、夜になるとカサエルが出てきちゃって、カサエルはものスゴく悪くて、特技は黒猫を集めることなんですけど」
カサエルはどんな方法で黒猫を集めるんですか?
「ごはんにカツオブシをかけたものを使って」
それってただの餌付けじゃないですか(笑)
「違います! カサエルの能力です!! カサエルは黒猫を集めて夜な夜な悪巧みをしてるんですから」
ちなみにカサエルはどんな悪さをするんですか?
「悪さはしないですね。黒猫を集めてただ会議してるだけです」
全然害がないですね。害があるとすれば倉持さんのご家族が心配するくらいなんでしょうけど、そもそもカサエルという悪魔は何のためにいるんですか?
「支配とか征服じゃないですかね?」
地球の?
「いえ、千葉です」
千葉征服! 暴走族じゃないんだから。
「でも、今思い出したらわたし、そうとう変だと思われてたと思います。小学校の頃から黒い羽を『誰にも言っちゃいけないよ、この黒い羽、カサエルって悪魔の羽なんだけど、カサエルってわたしのことなんだ』って、1日1本くらいのペースで黒い羽をクラスメートにあげてましたね」
そりゃもう間違いなく変人だと思われてますよ。
「わたしはだだ正直になっているだけなんですけどね」
少なくともボクは1000%信じてます。では、倉持さんは倉持結香という人格とジャンヌ・ダルクの生まれ変わり、そして天使ミサエルと悪魔のカサエルという存在の集合体なわけですね。
「そうですね(きっぱり)。朝とかお昼はミサエル、夜になるとカサエル、鏡を見るとジャンヌになります」
なるほど! 部屋は悪魔的なアイテムで埋め尽くされ、ノートを開けば女の子の裸の絵だらけ、学校では黒い羽を配りながらキャンパスに悪魔の絵を描きなぐり、夜な夜な黒猫を集めてはなにやら悪巧みをしていると……。両親は何も言わなかった?
「一回、心療内科に連れていかれましたね(サラリと)」
つ、連れていかれちゃいましたか……(苦笑)
「部屋でドクロに向かって『カサエルゥゥゥゥ』って祈りを上げた後に、夜な夜な黒猫に餌をあげているわたしの姿を見て、お母さんに『お願いだから病院に行こう……お願いだから!』って泣きながら言われてしまい……」
地獄絵図ですね……。で、診断結果は?
「分裂症と診断されてしまいました(苦笑)」
たしかに、天使と悪魔と歴史上の人物に分裂してますからね。で、その後どうしたんですか?
「『あぁ、わたしって病気なんだ……』って、そこでなんだかスーッと落ち着いたっていうか。そこから悪魔的なアイテムとかもみんな自分で処分して、いわゆる普通の女の子に戻ったというか」
勇気がいた?
「いりましたね。みんなわたしの分身でしたから。でも、両親を悲しませるのもイヤだし、『このままわたしは仮の姿で生きていかなきゃダメなんだな』って、ちょっと我慢しよう、仮の姿を好きになろうって覚悟して、それから今に至ってます」
治ってはないということですね。
「もうそこからは明るくっていうか、格好も白と黒と血のりで構成されたデスメタルみたいなのからベッキーさんみたいな蛍光ピンクやイエローな服装に変わって、遊びにいく場所も明治神宮前の橋の上から竹下通りに変わって」
200メートルほど南下したわけですね(笑)
「見た目は健全っぽくなりましたね!」
かわいいポテンシャルは抜群なわけですから、変身して男子からモテたでしょ?
「いえいえ、結局は仮の姿ですし、中身はまったく変わってないわけですからもう全然。完全にオタクで、数少ない友だち同士で『●●氏』って呼び合ってましたし」
うわぁ、完全に腐女子ですね。なんかこう青春っぽいのはなかったんですか? 先輩に憧れるとか?
「まったくなかったというか、人間の男性に興味がまったくないというか。いわゆる青春時代とか、恋愛とかって何にもなかったですね。中学は美術の授業以外はほとんど行かなかったし、登校拒否とまではいかないですけど、基本的に引きこもりでしたから」
またなんで引きこもってしまったんですか?
「男子にものスゴくいじめられてて。その頃もタレントのお仕事とかは続けていて、なんかこういやらしい目で見られてたというか、体操服なんかも汚されちゃったり、スクール水着を男子トイレに隠されたり……」
なんでだろう? ボクだったら学校にアイドルがいたら1000%好きになって、異常なまでに優しくしますけどね。
「そんなこと言ってくれる人はひとりもいませんでした。女子は結構応援してくれてる感じもしたんですけど、男子は廊下をすれ違うたびに何かコソコソ言ってたり、ロッカーにはいやらしい感じの手紙がいっぱい入ってたりとか」
最悪ですね。
「だからあまり心から話せる様な子は学校にはいなかったです。でも、基本的なフィールドが学校ではなかったので、それほど苦にはなりませんでしたし、仮の姿で生き始めて、結構楽しくもなってきたし。あと、やっぱり事務所の方にガツーンとされて、目が覚めたというか」
事務所の方から何か助言でも?
「極真空手をやっている事務所の人に『そんな人生じゃダメだ!弱いからそんな考え方になってしまうんだ!』って言われて、近くの公園に連れて行かれて『試合だ!』って」
え!?
「殴り合ったんです、極真三段の空手マンと。で、側頭部に思いっきり蹴りを入れられて意識が飛んだんですよ」

有段者の空手マンと殴り合うって、いったい何やってるんですか(苦笑)
「でも、そこで何かパチンとスイッチが入ったんです。今までは温厚な日常の中で過ごしていて、なにかされたらすぐに泣いちゃう様な女の子だったんです。もちろん一回も殴られたことがないし……、でもそこで初めて“痛み”というものを味わって、バチーンって蹴られた瞬間に辛かったこととか全部スコーンって飛んじゃって。『これからは強くならないとダメだ』って心の底からウワーって感じになって」
医者にも治せなかったものを……、荒治療って効くんですね。
「もうボコボコにされてしまって。でも、わたしも負けず嫌いなんで『やられてばかりはイヤだ、次は絶対にわたしがボコボコにする』って思って、とにかく毎週戦いました」
毎週極真三段と戦ったんですか!
「でも、次の週も、その次の週もガンガン殴られて、ボンボン投げられて、バチバチに蹴られて、もう全然勝てないんですよ。勝てないってことは自分が弱いってことじゃないですか。ってことは強くなればいいってことですよね」
シンプルに考えるとそうなりますけど。
「だからもうそこから毎日プロテイン飲んで、両手両足にはおもりを付けて生活して、『餓狼伝』を読みあさって」
アハハハハ! 最後のは最高にキュートですね!!
「『餓狼伝』はわたしのバイブルですよ。丹波文七の生き様を参考にして、食生活なんかも改善して、それからは牛乳とプロテインと生卵とサバ缶とハムを一気に飲み込んだり」
うわぁ……。
「あと、コンクリートの壁とか、その辺にある岩とかに拳を打ち付けたり」
岩に拳!?
「はい。痛みに強くなるためと骨密度を高める為に拳を岩やなんかに叩き付けるんです。正拳だけじゃなくて、手刀や掌底、手の全体を鍛えるんです! 皮がめくれ血がけっこう出ちゃいますけど、プロテインのおかげですぐ回復しますよ!あとはビール瓶でスネをガンガンに叩いたり」
月並みな質問で申し訳ないんですけど、痛くないんですか?
「最初は痛かったですし、毎週の戦いと修行で全身内出血のアザだらけですよ。でも三ヶ月くらい続けた頃にはもう痛みなんて自分の中で超越し始めて、今では痛覚と心を分けられますよ」
痛覚と心を分ける?
「わたしを倒そうと思っても痛みだけじゃ絶対に倒せませんよ。立ち会うときは痛みという感情を捨てますし、例え骨が折れようが戦い続けます」
倉持さんを倒すには意識ごと刈り取るしかないと?
「そうですね、気絶しちゃうともうそこで終わりですね。それは負けです、残念ですけど。なので心をもっと鍛えるために単身山ごもりもしました」
や、山ごもり!? マス大山じゃないんだから!
「秩父の山奥に折りたたみ自転車で。もちろん手足にはおもりを付けて、都内からは100キロ以上あるのかな」
都内から折りたたみ自転車で秩父までいったんですか?
「はい! で、かなり山の中に入っていって、小川がある川縁にテントを張って、そこでひとりで」
何泊くらいしたんですか?
「4日くらいですね。そこでも、そのへんの岩に拳を叩き付けたり、水圧に逆らいながら蹴りを何度も何度もやったり、いろいろと修行をさせていただいて。お腹がすいたら乾燥貝柱を食べたり」
乾燥貝柱?
「はい。『グラップラー刃牙』に夜叉猿が出てくる辺りのストーリーってわかりますか?あのとき、刃牙が山ごもりするんですけど、そのときの刃牙の食料を全部参考にして、納豆に乾燥貝柱にと、そのときの刃牙の山ごもりセットとわたしの荷物はほとんど同じでしたね」
アハハハハ! すげぇなぁマジで(笑)
「あとは川が近くにあったんで、魚を獲って食べましたね」
釣り道具なんかも持っていったんですか?
「いえいえ、水面を蹴り上げて魚を獲るんです! 」
マジですか、クマ並みですね!!
「はい! で、そのまま生で頭から。獲れた魚は基本的に生で丸呑みしちゃいます」
川魚を丸呑み! お腹壊しませんか?
「この話をするといろんな人から危ない危ないって言われるんですけど……、なんかお腹壊しても免疫がつくかなと思って」
でも、そこで倒れたら誰も助けてくれないですよ。救急車もなかなか来れないでしょうし。
「そこでそうなったらそこまでの女ですよ(きっぱり)」
最高です!
「ただ山にいるだけでも精神は強くなると思いますよ。便利な都会から離れて、ケータイとかも何も無いところでどうやって生き延びるか。食料なんかも自分が食べる分は自分でなんとかしないと生きてはいけないわけですから。でもまぁ別にそこまでしなきゃってのはなくて、自然のパワーを体中に浴びるだけでも絶対にいいですよ! わたし、自然のパワーを体全体で吸収したかったんで、山ごもり中は真っ裸でしたから」
女子高生アイドルが秩父の山中で真っ裸!
「服が邪魔だったんですよ。自然のパワーをいただくためにはコットン一枚でも遮りたくないって思って」
誰かに見られたりしてないですか?
「大丈夫だと思いますよ。かなり奥地まで入っていってましたから」
裸で岩を殴って、魚を丸呑みしてたんですか?
「はい! 強くなるために!! また近々に行こうかと思ってます」
夜とか真っ暗でしょ、怖くないんですか?
「暗闇が怖いという感情は克服しました。怖いといえば川の増水くらいですね」
増水するような河原で野宿してたんですか?
「はい。鉄砲水とかってよくあることらしくて、夜は眠りつつも川の音をちゃんと聞いてましたね。五感もかなり鍛えることができました」

とんでもないですね……。じゃあ例えば野生動物なんかが襲ってきたらどうするおつもりだったんですか? 例えばクマとか。
「クマかぁ……、クマはキツいかなぁ、どうだろう?」
どうだろうって! 一発貰うときは死ぬときですよ。
「やっぱり一度は後ずさりしちゃうだろうけど、もし襲ってきたら拳を失う覚悟で口の中に正拳をいれますね! で、絶対引かずに押し込んで、押し倒す感じかなぁ。小熊だったら勝てそうな気がしますけど」
いやいや勝てないでしょう!
「いや、いけるかな?って。もしものときはあたしもきっとアドレナリンとかすごい出てると思うので。命が懸かってたらいけるかも。クマの一撃を一発も貰わないでわたしの拳を撃ち込めるかどうかが鍵ですね」
クマと立ち会うことになって、腕一本失おうとも構わない?
「まったく問題ないですね。命が懸かっていればそれくらいなんてこともありません。とにかく戦わずして逃げるという行動だけは絶対に取りたくないんですよ。どうせ負けるなら立ち向かって負けたいですし、負けたとしても背中に傷を付けられて負けるのだけはイヤですから」
返す言葉もありません……。倉持さんの空手って我流ですよね、道場とかで習ったことは?
「ないですね、完全に我流です」
その力をどこかで発揮したいとか思われたりしないんですか?
「誰かを倒したいっていうよりは自分自身の成長のためにやっていることなので、そういうのは特に考えたことがないですね。でも、道場にも行ってないインチキ空手だとか言われたり、道場に行ってれば全ていいっていうような風潮は気に入らないです」
奇しくも、最近K-1のプロデューサ―の谷川さんが女子立ち技格闘技の旗揚げを宣言されてましたけど、興味はありますか?
「正直、興味はありますけど、まだ自分がそこで何かをやるというビジョンは見えないですね。許せないことがあったら別ですけど」
今までに許せないことってありましたか?
「一度だけ。武田梨奈さんっていう女子高生最強って言われてる女の子がいるんですけど、ネットとかで、わたしはインチキ空手家で、その女の子は道場とかにもちゃんと行ってるし、世界大会に出たり、全国大会優勝とかしているからスゴい。武田梨奈さんがやっぱり女子高生空手家では一番強いんだと書かれてたのがちょっとカチンと来たので、彼女のブログに『私と戦ってください』ってコメントしたんですよ」
うわぁ、そりゃまたフルコンなガチンコをぶっ込みましたね。
「でも、彼女から『撮影があるので無理です』って言われて、なんかちょっと醒めてしまったというか。ああそういう人なんだと思って」
もう戦う価値もないと?
「そうですね。でも、空手家だったら撮影があろうがなんだろうが戦え!って。わたしは彼女に同じ空手家として『戦う』って言ってほしかったかなって」
でも、向こうもアイドルからいきなり対戦要求がきて驚いたでしょうね。
「うーん、やっぱりお父さんの道場で練習してるとかってことですし、いろいろ問題があるのかなと。負けちゃうとやっぱり……」
勝つ気満々なコメントですね。どなたかプロモーターの方、これを読んで興味を持たれたらすぐにマッチメイクに動いてください。倉持結香は殺る気です。
「押忍!」
アハハハハ! でも、先ほどから聞いていると倉持さんって防御力というか、相手の攻撃に耐える力はスゴいのかなと思うんですが……。
「痛みという感情を体が感じないように調整してますからね。痛覚をつかさどる神経は全部断ち切ってますし、負けるときは気絶したときか死ぬときだけです」
いやはやとんでもないんですけど、攻撃力の方はどうなんですか?
「わたしの場合、魅せる技といいますか、華麗な技は持っていないですね。一番威力があって、かつ隙のない技。いわゆる生きた拳ですね。ある意味守られた試合という世界だけじゃなく、殺し合いのストリートでも通用する技を探求してますね」
エアマスターもビックリなコメントですね。
「わたしの技は一撃必中、そして必殺です!(断言)」
まさに極真ですね。極真といえば倉持さんはマス大山最後の内弟子、ニコラス・ペタス選手と仲がいいそうですね!
「はい。ニコラスさんのブログにコメントを書き込んでたりしてたらいつの間にか仲良くなって、お仕事をいっしょにするまでになりました!」
ニコラス・ペタスは倉持さんが壮絶な特訓をしていることを知っているんですか?
「知ってますよ。あたしが『強くなるために山ごもりしてきたよ!』って言ったら、『え!? なんでそんな怖いことするの?』って言われました」
今の空手家はそんなことしねーと(笑)
「岩に拳を打ち付けて、血だらけになってることを伝えたら『えぇ! なんでそんな痛そうなことするの? そんなこと空手家はしないよ!!』って」
アハハハハ!(爆笑)
「ニコラスさん、若干引いてましたね(苦笑)」
素晴らしいですね。じゃあ今後は空手という分野も自身の精神力を鍛えるために続けていくということで?
「そうですね! やり続けます」
あのぉ、たった今思い出したんですけど、倉持さんってアイドルなんですよね? なんだか何をしてる人と話してるのか見失いかけてきたもので(苦笑)
「うーん……(考え込む)」
そこはご自身もあやふやなんですか?
「あやふやっちゃああやふやですねぇ……。アイドルとしての活動かぁ、わたしってアイドルなのかな!?」
今、ご自身は何を生業にされているんだと思いますか?
「イラストレーターです(即答)」
イ、イラストレーターですか! イラストのお仕事もたくさんやられてますもんね。
「そうですね。仕事の割合でいうと最近は絵の仕事が多いし、デザインとか、ロゴ作ったりとか絵本とかそういうのにも挑戦してます」
マルチタレントっていうほうがしっくりきますね。芸能界っていわば衣食住と関係ない世界の商売なわけですけど、この先どうやって越えていこうと思いますか?
「やっぱり今はもうかわいいだけの女の子ってたくさんいて、ホントにもうそれだけの子は腐るほどいるのがわかってるんで、かわいいだけじゃなく、プラスアルファくらいの勢いというか、何か特異なものを持ってないといけないと思います」
倉持さんに関しては持ち過ぎでは?
「ないですないです、わたしなんてまだ全然です。絵を描くことと空手と、あと山ごもりくらいしか(苦笑)」
妄想ってのがあるじゃないですか!
「妄想!?……」
そ、そっか。妄想じゃなく現実ですもんね。うーん……、倉持さんは想像力がハンパないと思うんで、例えば本なんて書かれたらこれまたおもしろいんじゃないですかね?
「文章ですか? わたしも文章の方は是非是非頑張らせていただければって思ってるんですけど、スゴく文章を書くのが苦手なんですよね。わたし、実はアスペルガー症候群って診断されてるんです、頭の中で構築したものを上手く表に出しにくくて、人と話すこととか、コミュニケーション能力が乏しい病気なので……」
それ、もう治ってるんじゃないですかね?
「治ってるのかなぁ? わたしの言ってることとかわからないことないですか?」
むしろおもしろいですし、コミュニケーション能力が乏しいなんて微塵にも思えませんよ。
「ホントですか! 嬉しいなぁ。でも、空手を始める前はやっぱり酷かったですよ。とにかく人と話せなかったし、相手の目なんて見れないし、脳の伝達する電波の障害が起きてるみたいなんですけど、治ったのかな!?」
完全に治ってますよ。でなければこんなインタビュー無理ですもん。きっと事務所にいらっしゃる極真空手家の蹴りが頭の中の微妙なピントを合わせたんじゃないですかね。
「ホントにそうかもしれないです。あの痛みをしってから症状がパタンとなくなったし」
壊れかけの古いテレビの写り具合を叩いて直すみたいな感じですかね。
「なるほど! やや荒治療な気もしますけど、ホントにそうかもしれない。もしそうなら、薬とかで治すんじゃなくて、痛みで、人間の力で回復できたのがよかったかな」
逆に健康的ですよね、ぶん殴られて目が覚めるみたいな。引きこもってる人とか、元気がなくて、あんまりこう自分の気持ちとかを出すのが苦手な人はとりあえず一回おもいきりぶん殴られろみたいな?
「それに答えるのはちょっと問題多そうで怖いんですけど、わたし個人的には痛みを知ることはいいことだと思いますね。ぶん殴られたら目が覚めるかも!」
今、この国も誰かにぶん殴られないと目が覚めない様な状況だと思うんですが、ぶん殴られて目が覚めた界の先輩としてどうお考えですか?
「そうですねぇ……。わたし、思うんですけど、小学生のうちからぶん殴る教育してれば、昔みたいな教育をしてれば、今みたいにはなってなかったと思うんですね。デジタル化されたイジメみたいなものもないだろうし」
いろんな面で陰湿になってきてますよね。
「昔って、それこそ悪いことしたら両親はもちろん、となりの家の人にも同じように怒られて、痛みみたいなものを日常の中で知ることができたじゃないですか、殴られることによって『これはいけないことなんだ』っていうことが心にインプットされることって、場合によってはいいことだと思います」
虐待になっちゃうと絶対NOですけど、愛のムチというか、それが教育の範疇であればボクも肯定していいと思います。ボクの小さい頃なんて、先生とか怖かったですからね。
「今は先生側じゃなくて生徒側が力を持ってるというか、先生に『オレを殴れるのか? 教育委員会に言うぞ』みたいな子もいるそうですし。大人が力を持っている時代が戻ってくれば、世の中ももっとよくなるんじゃないかなと思うんです。今はなんかパワーバランスがおかしいというか」
世の中に絶対的な存在が足りない?
「それを一歩越えると帝国主義みたいになってしまうわけですから、まぁギリギリの話なんですけど、そこに愛があれば自然にハードルもできるし、良い部分をもう一度再生すればいいんじゃないかなって。もしかしたら何も分かってない小娘がって言われるかもしれないけど……、これ言っちゃっていいかなぁ」
ドンドンどうぞ!
「こんな小娘がこんなこと言っていいのかなって思うんですが、不景気!みたいなニュースとか、失業率がどうとかそういうワイドショーとか見てて『あの仕事はやりたくない、私はこの仕事がやりたいんだ』とか、もう夢ばかり語ってる人が多いかなって。食べていくためには誰もやりたがらない仕事に手を出すのも大事なことで、お金がある程度貯まってから、夢みたいなものを目指したほうがいいんじゃないかなって……、大丈夫かな、こんなこと言っちゃって」
私はこう思いますという主張は自由ですよ。女子高生が今の時代を考えて発言するってことは貴重ですし、耳を傾けなきゃいけないと思います。
「ありがとうございます。だからってわけじゃないんですけど、私はこの先何でもできるようになっておきたいし、この先生きていけるようにたくさんのスキルを身に付けたいなって。今、日本大学芸術学部を目指していて、そこできっちりと絵の勉強をして、将来的にはゲームのキャラクターデザインやグラフィックデザインなんかに関わっていければいいなぁと思っています」
アイドルって変わりましたよねぇ(感心)。倉持さんの頑張りが世の中を明るくする起爆剤になり得るかもしれませんね。この暗い世の中を生き抜いていくのに、ちょっと大変な思いをしている人たちに、メッセージをお願いします。
「わたし自身の話になっちゃうんですけど、この業界で生き残っていくためには、この先スキルというものが重要だと思ってます。それは歌を歌うとか、あの文章がうまいとかいろんなスキルがあるけど、あたしは絵を描くっていうこのスキルを大事にしていって、この業界を生き残っていきたいと思ってます。でも、これって他の分野や業界、人生においても同じことだと思うんです。そんな余裕がないって言われちゃいそうですけど、でも、何でもいいんで、挑戦する気持ち、大きくなりたいという気持ちは忘れてほしくないです」
素晴らしいですね。今、ボクも何か勇気をもらった気がしますよ!!
「ホントですか! じゃあ今度いっしょに山ごもりにいきませんか? もっともっと勇気をもらえますよ(満面の笑みで)」
結構です!(即答)
「やっぱり!(笑)」
