福岡市の不動産会社が就職の内々定を一方的に取り消したのは違法として、福岡県内の大学に通っていた20代男性が105万円の損害賠償を求めた労働審判で、福岡地裁は13日、男性に解決金として75万円を支払うよう同社に命じた。男性の代理人弁護士によると、内々定取り消しの違法性を裁判所が認め、賠償を命じるのは極めて珍しいという。
男性は昨年7月、同社から内々定をもらい、10月2日の内定式の案内を受け取った。ところが直前の9月30日になって突然、取り消しを通知され、今年1月、労働審判を申し立てた。
代理人によると、同社側は審理で「金融危機などによる未曾有の大不況を、誰も予想できなかった」と責任を否定、争う姿勢を示した。計3回の審理で、裁判所は調停に向け解決案を示したが、代理人は「解決金額で折り合いがつかず成立しなかった」という。
今回の審判を代理人は「内々定の取り消しでも賠償義務が発生すると明示しており、画期的な司法判断だ」と評価した。
男性は3月に大学を卒業し、県外企業に就職した。同社をめぐっては、男性と同じ時期に内々定を取り消された別の女性も労働審判を申し立てている。
今回の労働審判に、九州大大学院法学研究院の野田進教授(労働法)は「内々定取り消しの時期が、内定式の直前だった点が判断のポイントになったのではないか。今回は男性側が地位確認まで求めておらず、損害賠償請求だけだったが、内々定取り消し事案一般に警鐘を鳴らす意味があるだろう」と話した。
労働審判の結果に不服がある場合、異議を申し立て通常の民事訴訟に移る。同社は「弁護士と協議し今後の対応を検討したい」とコメントした。
=2009/04/13付 西日本新聞夕刊=