2009-04-10
真に教育を改革したいのなら玉石混交をやめるべき
おことわり:文章の体裁を整え、それに伴い初出からタイトルを変更しました
忙しい人向けの文章の要約:
教師あたりの生徒数を減らしたり高等教育を義務化することは教育の品質を上げる上で何の意味もなく、それどころかむしろ害悪でさえある。真に教育を改革したければ、教育の効率を下げる原因である玉石混合型の護送船団方式をやめるべきだ。またそうすることで、個々人に社会的地位の自覚が芽生え、夜郎自大の勘違いが減少し当人の幸福度が向上するだけでなく社会全体の満足度も高まるだろう。
勘違いした教育者に絶望した
- 教育費をタダにせよ
- 生涯を通して学ぶ楽しさや学習がもたらす成果を共有
- 1クラスの子どもの数を少なくし落ちこぼれを作らない
- 意志ある者は無償で教育を受けられるようにすべき
- 公立学校の教員ボーナスなどの算出には疑問も
要するに「教育を改革することで、日本にスウェーデンモデルを浸透しやすくしようじゃないか」という主張だが、それを実現するための提案内容を読んでいくうちにだんだん腹が立ってきた。断言してもいい、この人の言うとおりにしたらますます悪化する。
高校までの教育費をタダにせよ?寝言は寝て言え
「中学校までの義務教育じゃ物足りない、スウェーデンを見習って高校も無料にしよう」という主張だが、まったく何を言っているのか。すでに義務教育がまともに機能しておらず、高校以上に進みたい子供には塾通いがほぼ必須となっている日本の中学の荒廃した現状を無視して、高校までも同じような状況にしようというのだろうか?
なぜ中学の教育システムが機能しなくなっているのか、答えは簡単だ。義務教育では結果の平等が重視される。勉強したくないアホの子も、鉛筆かじりながら国語の教科書にヒゲ書き込んでる高機能自閉症児も、教科書流し読みで全部理解できる神童も一緒くた、玉石混交の公務員型護送船団。こんな状態でマトモに勉強できると思うほうが間違っている。
クラスの子供の数は問題ではない。玉石を混ぜることが義務教育の崩壊を招いた
義務教育、とりわけ中学で教育の品質を保てない真の原因は、玉石を混ぜていることによる教育効率の低下だ。例えば足の遅い奴と速い奴を集団にして一緒に移動させたら、隊列が延びきって収拾がつかなくなるのは自明だ。「それを避けるために一番足の遅い奴に合わせましょう、監督者を増やしてみんなでゆっくり移動しましょう」なんてのはまったくばかげている。
落ちこぼれをつくらないように努力するなんて、そんな無駄なことをする必要はない、単に足の遅い奴と速い奴を別のクラスに分ければいいだけだ。いいかい?誰が決めたか知らないが「落ちこぼれ=能力による格差を作らない」という現状のやりかたが義務教育の生産性を低下させているんだよ。教師あたりの生徒数の多寡など本質的な原因ではないのだ。*1
高校を義務化したら結果は2とおり。しかも双方ともデメリットあり
高校の義務化のやり方は2通り考えられる。しかもその双方にデメリットがある。
ひとつは中学と同様に地域別の割り当てを行い玉石を混合させるやり方だ。当然このやり方は教育の生産性の低下を招き、心ある親たちはわが子の将来を守るために塾の必要性をますます確信することだろう。
優秀な子供にとって、昼間はただイスに座っての我慢大会にすぎず、真の勉強時間は夕方からの塾の時間に存在することになる。たしかに、高校までの教育費は税金でまかなわれるようになり、金銭的に困窮した家庭でも高等教育の機会が得られるようになるだろうが、残念ながら玉石混交の教室ではまともな教育を期待することは難しいだろう。
もうひとつは、いまの高校と同じように能力別のパーティショニングを行う方法だ。優秀な子供たちにはより優秀な教育を行い、その能力をますます伸ばすべく国家が支援する。普通の子供たちには社会で暮らすには不足ない程度の教育を施し、まあ飛び込み営業やスーパーのレジうちぐらいなら十分やっていけるぐらいの人間に育て上げる。
この案はとても素晴らしいように思えるが、ひとつ問題がある。底辺高の処遇だ。いまでさえ偏差値の低い劣等高校は、ただ金を支払って卒業証書を受け取るためだけの、いわゆる高卒版のディプロマ・ミルとしてかろうじて存在しているとみなされている(e.g.ぬまっき)。しかしこのどおくまんの花沢高校みたいなのを、わざわざ税金で維持したいと思える納税者はそう多くはないだろう。どうせ自衛隊の射的の的しか輩出しないのだから。
だが、だからといってこの花沢高校を廃校にしてしまっては義務教育に反してしまう。いかに税金の無駄にしか思えなくともこの高等動物園、あるいは犯罪者予備軍収容所は税金で維持しなければならないのだ。なかなか難しい問題だ。*2
義務化には欠点があるが、クラス分けにはメリットがいっぱい
前出のとおり、高校を義務化することはいずれにしても労多くして益少ないものだ。しかし、玉石分離、すなわち能力別のクラスわけにはメリットがたくさんある。
まずひとつは教育の生産性の向上だ。
優秀な生徒を集めたクラスでは、外来のノイズもなければ落ちこぼれて足を引っ張るバカもいない、理想的な教育空間が実現される。そこに優秀な教師を割り当てることで、教育の効率はさらに何倍にも高まることだろう。
普通基準のクラスにはそれなりの教師が割り当てられ、可もなく不可もなくのそれなりの教育が行われ、世間様ではそこそこ使える程度の腰の低い毒もない歯車が量産される。
劣等クラスには体育教師か刑務官を割り当てて、朝から晩までオッスオッスと腕立て伏せでもさせてればよろしい。万一日本に外敵が攻めてきたら銃弾から身を守る肉壁ぐらいにはなるだろう。
能力別分離によって生じるヒエラルキーのメリット
そうやって、適材適所の教育システムを通ってきた人種には別のメリットとしてある種の共通項が生じる。それは「自分の社会的ポジションに対する正しい認識」だ。
例えばMARCHを出た学生は素直だ。自分たちは東大生とは違って稀有な天才ではなく、ただの凡人がちょっとだけ努力して今があるということを謙虚に自覚している。もちろん社会の中での相対位置としてはMARCH学生は間違いなくトップクラスの知的エリートであり、将来さまざまなシーンでその能力を生かし、広範な領域で社会の発展に貢献するパワフルなリーダーとなる逸材だ。だが彼らは自らの能力とその限界を自覚しているので決して奢ることはない。優秀で謙虚なMARCH学生はどこの企業でも歓迎される。
また、大東亜帝国を出た学生も素直だ。自分たちの属する学問の府が形ばかりのまがい物であることを認識し、むしろ自分たちが知的活動では一般人に遅れをとる場合すらままあることを十分に自覚しており、どのような苦難にあってもその謙虚さを失うことはない。社会に出ても、つらい工場の単純労働、例えば倒れたペットボトルを見つけて直す仕事や、カレーパンにカレーを入れる仕事、弁当にバランを差し込み続ける仕事なども、文句ひとつ言わず黙々とこなす苦労人だ。彼らの絶え間ない貢献がなければ、カレーなしのカレーパンやバランなしの弁当などが堂々とまかり通り、ババをつかまされた客の怨嗟のうめき声は惣菜コーナー一帯にこだまするだろう。
自己の社会的ポジションを自覚する機会に恵まれなかった人間はどうなるのか?
さて、このようなヒエラルキーシステムによるイニシエーションを経験していない人がどう育つかは火を見るより明らかだ。競争と協調、敗北と勝利という自己認識のためのプロセスが決定的に足りないまま大人になった人間は、自らのポジションに対する自覚が不足しているため「自分が一番偉いのだ」という自我肥大、いわゆる「権勢症候群」を起こしてしまう。
ときどき見かけるだろう?いい年した大人になってもなぜか自分は優れているという妄想を捨てられず、夜郎自大な発言を繰り返して周囲を辟易させているような勘違い君が。冷静な第三者からみれば、そいつは中卒・フリーター・特技なし・根性なしの四重苦で、影で笑いのネタにされているにもかかわらず、痛痒にも感じないそぶりだったりする。
それがまさしく「権勢症候群」だ。もともとは動物行動学の用語で、ちゃんとしたしつけがなされない動物が、自分が家族の中で一番偉いと勘違いして優越的な行動をとることを言う。権勢症候群の動物は、周囲に迷惑をかけるだけでなく、飼い主から見放されるなど結果として動物自身にも不幸を招く。人間も同様であり、十分な社会的ポジションの刷り込みが行われないまま成長することは、社会にとっても当人にとっても不幸な結果を招くのだ。
派遣切りなどで、公園で騒いでいる無職どもなど、まさしくこの例の指し示すところである。地べたに座って虚ろな目でワンカップを飲むという状況に及んでなお、自らのヒエラルキーを真の意味では自覚しておるまい。
キチンと社会的地位を叩き込もう、自覚させよう
「教育」によりきちんと社会的地位を自覚した人間の存在は、社会にとっても本人にとっても幸せなことである。また逆に、ヒエラルキーを認識させてもらえなかった人間は、本人にとっても周囲にとっても不幸である。
義務教育における、玉石混交の悪平等こそまっさきに改革すべき問題だ。そうやって、要所要所でヒエラルキーをキチンと刷り込む教育を進めるべきではないだろうか。それが結果として社会全体の生産性向上につながり、個々人の幸せとして跳ね返ってくるのだといえよう。
参考URL
他者からの哀れみを権利と勘違いした権勢症候群の「動物」には罰を与えるべき - なぷさく
- 12 http://www.pressarmy.com
- 10 http://d.hatena.ne.jp/tami3/
- 8 http://reader.livedoor.com/reader/
- 7 http://b.hatena.ne.jp/entry/http://d.hatena.ne.jp/napsucks/20090410/1239299565
- 6 http://d.hatena.ne.jp/sk-44/20090410/1239344660
- 5 http://d.hatena.ne.jp/
- 5 http://d.hatena.ne.jp/mojimoji/20090331/p1
- 4 http://b.hatena.ne.jp/KoshianX/
- 4 http://d.hatena.ne.jp/httpmobile?http=//business.nikkeibp.co.jp/article/manage/20090407/191216/
- 4 http://d.hatena.ne.jp/m_debugger/20090330/1238392264