[映画ウラ事情]

 今年も「映画ドラえもん のび太の新・宇宙開拓史」が安定した人気を誇っている。えっ? と思うかもしれない。今年はそんなにヒットしていないんじゃないの? って。

(C)藤子プロ・小学館・テレビ朝日・シンエイ・ADK 2009

(C)藤子プロ・小学館・テレビ朝日・シンエイ・ADK 2009


 なぜなら、3月上旬の興業ランキングは“映画ドラえもん新シリーズ”首位が常であったにも関わらず、今年は「ヤッターマン」が4週に渡って1位の座を独占し続け、5週目でようやく「のび太の新・宇宙開拓史」が1位になったからである。だが実は、2009年度の“映画ドラえもん”は、いつもよりヒット要素が多く含まれた作品なのだ。

 まず、今作は1981年に公開された“映画ドラえもん”の第2弾「のび太の宇宙開拓史」のリメイクである点が大きい。というのも、その当時の“映画ドラえもん”の配給収入を見てみると、1980年公開の「のび太の恐竜」が15.5億円、「のび太の宇宙開拓史」が17.5億円、「のび太の大魔境」が12.2億円、「のび太の海底鬼岩城」が10億円、「のび太の魔界大冒険」が16.5億円、「のび太の宇宙小戦争」が12億円、「のび太と鉄人兵団」が13億円、「のび太と竜の騎士」が15億円、「のび太のパラレル西遊記」が13.6億円と、「のび太の日本誕生」が20.2億円と、80年代の“映画ドラえもん”では、2番目に成績の良かった作品なのである。

 そして、脚本は作家の真保裕一。彼は新シリーズの第2弾「のび太の新魔界大冒険」の脚本も手掛けており、これまでの“映画ドラえもん新シリーズ”の観客動員数は、「のび太の恐竜2006」が297万人、「のび太の新魔界大冒険」が326万人、「のび太と緑の巨人伝」は313万人、それぞれの興収も、第1作が32.8億円、第2作が35.4億円、第3作が33.7億円と、同シリーズ3作の中で一番いい成績を残している。つまり、実績がある人の脚本なのだ。

 また、今回初めて「のび太の新・宇宙開拓史」の冒頭14分の映像が無料でストリーミング配信され(期間限定・現在終了)、テレビ朝日では通常の映画公開直前スペシャルに加え、「ドラえもん」テレビアニメ化30周年の特番もありと、映画の宣伝機会が多かった。さらに、チュートリアルや香里奈、アヤカ・ウィルソンのゲスト声優に加え、主題歌を柴咲コウが担当と、個人的には微妙なのだが、ここに引っかかった人もいるだろう。

 3月7日に封切りとなった同作は、公開から9日目に映画新シリーズ累計入場者数が1000万人を突破、4月5日までの入場者数は204万3000人、興行収入は21.7億円を記録している。現在の興収では「ヤッターマン」に5億円近い差を付けられているが、「のび太の新・宇宙開拓史」は週を重ねても動員数の落ち込みが小さく、コンスタントに稼ぎ続けている。どこまで興収が伸びるのか――ヒット要素が隠された作品だけに、最終数値が楽しみだ。